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修正前
08.亡者の鴉―Dead' crows―
準備は整い作戦を開始する時刻まで、後僅かとなった。
俺は、雅に頼まれ、屋上で周辺の鴉の動きを監視している。

「なんかやけに数が多いな……こっちの動きを把握したか?」
午前中と比べ、鴉の数が数十羽程違う……不気味だ。

「夜行性だし、当然か……? あれ、なんでこんな時間に人が……」
双眼鏡で周りを見渡していると、校庭に雅とは違う人間がいるのに気づいた。

「警備員のおっちゃんは、校舎内にしかいないはずだし……学生?」
俺は、その人物が気になり、階段を駆け下り校庭に向かった。

「ちょっと、豊! 任せた仕事はどうしたの!?」
降りる途中、待機していた雅に遭遇した。

「校庭に人がいんだよ! 俺らの作戦の邪魔だろ? ちょっと声かけてくる」
俺は、雅にそれだけを告げるとそのまま校庭へ走っていった。

「人ですって? まさか、あの子……」
雅は、校庭にいる人物が予想できたのか、険しい表情を浮かべた。

「はぁ……はぁ……おい、こんな時間になにやってんだ」
俺は、校庭で立ち止まっている人物に駆け寄り、声をかけた。

「え、あれ……? 豊さん」
その人物は、霧だった。

「え、おま、なんでこんな時間に学校来てんだよ?」
今から行う事を考えると、霧はこの場にいるとまずい気がする……。

「私、どうしても信じられなくて……あの子達が、悪さをする訳がないんです。だから、それを確かめる為に」
なるほど、要は俺らと同じで犯人捕まえに来た訳だ。

「確かめるってお前、下手したら食い殺されるんだぞ? いくら鴉と会話できるからって、無茶だろ」
そもそも人を食う奴が、説得に応じるはずがない……。

「無茶は承知です、あの子達が事件の犯人なら早く止めなければならないんです、じゃないと取り返しのつかない事に……」
……こいつに、今真実を話してしまっても良いんだろうか? 話せば、帰ってくれるかな?

「失礼、豊、時間よ……そろそろ奴らを誘き寄せるわ」
いつの間にか、準備を整えた雅が背後から声をかけてきた。

「誘き寄せるって……事件の犯人ですか?」
その雅の言葉に、霧は反応した。

「えぇ、安心なさい……今日中には片がつくから」
雅は、余裕の表情で霧にそう告げるとライン引きを取りに体育館へと向かって行った。

「豊さん、あなたたちは何をする気なんですか? そもそも私以外が、こんな時間にいるなんて」

「いや、まぁ説明するの面倒だから省くけど、お前と同じだ、俺らも犯人を捕まえる為にここにいる」
厳密には、捕まえるじゃなく、退治するだが……

「じゃ、じゃあ私にも協力させてください」
なんとなく予想はしていたが、まさかここまで行動力がある奴だったとは……

「俺じゃ決められねぇよ、俺も手伝いで来てるだけだしな……協力したかったら、奴に話してみろよ」
そう言って俺が指差した先には、ライン引きを担いでこちらに戻ってきている雅の姿があった。

「あ、あの……」
霧は、戻ってきた雅に遠慮がちに声をかけた。

「いいわよ、どうせ協力したいって言うんでしょ?」
雅の奴、最初から霧が言う事分かってたな……

「え、でも、良いんですか? 私みたいな素人が……」
安心しろ、俺もバリバリの素人だ。

「今回の作戦は、三人いる方が安全だからね……結界を描く役二人に鴉の群れを退く役一人」
確かに、ライン引き片手に水鉄砲で応戦じゃ厳しいからな……てか、素人の俺は死亡率高すぎる。

