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序章
第12話 孤児院の子供たち
「募金に協力お願いしまーす」
「お願いしまーす」

次の日の放課後、俺と光太郎は甲子園の資金獲得のための街頭募金をしていた。


12 孤児院の子供たち


「意外と集まるもんだなぁ。この箱の中何円入ってんだろ?」

光太郎は募金箱をジャラジャラと振り回す。
今俺たちは都内の大丸デパートの前で街頭募金をしている。あと他には、高島屋に2人、三越に2人、計6人で募金をやっている。
流石に人が集まる場所でやっているものだから地味にだが着実にお金は集まって行く。
今日は平日だからまだ人は少ないが……これが休日ならきっともっと集まるだろう。
俺たちは西東京の代表として決まっている。もう1つの代表の東東京も募金活動をしている。
やっぱり人が集まるので似たような場所でやっているが……(笑)

「お兄ちゃん達、野球の大会に出るの?」

その時、俺たちの足元で声が聞こえた。
俺と光太郎が下を見ると5〜6歳くらいの女の子がこっちを見ていた。

「そうだよ」

光太郎はにこやかに笑みを浮かべながら女の子の質問に答えた。
女の子はニコニコと笑い、また話を進める。

由愛(ゆめ)もね。野球皆でするよ?」
「あ、そうなの?」
「うん」

由愛ちゃんはまたニコニコ笑いながら、俺たちを見上げてくる。
俺は気になったことを由愛ちゃんに聞いてみた。

「君、お母さんかお父さんは?1人で来てはないでしょ?」
「来てるよー。あのねーサオ姉とセーレと来たの」

セーレ……あれ?どっかで聞いたことのあるような、ないような……由愛ちゃんがそう言った瞬間、由愛ちゃんの体が宙に浮いた。

「こーら由愛、勝手に居なくなったら駄目じゃないか」
「あ!セーレ!」

由愛ちゃんは嬉しそうにセーレに抱きついた。
この人がセーレ?
俺の目の前に現れたのは綺麗な長い黒髪を持った青年だった。

「沙織はもう店の中に入ってるからな。俺たちも早く行こう?」
「うん!」

由愛ちゃんは元気よく頷いて男性に抱きついた。そしてこっちに振り向いた。

「あのね?このお兄ちゃん達ね、野球の大会に出るんだって!」
「あぁ、募金活動ってやつだね。じゃあ俺たちも少しだけど入れようか由愛」
「うん!」
「由愛が入れてあげな」

由愛ちゃんの返事を聞くと、男性はポッケから財布を取り出しその中から100円を出した。
セーレは由愛ちゃんにお金を渡した。
俺は募金箱を由愛ちゃんの前に持って行った。

チャリン……

「ありがとうな」
「ううん!どういたしまして!」

俺は由愛ちゃんにお礼を述べた。
由愛ちゃんはニッコリと笑って(かわいいなぁ)またセーレに抱きついた。
しかしセーレは俺を凝視していた。

「あの……?」

俺は視線を感じたので話しかけてみた。
するとセーレは少し慌てたように俺に話しかけた。

「いや……君その指輪どこで?」
「え?」

指輪ってこの指輪……だよな?

「普通にお店でですけど」
「そうか。いや、うん……格好いいなそれ」

俺はそう答えたがセーレは少し気まずそうに視線をそらした。
青年は明らかな作り笑いを浮かべそのまま由愛ちゃんを抱いて去って行った。
光太郎がボソッと俺に耳打ちをしてくる。

「なんだったんだ今の?」
「さぁ。よくわかんねえんだけど、ストラスならなんか知ってるかも……帰って聞いてみる。それにセーレって俺どっかで聞いた事あるんだよな」
「じゃあ悪魔かなんかじゃないのか?でも悪魔にしてはメチャクチャ物腰柔らかかったよな。普通の好青年って感じだったし」
「確かに」

とりあえずこれ以上話しあっても進展などなさそうなので俺と光太郎はそのまま募金活動を続けた。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「お疲れさん。今日はどうも有難う。帰っていいぞ」

午後7時、募金活動も終わり、(全校生徒でやってるからもう俺には回ってこない)
俺と光太郎はそのまま帰路についた。

「ただいまー」
「お帰りー」

俺が玄関を開けるか否やに直哉がドタドタと走ってきた。
直哉……そんなに俺がいないのが寂しかったのか!(ちょっと感動)

