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真夜中に見た真っ白な髪の男の話。

作者:青葉台旭
 その日、私は飲み会に参加するため、車に乗って自宅から三十分ほどの町にある居酒屋へ行った。
 公園近くにある駐車場に車を停めた。
 あまり大きな声では言えないが、その夜は、駐車場に車を停めたまま車中泊をするつもりだった。
 午後六時に始まった飲み会は、九時過ぎに解散になった。
 私は、駐車場の自分の車に戻り、シートを倒して眠った。
 真夜中過ぎに目が覚めた。
 時計を見ると午前二時過ぎだった。およそ五時間寝たことになる。
 窮屈な車のシートの上で寝たせいか体の節々が(こわ)ばっていたが、酒の酔いは醒めているように思えた。
 エンジンをかけ、公園の駐車場をあとにした。
 小さな町の住宅地は(すぐ)に終わり、広い田園地帯の真ん中を通る農道を、自宅に向かって車を走らせた。
 空は曇っているのか、月も星も見えず、広大な田んぼには街灯も無く、自分の車のヘッドライトが照らす範囲の外は真っ暗闇だった。
 その真っ暗な田んぼの真っ暗な道を走って、自宅まであと半分ほどの距離に来た時の事だ。
 そこは農道と農道が直角に交差する場所で、朝夕は意外に交通量がある。そのせいだろうか、一つだけポツンと街灯が設置されていた。
 真夜中の今は、私以外に走る車も歩行者もいない。
 いや、良く見ると、田んぼの真ん中にポツンと一本だけ立ってオレンジ色の光で足元を照らす街灯の真下に、男が一人ポツンと立っていた。
 真っ白な髪のひょろりと痩せた、深緑色のロングコートを着た老人だった。
 私は、その真っ暗な田んぼの真ん中に一本だけ立っている街灯に照らされた交差点を左折するため、速度を落とした。
 近づいてみると、男は老人ではなく二十歳(はたち)前後の若者だった。
 若いのに、髪が真っ白なのだった。
 今どき髪を染める若者など珍しくも無いが、それにしても、彼の髪には全く色がなかった。純白と言っていい程だった。
 不自然なまでに白い髪も不思議と言えば不思議だったが、こんな真夜中に、広い田んぼの真ん中で一体何をしているのだろうと思った。
 彼は、何もせず、ただ街灯の真下に立ってオレンジ色の光を浴びているだけだった。
 徐行速度で交差点を曲がるとき、車の窓越しに白髪の若者と目が合った。
 私はゾッとした。
 一瞬だったが、若者の瞳が真っ赤に見えたからだ。
 次の瞬間、私の車は交差点を曲がり切り、再び真っ暗な田んぼ道にヘッドライトを向けて、ポツンと一本だけ立っている街灯に照らされた農道の交差点を後にした。
 私は、恐る恐るバックミラーを見た。
 純白の髪の若者は、どこにも居なかった。
 真っ暗な田んぼの真ん中で、一本だけの街灯が交差点をオレンジ色に照らしているだけだった。

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