「私と豊は、作戦通り動く……あなたは、鴉をこの水鉄砲で退けてくれればいいわ」
雅は、霧に簡単な説明をすると用意していた水鉄砲の予備を彼女に渡した。

「が、頑張ります……」

「豊、あんたは円書き終わったら霧ちゃんのフォローに回りなさい? 一番、危険があるのは彼女だからね」
俺は、それに黙って頷いた。

「まぁ、円なんてぱぱっと描いて駆けつけてやるから、安心しろ霧」
俺は、横で不安そうな表情を浮かべている霧を元気付ける様に、そう呟いた。

「は、はい……」
それでも、まだ不安なのか、落ち着かない表情を浮かべている。

「んじゃ、作戦開始か……?」
霧の為にも、早く終わらせちまった方が良いだろう……。

「えぇ、まず校庭の中央に鴉の死骸を配置する」
雅は、結界を描く丁度中央に鴉の死骸を置いた。

そして、何やら怪しい呪文を雅は唱え始めた。
雅が呪文を唱えた途端、その死骸は息を吹き返した様に蘇り、不気味に鳴き始めた。

「……う」
その光景に、気分が悪くなったのか後ろにいた霧からうめき声が聞こえた。

「あいつの言葉が分かるなら、耳塞いでおいた方がいいぞ……どうせ、呪いの言葉しか口にしてないし」
俺も鳴き方から、あの鴉の死骸が何を伝えたいのか、理解できた。

その鴉の死骸の泣き声が辺りに響き渡ると、周囲に停まっていた鴉が一斉に飛び立った。

「来るわよ!」
その雅の言葉で、俺達は自らの持ち場に着き、行動を開始した。

俺は、置いてあったライン引きで、雅の周囲を回る様に円を描き走り出した。

「これ、意外に重っ……霧に協力頼んで正解だったな」
そう呟き、霧の方へ視線を送ると彼女は必死に雅に渡された水鉄砲で応戦していた。
瞬く間に、霧の周りに鴉が集まりだした……。

「ゆっくりしてる場合じゃねぇな……」
俺は、歩く足を更に速めた。
雅は、雅で必死に中で結界の模様を描いている。
予想はしていたが、奴の支援は期待しない方が良いな……

途中、数匹俺の方に鴉が襲いかかってきたが、携帯しておいた水鉄砲ですぐに応戦し、水が付着した鴉は死んだ様に地面に落下した。

「神社の水すげぇ……」
俺は、神水の効果が予想以上なので、驚いた。
正直、多少怯むくらいかと思ってたのだが……

霧がほぼ全ての鴉を引き受けてくれたおかげで、すぐに円を描く作業は終了した。
俺は、すぐにライン引きを放り投げて霧がいる場所へと向かう。

途中、襲い掛かってくる鴉数羽を秒殺し、無事霧の場所へ到着した。

「ぜぇ……ぜぇ……霧、大丈夫か? 助っ人に来たぞ」
俺は、息を切らせながら応戦している霧の元へ駆け寄った。

「ゆ、豊さん、早く手伝って……いくら自動装填式のでも、きついですよ」
やはり限界だったのか、霧が涙目でこちらに助けを求めている。

霧の周りには、鴉が数十羽……数えるのが面倒な程、襲い掛かってきている。
こいつら、水そのままぶっ掛けた方が、倒せんじゃね?

俺は、神水の予備タンクの蓋を開け、そのまま鴉達に向かってぶちまけた。
結果は、予想通り全滅……。

「おぉ、楽勝だな……」
約一名、被害に遭ってる奴がいるが……

「豊さん……わかっててやりましたよね?」
目の前には、神水でずぶ濡れになった霧がいる。

「いや、あの状況だとあれがベストじゃないか? 大丈夫、少し経てば乾くさ」
風邪引いたら、洒落にならんが……

「はぁ……でも、これでほとんどの鴉は気絶しちゃいましたね」
霧は、もう呆れて文句言う気も失せたのか、周囲の状況を見てそう呟いた。

「そうじゃね? 後は、上空で逃げ惑ってる数匹だけだ」
恐らく、あの中に亡者の鴉がいるはず……
しかし、どうやって見分けるんだ? 見た目は、全部一緒に見えるんだが……

「その為の彼女よ、まぁいなかった場合は別の手があったんだけどね」
何時の間にか作業を終えたのか、背後に雅が立っていた。

「あぁ、なるほど……霧にどれが本物か、教えてもらうわけか」
確かに、鴉と会話できるし、適役だな……。

「あの……お願いがあるのですが、良ければ私にその亡者の鴉と話す機会をくれませんか?」
今まで黙っていた霧が、突然そんな事を呟いた。
って、待て……相手は、人喰い鴉だぞ? 間違えたら、喰われる……。

「いいわよ、ただ自分の身は自分で守りなさい? 後、豊……あんた、付いて行ってあげなさい」
そうそう、自分の身は自分で……え?