「もー兄ちゃん遅いよー!俺お腹すいちゃってすいちゃって。早く着替えろよー」

あ、そう……愛の一方通行だなぁ。
俺は少し悲しくなりながらも着替えを済ませリビングに降りた。

「あれ?澪は?今日いないの?」
「うん。今日はお母さんが早く帰ったからってね」

えー澪いないのー?ちょーつまんねー。
俺はガッカリしながらもそのまま家族で夕飯を食べた。
しかし俺はセーレと言う男が気になって気になって仕方がなかった。
昨日やっとマルファスを倒したばっかなのに、また新しい悪魔が来たのか。そう考えると幾分か気分がげんなりしてしまった。
夕飯も食べ終わり、片付けも済ませ、俺は自分の部屋に上がろうとした。

「なー兄ちゃん遊ぼうよー」

すると直哉が俺に纏わりついてきた。直哉、兄ちゃん忙しいんだよ。
しかも母さんまでもが直哉の味方。

「拓也、遊んであげなさいよ。貴方最近すぐ自分の部屋に行っちゃうでしょ?」

だってそれはストラスが……
俺はため息をついて直哉の腕をどけた。

「直哉、兄ちゃん忙しいからまた今度な」

その場にいたら文句を言われそうなので俺はそう言った瞬間、すぐに自分の部屋へと走って上がった。(直哉の文句が聞こえる)

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
『おや、拓也。血相を変えてどうしたのです?』

ストラスは相変わらずポテトを食べていた。
俺はベッドにドカッと腰掛け、ストラスに気になったことを聞いてみた。

「なぁストラス、お前セーレって知ってるか?」

ストラスはポテトを食べるのをやめ、俺を見てきた。

『セーレにあったのですか?』
「え?あったっていうか……うん、あった」
『どちらですか。そうですかセーレと……』
「なぁ、セーレって悪魔なんだよな?なんか口調とか物腰とかかなり穏やかだったし、どう見ても普通の人間って感じだったぞ?」
『セーレは物を運ぶと言うことにおいては天才的な悪魔です。契約者が行きたいところ、欲しい物をセーレは契約者に届けます。さらに契約者に忠実ということでも有名です』
「じゃあいい悪魔ってことか?」
『まぁそうですね。人間に危害を加えるような悪魔ではありません』
「ならいいか」

俺は安心してベッドに横になった。

『拓也、セーレと契約をする気はありませんか?』
「俺が?」

ストラスは首を縦に振った。

『セーレと契約さえできれば、貴方はどんなとこにでも行けるようになる。悪魔は恐らく世界中に身を潜めているでしょう。セーレさえいればスグにでも飛んでいける。悪魔を見つけるのも断然に楽になりますよ』
「そうはいってもさぁ……また探さなきゃいけないんだろ?」
『まぁそうですが、契約しておくにこしたことはないですよ……ただ』
「ただ?」
『セーレは契約者に忠実なので契約者が破棄を望まない限り、契約を解除しませんが』

ストラスはまたポテトをつまみだした。

『とりあえずセーレは私が探してみましょう。貴方は今のうちに英気を養っておきなさい』

ま、今回は危険なことじゃなさそうだな。
俺は取りあえずそれに安心したのでそのままベッドに横になり漫画を読んだ。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
夏休み2日目、俺は相変わらず部屋でダラダラしていた。
ストラスも熱いのは嫌いなのか少しグッタリしている様子だった。

『拓也、日本の夏は熱いですね』
「だろ?まじでやばいし。夏を馬鹿にすんなよ」

ストラスはヨロヨロと起き上がりながらも窓を開けた。

「ストラス、どっか行くのか?」
『セーレを探してくるんですよ。もしかしたら近くに見つかるかもしれない』
「手伝おっか?」
『頼みます』

俺は特にすることもなかったので、ストラスを窓から出し、外に出る準備をした。

『拓也、昨日はどこでセーレを見かけたのですか?』
「んー百貨店っていうデケー店で見つけたんだ。小さい女の子と一緒にいたよ」
『ふむ……そこはここから近いですか?』
「近いっちゃあ近いけど…お前は行けないぞ」
『なぜです?』
「だって都心だもん。フクロウ連れてくる奴なんかいねえよ」
『ではどうやって探すのですか?私がいなくては探せないでしょう?拓也はトロイから』

