怪我をする恐れがありますのでご注意ください
【注意】すんごく短くて、胸糞が悪いです。
「お前は何が出来る?」
問われて答えは何も出ない。だってあたしはただの学生。だけど、現実は甘くないと識っている。
剣道が得意なので、と騎士団に入った彼女はコノ間の戦いで死んだらしい。
道場に通っていたのだと、あんなに自信満々だったのに。
「盾にもなりゃしねぇよ。具合は良かったけどな、ケケケ。」
彼女の死は無残な物だったと、顔はいいクソ野郎は教えてくれる。
男だらけの騎士団で女の使い道なんて決まってるだろ、と笑ってるコイツはあたしたちの監視役だ。
最期くらい戦わせてやろうとしたのに、さっさと斬られやがったと彼女が好みだとコッソリ教えてくれた顔で笑う。
なんで彼女の部隊は全滅したのに監視役のコイツは生き残っているのか。
コイツも死ねばよかったのにとコッソリ思う。
異世界人は、あたしともう一人だけになってしまった。
でも、生徒会副会長だった彼女は宰相のオモチャだ。やれやれとダルそうに文官に志願したのが、運の尽き。
執務室からはあんなに自信に満ち溢れていた彼女の悲鳴しか聞えない。
「アレは補佐官たちには評判がいい。身代わり羊として、だけどな。」
顔はいいけどドSな宰相は、人を痛めつけるのが大好きなのだ。ドSなんて甘い、あれはサド。拷問だ。
政治に詳しいといっても所詮高校生のにわか知識。よって、役立たずな彼女の役目は宰相に痛めつけられる事。
適材適所だろ、とクソ野郎は笑った。
そしてあたしは皿を洗いながら、たまに胸糞悪いコイツの話を聞くのが仕事。
何も出来ないと答えたあたしを哀れんで、コイツが恵んでくれた唯一の仕事。
「お前は他の女と違って、何もできないからなぁ。カワイソウに。」
そういってクソ野郎はあたしの頬についた石鹸の泡を拭った。気持ち悪くて鳥肌が立つ。
「でもお前は他の女と違って、賢い。そこが、カワイイ。」
賢くなんか、ない。そう思うけど、反論はしない。
コイツには極力喋らない方が無事でいられると学んだからだ。野獣相手に未だ清い身であるのもそのお陰。
そういう意味では賢いのかもしれない。
「異世界人なんて不気味だけど、最近お前がカワイく見えて仕方が無い。」
だから殺さないであげよう、クソ野郎は笑った。
※ ※ ※
高校生の異世界トリップ。
チートがなければ、ただの異邦人。人権なんて、ない。
城に現れたあたしたちを見る目は宇宙人を見た地球人みたいなモンだ。
悪意に満ちた好奇心で、顔はいい王様が問いかける。
「それで、お前は何が出来る?」
できれば帰りたい、それまで保護して欲しい。
要求に応じて欲しいなら対価が必要。
彼女たちにおばかと言われたあたしにでもわかる事。
王様の問いはそういうこと。
なのに彼女達は間違った。
「男装して騎士団で無双してやる!」
「文官になって国を動かしてやる!」
すでに大の大人達が第一線で活躍していると言うのに、高校生のあたし達に何が出来るというのか。
世界が異なれば、仕組みも異なる。役に立つ筈が無い。
初日に操と刃を折られ。
初日にプライドと知識を嘲笑れ。
彼女達は対価を支払いきれなくなった。
※ ※ ※
「お前の要求は何だったかな?」
「何も。」
「何も?」
「何も出来ないので、何も要求できません。」
ハハハハハハ!王様は笑った。
彼女達に凄んだ笑顔じゃなく、笑った。
「王妃になりたいとか。夢見がちな事を言わないんだな、お前は。」
前に誰かに言われたのだろうか、王様はやたら具体的な事を言う。あたしは首を横に振った。
「そうか。何も出来ないか。ならお前は何か出来るようにならんとな。」
何か出来るようになったら、国にいてもいい。
そう言って、王様はあたしをアイツに預けた。
執務室が静かになってしまったら、この異世界であたしは一人。
未だ皿洗いしかできないあたしはこの国にいられるのだろうか。
震えるあたしを抱きしめて、アイツは笑った。
「王様が、異世界人のハーフが見たいんだって。」
お前は対価に何を求める?
稀に衝動的に【優しくない世界に行ったら】という話しを思いついてしまうダークな脳に困っています。チートで無双で逆ハーとかコメディチックに書いてみたいものです。
異世界人メモ
王様は顔がよくて国民にはいい王様。でも異世界人は国民じゃないし、むしろ不法滞在者だから好きに扱ってもいいよね的な感じ。ちなみに独身。
宰相は顔はいいけどマジ残虐なので、死にたがりな人も死にたくないと叫んじゃうと評判。にわか知識を論破する位には仕事は出来ますが拷問中毒なので、生贄がいないと仕事になりません。
監視役の彼は顔はいいけど鬼畜なので、副会長が宰相にぶちあたるように手配したり、部隊を危険な地域に手配してました。全滅するような所でも一人生き残る位には強いので、部隊の人達については女与えていい思いしたんだから、生き残れない奴らが悪いとしか思ってません。
彼は皿洗いの彼女がカワイくてしょうがないので、異世界人を処理した褒美として王様にねだりました。
彼女は彼と子供と末永く暮らしたことでしょう。
めでたし、めでたし・・・?