十二月 作/佳奈 ふうー 少女は憂鬱そうにため息を付いた、…つもりでいた。 そのため息は白い吐息となり、ため息とは似てもにつかない物になったからだ。 くうん そう鳴き声を上げる真っ白い小さな彼女の犬に、彼女は目を向けはしない。 霜の降りた落ち葉。遠くの山の情景をぼやかす白っぽい霧。すれちがった白い軽トラック。 それらにも彼女は目を向けない。 かさかさ 揺れる山の音にも彼女は目を向けない。 「オハヨウゴザイマス。」 はっと顔を上げた少女の目の前には若い美しく長い髪をした中国人がいた。 ぎこちない言葉をこの張りつめた寒い空気に放ったままその女は立っていた。 笑顔を絶やすことなく。 近くの繊維工場で働いているのだろう、少女は咄嗟にそんなことを考えながら、 出来るだけ優しそうに、出来るだけ余裕を持って、 出来るだけその女に似るように、 「おはようございます。」 とそう言った。 随分立ってから、まるで小さくなった自分に、どうして媚びうる様な目をしたのか分からない自分に、 おかしくなって少女は笑った。 優しそうに笑った。