あん?なんだと?
俺はストラスに軽くチョップをした。
軽くしただけなのにストラスはムギャ!と間抜けな声を出した。
とりあえず街には出れないから、俺とストラスは少し離れたデカイ公園まで足を運ばせた。
公園には夏なのに子供たちで賑わっていた。

「熱いのに子供は元気だなー」
『なぜこのような場所に?』

ストラスは子供たちに声が聞こえないようにヒソヒソと語りかけてきた。

「当てがないんだろ?だからどっかのデカイ公園に行けばもしかしたら昨日の女の子に会えるかもって思ってさ」
『なるほど。しかし確率はかなり低いですね』

俺とストラスはベンチに座ってとりあえずあたりを観察してみた。
しかしまぁ当たり前と言っていいほど由愛ちゃんは見つからない。
あーぁ結局だめか……

「なぁ指輪。何とかしてくれよ」

俺は遊び半分で指輪に問いかけてみた。
ストラスは俺に憐みの視線を向けてくる。いや別に頭がおかしくなったわけじゃないから、そんな同情の眼差しで見んなよ。
俺の遊び半分で言った言葉に指輪が反応したのか薄く輝きだした。

「な!」
『これは?』

俺とストラスは目を見張らせた。
何が起こるって言うんだ?

『貴方達、誰を探しているの?』

ん、今の声はどこから聞こえた?
ストラスにも聞こえたようで周りをキョロキョロと見回している。

『ここよここ。貴方の足の下』

俺とストラスは言われたとおりに足の下を見た。
そこには小さな花が咲いていた。

「まさかこの花?」
『そうよ。所で貴方一体誰を探しているの?』

俺は思わず叫びそうになったがここは公園、注目は浴びたくない。
必死で声を押し殺しストラスに目で訴えた。

『そういえば指輪は天使と悪魔を使役するだけでなくあらゆる動植物の声も聞けると言う話を昔聞いたことがあります。まさか本当だったとは』

そう言うことは早めに言おうね?俺マジでびっくりして心臓が飛び出そうになっちゃったよ?
とりあえず俺は花に小声で話しかけた。(独り言と思われたらハズイから)

「なぁ由愛ちゃんって子、知らないか?」
『由愛ちゃん……さぁ、知らないわね。ねぇ!貴方何か知ってる!?』

花は首を軽くかしげたと思ったら急に大声を出したので、俺は慌てて周りを見渡した。
しかし子どもたちは全くこっちに気づいていない。

『どうやら私たちにしか聞こえないようですね』
「そうか。そりゃよかった」
『僕知ってるよ。この間由愛ちゃんに食べ物貰ったもの』

声がするほうを見てみると今度はスズメがこちらに向かってきた。
やべぇ。花とスズメと会話なんて俺めっちゃメルヘンチックじゃん。

『あの子、いっつもここのもう1つの大きな公園によく来てるよ。僕さっき見たもの』
「それ本当か?」

俺はスズメに話しかけた。

『本当だよ。なんなら案内してあげようか?』
「お、おう、頼む」

スズメは俺の右肩に乗っかった。(ストラスは左に乗っている)
俺どんだけ鳥に囲まれてんだよ。

「じゃあ俺行くな。サンキューな花」
『どういたしまして』

俺は花と別れ(?)を交わし、スズメと一緒にその公園に向かった。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
『ここにいっつも由愛ちゃんは来てるよ』

徒歩25分……目的の公園にやっとたどり着いた。
かなりでかい公園で多くの子供が遊んでいた。

『じゃあ僕はもう行くね。ばいばい』
「あ、おう」

スズメは飛んでいって俺とストラスはその場に取り残された。
それと同時に薄く光っていた光がすうっと消えた。しっかし何でもありだなこの指輪……
25分も歩いた俺とストラスはのどが渇いたので自販機に行って飲み物を買った。
その後ベンチに座って由愛ちゃんの姿を探した。

