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魔法少女ラスカル・ミーナ  作者: 南文堂
第3話 新生! ねこみみむしゅめ
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EDパート 新しい同居人

「そんなに緊張しないでよ。お母さん、結構話のわかる人だから。お母さんさえ納得できたら、お父さんの説得も手伝ってくれるって」

 美奈子は芽衣美に励まされてチャイムを押した。軽やかな電子音が鳴り、美奈子の心臓は鼓動が連続音になるのではないかと思うほど早く脈打っていた。

「はあい、どちらさまで?」

 ちょっと間延びしたような声が響いた。

「え、あ、その、わたし、白瀬美奈子といいます。今日はお嬢さんを、その、あの……」

「あ、わざわざ、送っていただいたんですか?ありがとうございます」

 そう言って、玄関の扉が開かれた。優しそうな声の感じにぴったりのおっとりした感じのする女性が姿をあらわした。

「は、はじめまして、わ、わたし、白瀬美奈子です」

「はじめまして、芽衣美の母の神埼沙織です。今日は娘がお宅に押しかけまして、申し訳ありませんでした。さぞ、ご迷惑だったでしょう?」

「いえ、そんなことはありません。とっても礼儀正しくて、明るくていい子でした」

「あらあら、ネコの格好させたら、本当にネコを被っていたのね、あの子」

「お母さん、ただいま。でも、それひどいよ」

 美奈子の後ろからひょっこりと芽衣美が顔を出した。

「お帰りなさい。でも、本当のことよ。いつもはお転婆さんなのに。……あら、カチューシャと尻尾飾り、変えたの? 質感が本物ぽくなってるわよ」

「わ、わかるんですか?」

「こう見えてもその筋では名の知れたものですから」

 沙織がコロコロと笑った。

「なんたって、コスプレ歴今年でさ……※☆▲〒○」

「芽衣美ちゃん。口裂け女になりたい?」

 目以外は笑顔で沙織は芽衣美の口に入れた指を左右にゆっくり広げた。

「|ふぉふぇんふぁふぁぁい《ごめんなさーい》」

「よろしい」

 沙織は芽衣美の口から指を引き抜いた。美奈子はどこかで見たような光景だとデジャビューに襲われていた。

「さあ、玄関先でなんですし、お上がりくださいな」

 美奈子は居間に通されて、ソファーにかちこちに緊張して座っていた。まるで結婚の許しを貰いにきた彼氏のように。

「それで、何かお話があるのでしょう?」

 お茶をテーブルに置いて沙織は美奈子と向き合う形で腰をおろした。

「は、はい! お、お嬢さんを……芽衣美ちゃんを僕にください!」

 美奈子の台詞に芽衣美はテーブルに突っ伏した。

「み、美奈子お姉ちゃーん。それじゃあ、お嫁さんを貰いにきた人みたいだよ」

「あ、あれ? えーと……その……」

「ああ! もう! あたしが説明する! お母さん、これ読んで!」

 しどろもどろの美奈子を脇に押しのけて芽衣美は『小説家になろう』からプリントアウトしたラスカル☆ミーナの第1話から3話を沙織に渡した。

「……最近は便利なものがあるんですね。大体の事情はわかりました。それでどうするつもりです?」

 沙織は読み終わって、少し困った顔で美奈子に訊いた。

「母と相談したのですが、もし許していただけるのなら、わたしの家に下宿させたいのですけど……」

「たしかに、事情を考えるとそれが一番よいですわね。それで、芽衣美はどうしたいの?」

「あたしは、お母さんとお父さんがいいって言うなら、美奈子お姉ちゃんとこに行こうと思うの」

「そうでしょうね。転校するのを嫌がっていたものね」

「お、お母さん!」

「いいの、いいの。美奈子さんのところがよろしくて、芽衣美がいいって言うのならそれでいいわよ」

「そ、そんなあっさりと」

「もっと、抵抗して欲しい?」

