第1話 ソロモンの指輪
いままでずっと普通の生活をしていた。
そしてこれからもしていくんだと思ってた。
このまま大学に進学して、就職して働いて結婚して老後をのんびり暮らして……って計画立てすぎか。
とにかく、こんなことになるなんて思っても無かった。
1 ソロモンの指輪
「終った〜!終った終った終ったー!!」
俺は期末テストが終ったことに両手を上げて背伸びをした。
これから夏休み!これでようやく遊べる。いや、まず寝る。とにかく寝る。テスト前で寝てなかったもんな。
俺は意気揚々と家に帰るために鞄に荷物をつめた。
周りの奴らはテストが終ったもんだから遊びに行こうだのカラオケに行こうだの話してる。
ほんとは混ざりたいところだけど、今の俺には睡眠のほうが大事!
というわけでサヨナラ教室!
「拓也!」
「……なんだよ光太郎」
というわけにはいかなかった。
目の前には俺の友だちの光太郎が立っていた。
「今日レベッカによってかねえか?今日からオール30%OFFだってよ」
レベッカというのは個人で経営しているシルバーアクセの店。
なかなかイカした形の物も安くそろっており、俺たち地元の高校生(主に男子)の聖地だ。
「え〜俺眠いよ。明日でいいじゃん」
「駄目だって。明日にはいいの売り切れちゃうかもしんねーだろ?」
確かに言われて見ればそうだ。
レベッカは大きいアクセの店じゃないから一張羅の物が多い。
そろそろ新しいのも欲しくなってきたし……仕方ない。まぁレベッカ寄ったくらいで大した時間にはならんだろ。
そう思った俺は光太郎と一緒にレベッカによっていくことにした。
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「澪」
学校の昇降口を降りている時、俺は幼馴染の澪を見つけ声をかけた。
「なぁに拓也。テストお疲れ様」
「おうお疲れ。今日母さんが飯食ってけって」
「ほんと?うれしいなぁ!じゃあお呼ばれにいくね」
澪の父さんは都議会議員、色々忙しくてあまり家に帰っていないらしい。母さんは女医をやっており、夜勤のこともあり、澪は1人で家にいることが多い。
俺ん家は親同士の仲がいいので、澪が1人の時などは基本的に家で飯を食っていく。
最近は物騒だから女の子1人は危ないからだそうだ(笑)
俺はそのまま光太郎と靴箱まで降り、靴を履き替え学校を後にした。
「まだあんま人いねえな」
「まぁ他の学校は普通に授業だし、2、3年は明日までテストだからな」
レベッカは思った以上に人が混んでおらず、これならゆっくり見れるだろうと俺と光太郎は意気揚々と店内に入った。
光太郎の言ったとおり店内のアクセサリーは全て30%OFFになっていた。
俺と光太郎はいくつかの候補を立て、店内の品物を見ていった。
そんな中、俺の目に留まったのは処分するからということで1つ50円とかかれた指輪を入れた箱だった。
こういうのの中に意外と掘り出し物があるかもな。俺はその箱の中の指輪をくまなく見ていった。
「なんだこれ」
しばらくその箱を見ていて、俺の目に飛び込んできたのは1つの指輪だった。
これ本物か?なんかすっげえ凝ってんな。
その指輪は禍々しく象られた模様とそれを覆い尽くすほどの真珠をちりばめた指輪だった。
ほんとに50円?メチャクチャ高そうだなぁ。
確認のためにもう一度値段を見てみた。やっぱり50円か。この真珠……本物っぽいけど偽物なんだよな?
まぁ普通、本物の真珠なんかこんな店に置いてるはずないか。(失礼)
俺はなんとなくその指輪が気に入り(安かったのが一番大きい)、その指輪とあと適当なのを1つ選んで買った。
光太郎も3つ買っていた。
俺はレジに指輪を出したときに店のレジ兼店長に聞いてみた。
「この指輪ほんとに50円?」
「あぁそうだよ。高そうに見えるだろ?なんたってその指輪には不思議な力が宿ってるんだよ」
「不思議な力?」
「あぁ。俺も仕入れた時に聞いたんだが、古の国の王が72匹の悪魔を使役する際に用いたものだなんだとか。まぁ実際は御伽話をモチーフにして作られた物だろう。でも装飾が気に入ってねぇ。思わず仕入れちゃったんだよ」
確かに装飾はかなり凝っている。
これを50円だなんて割にあわないだろう。
「ほんとに50円で採算とれんの?」
「その指輪、よく見てごらん」
店長のおじさんはおかしそうに笑った。
俺は言われたとおりに指輪をまじまじと見つめた。
「あ」
「気づいただろ?所々に傷が入ってんだよ。これじゃ売り物にならないからねぇ。だから50円ってわけ」
なんだか知らないほうがよかったな。不良品を買ってしまった気分だ。
でもまぁ50円だからな。そう思うとそこまで悔しくもなく、俺と光太郎は満足して店を出た。
その後、俺は寝ようしていたことをすっかり忘れ、光太郎とカラオケやゲーセンで遊びまくった。
気づいたら夜の7時になっていて俺は慌てて家に帰った。
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「ただいまー」
「お帰り拓也。お邪魔してまーす」
家には既に澪が来ており俺を出迎えた。