「あれだ!!」

5分後、俺は由愛ちゃんを見つけて大声で叫んだ。

『どの子ですか?』
「あのピンクのスカートはいた肩くらいまでの髪の子だよ」

俺が指をさしながら教えるとストラスはわかったのか軽く頷いた。

『しかしセーレの姿は見つかりませんね』
「とりあえず俺話しかけてみるわ」

俺はベンチから立ち上がって由愛ちゃんの所に行った。

「あ、昨日のお兄ちゃんだ!こんにちは」

由愛ちゃんは俺のことを覚えていたのか笑顔で接してきた。(警戒心ないな〜)
俺は由愛ちゃんの隣に腰をおろして話しかけた。

「由愛ちゃん。昨日一緒にいたお兄さんとは今日は一緒にいないの?」
「いるよー。ちょっと用事があって家に帰ってるの。でもすぐに来るよ」

由愛ちゃんは俺の質問に答えながらも視線はストラスに釘付けだった。

「かわいいねーその鳥さん」
「こいつ?ストラスっていうんだ。フクロウなんだよ。触ってみる?」
「いいのー!?」
「どうぞ」
「ふわふわしてて気持ちいいねー」

ストラスは嫌だったのか俺を睨んできたが、俺はストラスを由愛ちゃんに渡した。
由愛ちゃんはストラスが気に入ったのかストラスを抱きしめた。
とりあえずセーレが来るまでこっちで待機かな。

「由愛!」
「セーレ!」

その時、由愛ちゃんを呼ぶ声が聞こえた。
由愛ちゃんはセーレを見つけると嬉しそうに駆け寄った。

「昨日の男だ」
『間違いありません。悪魔セーレです』
「ごめんな遅くなって。予定より長引いちゃって」
「全然いいよ!昨日のお兄ちゃんが遊んでくれてたから」

由愛ちゃんの言葉を聞いてセーレは俺に振り返った。

「君は昨日の……ストラス!」
「セーレ?フクロウさんと知り合いなの?」
「え?あ、あぁ……」

セーレは俺とストラスに近づいた。

「その指輪、本物だったんだな。君が継承者か……」
「俺あんたに話があるんだ」

セーレは少し考えたが頷いてくれた。
ついてきてくれと言って、セーレはそのまま由愛ちゃんの手を引いて歩きだした。

「まさか誘い込んで袋叩き……?」
『そのような姑息な事をする悪魔ではありませんよ。セーレは』

俺はストラスのその言葉を信じてセーレの後を付いて行った。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
セーレの後を付いて来た俺たちが着いたのは子どもたちが集まっている孤児院だった。

「さ、由愛。皆のとこに行っておいで」
「うん!」

由愛ちゃんは孤児院の友達の所に走って行った。
由愛ちゃんの姿が見えなくなるとセーレは俺に振り返った。

「君はストラスと契約をしているのか?」
「うん。正確にはストラスとヴォラクもだけど」
「ヴォラクも?そうか。なら本当に俺たち悪魔全員が召喚されたわけだな」
『セーレ、貴方は召喚者を知らないのですか?』

セーレは首を横に振った。

「いや、俺も全くわからないんだ。最初のうちは探してたんだけどな」
「なぁ、あんたは誰と契約してるんだ?」

俺の質問にセーレは1人の少女に目をやった。
それは俺と同い年か少し年下であろう女の子だった。

「俺は彼女……沙織と契約してる。まぁ経緯(いきさつ)はヒョンなことだけどな」
「あんたはいい悪魔だってストラスに聞いてる」
「いい?悪魔にいいも悪いもないよ。俺はただ契約者の役に立てれば満足なだけだよ」
『セーレ、拓也と契約する気はありませんか?』

ストラスの唐突な要求にセーレは目を丸くした。

「拓也?君のことか?」
「まぁうん」
『貴方もマルファスの件は知っているでしょう?』

その話題を出した途端、セーレの顔が変わった。

「上尾の1年の殺害事件か……血に染まった黒い羽根が見えた時、まさかとは思ったが……」
『えぇ。恐らく全世界で悪魔は契約者の力を借りて活動しています。貴方がいれば世界中の移動が可能になる……悪魔を見つけやすくなるのです』
「協力したいのはやまやまなんだが……」

セーレは子どもたちを見つめた。

「沙織が契約を破棄しない限りは俺は沙織を裏切ることはできない」
「セーレ」
「ここの子供は両親を何らかの形で失った子ばかりだ。ここの孤児院も資金不足でな、子どもたちを満足にいろんな所に連れて行ってやることもできないんだ」
『貴方は自らの力を使い、子供たちをいろんな場所へ連れて行っていると?』
「まだそんなことはしてないけどね。沙織には俺の姿は見せてる」
『セーレ、自らの力を契約者以外の者に見せるのは禁じられているはず』
「わかってるよ。現実では起こりえないことだからな。それでも俺は沙織が、あの子たちが笑ってくれるなら」

「セーレ」

1人の少女がセーレを呼んだ。
それはセーレが沙織と呼んでいた少女で、沙織は笑いながらセーレに近づいた。

「ご飯ができたんだって。行こう。貴方達もどう?沢山あるから一緒に食べない?」

俺誘われてる?
これって行った方がいいのか?