「いえ、いいです」

「そうでしょう? それに、読ませていただいた第3話にも、そう書いてありましたもの……だけど!」

 沙織は最後の一言だけ語気を強くしたので、美奈子と芽衣美は緊張した。

「夏のイベントには二人とも参加すること。これが私の条件です」

 沙織は二人の緊張を解くようににっこり微笑んでそう言った。

「ほっ。それだけで……って、わたしもですか?!」

「一目見たときから、いけると思ったの。美奈子ちゃんって創作意欲をそそるわ」

「お母さんも? あたしも! 美奈子お姉ちゃん、絶対、イケてるよね」

「ふふふ、燃えるわ! 会場を萌え萌えにするわよ!」

「おお!」

 拳を振り上げて気合を入れる親娘に圧倒されて美奈子は乾いた笑いを浮かべるしかなかった。

「それで、お父さんにはなんて言うの?」

 盛り上がったところで、忘れていた最後の関門を芽衣美が口にした。

「芽衣美が残りたいと言うから残しますって言うだけよ。本当の事なんか言ったら、あの人、会社行かなくなるわよ。ネコ耳好きだから」

 美奈子は芽衣美の父親が『猫耳娘評議会』に入っていない事を願うだけであった。


 リリーはパステルカラーの百花繚乱春爛漫のお花畑を歩いていた。

「ここ、どこだろう?」

 遠くは霞がかっており、何処までこの花畑が続いているかはわからないし、今どっちを向いて歩いているかすらも怪しい。しかし、リリーに不安はなかった。

「……り、……ゆり」

 遠くの方で彼女を呼ぶ声を聞いた。聞き覚えのある懐かしい声である。

「おばあちゃん! それにヨシツネ!」

 呼ぶ声に近づくと、去年まで飼っていた犬を連れた、小さいときに自分の事を可愛がってくれた祖母の姿が浮かび上がった。

「なんで、ここに?」

 彼女はその人影に更に近づこうとすると首根っこを引っつかまれて後ろに引き戻された。

「?!」

「まったく! 世話の焼ける子ね! 幽霊魔法少女ファントム・リリーなんて作者の没ネタよ! あなたはまだ死んじゃ駄目なの!」

「ま、真琴お姉さま!」

 リリーは彼女の首根っこを掴んで引き戻した女性の名前を叫んで飛び起きた。

「ゆ、由利ちゃん!」

 蒲団を跳ね上げ飛び起きた彼女に白いぬいぐるみ犬のウッちゃんが涙目で抱きついてきた。

「いて、いててて……ウッちゃん、痛いって!」

 それをきっかけに全身から襲い来る打撲の痛みに由利は顔を歪めた。

「あ、ご、ごめん。でも、よかった! 死んじゃうのかと思ったよ。よかった……」

 ウッちゃんは鼻をすすりながら、ひたすら「よかった」を繰り返していた。

「真琴お姉さまは?」

「え? 真琴様は来てないけど……どうかしたの?」

「そうなんだ……うん、それならいいの。心配かけてごめんね」

 由利はちょっと複雑な表情をしてから優しく微笑んでウッちゃんの頭を撫でてあげた。

「ゆ、由利ちゃん! まだ熱があるの? 打ち所が悪かった? 雑菌が脳に入ったの? た、大変だ! 何とかしなきゃ!」

「ウッちゃん! あたしを何だと思ってるの!」

 慌てふためくウッちゃんに由利は怒号を浴びせて夜は静かに更けていった。


今度は本当につづく



次回予告!

にっこり微笑み追加をせがむ。たまにはドジをするけれど。それも愛嬌。女は度胸。

可愛いフリルでお客を魅了。日常に溶け込む非日常のコスチューム。

次回! 第4話 だれでも ウェートレス!(仮)

「今からお作りいたしますので、だいぶんとお時間がかかりますが、よろしいでしょうか?」

気長に待っていてくださいね。


 いかがでしたでしょうか?

 当時、魔法少女といえば、マスコット妖精がいるという要請があって登場させたました。

 それでは、また来週の金曜日24時に。

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