それは、校内での仕事を終え、帰宅の準備していた時に起きた。
「先生、堂島先生」
背後から声をかけられ、振り返るとそこには教頭の姿があった。
最悪だ……まさか、このタイミングで声をかけられるとは……
この人が声をかけてくる時は、必ず嫌な役目を押し付けられる時だ。
「あ、教頭、どうしました? 何か、問題でも?」
「何かじゃないよ、君のクラスの生徒でしょ? ごみ捨て場のごみ散らかしたの?」
教頭は、怒った表情で私を睨んでいる。
「え、散らかした……? 何の事ですか?」
私は、思い当たる節がなく、首を傾げた。
「だから、ごみ捨て場のごみが凄い事になってんの! 他の先生から、聞いた話じゃ君のクラスの子がそこで乱闘騒ぎを起こしていたそうじゃないか!」
もし、それが本当だとしても怒られるべきなのはその生徒であって、私ではない気がするのだが……
「いいから、その生徒も帰っちゃったし、代わりに君が片付けなさい!」
冗談じゃない、残業手当ても出ない仕事をなんで私がやらなくちゃいけないんだ。
「し、しかし……」
私は、反論しようと教頭に言い寄るが……
「何かね……?」
教頭の怒った表情に怯え、黙って頷くしかなかった。
「くっそぉぉぉ! なんで私が、こんな目に! 明日、問題起こした生徒呼びつけてぶん殴ってやる!」
私は、誰もいないごみ捨て場でそんな暴言を吐きながら、片付ける作業を始めた。
「ん、なんだ、この不自然な穴は?」
私は、片付けている最中、そんな異変に気づいた。
その穴は、中身がぶちまけられているごみ袋全てに空いていた。
「誰なんだ、こんな穴空けた馬鹿はっ!」
私が犯人は、誰か突き止めようと思考していると馬鹿なのか、犯人から姿を現してきた。
それは鴉、最近は都会にも鴉が増え、マンションのごみ捨て場や公園のごみ捨て場を荒らす鴉も増えてきているという……
この散らかっているごみも、恐らくは目の前にいるこいつらの仕業だろう……。
鴉は、悪びれた様子もなく、再びごみ袋のごみを漁り始めている……。
「この馬鹿鴉っ! お前のせいで、私はっ!」
そんな態度に腹を立てた私は、周囲にあるモップでごみ袋に顔を突っ込んでいる間抜けなそいつを叩いた。
見事に私のその一撃は命中し、鴉は校庭の方まで吹っ飛んで行った。
「へっ、ざまぁみろ、人間様に舐めた事する罰だ」
私は、それで気分を良くし、黙々と作業を再開する事にした。
作業を開始してから数分後、周囲の異変に気づいた。
周囲を見渡すと、全ての木や電柱全てに鴉が停まっている。
「不気味だな……」
その光景が恐ろしくなり、私は作業をする手を早めた。
一時間後、辺りはすっかり真っ暗になり、周囲に設置された電灯だけが辺りを照らし出している。
しかし、依然として鴉は周りに停まったままだ。
「は、早く教頭に報告して帰ろう」
私は、早足で職員室に戻り、教頭に連絡しようと戸を開けるが、既に教員全員が帰宅してしまったのか、室内には誰もいなかった。
「くっ、教頭の野郎! 自分が言いつけておいて、さっさと帰りやがって」
先に帰宅した教頭に腹を立てたが、先程の鴉達の異様な行動が目に焼きついてしまって、それよりも早く帰宅したいという気持ちのが大きかった。
私は、急いで帰宅の準備をし、校舎の外へ出た。
「明日、教頭に鴉の事を話して文句言ってやる……」
校門まで、後僅か……その場所で、私の顔に何かが落ちてきた。
「う、うわ、なんだ……? 黒い羽……?」
それは間違いなく鴉の羽だった。
その瞬間、周囲に停まっていた鴉が一斉に羽ばたいたかと思うと……
そいつらは、私に向かって飛び掛ってきた。
「う、うあぁぁぁ!
私は、必死で逃げようと校門に手をかけるが、その一瞬の隙に鴉達は私を取り囲む様に襲いかかり、爪やクチバシで攻撃してきた。
「だ、誰か! た、た、助けて」
鴉に囲まれ、身動きがとれなくなった私は、鴉達の餌食となり、そのまま意識を失った。
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