『拓也、どうしましょう?』
「馬鹿!ストラスしゃべんなよ!」
「今……そのフクロウしゃべ……」

驚く沙織にセーレが解説を入れた。

「沙織、彼は俺と一緒だ。あのフクロウは悪魔で彼は契約してるんだ」
「契約者なの?あなたも……」

沙織は俺をまじまじと見つめた。
どうやら沙織はある程度のことは知っているようだった。
ストラスは沙織に話しかけた。

『どうやら話がわかりそうですね。沙織、貴方に頼みがあります』
「なに?」
『セーレとの契約を破棄してください』

沙織は目を丸くした。

『今、私やセーレを含むすべての悪魔がこの世界に召喚されています。セーレは安心でしょうが、人間を殺すことを目的とした悪魔も多い。それを防ぐためにはセーレの力が必要なのです』

ストラスの言ってることは嘘じゃない。
しかし沙織はストラスを睨みつけた。

「嫌!セーレはあたし達の家族なんだから!」

沙織はセーレの手を引っ張って中に入ろうと促した。
セーレは困ったように俺たちに頭を下げ、沙織に引っ張られ建物の中に入って行った。

「なんだあの女」
『女性は男性よりも感情の起伏が激しく雰囲気に飲まれやすいですからね。一緒に暮らすうちに家族としての愛情が芽生えたんでしょう。しかし困った。このままじゃセーレは契約をしてはくれませんね』
「なぁ2人と契約することはできないのか?俺は現に2人と契約してるぞ」
『主は可能ですが我ら悪魔は不可能です。なんせ契約石を1つしか持っていませんからね』
「あ、そっか」
『とりあえず今日のところは引き上げますか。帰って作戦でも練りましょう』
「そうだな」

俺とストラスはその場から離れ、帰路についた。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「拓也、お帰り」

澪!!!どっきーん!
帰ってきて玄関を開けたら澪が出迎えてくれた。
え!?なに!?この出だしどっきり!ていうか澪、相変わらず可愛いなぁ。

「ただいま(てれ……)」
「ストラスもお帰りなさい。早く2階に上がんないと見つかっちゃうよ」
『ただいま帰りました。ふむ、そうですね。では私は拓也の部屋に向かいましょう』

ストラスは翼を広げ階段を飛んでいった。

「2人で出かけてなにかあったの?」

澪は少し戸惑いながらも心配そうに尋ねてきた。
俺は嘘は付かずにそうだと言った。

「悪魔見つけたんだけどさぁ。これが思った以上にいい奴でさ、契約者が契約破棄したがらねぇんだよ。いくら危害を加えない悪魔だからってあんま契約するのはお勧めできないんだけど」
「そうなの。その人、その悪魔が好きなのかな?」

好き?言われてみればどうなんだろう……

「う――ん……悪魔も見た目はかなりの好青年だしなぁ。ありうるかも」
「でも今回は一昨日みたいに危なくはないんでしょ?」
「え?うん多分。ストラスもいい奴っつってたし」
「なら安心」

澪は安心したようで軽く笑った。
俺はつられて嬉しくなり、2人で玄関でえへえへ笑っていた。

「拓也、御飯たべよ。手洗ってね」
「おう」

俺は昨日遊んでくれなかったことをブツブツ文句を言う直哉と遊んでやった。
直哉は最近買ってもらったWiiがお気に入りで、それのマリオカートをやろうと言いだした。
最近のゲームはすごいなぁ……なんか振るだけで動くんだけど!
俺は途中でゲームに夢中になり、直哉と2人でギャーギャー騒いでいた。
直哉は澪も呼んできて3人でマリオカートをした。(澪が笑えるくらい下手なんだコレが)
なんかこんなに安心したのって久しぶりだなー。ストラスが現れてまだ1週間とちょっとしか経ってないのに、もう1か月くらいたった気がする。いろんなことが起こりすぎて頭がおかしくなったような感覚もあった。
こんな普通のことに幸せ感じるなんて俺ちょっと末期かも……

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
次の日、ストラスがまたセーレに会いに行くと言うもんだから仕方なく俺も付いていくことにした。(フクロウ1匹であんま外をウロウロされたくないから)

