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99.人工生命体―Homunculus―
イザベラに人工生命体ホムンクルスの作成を依頼してから、二日後……完成したと言う報告を聞き、俺と亮でその受け取りに向った。

「いやー、家の掃除やら食事の調達やらで色々面倒な事任され続けましたからねぇ……これで解放されると思うと涙が出ますよ」
そう、依頼してからの二日間……俺達は、イザベラの奴隷と言っても良いくらいの扱いを受け……それを耐えていた。

「おっさん……じゃなかった、ベラちゃんは人使い荒すぎだ……何度逃げ出そうと思った事か」
唯でさえ、精神衛生上よろしくない……あの声を聞かせられてるんだ、発狂したい勢いだった。

「でも、これでやっと解放されます……いやぁ、自由になるのがこれ程嬉しいとは……」
激しく同意だ……早く受け取って、さよならしたいもんだ……。

「まぁ、ここでこうしていても仕方ないだろう? 早く行こうぜ」
俺達は、互いに頷き合い……イザベラの住むアパートへと向った。

「二人共、ようやく来たわねぇ? 待ちくたびれちゃったわよぉ」
イザベラの家に到着すると本人が毎度の事だが、物凄い歓迎をして出迎えてくれた。

「で、例のモノはどこにあるんだ?」
俺は、早く自分の使う事になる人工生命体ホムンクルスが気になり、そう話を急ぐ……

「もぉ、せっかちさんねぇ? 奥の部屋に置いてあるわよ」
俺は、そのイザベラの話を聞き、一目散でその部屋へと向った。

体を失ってから、既に三日が経過している……。
久しぶりに取り戻せる人としての感覚……どんな姿でも良いから、早く元に戻りたかった。

そして……今、新しい我が肉体が……その姿を現す!

「…………」
そこに置かれていたのは、祭と歳が変わらない位の幼い少女の置物が……

「おぉ、これが完成品ですか! いつ見てもイザベラさんの作品は、素晴らしいですねぇ!」
……ちょっと待て

「そうでしょー? 今回は、気合を入れて作ったからねぇ~体の細部とかばっちりよっ!」
……いや、だから俺の話を聞けって

「な、何で女……? しかも、幼女」
俺は、冷めた表情で二人を見つめる。

「それは、彼……じゃなかった、彼女が女体の人工生命体ホムンクルス作成のプロだからですよ」
なるほど、亮……貴様は、最初からこうなるのを知っていた訳だな?

「何、豊ちゃんは男の子の体のが良かったぁ? でも、ごめんなさいねぇ……私も一応乙女だから、そんな卑猥なものは作れないのよぉ」
俺は、無言で念の為に持ってきた刀を取り出し……鞘から、それを抜いた。

「……斬る」
本気で目の前の二人に、殺意が沸いた。

「ま、まぁまぁ! この際ですから、女性の体を体験するのも素敵だと思いませんかっ!?」
……お前の様な変態と一緒にするな

「あら、不満ー? せっかくの自信作なのにぃ」
…………

結局、時間がないので諦めて……その肉体を使う事になってしまった。

「……非常に不本意だ」
俺は、その体へと入り……ぎこちない動きをしながら、起き上がる。
人生初、女になった瞬間だった……。

「こ、これは……っ!」
イザベラから、この体用の服を借り……着てみると亮が突然、そんな声をあげた。

「良い……っ!」
良し、何が良いのか10秒以内に言ってみろ……

「流石、私の最高傑作……っ! 可憐だわっ!」
この人は、もしかしてロリコンなんだろうか……?

「こんな屈辱的な思いしたの……初めてだ」
何か、二人の策略でオカマ街道まっしぐらになった気がする……。

「……やばい、惚れそうです」
うん、とりあえず死んどけ……亮

「ねぇ、この子可愛いでしょ! 私が作ったのよ、私がっ!」
イザベラ……落ち着け

その後、暴走する二人を宥め……何とか無事神社の前まで戻ってくる事に成功した。

「はぁ……やっぱ、元の体が良い」
すぐ疲れるし……色んな物が大きく見えるし……刀を持つのがしんどい……

「まぁ我慢してくださいよ、イザベラさんに頼んで……いなくなったヒルダさん達の事調べてもらってますから」
亮の話では、イザベラも元魔法使いの一族の末裔なので……ヒルダ達の一族についても少しだけ知識があるらしい……なので、あいつらが何者なのか……あの人に調べてもらってる訳で……

「……また飯の買出しさせられるとか……しないよな? もう御免だぞ……」
人目に付かない様に、迅速に荷物を運ぶのは……かなり辛かったからな……

「安心してください! ロリの為なら……じゃない、豊君の為なら私だけでそれをこなしてみせます!」
……何か、嫌なフラグが立った気がする。

「あら、亮……帰ってたの? 豊の奴は、どうしたの……?」
神社の境内で掃き掃除をしていた雅が俺達の事を気付き、そう声をかけてきた。
俺は、今の姿を見られるのが途端に恥ずかしくなり……亮の背後へと隠れる。

