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49.大切なもの―The important one―
私は、幼い頃から両親がいなかった。
別に殺されたとか、行方不明になったとかじゃない……捨てられたのだ、実の両親から……
原因は、私が生まれ持っていた能力……幽霊を見る事が出来、それを使役する事が出来る力……
普通の人間が、こんな力を持つ子供を受け入れるはずがない……
だから、物心ついた時から私は、一人で生きてきた。
いや、違う……死んだ人達と生きてきたのだ。
皆がいるから寂しくなかったし、人と関わるのが嫌いだったから……
その結果、私は死者達と一緒に人に悪さをする様になった。
私にとっては、それが楽しかったし……死者の皆も喜んでくれていた……

だけど、おっちゃんだけは違ったんだ……。
そんな私を見て、大声で怒鳴って叱ってくれた。
その頃の私には、おっちゃんが何で怒るのか理解できなかったし、ただ鬱陶しい奴……そんな風にしか考えていなかったと思う。
愛想のない奴だったけど、今はおっちゃんに感謝している……。

そして、あの事件が発端でおっちゃんは消え、前と同じ生活に戻る……そう思った。
でも、成り行きで入学した学校で私は、大切な友達が出来た。
時々、腹立つし不満に思う事もあるけど……いつからか、それは私にとってかけがえのないものになっていた。

そう思わせてくれたのは、木葉……それと豊……
本人達の前では、絶対に言えないけど……二人には、本当に感謝している。
私自身、こんなの柄じゃないって思うし……頭が変になったんじゃないかって思う……
でも、私は、この街で出会った大事な人達を守りたい……それは本心なのだ。

だから、それを脅かすものを私は、許してはおけなかった。

「で、今回は何よ……? 私、これでも暇じゃないんだけど」
以前と同じ様に神社に顔を見せた私を雅は、嫌そうに見つめる。

「私だって、あんた以外に頼める人間がいたら他に行ってるわ」
売り言葉に買い言葉……雅の発言に私は、反論して彼女に近づいた。
そして、意を決して彼女に頭を下げる。

「……なるほど、良いわ、話してみなさい」
雅は、その姿を見て私が真剣に頼んでるのを知り、真面目に聞いてくれる気になった様だ。

「豊や木葉の事、守ってあげてほしい……私には、もう無理だから」
雅は、私のその言葉聞き、驚いた表情している。

「変な事頼むわね……? あんただって、強いんだから自分で守ってやれば――」

「お願い……っ! こんな事頼めるのは、あんただけなの!」
私は、必死に頼み込み、頭を下げる。

「あんた……もしかして、行く気なの?」
雅は、私がこれからしようとしている事が分かったのか、真剣な表情で私に尋ねてきた。

「さぁ……? 逃げるかもしれないし、裏切るかもしれない」
私は、冗談半分で笑いながら彼女の質問に答えた。

「…………」
その私の表情から何かを読み取る様に、雅は黙って私を見続けた。

「……安心しなさい、あんたがあの二人を大事に思っている様に……私もあの二人の事は、大切に思ってるから」
その雅の返事を聞き、私は安心する。
そして、私は雅に礼を言うと神社を立ち去ろうと彼女に背を向けた。

「今度……」
歩き出そうと足を動かした時、雅が私に声をかけてきたので、振り返った。

「今度は、お茶菓子でも持参しなさい……お茶入れてあげるから」
私は、そんな雅の言葉に頷き、今度は振り返る事はせず……神社を後にした。

翌日、強引に豊と木葉を遊びに誘い、久しぶりに三人で街を歩いた。

「俺、考え事してて……こんな事してる余裕ねぇんだけど」
相変わらず、豊は口が悪く、そう私に文句を言ってきた。

「どうせ、二次元少女と結婚する方法でも考えていたんでしょ? たまには、私に付き合いなさいよ」
こいつが何を悩んでいるのか知っている……その話を知ったからこそ、私は動こうと思ったのだから……

「で、御霊さん? 今日は、どこに行くんですか?」
本当は、別に行き先なんてどうでも良い……ただ最後に二人の顔を見ておきたかった、ただそれだけ……

「んー、特に決めてないんだけど……いつも行ってる場所で良いんじゃない?」
二人共、不満そうに私を睨んできたが、私は気にせず先を歩いた。
本屋……CDショップ……ゲームセンター……二人と良く行く場所で時間を過ごした。
……そろそろ頃合か