「待て、雅……俺は鴉と話す能力なんてねぇんだぞ? あいつからしたら、ただの餌だろ」
それに俺がいたら、逆に鴉の奴を刺激する可能性が……

「この子だけじゃ、万が一って事があるでしょ? 大丈夫、あんたを信用して任してるから」
……絶対嘘だ、私は面倒だからお前行けって顔に書いてあるぞ

「私は、結界の準備を整えておくわ、ゆっくり話でもなんでもしてきなさい」
それだけを告げると雅は、再び結界の方へ姿を消した。

「ありがとうございます……すいません、豊さん付き合わせてしまって」
隣にいた霧が、申し訳なさそうに頭を下げた。

「まぁ、ここまできちまったしな……最後まで付き合ってやるよ」
面倒だが、雅が言った様に霧に何かあったら洒落にならないので付いて行く事にした。

俺と霧は、鴉達が逃げ惑っている屋上へ足を進めた。

「しかし、なんで話なんてしたがるかねぇ……奴は、お前の仲間とは別だろ」
そもそも感情だけで存在している幽霊なんだし、まともな会話ができるかどうかすら不明だ。

「でも、元はあの子達と同じ鴉だったはず……なら、話せば分かってくれるかもしれないじゃないですか」
理屈としては、理解できるが……幽霊に理屈が通じるかどうか……

俺達は、屋上の扉の前に立ち、お互いに目で合図し、扉を開けた。
そこには、逃げ延びた数羽の鴉が綺麗に並んで佇んでいた。

「不気味だろ……」
この時点で俺は、水鉄砲を乱射したかったが霧の目がそれを制止しているので止めた。

「あなたが、事件の犯人ですか?」
どうやら、霧は目的の鴉と会話を始めたらしい……

しかし、俺には全く理解できないので扉の前で待機し、いつでも反撃できる様水鉄砲に手をかけた。

数分後、表情の険しい霧が俺の方へ戻ってきた。

「どうだった?」
表情から、大体予想はできているが、一応尋ねてみた。

「……駄目でした、彼には人を憎む事しか頭にないようです」
まぁ、それが集まってできた幽霊だしな……。

「じゃあ、雅の所に――」
帰るかと言い終える前に、フェンスに佇んでいた鴉達が一斉に俺達の方へ飛んできた。

「やべぇ……逃げるぞ、霧」
俺と霧は、急いで屋上から退避し、校舎内に逃げ込んだ。
だが、逃げる時に扉を閉める余裕がなかったせいか、鴉達は校舎内まで入り込んできた。

「くそぉぉぉ、面倒だ」
俺は、瞬時に腰に入れておいた水鉄砲を取り出し、追ってきている鴉に向かって狙撃した。
その攻撃で、取り巻きの鴉は床に落下したものの肝心の亡者の鴉は、何事もなかったかの様にこちらに迫ってきた。

「やべ、あいつ水効かねぇ……って、効いてたら雅が結界作る意味ねぇよな」
そもそも今見たら、水空じゃないか……撃ち過ぎた。
まぁ、でも一羽だけになったのは助かったかな?