「豊君なら、ちゃんとここにいますよ……ほら」
だが、そんな俺を面白がる様に……亮は、無理矢理俺を雅の前へと押しやった。

「…………」
俺は、無愛想な表情で……雅を見つめる。

「……え、何これ……冗談?」
雅は、その俺の姿に唖然とした表情で……何度も俺に視線を送ってくる。

「笑うなら、笑え……この変態を頼って信じた俺が馬鹿だったよ」
今思えば、最初から亮が提案したって時点で疑うべきだったのかもしれない……

「うわ、本当に豊だ……まさか、あんたロリコン趣味なの?」
お前は、今言ってはいけない事を口にした……。

「誰が好き好んで、こんな体使うかボケェェェェェェェェッ!」
俺は、今まで溜まっていた不満が爆発し、そう魂の絶叫を彼女に向けて叫んだ。

「な、何だか知らないけど……ご愁傷様としか言えないわ」
雅の哀れんだ視線が俺に刺さる……そんな目で俺を見るな

「さぁて、楽しい楽しい皆さんへの紹介タイムですねっ!」
亮……お前元の体に戻ったら、命はないと思え?

「良し、楽しそうだから、お姉さんが連れてってあげるわ」
何か、雅まで亮の毒気にやられたのか……俺を抱きかかえ、神社の内部へと無理矢理連れて行く……

「ばっ、離せこの野朗! 自分で歩ける! 歩けるって言ってんだろっ!」
そんな俺の抗議も耳に届いてないのか、にっこり笑顔で二人は強制的に俺を連行していく……

これは、地獄だ……二度と這い上がれない程の地獄……俺は、覚悟を決めた。

居間までやって来るとテレビを見ていた梓が、こちらに視線を送り……帰ってきた俺達を出迎えてくれた。

「亮ちん、おかえりーっ! 意外と早かったねぇ……それで一体どんな――」
俺に気付くまでの間、僅か15秒……そこで梓の思考は停止した。

そして、数分後……我に返った梓が放った一言は……

「ふ、二人の子供?」
な、なんでやねん……

「こんな奴の子供なんて、いるかーっ!」
雅は、その梓の一言を全力で否定したかったのか、抱えていた俺を思いっきり梓へと投げ飛ばした。

「ってか、俺はミサイル扱いかぁぁぁっ!」
見事俺は、梓に直撃し……その場で二人して、ぶっ倒れた。

「あはははは! そりゃ、災難だったね……豊っち?」
その後、梓に事情を説明すると面白かったのか……大声で笑い出した。

「む、むかつく……何故俺は、こんな体なんだっ!」
今なら、血の涙が流せそうな気がする……。

「大丈夫大丈夫、きっと人生良い事あるって!」
俺の姿見て、大笑いしてるお前に言われたくねぇ……

「所で、祭の奴はどうしたんだ……? 聖さんは、どうせ自室で引き篭ってるだろうし」
俺は、普段騒がしい馬鹿猫の姿がないのに気付き、そう雅に質問する。

「あぁ、祭? あの子なら、料理に使う材料がないとかで……買出しに言ったわよ」
なるほど、あいつ……そういう所は、結構真面目なんだよな……

「たっだいまーっ! 雅ーっ、肉屋さんがコロッケおまけしてくれたぞ!」
そんな事を頭の中で、考え込んでいる内に……祭が町から戻って来た様だ。

おまけのコロッケに興奮しながら、祭は居間へと続く扉を豪快に開け放ち……中へと飛び込んできた。
その扉のまん前には、笑い者にされてる俺の姿がある訳で……

「だ、誰だ?」
祭は、本気で誰だか分からないのか……首を傾げ俺を見ている。
まぁ、こんな姿じゃ気付かないのも当然だよな……

「……俺だよ、豊」
俺は、梓に笑い者にされたせいか……既に自棄になり、自分から正体を明かした。

「え、え、えぇぇぇぇぇっ!? ゆ、豊って女の子だったのかっ!?」
……何か、物凄い方向へ勘違いしてやがる

「違う、これは人工生命体ホムンクルスだっ! 亮のせいで、こんな体しか用意してもらえなかったんだよ……」
俺は、若干涙目でそう祭に事情を説明した……。

「な、なるほど……てっきり、祭は取り外し可能な人なのかと思ったぞ」
何がだ……何が取り外し可能なんだ……おい……

「そうかそうか……豊が女に……」
祭が何やら独り言をぶつぶつ呟きながら、徐々に俺に近づき……なぜか自分の身長と俺の身長を比べている。

そして、若干俺の方が身長が低いと気付くと……
「身長、祭のが高い! だから、祭がお姉さんだ! 豊は、妹だな!」
また亮と同じレベルで意味不明な事を言い出した……

亮は、俺を怪しい視線で見つめ……梓は、そんな俺を見て笑い転げ……祭は、なぜか嬉しそうに微笑んでくる……最悪の状況だ。

「……雅、助けてくれ」
俺は、唯一まともな雅にそう助けを求める……

「ごめん、無理……関わりたくない」
だが、流石に雅でも手に負えないのか……拒否されてしまった。

「俺が……俺が……」
そんな最悪な空気に、俺は絶えられなくなり……再び溜まっていた不満が爆発した。

「俺が一体何をしたぁぁぁぁぁぁっ!」
その俺の虚しい叫び声は、暴走している三人には耳に届いてないらしく……生き地獄は、まだまだ続くらしかった……。

この時になって、初めて……元の体を持ち去ったヒルダ達を本気で恨んだ気がする。


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