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Another3/7:百物語―Hundred Stories―
「良い? 皆、集まってる!?」
夜、約束の時間となり……校門に集まった全員を日向さんがまとめている。
「あ、霧さん、こっちこっち」
その輪の中から、木葉さんが私を発見し……声をかけてくれた。
「遅くなってすいません、ちょっと準備に手間取ってしまって……」
私は、こちらに視線を向けている日向さんや木葉さんにそう謝罪し、頭を下げた。
「約束の時間に五分遅刻……普段なら、文句の一つも言うだろうけど今回は特別に許してあげるわ」
驚いた事に、私は怒られる事を想像していたのだが……そう呟かれただけで後は何も無かった。
「驚きました? 実はですね……」
そんな日向さんを目にし、呆然としていると横から木葉さんが怒らなかった理由について話してくれた。
「え、もう一人遅刻してる人がいるんですか?」
どうやら私の他に、集合時間に遅刻している人がいるらしく……現在その人に怒りの矛先が向けられているらしかった。
「ったく、あいつ無理矢理参加してきた癖に遅刻するとか……置いて行ってやろうかしら?」
日向さんの怒りも既に頂点に達しているらしく……その場で地団駄を踏みながら、そう愚痴をこぼしている。
「いやー、ごめん……遅くなっちゃった」
そんな状況の中、ようやく遅刻してきた人物が姿を現した。
確認してみると私のクラスで他の女の子が良く噂している男子だった……。
確か、名前は秋元雄介って言ったかな? ルックスが良く、教室内では彼氏にしたい人№1に選ばれていた気がする。
……まぁ、私には興味のない話だけれど
既に約束の時間から三十分も過ぎている……時間にルーズな人なのだろうか?
同じ様に遅刻した私が、言うのもどうかと思うけど……
「おっそい! あんた、今まで何してたのよっ!」
日向さんは、三十分遅刻した彼を睨みつけ……そう怒鳴りつけた。
「いやー、すいません先輩……何着て行こうか迷ってたら、遅くなっちゃって」
……女の子?
「あんた、今回の趣旨分かっている? 怪談話よ、怪談話! 女の子ナンパするのが目的じゃないからね?」
日向さんは、お遊び感覚で来た後輩に怒りを露にし……そう忠告した。
「そんなの分かってますよぉ、当然じゃないですか? 僕、これでも幽霊とかオカルト的なもの大好きなんですよ?」
私は、日向さんと彼が話しをするやり取りを目にし……確信した。
この人……苦手だと……
その後、それ以上彼に説教をしていても始まらないのでと日向さんが私達を連れ、準備していた体育館へと案内してくれた。
どうして開催場所が体育館なのかを日向さんに尋ねてみると……体育館は、音が響きやすく怖さを演出するにはもってこいだからだそうで……
私は、彼女のその発言を耳にし……何かが仕組まれているのを確信した。
そして、何が起こっても怖がらないと身構えながら……体育館の中へと突入した。
「いやー、真っ暗! 怖い話をするには、最高のシチュエーションだねぇ」
後ろから付いて来ているさんが、興奮しながらそう呟いた。
「さぁ、着いたわよ? 皆、準備は良い?」
日向さんは、全員が体育館内に入り……輪を作って座ったのを確認してから、そう呟いた。
当然、そこにいる全員が彼女のその言葉に頷いた。
「それじゃあ、第一回新聞部主催……百物語開催したいと思います!」
その日向さんの掛け声と共に、百物語が開始された。
細かい進行方法は、日向さんから順に時計回りで怪談話をして行き……話し終えた人は、新校舎三階理科室に設置されている懐中電灯消しに行くという仕組みの様だ。
どうやら日向さんは、百物語と肝試しを同時に行おうとしているみたいだ……。
「それは、この学校で実際に起こった話で……」
そんな風に私が頭の中でルール確認をしている内に、日向さんが怪談話を語り始めた。
鴉と話す事が出来る能力を所持している私だけど、怖い話やオカルト的な話題は若干苦手だったりする……。
なので、他の人の怪談話は聞いたフリをしながら……聞き流す事にした。
そうしないと自分が懐中電灯を消しに行く時に、怖くて行けないなんて事態に陥るからだ……。
聞き流している合間、横から他の子達の悲鳴やら笑い声が僅かに聞こえてくる……。
それを耳にする度、自分も聞いてみようか? という衝動に駆られるが、それを必死で堪え我慢した。
すると、突然横から声がした……。
「どうしたの? 怖いのかい?」
良く見るとその人物は、先程日向さんと口論になっていた雄介さんだった。
「あ、いえ、別にそういう訳では……」
私は、悟られまいと必死で強がり……彼のその言葉を否定する。
「別に、強がる必要ないと思うよ? 女の子が怖い話苦手なのは、当然でしょ?」
だけど、私が怖がっているのを完全に気付いているらしく……彼は、そう私に優しく呟いた。
「……えぇ、まぁ……そうですけど」
私は、先程の印象から苦手だと判断していた為……彼と話す事に僅かだが躊躇する。
「格好悪い話だけど、僕もそんなに怖いの得意じゃないんだ」
そんな私に合わせているのか、雄介さんはそう自分の事を話し始めた。
「え、でも……さっき怪談話は、大好きって……」
当然、先程日向さんと話していた内容との矛盾を指摘する。
「あぁ、怪談話は大好きだよ? 大好きなんだけど、聞いた後怖がったり眠れなくなったりしちゃうんだよねぇ」
……なるほど、ホラー好きな人が良く陥る現象だ。
「まぁ、そんな訳で僕も君の仲間って訳さ」
仲間……ねぇ……?