「納得してる場合じゃないですよ、早く逃げないと私たちも餌食に……」
そもそもお前が、説得しようなんて考えたから、こうなったんだろうが……

「仕方ねぇ……結界まで走るしかないか……」
俺は、覚悟を決め、霧を追う形で全速力で走り出した。

「うっ……」
だが、すぐに校庭まで逃げ切ろうと焦った結果、霧が階段で転んで足を負傷してしまった。
俺は、すぐ目の前まできた鴉の事を考え、霧を引っ張り近くの教室に隠れる事にした。
瞬間的判断で、教室に逃げたが……素直に階段を降りておけば良かったと、後悔した。

「おい、怪我大丈夫か?」
横で足を擦りながら苦しい表情浮かべている霧に、声をかけた。

「は、はい……でも、走れるかどうか……」
俺が少し触れただけで、痛がったから足を動かすのは無理だろう。

「仕方ねぇな、背負ってやるから背中乗れ」
足の速度は落ちるが、逃げ切れない速さじゃないだろう……。

「で、でも……」
霧が遠慮する様に、そんな声をあげた。

「いいから早くしろっての、この教室で隠れてるのだって、いつばれるか分からねんだぞ? なら、さっさとここから出て奥の階段に行かねぇと」
さっきから、廊下で奴の羽音がするし……迷ってる時間はない

「わかりました」
霧は、俺のその言葉に納得し、素直に俺の背に乗ると両手でしっかりと俺を掴んできた。

「お、意外と重い」
俺が、そんな反応をすると背に乗っている霧は、無言で負傷してない方の足で蹴りを入れてきた。
負傷している奴とは、思えない動きだ……。

俺は、廊下から聞こえる羽音が離れていったのを確認し、廊下に飛び出した。

「うぉぉぉぉ」
そして、全速力で反対側の階段へと駆け抜ける。
その足音で、気づいた鴉は凄い速さでこちらに向かってくる。

俺は、陸上部が裸足で逃げ出すくらいの速度で走りぬけ、無事一階へ到着した。

「ぜぇ……ぜぇ……帰宅部なめんな」
俺は、そのまま鴉を誘き寄せる様に結界へと突っ走る。

「あら、頼んでもいないのに囮役やってくれるとは助かったわ」
結界で待機している雅が、そんな俺を見て楽しそうに笑っている。
奴は、巫女じゃなくて悪魔だ……間違いなく……

「雅、結界はどうやれば発揮されるんだ!」
俺は、走りながら雅に結界の発現条件を聞いた。

「対象を陣の中に入れれば成功よ」
やっぱり、そういう仕組みだよな……結界って

俺は、雅のその話を聞き、そのまま結界へ突っ込む事にした。
既に足は、限界……だが、死にたくないので走る速度を落とす訳にはいかなかった。

鴉は、既に俺と霧にしか目がいってないのか、横にいた雅を素通りして俺達の方へ向かってきている。

「雅、結界に入ったぞ」
そして、奴が結界に入り込んだのを確認し、雅に合図を送った。

「了解、囮役お疲れ様」
雅は、先程鴉の死骸の時に唱えていた呪文と似たような呪文を唱え始めた。

すると、結界全体が光だし、結界の周りが光の壁の様なもので包まれた。
どうやら、成功したみたいだ。

結界の内部で、鴉のもがき苦しむ声が聞こえる。

背にいる霧は、その声を聞くのに耐えられないのか、耳を両手で塞いでいる。

その後、雅が呪文を唱え終えた時には、光の壁は消え、中にいた鴉は消滅したのか、姿を消していた。

「ふぅ、これで無事解決ね……あぁ、疲れた」
雅は、大きく伸びをしながら、そんな事を呟いている。

「お前、疲れる様な事してねぇだろ……」
俺は、無理に走ったもんだから筋肉痛で足が滅茶苦茶痛いんだぞ……

「結界張るのって結構疲れるのよ? って、あれ……霧ちゃん怪我したの?」
俺の背に乗っている霧を見て、雅は驚いた表情を浮かべている。

「は、はい……豊さん、ごめんなさい……迷惑かけてしまって」
まぁ、こんな事普通の素人がやったら、似たような結果になると思うが……

「ったく、帰ったら足冷やしておけよ? それと明日は、病院行っておけ」
俺も明日普通に登校できるか、分からないが……

「あぁー、それなら豊、あんた送ってあげなさいよ? こんな時間だし」
俺は、目の前のこいつが何を言っているのか、さっぱり分からん……。

「えぇっとですね、俺は霧を担いで全速力で走っていた訳で今物凄く筋肉痛で痛いんだ、お前が代わりに送るって案はないのか?」
今回は、進んで囮役になったんだ、これくらい代わりにやってくれても罰は当たらんだろ……