「随分遊んでたんだね、早く着替えてきなよ」
「おう」
澪に言われるがまま俺はそのまま服を着替えるために自分の部屋に向かった。
制服をそのままベッドにほおり、スウェットに着替え下に下りた。
夕飯はもうできており家族が俺を待っている状態だった。
俺は軽く母さんに怒鳴られながらそのまま飯を食った。
飯も食い終わり、澪は母さんの食器洗いの手伝いをしている。
なんかいいテレビもなくて(弟は黄●伝説の濱●を見て「取ったどー」とか言っていた。)、俺はさして興味もなくそのまま自分の部屋に上がった。
ベッドにそのまま横になろうと思っていたがベッドには先ほど脱ぎ散らかした制服がかかっており俺はベッドに横になれなかった。
「かたしとくんだった……」
俺は1人でブツブツ(1人言)言いながら制服をハンガーにかけた。
そういえば指輪、まだポッケに入れたまんまだったな。ちょっとつけてみるか。
俺は制服のポッケからレベッカの小さなビニール袋をだし、指輪を取り出した。
まずは少し高かったやつを指にはめた。
おぉ、人差し指にぴったりだ。そして50円の見た目はすごい指輪を中指にはめてみた。
指輪は中指にぴったりとフィットし、ぱっと見かなりかっこよかった。
「おぉ〜この指輪50円のクセにいかしてんじゃん」
ベッドに横になりながら指輪を眺めていたら俺はいつしか眠くなってそのまま寝てしまった。
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「拓也。拓也ーおきてー」
「んん?」
目の前には澪が呆れた目でこっちを見ていた。
「拓也、お皿も片付けないでベッドで横になってー。もー」
「悪い悪い」
澪は俺の指についている指輪を見つけた。
「また指輪買ったの?拓也ほんとに好きだよね」
澪は50円で買った指輪をまじまじと見つめた。
「綺麗だね、これ」
「なんならつけてみたら?気に入ったならやるぜ?(50円だし…)」
俺は澪につけさせようと指輪をはずそうとした。が、
「へ?抜けない」
「拓也どんだけ無理して入れたのー?」
いくら引っ張っても指輪はまったく外れない。あんだけスッポリ入ったのに!?
澪が笑いながらこっちを見ている。そんな楽観的な状況じゃないんですけど。
俺は冷や汗が伝うのを感じた。
「ほんとに取れない……」
今度は伝わったのか澪も顔を真っ青にした。
「た、拓也!とりあえずハンドソープつけてみなよ!滑ったら外れるかも!」
澪に言われるがままハンドソープをつけてみた。
しかしまったく取れない。石鹸ならどうだ!?変わらない。
その後も色々試してみた。タオルで指輪を引っ張ったりとか(指が痛いだけだった)指輪を回しながら引っ張ったりとか(これも指が痛かった)
え、なにこれ本当に抜けないの?俺一生このまま?
俺は自分の部屋で呆然となった。
澪も真っ青になって俺を見つめていた。
こんなことなら買わなきゃよかった。たかが50円でこんな、こんな……
ちくしょおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!
俺はどこに怒りをぶつけていいかもわからずとりあえずクッションをボコボコ殴った。
『指輪、指輪』
え、なんだ?今声がした?
「澪、なんか言った?」
「え?あたしは何も……」
澪はきょとんとして首を横にふった。気のせい、だよな?
『指輪、指輪』
気のせいじゃない!!?
俺は今度こそ本当に真っ青になった。
指輪って言ったよ!言ったよねぇ!!言った!この指輪のことですか!?てゆーか何!?心霊現象!?
どうやら澪にも聞こえていたらしい、顔を真っ青にしていた。
「拓也……なにこれ?」
『継承者、ソロモンの……力……示せ!』
急に指輪がひかり、俺と澪は思わず目をつぶった。
『なんと。魔法陣もなく召喚されてしまうとは』
へ?なにこの声。
恐る恐る目を開けると、そこには王冠をつけた1羽のフクロウがいた。
「は?」
『どうやら貴方が指輪の継承者のようですな?これはお初にお目にかかります。わたくしソロモン72柱が1角「ストラス」でございます。以後お見知りおきを』
なんだって?ってゆうかフクロウがしゃべった。これは夢だ、うん。さぁ寝よう寝よう。
『人の話は最後まで聞きなさい。貴方が私を召喚したんですよ』
グサッ!
「いってええええぇええぇぇぇ―――!」
つついた!くちばしで突いた!っていうか夢じゃない!え、夢じゃ、ない?
澪は完全に放心してしまっている。
『全く……自己紹介を遮るなどしてはならぬ行為ですよ。いいですか?私は……「ぎゃあああああああああぁぁぁぁぁ――――!」
全く理解できない。
だって目の前でこんなことが起きてるんだぜ?
できれば今までの普通の生活が送りたかったよ。
そして今から始まる。
世界を巻き込んだ戦いが。
登場人物
池上拓也…主人公。どこにでもいる普通の高校生。
松本澪…拓也の幼馴染。両親が共働きで家にいないので、拓也の家でよく夕飯を食べている。
広瀬光太郎…拓也の親友。父親は会社経営、母親は弁護士だったが今は専業主婦。
兄は東大医学部とエリート一家。本人も頭がいい。