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短編コメディ『考え過ぎ』

考え過ぎ・コンビニ篇

作者:笛吹葉月
 突然だが、俺は他人に気を遣える人間だ。

 ……ウェイトウェイト、そんな眼差しで見るな。刺さってる。白い眼差しが刺さってるから。
 つまりだ、俺はコンビニの支払いにおいて一万円札を決して出さないということなのだ!
 よく考えてみろ。数百円の買い物を一万円札でした時の、あの店員さんの手間を。まして俺の行き付けのこのコンビニは“ペラペラ手数え方式”のレジだし(他のスーパーには、自動でお釣りを吐き出すレジもあるのに)、万が一にも数え間違われたらどうする。『チッ、こいつ細かいの持ってねぇのかよ。使えねぇ』とか思われたらどうする?! いたたまれません!

 ――と、いうわけで。千円札装備でやってきました近所のコンビニ。小銭入れの中身はチェックしていないが大丈夫だ、問題ない。何故なら俺は買い物の仕方もエレガントだから!
 ターゲットは今日の昼飯、ついでに間食の何か。
 入場してすぐにカゴを手にする。これ必須。万引き疑われたら怖いしね!
「いらっしゃいませー」
 やぁ歓迎ありがとう。
 店内には……俺を入れて客が五人、レジに店員が二人。昼のちょっと手前、混む直前の時間帯にしては上々です。

 まず向かうは飲料の棚。炭酸を125円で購入。スーパーより少々お高いが、便利だからしょうがない。妥協。
 その埋め合わせはパンで。隣の138円のコロッケパンには目もくれず、105円のメロンパンをカゴに。悪いね男爵芋さん、君の分の30円はサイダーに消えたんだ。
 しかも一の位が8というのがいけない。支払いにしろお釣りにしろ、一円玉がじゃらじゃらというのは俺の美意識に反する。
 別に一円玉が悪いわけじゃない、ただ細かい小銭――例えば十円玉が足りなかった場合、お釣りは2円だけでは済まないだろう。店員さんに商品を差し出され待たせつつ、小銭を財布に入れる……その時にうっかりバラまいてしまったらどうする! 『早くしろよ。鈍臭ぇ』とか思われたらどうする?! いたたまれません!
 よって俺は一の位が0になるような買い物をするように心掛けている。8ならば(スーパーでの値段は大概は一の位が統一されているのだが)、五つの商品を買うとかね。
 このコンビニに、値段の一の位が2である商品はない。8の商品も多くない。調整がしにくいのだ。
 ここの値段に詳しいのは何故かって? そりゃ年の五分の四は通ってるからだ。残りの五分の一は風邪で寝込んでたり、単に昼過ぎまで寝てて面倒になったり、実家からの援助があったり、……。俺の職業? ……察して!!

 さてさて最後はおにぎりでも――む?! あ、あれは……ツナマヨっ!
 さすがは人気商品、ツナマヨのおにぎりは最後の一個。だって税込み100円だもの。わお、超安い!
 しかしここでがっつくのは美しくない。おにぎりの棚までの距離をゆるりと縮め、隣にある海苔巻きと迷う振りをしながら、確実にベストポジションをキープ。おにぎりの真ん前に陣取らずとも、わざわざ(しかも野郎の)パーソナルスペースに入り込む輩はいまい。だって日本人だもの!
 値段も味も美味しいラストツナマヨ、他の客に渡しはせん……っ。
 『あれ、ツナマヨだ』的なさりげなさを醸し出しつつ、『最後の一個? いま気付いたよ』風味を漂わせ、『ま、いっか。いや別に昆布や梅も好きだけどね? たまたま目に入っただけからね?』っぽいオーラを発し、あくまでもゆっくりと黒い三角形をカゴに……イン! ミッションコンプリート!!

 上機嫌は表に出さず、されど俺の心は達成感に満ちている。さぁさぁさぁ、かかって来いお会計。すっきりまとめた330円、俺に死角は無い――!
《ピッ》
「315円になりまーす」
 なん……だと……?!
 ば、馬鹿な! そんなはずはない! いいいやしかし、早く、早く支払わねばー!!
 『隊長、一円玉と五円玉が不足しています!』『十円玉の奴らはどうした?!』『全員“豚さん貯金箱”内で待機中!』『ええい、ならば五百円玉はどこだ!』『先日の買い出しにて百円玉二枚へ退化! もう千円札で迎撃するしかありません!』……



「ありがとうございましたー」
 くっ……俺としたことが、全種類の小銭でお釣りを受け取る羽目になるとは……。あまりの動揺に“お金じゃらじゃらぶちまけ祭り”をレジ前で開催してしまったほどだ。拾うの手伝ってくれた店員さん、マジでありがとう。でも多分、レジ打ち台の下に百円玉が一枚転がっていったんだよね。言えなかったけど。
 レシートを見て、嘆息。内訳の欄に“−15”の表示。なるほど……今日はあのサイダーが値引きの日だったのか。
 次回の買い物で小銭には困らない、でも――。少し重くなった気がする財布をポケットに入れ、俺は明日のリベンジを誓うのだった。
見やすさ重視のため算用数字で失礼しました。

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