「ちょっと出かけてくるー」

俺は相変わらず窓からストラスを出し、俺自身は玄関から出た。
プルルルル。プルルルル。

「あれ?光太郎からだ」

俺はディスプレイに映った光太郎の文字を見てケータイに出た。

『拓也ー?今さぁヴォラクのとこにいんだけどさ。お前も来いよ。遊ぼうぜ』
『拓也―――!遊びにおいで―――!!』

……そうか、光太郎けっこうあのマンションにゲーム機やらなんやら置いてるもんな。
行きたいのは山々だがストラスがうるさいので俺は断った。

「悪い。今からストラスと行かなきゃいけねーとこがあるんだ。新しい悪魔が見つかってさ、会いに行くんだ」
『えぇ!?そんな軽いノリでか!?』
『拓也そんなキャラだっけ?』

なんかヴォラク失礼なこと言わなかったか?

「やっぱりあの募金の時の男、悪魔だったんだ。でもいい奴でさ、全然危害も加えないし、一回会ってみることにしたんだ。場所もわかるしさ」
『えー?昨日のあの男か?俺も行く!ちょうど暇だしさ』
「えぇ?来んのかよ?」
『危ない奴じゃないなら足手まといにはならないだろ?場所教えろよ』
「太陽の家だよ。隣町の孤児院」
『りょうかーい。ヴォラクも連れてく』

ブチッ

「切りやがった……」
『拓也、早く向かいましょう。いつまで待たせる気なのですか?』
「へいへい」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
孤児院は昨日の子どもたちが嘘のようにいなかった。

「一体どうなってんだ?まさかセーレが?」
「おや、お客さんかね?」

声がするほうを振り返ると、そこには杖を突いたおばあさんがにこやかに笑っていた。

「あ!こんにちは!俺たちセーレに会いに来たんですけど」
「おや、セーレに?残念だけどあの子は子どもたちを連れて公園に行ったよ。もう1時間くらいしたら帰ってくると思うんだけど、お茶でも飲んでいきなさい」
「え、いいんですか?」
「構わないよ。可愛いフクロウさんもどうぞ」
『ほぉ』
「おやおや、返事をしてくれて……人間の言葉が分かるのかい?賢いねぇ」

おばあさんはにこにこと笑いながら家の中に入っていった。

「ストラス。お前ちゃんと空気読んだな。えらいぞ」
『こういうのを人間界では媚を売ると言うのですね』
「……可愛くねー」

とりあえず、俺とストラスは光太郎たちを待ちながらもセーレが来るまで待つことにした。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「あんた!……また来たの!?」

家の中に入った途端、非難めいた甲高い声が聞こえた。

「えーっと沙織さん……だっけ?」
「気安く呼ばないで!なんでまた来たのよ!」

沙織は俺に詰め寄ってくる。正直言って少しむかつくんだけど。

「こら沙織。この人たちはセーレのお客さんだよ。失礼なことを言うもんじゃないよ」
「だってお母さん!こいつらは!」

しかし沙織はその次の言葉を言わなかった。ただ悔しそうに唇をかみ締めた。

「ちょっと話があるの。こっちに来て」
「えっ!?」

沙織は有無を言わさず俺の手を引っ張っていく。

「これ沙織」
「すぐ終わるから。心配しないで」

ホントにすぐに終わんのかよ……明らかに俺に詰め寄る目してんじゃねーかよ。
沙織は自分の部屋だろう。そこに俺を連れて入った。
そして俺をにらむように向き直った。

「なんでまた来たのよ!何度言われてもあたしはセーレとの契約を破棄なんてしない!」
『その様な強情が通ると思っているのですか?こちらは一刻を争うのです。貴方の個人的な意見に付き合ってる暇などないのですよ』

言うなぁストラス……あんま強く言うなよ。泣かれたら困るんだから。

「あんたたちの事情なんか知らない!あたしはセーレとずっと一緒にいる!」
『愚かな……所詮は欲に飢えた人間ですか』
「なにが言いたいの!?」
『ただ貴方はセーレの力が欲しいだけなのでしょう?家族ごっこまでして……とんだ茶番ですね』

ストラス、それは言い過ぎだって。明らかに沙織、目が泣いてんじゃん。

「違う!そんなんじゃない!あたしはセーレのこと!」

そう言いかけた時、沙織は言葉を呑んだ。
まさか澪の言ってた通り、セーレの事好きなのか?