「君、同じクラスの黒江霧さんでしょ?」
意外な事に目の前の彼は、クラスでは影の薄い私の名前を知っていた。
「え、えぇ……そうです」
まだ若干ぎこちないけど、彼のその言葉に私は返事を返した。
「僕の名前は――」
「秋元雄介さんですよね? 知ってます、クラスの女の子達から聞かされてますから」
それはもう嫌って程に……
「あはは、そっかそっか……知ってたか! なら、話が早いや」
ん、何が話は早いのだろう……?
「僕、同じクラスになってから君の事……気になってたんだよねぇ」
え゛……冗談ですよね?
「良かったら、メアド交換しない? 友達になろうよ」
な、何なのだろう……これは? 一種のナンパという奴なのでしょうか?
「え、あ、あの……その……」
私がその彼の対応に困っていると横から……
「部長! 私、ちょっとトイレ行ってきます……霧さん、一緒に付いて来てくれますか?」
木葉さんがそう私に声をかけてくれて、彼との話を一時中断する事が出来た。
「え、あ、うん」
私が彼女のその提案に頷くと雄介さんは、少しだけ残念そうな表情を浮かべ……元いた場所へと戻って行った。
「全く……木葉? トイレは、始まる前に済ませなさいって言ってたでしょ?」
そんな彼女を見て、日向さんは……少し呆れ顔でそう注意をしていた。
「はは……すいません、じゃあ行きましょうか……霧さん?」
私は、彼女が立ち上がったのを見て同じ様に立ち上がり……頷いて見せた。
「危ない所でしたねぇ、霧さん?」
体育館を出た所で、先頭を歩いていた木葉さんが私の方へと振り向き……そう呟いた。
「え、えぇ……木葉さん、ありがとう」
やはり、木葉さんは……私が困っているのを見て助けてくれた様だ。
「良いですよ、私と霧さんの仲じゃないですかぁ」
そう呟きながら、彼女はにっこり笑顔を浮かべると再び先頭を歩き出した。
「とりあえず、トイレ付き合ってくれませんか? 実は、本当に行きたかったので……」
なるほど、本当に一人で行くのが怖いという理由もあった訳か……
「えぇ、勿論」
私は、彼女のその申し出に快く了承し……校舎の方へと向かった。
そして、玄関口から一番近い職員用のトイレへと私達は入る事にした。
入る直前、木葉さんがふざけて……
「中……何かいたりして……?」
などと呟き、トイレの扉に手をかけた。
私は、そんな彼女の言葉を聞き、そんな訳ないよと笑って見せようとしたけど……
「…………」
扉を開けた直後、木葉さんがその場で固まって動けなくなっているのに気付いた。
「ん、どうしたの?」
私は、木葉さんのその態度が気になり……彼女の視線の先へと目を向けた。
すると、そこには……
「ふんふんふ~ん♪」
陽気に鼻歌などと歌いながら、洗面所で手を洗う小学生位の女の子が……
その女の子は、私達が扉を開けた事に気付いていないのか……鼻歌に夢中なのか……こちらの存在に全く気付いていなかった。
でも、それに驚いた木葉さんが僅かに動いて……物音を立ててしまった。
「……ん?」
その物音を耳にし、女の子の視線がゆっくり私達の方へと向けられる。
そして、女の子と私達の言葉が完全に……
「「「……あっ」」」
……一致した。
「「でたぁぁぁぁぁっ!」」
その瞬間、私と木葉さんは絶叫し……トイレの外へと逃げ出した。
「ま、まずい……ばれた」
そんな声が逃走する時に、女の子の方角から聞こえた様な気がしたけど……きっと気のせいだろう。
その後、暫くの間私達はトイレに入ることが出来ず……外で念仏を唱えたり、十字を切る作業に没頭した。
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