あの後、家に帰ると、俺は母さんに詰め寄られた。
言い訳のできない俺はただただ平謝りするしかできなかった。
夏休みもあともう半月。
20 死へのレクイエム
「宿題やってない!」
今俺は宿題に追われていた。
だってシトリーやらセーレやら、悪魔のせいで家にすらあんまりいなかったんだ。当然ながら宿題も全くやってないし!
俺は半泣きになりながらテキストと顔を向き合わせていた。
まだ5分の1しか終わってない。もし終わんなかったら光太郎に頼むしかない。
俺はそう思いながらダラダラと宿題をやっていった。
「拓也ーお昼できたわよー。降りてらっしゃい」
俺は母さんに呼ばれて下に降りた。
1階では直哉が昼ごはんのソーメンを食べていた。
俺は大人しく席につき、ソーメンをすすった。
母さんは洗い物を一段落終えると、夕飯の買い出しに行くのか鞄を持った。
「母さんどっかいくん?」
「買い物よ。今日、特売だから」
「あ、そ」
俺は別にさして興味もなく、そのままソーメンをすすった。
直哉はお菓子を買ってほしいのか、母さんについて行こうと急いでソーメンを食べていた。
俺も小学生の時は、お菓子買ってもらおうと絶対について行ってたな。
俺は皿をかたづけ、自分の部屋に上がった。
ストラスは俺の部屋でのびのび本を読んでいた。
俺は再び机につき、そのまま宿題を再開した。
『拓也が机に座っているのを初めて見ました』
「普段の俺は真面目な男子高校生なんだよ」
『口だけなら何とでも言うことは可能ですけどね』
「てめっ!」
ストラスは飄々と失礼なことをいってのけ、そのまま本に目を戻した。
俺はしばらくストラスを睨んでいたが諦め、そのまま教科書に顔を向けた。
でもしばらくやっていたが、段々煮詰まっていき、俺はついに放棄した。
「もう無理だぁ!疲れた!!」
『あきらめの速さは天下一品ですね』
だってこんなの解けるわけないじゃん。俺、頭悪いんだし。
「気分転換にどっかに行きてぇなぁ」
『ならセーレに頼めばよいではないですか。どことなり連れて行ってくれるでしょう』
「お前……そんなセーレを自分勝手に連れまわせるかよ」
『……』
ストラスは俺を丸い目でジッと見てきた。
「何だよ?」
『拓也、貴方は変わった人間ですね。悪魔の力を手に入れたのなら普通は使いたくなるはずではないのですか?特にセーレなどは無害な悪魔なのに』
「なんで?そんな物みたいに扱えるかよ。セーレはいい奴なのに」
ストラスは何かを考えるように視線を下に落とした。
『指輪が拓也を選んだ理由はこのことか……?』
「ストラス?」
『拓也、貴方、悪魔と天使のことをどう思いますか?』
「へ?別にどうも思わないよ。ただ巻き込まないでほしいな〜くらい」
『そうですか……指輪が貴方を選んだ理由がわかる気がしますよ』
「なにが?」
『なんでもありません。それよりも早く宿題をしなさい』
俺はしぶしぶ机に体を向けると、指輪が光り出した。
「なんだ!?」
『拓也!何をしたのです!?』
「何もしてねぇよ!こいつが勝手に!!」
『ここが人間界。あの事件以来から随分変わったこと……』
気づいたら目の前に天使が浮いていた。
『君が継承者……ウリエルが見込みあるって言うからどんなのかと思ったら、なんか平凡〜』
「てめぇ!出会いがしらに何だよ!?」
『ん〜?しいて言えば状況観察かな?』
「状況観察だとぉ?」
トランペットを持った少年はにこりと笑い頷いた。
『そ。君がどれくらい僕らの期待に答えてくれてるかどうか』
「人に頼ってんじゃねぇ!なんだよ偉そうに!」
『まだ僕たちの出る幕じゃないんだ。今は……』
少年はそう言うとトランペットを握った。
『君にエールとして1曲、弾いてあげるよ。レクイエムをね』
「レクイエム?」
少年はそのままトランペットを弾きだした。
母さん達が出かけててよかった。今この場に居合わせたらとんでもないことになるし。
トランペットの音色は音楽を全く知らない俺でさえも、聞きほれるほどの物だった。
その曲は静かに、しかし心の奥に響くような音色だった。
そしてその曲は少し恐怖の音を再現しているようだった。
『お粗末様。本当はね、興味本位で出てきたんだ。思わぬ収穫が得られてよかったよ』
「収穫?」
『……福岡県に住む金田真吾……探してみてごらん?』
少年は笑い、姿を消した。
「なんなんだ……?」
『拓也、あの音楽は……』
ストラスは眉をひそめながら近づいて来た。
『死へのレクイエム。一体何を考えているのでしょう……』
死へのレクイエム?何その怖そうなタイトル。
俺は軽く背筋が凍った。
舐められてる。ぜってーに……
俺は夏なのに真っ青になった顔で窓から空を眺めた。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
『思った以上に普通だった。』
『だから言っただろ?見に行っても別に面白くねぇって』
『あの子が本当に世界を調停できると思う?』
『100%できるわけがねぇ』
『僕もそう思う。ミカエルは何であれを選んだの?』
『さぁな。使い捨てにはちょうどいい……ってとこじゃねぇか?』
ウリエルはあくびを1つ。
『知ってる?ラファエルはカンカンになってんだよ』
『俺も当たられた。人間を巻き込むなんてーってな』
『指輪が選んだんだもん。しょうがないよねぇ』
『なぁ』
僕達は軽く笑い合う。
あの悪魔もビックリしてたなぁ。
『ラジエルから聞いた悪魔の情報、教えてきた』
『はぁ?』
『だってなんか煮つまってたみたいだから』
『余計なことすんな』
そうだったね。
ウリエルがあれの子守り役だもんね。
『ごめんね?』
『反省してねーだろ?』
うん。あんまり。
かわいそうな継承者。
数千年ぶりの高揚感が体中に駆け巡る。
『ウリエル』
『ん?』
『僕もなんだか楽しくなってきちゃった……』
そして惨劇は幕を開けていく……
登場人物
ラグエル…「神の友人」を意味する天使であり、他の天使達を監視・監督する役目を担う。
トランペットを持った少年。
確定していない栄光の7天使の残りの3人の有力な候補の1人。
*天使は悪魔と違い、見た目の設定がありません。
なので、ラグエルの姿は作者の捏造です。(笑)
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