「あら、そう? じゃあ、地面に倒れている鴉の処理とその他の道具の片付け頼める?」
…………。

「送って行けば、良いんだろ……送って行けば」
そうだった、こいつが何か提案をする時は選択肢が一つしか存在しないんだった。

「あ、大丈夫ですよ、私……一人で帰れます」
そんな俺に気遣ってか、霧は遠慮する様に背から降りた。

「いいのいいの、どうせ暇してんだから」
おい雅よ、なぜ貴様が、それを言う……。

「このままお前が一人で帰ったら、鴉の処理やらされそうだ……面倒だけど、送って行くよ」
むしろ、確実にやらされるだろうな……横で怪しく笑ってる雅を見て確信した。

「……そ、それじゃあお願いします」
既に霧にも拒否権がない事を理解したらしく、諦めて送ってもらう事にしたみたいだ。

俺達は雅に追い出される様に学校を後にし、霧の自宅を目指して歩き出した。

「すいません……豊さん、私鈍くて……」
まだ足を怪我した事を気にしているのか、後ろから霧が申し訳なさそうに呟いている。

「もう気にしてねぇっての……これからは、無理するんじゃねぇぞ?」
俺は、多分自分でしたくなくても雅のせいでする羽目になるから……

「はい……」
その後、特に話す会話がなく沈黙が続いた。

「豊さん……」
その沈黙を破るかの様に、霧が俺に声をかけてきた。

「なんだよ?」

「私達には、あの子を救う事はできなかったんでしょうか……? 退治してしまうしか方法はなかったんでしょうか?」
どうやら、あの鴉の事をまだ気にしているらしい……

「雅が言うには、あいつは鴉の負の感情で出来た幽霊らしいからな……これしか方法がなかったと思うぜ?」
もし、説得できても消滅するしか道がない様な気もするし……

「でも……それでも、何か方法は……」
霧には、どうしても懐いている鴉達と姿が被るんだろうな……だから、救いたいって思うんだろ。

「私にもっと力があれば……あの時」
…………。

「おい、厨二病も程ほどにしとけよ? もし、あの時なんて後悔して何になる? 過去を振り返ったって何も変わらねぇ……ただ、鬱になるだけだ」
俺は、それを痛い程良く知っている……。

「そんな……私は……」
霧は、優しい言葉を期待していたのか、悲しい表情を浮かべている。

「もし、本当にあの鴉の事を想ってるなら、お前のその能力で少しでも今いる鴉達を同じ目に遭わせない様に頑張れば良いんじゃねぇか? それが奴の為だ」
後ろを向く暇があるなら、前を見ろ、力があるなら一歩進め……親父が良く言ってた言葉だ。
でも、今の俺が前を見ているかと聞かれれば答えは否かもな……

「…………」
俺の言葉が、相当応えたのか、霧は無言になってしまった。

その後、俺は霧を無事に送り届け、家に帰宅すると倒れる様に眠りに付いた。

翌日、いつもの様に部室でエロ本を読んでいると霧が姿を見せた。

「私、決めました……豊さんが言った様に、他の子があの子と同じ目に遭わない様に頑張ってみます」
なぜか、霧は俺にそんな決意表明をしてきた。

「あぁ、なら頑張れば? それより、この胸すごくね? やっぱ、胸はでかい方が良いよな」
とりあえず俺は、現在目の前のエロ本に夢中なので話半分しか聞いていない……。

「…………」
霧は、そんな俺を見て、心底呆れた様に冷たい視線を送ってきた。

「……頑張れよ、ただあんまり気張りすぎると空回りするぞ?」
こうやって適度に息抜きをして、明日への活力を身に付けないとな……

「はい、頑張ります」
その日を境に、校舎内に鴉が侵入する件数が増えたとか……増えないとか……


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