「……まとめて殺してやるっ!」
ブルーは、狂った様に笑いながら、俺とレッドに襲い掛かる。
「さっきから、気持ち悪りぃんだよ……その笑い声っ!」
レッドがその一撃を防いでいる間に、俺は背後からブルーに斬りかかる。
だが、それを瞬時に把握したブルーは、レッドを吹き飛ばし、こちらに刃を向ける。
そのせいで、俺の一撃は防がれ、互いに剣を交え、その場で固まる。
「今だっ!」
俺が、ブルーを抑え付けている間に、再び背後からレッドが斬りかかる。
ブルーは、それに対応できず、直撃し、体を両断された。
「ひ、ひひひ……」
しかし、本来死ぬはずの一撃でもブルーは笑いながら、立ち続けている。
「こ、こいつ……普通の攻撃じゃ、歯が立たないんじゃ……」
俺は、そんな不死身なブルーを前にし、後ろへと下がる。
「しかし、今の俺達にはこれしか……」
だよな……こりゃ絶対絶命だ。
俺達は、勝つ見込みがないと分かり、一歩ずつ後退する。
俺達は、破壊されたフェンスの前まで追い詰められ、後がなくなってしまった。
「……死ね」
ブルーが刃を俺達に向け、にじり寄って来た瞬間、奴の足元に見覚えのある札が投げ込まれた。
「な……に……?」
その瞬間、その札は光を放ち、奴を巻き込み爆発した。
俺は、投げた主が誰だかすぐに把握し、扉の前へ視線を送る。
「……何とか間に合ったみたいね」
そこには、全身傷だらけの雅が立っていた。
「雅、お前、大丈夫なのか!? その傷――」
俺は、雅に駆け寄ろうと近づくが、それを拒絶する様に雅が俺に何かを投げて寄こした。
俺は、それ受け取り、何を渡してきたか確認する。
それは、雅と初めて会った時に手渡してきた紺色の布袋。
「あんたも……いい加減……覚悟決めなさい」
「…………」
俺は、雅の言葉に頷く事はせず、布袋の中から中身を取り出した。
それは、親父が祓魔師として活動していた頃に使っていた日本刀。
あらゆる妖を討ち、あらゆる魔を滅した退魔の剣。
俺は、それを鞘から引き抜いた。
「……貴様ら、さっきから邪魔ばかりしやがって」
雅の攻撃が、多少効いたのか、ブルーの動きが鈍くなっている。
「……遅いわ」
その隙を雅が見逃すはずはなく、瞬時に奴の周りに結界を敷いた。
「……うあぁぁぁ、ば、馬鹿な……」
鴉の時と同様、結界は光を放ち始め、奴をその中へ閉じ込める。
「……もう充分暴れただろ? いい加減、くたばれ」
俺は、その言葉と共に抜刀した刀で一閃、奴の体を引き裂いた。
「馬鹿がっ! 俺には、そんなものは……っ!?」
奴は、体に致命傷を負い、地に崩れ落ちる。
「そんな……こんな事になるなんて……」
身動きが取れなくなったブルーは、焦りの表情を浮かべている。
「レッド! お前が決めろっ!」
俺は、瞬時に手に持つ刀をレッドへと投げ渡す。
「あぁ! ブルー……っ! すまん……っ!」
レッドは、俺の刀を受け取り、刃をブルーの体に向け、斬りかかった。
「ぐ、ぐぁ……、俺は……俺は……」
それは、奴の体を貫き、ブルーはその場で動かなくなった。
「ブルー……」
レッドは、俺に貸し与えた刀を投げて返すとすぐにブルーの元へと駆け寄る。
「れ、レッド……俺は……俺は……」
体を切り裂かれた事により、ブルーは徐々に正気を取り戻している様だ。
「分かっている……お前は、長い間悪夢を見ていただけだ……お前は、悪くない」
レッドは、何かを決意した様な顔つきで、結界の中へと足を踏み入れた。
「行こう……俺達の向かうべき場所へ……」
「ちょ、お前! その中に入ったら、お前まで封印されちまうぞ!?」
俺がそう忠告してもレッドは、躊躇わず中へと進んで行った。
「構わない……俺は、ブルーを探す為に彷徨い続けていただけだ……そんな俺が、これ以上ここにいる理由はない」
レッドは、最初からブルーに会ったら、消える事を決めていたのか、迷いの一切ない表情で俺達を見つめる。
「あぁ、そうだ……そこで寝ている死霊使いに伝言を頼めるか?」
俺は、横で気絶している御霊に視線を移し、レッドの話に耳を傾ける。
「人を傷つける以外に、人と接する事をいい加減学べってな」
「あ、あぁ、分かった伝える……」
俺は、そんなレッドの願いを聞き入れ、強く頷いた。
「お前に会えて良かったよ……お前に会わなかったら、俺はまた何もできず魂すらも消え去っていただろう……」
「へっ、弱腰のままな正義の味方なんて見たくなかったからな」
俺とレッドは、互いに笑い合い、互いの意思を確認し合った。
「これを受け取ってくれるか……? お前になら、安心して託す事ができる」
レッドは、唐突に変身を解除し、結界の中から手だけを出して何かを手渡してきた。
レッドが手渡してきたのは、時計の様に腕に装着する赤と黒の腕輪。
「これは……?」
俺は、それを受け取り、レッドにそれを尋ねる。
「俺が変身するのに、使用してた腕輪さ……もう俺には、必要ない……お前に使って欲しい」
レッドは、俺に何かを期待する様な目で、微笑んでいる。
「まぁ、使うかどうかは分からんが、持っていてやるよ……お前が望むなら」
その俺の返事に満足したのか、レッドは頷き、雅の方へと向き直る。
「そろそろ限界の様だ……巫女よ、やってくれ」
雅は、レッドの言葉に頷き、封印の為の呪文を唱え、封印が徐々に完成されていく……。
「さらばだ……御霊の事を頼む」
最後の瞬間、レッドは笑っていた様な気がする……。
……しかし、最後どさくさに紛れてとんでもない事頼んでいかなかったか?
「だぁー……つ、疲れた」
俺は、その場に手にしていた刀を投げ捨て、地面に大の字で寝転がった。
「今回は、良く頑張ったじゃない……? てっきり、死んでいるかと思ったわ」
そんな俺を見下ろしながら、雅は少しだけ嬉しそうに笑った。
「へっ、見直したか……? 俺だって、やる時はやるぞ?」
今回は、二人とも助けに来なかったから、仕方なくだけど……
「そうね……やっぱり、あんたはあの人の息子だわ」
その言い方だと俺が凄いというより、親父が凄いって言ってる気がするんだが……
「ま、とりあえず、さっさと帰りましょ……学校の関係者に見つかったら、色々厄介なんだから」
それには俺も同意し、気絶している二人を担ぎ、学校を後にする。
「良かったの……? そいつまで、連れてきて? そいつ、あんたの事を殺そうとした奴よ?」
俺が背中に背負っている御霊を指差し、雅はそう呟いた。
「まぁ、そうなんだけどよぉ……そういう事は、意識取り戻してから考えれば良いかなってな」
そんな俺の返答に雅は、呆れ顔で溜め息を漏らしている。
その後、俺と雅は俺の家に二人を運び込んだ後、俺達は倒れる様にその場で眠りについた。
翌日、意識を取り戻した御霊の絶叫が家中に響き渡ったのは、言うまでもない……
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