「あぁー、私喉乾いちゃった……そこの喫茶店で、休憩しない?」
二人も流石に疲れているらしく、私の意見に賛同する。

三人共にメニューを頼み終え、先程までの事で話が弾む……
私は、話が落ち着いたのを見計らって二人に伝えたい事を伝えた。

「「この街を出るっ!?」」
二人共、相変わらず仲が良いのか、声が重なる。

「えぇ、そもそも私は成り行きで居続けただけだしね……そろそろ本来の自分に戻ろうかなって」
二人は、その私の話を聞き、俯き落ち込んだ様に黙ってしまう。

「嫌です、私……御霊さんとは、一緒に卒業したい」
……私もあんたとは、もう少し一緒に学生やっていたかったなって思うわ

「……悪いわね、これが私なの……もう考えを変える気はないわ」
そう、もう迷う訳にはいかないのだ……。

「……そうか、寂しくなるな」
豊は、私のその発言を聞き、残念そうな声でそう呟いた。

「あんたには、長い間お世話になったわね……ありがとう、嬉しかったわ」
嫌そうな顔をしても追い出さないでくれた優しさが……

「へっ、そりゃ脅されたから仕方なくだっての……別に礼なんて必要ねぇ」
私と豊は、互いに相手の目を見て、自然と笑い合った。

「……また、いつでも戻ってきてください……新聞部は、常時部員募集中なので」
時間も過ぎ、二人と別れの挨拶をする……。

「俺らがいないからって、あんま人に悪さするんじゃねぇぞ? 後それから……」
豊は、まだ何か言いたそうに必死に頭の中で考えを巡らせている……。
私は、そんな姿を見て笑い、彼に近づく……

これくらいなら、皆も許してくれるよね……
私は、困惑している豊の頬に軽くキスをした。

「……へ?」
豊は、その状況が上手く飲み込めていないのか、間抜けな声をあげている。

「ちょ、ちょちょちょちょちょ、ちょっと御霊さんっ!? 何やってんですかっ!?」
予想はしていたけど、木葉がその私を見て凄い取り乱している。

「ふふ……豊、返事は帰って来た時にでも聞くわ」
まだ固まったままの豊にそう呟き、背を向ける。

「お前、それってどういう……?」
……まぁ、鈍感なのがこいつなのよね……諦めよう

「行くなら、早く行ってください! しっ! しっ!」
先程とは、態度を一変し、木葉は私を憎らしそうに見つめ、追い払う様に手を振っている。
女の嫉妬は、恐ろしいって聞いてたけど……本当ね……

「豊……木葉……」
私は、最後に二人の方へと向き直り、名前を読んだ。

「へ、あ、ん、なんだ?」
ようやく落ち着きを取り戻した豊は、頭を横に振りながら、私の方へ視線を送る。

「何ですか……?」
木葉は、少しだけ不満そうに私を睨んでいる。

そんな二人に私は、笑いかけ……そして……

「さようなら」
別れを告げた……。

夜、見納めにと街を一人で歩いていた。
そこに、偵察に行っていた死者達が私の元へやって来る。

「ご苦労様……悪いわね、あんた達にもこんな事に付き合せて」
その私の発言に、死者達は首を振り、気にするなという意思が伝わってくる。

「さて、私はこれから……例の男の所に向かう、これ以上あんた達を巻き込む訳にもいかないし……ここで別れましょう、契約は破棄してあげるから」
だが、死者達は誰もそれに頷く事なく、真剣に私を見つめている。

「……私が勝つ保障なんて、ないのよ? むしろ、その逆……殺される可能性だってある……主人が死ねば、当然あんた達も……」
それでも尚、死者達は、この場から立ち去ろうとはせず、私を見つめ続けている。

「はぁ……あんた達も物好きね……私の負けだわ、好きにしなさい」
死者達は、私のその言葉に喜び、皆で騒いでいる。
全く、死ぬかもしれないというのに……変わった奴らね……

でも、私も変わってる……一度は殺そうとした相手を助ける為に、命懸けで戦おうとしてるのだから……
ここに集まっている連中は、私を含めて全員変な奴みたいだ。

私は、準備を整え、死者達の方へと向き直る。

「皆、行くわよ……私達の居場所は、私達で守る!」
全員、それに頷き……私に続く様に、夜道を歩いた。

守る……長い旅の末、見つけた……私の……私達の大切なものを……

真っ暗な破棄された工場跡地……そこに、無数の死体が転がっていた。
それを殺害した犯人は、私の目の前にいる。

「泉……豊……あいつの匂いがする……」
死体から刃を引き抜き、男は私の方へと視線を向けた。

「……なるほど、あいつが怖がるのも当然ね……こんな奴じゃ……」
私は、そんな男を呆れた表情で見つめる。

「私は、あんたなんかに恨みはないけど……あんたがいると困る奴らがいるのよね……だから」
私は、背後にいる死者達に指示を出し、男の元へと向かわせる。

「……死んでくれる?」
おっちゃん、私は自分の進むべき道を見つけた気がするよ……


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