「もう二度とセーレの前には現れないで」
『そういう訳にはいきません』
「現れないでって言ってるでしょ!」

沙織はストラスに文句を言っているはずなのに、なぜか俺に掴みかかってきた。
じょ、女子に掴みかかられた……(がーん)
俺はショックのあまり軽く放心していたがストラスと沙織の言い争いはとまらない。
それどころか、どんどんヒートアップしていく。
頼むからもう終わってくれ!俺ステレオで大声が響いてくるよ。

『貴方も薄々気付いているのではないのですか?セーレといるのは危険だと……』

沙織は急に俺をつかんでいた手の力を緩めた。
なんか思い当たる節があんのか?

『上尾の1年が次々に殺害された事件……貴方も知っているでしょう?あれは我々……つまりセーレと同じ悪魔が起こした事件です』
「上尾の……」

沙織は真っ青になって手を離した。

『貴方も仮にも悪魔と契約している者。この状況が普通でないことくらいは分かっていたはずだ。違いますか?』
「セーレの様子が変だったの……あのニュースを見た時、顔が強張った。なんでかわかんなくて……そこまで深く考えもしなかった……」
『セーレといると契約者の貴方も狙われる可能性が出てくるのです』
「あたしも……?」
「どういうことだ?ストラス?」
『セーレはその性格ゆえ、悪魔の王ルシファーからも信頼されている悪魔の1人です。もしルシファー様に忠誠を誓う悪魔がセーレと出会ったら、悪魔たちはセーレを地獄に連れ戻そうと契約者を殺してしまうかもしれません。セーレは戦闘には不向きな悪魔。沙織、貴方を守ることはできません』
「悪魔が……あたしを……」

沙織は膝をガクッとついた。
そして顔を手で覆い、涙を流しはじめた。

「嫌……セーレと離れたくない。好きなの……セーレのことが好きなの……」
「沙織さん……」

沙織の気持ちが痛いほど伝わってきた。
確かにセーレがいい奴だってことは少ししか会ってない俺にもわかることだった。
目の前で泣きじゃくる沙織を俺はどうしていいかわからずただ見つめるしかなかった。

「えー?この女がセーレの契約者?よっわそー」

え?
声のするほうに顔を上げるとヴォラクと光太郎がドアの前に立っていた。

「ヴォラク!?光太郎!なんで!?」

確かにここに来いって言ったけど、どうやって部屋まで来たんだ!?
光太郎はかなり気まずそう。

「あのおばあさんが拓也の知り合いって言ったら多分ここだろうって……そしたら話が聞こえちゃってさ、なんか出るにも出られなくてこの状態」

なるほど。
光太郎は笑って誤魔化そうとしているがヴォラクは険しそうな目で沙織を見ている。

「あんたさぁーセーレのお荷物だよね」

ヴォラクは沙織の前にしゃがんでハッキリとそう言ってのけた。
俺は慌ててヴォラクにげん骨を一発食らわした。

「ヴォラク!」
「いって!何すんだよ!?だってそうじゃん!セーレの優しさに付け入ってセーレを縛ってるだけじゃん!セーレだってこんな奴より絶対拓也のとこに行きたいはずなのに!」

沙織は驚きのあまり、目を丸くした。
そしてフラフラと立ち上がった。

「えっと……沙織さん?」
「平気。別に1人で歩けるし……」

俺の手を沙織はピシャンとはねのけた。
そのままフラフラと自分の部屋を出て行ってしまった。

「ヴォラクのせーだぞ」
「えぇ?俺のせい?なんでー」

ヴォラクは不満なのかブーブー文句を言っていた。
しかしこの状況でセーレと契約を解消してくれるのか。
俺はくしゃりと頭を掻いた。

「なんかますます面倒なことになっちゃったなぁ……」

登場人物

セーレ…ソロモン72柱70番目の悪魔。
     26の悪霊軍団を統括する王子。
     翼の生えた馬にまたがった、長い黒髪の美青年の姿で現れる。
     一瞬で物を運ぶ、人を連れていくという能力を持っている。
     温和で契約者に忠実ということでも有名。
     契約石はサファイアのピアス

沙織…孤児院で暮らしているセーレの契約者。セーレに家族同然の愛情を持っている。気が強い。

由愛…孤児院で暮らしている女の子。セーレになついている。


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