カムイヘチリコホ。江釣子に転化した古い地名だ。付近には千二百年前とも言われる二百基もの古墳がある。和賀川の支流が網の目のように縦横に流れ、厳寒の今は訪れる人はいない。雪で覆い尽くされた枯野に、突き刺さるような寒風が吹き募っている。白い厚手のダウンジャケット、黒革のパンツ、防水ブーツを纏った、このような田舎にかくも美しい人がと思わせる、非常な美少女が一人、静かに雪を踏みしめて歩んでいく。古墳と古墳の間に樹氷がキラっと輝く、こんもりした樹林に囲まれ目立たぬ、小さな藁葺きの小屋がある。「ごめんください。どなたかいらっしゃいませんか?」銀の鈴を鳴らすように可憐な声を張り上げ、少女は固く閉ざされた小屋の扉を叩き続ける。暫くすると漸う、小屋の中で人の動く気配がして、扉がギイっと音をたてて開く。「どなたじゃな?」「上江釣子の絵里と申します。折り入ってご相談したいことがございまして、不躾ながら参上いたしました」「おお、おお。全き可愛いいおなご。さあ、さあ寒いから中に入って温まりなさい」年のころ六十歳は優に越す、白髭の老翁が手招きする。小屋の中は堆く膨大な書籍が積まれ、足の踏み場もないが、老人が座っていたあたりには、古色蒼然とした文机と椅子、机上には読み散らかした本の山、薪ストーブが赤々と燃え、暖かい。「そのソファに座って。今お茶を淹れて進ぜる」「おじいさまはたったお一人でこんな淋しい処にお住まいなのですか」「本という友達がいるから、ちっとも淋しくはないよ。さあ絵里ちゃん。お茶を飲んで。ここに娘が送ってくれた煎餅がある。食べなさい」「まあ、美味しいお茶・・」「めんこいノオ。お前さん今恋をしているな」絵里はぽっと顔を赤らめて言う。「はい。わたくしには今、恋焦がれる男性がいます。その人が食べてみたいと言ったお菓子の作り方を知りたくて、もしかしたら、おじいさまならご存知ではないかと思って、やってまいりました」「ほ、ほう。で、なんて言うのかな?」「はいっ。がとお・・しょこらと言うものです」「う〜む。がと・・がとお・・・ちょっと待っていなさい。調べてみよう」「ありがとうございますっ」少女は大きな黒い目を輝かし、ストーブの熱気で頬をばら色に染めてじっと待っている。小一時間ほどして、老人は奥から一抱えの古い書物を持って出てくる。「どうも、良く判らんが・・ちょっとここを読んでみなさい」和綴じの古文書でところどころ破れたり、紙魚がつき読みにくい。「・・・玉子二拾程大小ニ仕分数不同あり砂糖右卵二拾之掛目ニ同し但右品随分久如摺り麦粉壱斤程入かき拌セ形ニ入蒸焼形ハ花形箱等ニても入焼申候・・・」「おじいさま。これは?」「これはの、長崎出島出入りの阿蘭陀通詞が書いた阿蘭陀菓子の作り方のようだ。がとおとは、どうも仏蘭西語にて菓子を指す言葉・・しょこらは即ち南洋諸島に産するところの熱帯性常緑樹の実であるかかお豆の加工品らしい。文献であたると、この阿蘭陀菓子にかかお豆粉末でつくったしょこらと申すものを混ぜ合わせて作るものと推察される」「かかお豆。いったいどんなお豆なのかしら。小豆のようなものかしら」「どうも違うようだ。豆は干したものを炒って使う。メキシコのアステカなどから広まったようだ。頗る貴重品で値は金にも勝る。手に入れるため戦争さえ起こっている。干したかかお豆を磨り潰し、大鍋で炒る。そこに牛の乳、砂糖などを加えかき混ぜて固めたもの、これがしょこらである」「まあ、そんな貴重なお豆・・一体どうすれば、この江釣子で手に入れることが出来るんでしょう?」「う〜む。これは難問だ。お金を幾ら積んでも不可能じゃろう。でもしょこらそのものがもし、もしもだよ、入手できたら、この地で作ることは、不可能ではなかろう」「本当!まあ嬉しいわぁ。なんとしてでもわたくし、そのしょこらと言うもの手に入れてみます」「おじゃうさん。しょこらなんていうものは、ダイア並の値段だ。そもそもわが国には全く存在しない。ほれ、この書物に柔らかな黒いダイアと書かれている」「では、絶対手に入らないと仰るの・・」「絵里さん。泣いてしまっている・・困ったのお」少女は流れ落ちる涙を拭おうともせず、決然として言う。「おじいさま。私の命と引き換えに手に入れてください」「・・・う、う〜む。なんとかせにゃならんの・・・」沈思黙考する老人。再び書棚に戻り、懸命に書籍を渉猟していたが、やがて息を弾ませ絵里のところに戻る。「そ、そ、そうだ。忘れておった。来週、この江釣子に阿蘭陀のとてもえらい宣教師が、日本巡検の途中立ち寄ることを聞いた。宣教師は旅の途中、倒れることもあり、その気付け薬にしょこらを持ち歩くと書いてあったのを今思い出した!もしかしたら、絵里ちゃん。宣教師が持っているかもしれん。死ぬ気で頼んでみよう」「まぁっ!本当なのっ!絵里身体を張るわ!」「今泣いた烏がもう笑った。笑顔がとても可愛い。その笑顔で頼んでみなさい。きっといいことがあると思う」「ありがとうございましたっ!」絵里は老人の唇に自分のそれを重ね、又泣いた。
阿蘭陀人宣教師、枢機卿のヴァリヤーノは従者を三人ほど引き連れ、飾り立てた仔馬に跨り、支倉常長の故郷仙台を尋ねたあと、北上川沿いを一路、北に向かっていた。「パ、パードレ様。あと一体どの位歩けば、そのカムイヘチリコホとかいう村に着きますんで?」「そうだのオ。十日もすれば着くであろう」「しかし、枢機卿様も物好きで御座いますな。ヘチリコホにゃ何があるんでございますか」「ヤン・ヨーステン。その地は神々の集う神聖な場所だ。私は神に仕える身。諸国巡察の折り、聖地を訪れるのが勤めである」寒気や降雪に悩まされながら、その日から丁度十一日目、鷹鳥羽という部落にたどり着く。北上の大川が和賀に分ける追分だ。そこから歩を西に転じ糠塚、笊淵、鬼柳と見渡す限りの田園地帯を過ぎる。「ええところですね。パードレ」「うむ。我が故郷ロッテルダムの風景に似ている。素晴らしい」ぶなの原生林の生い茂る小高い丘を越えると、巨大な石組みが見えてくる。英吉利のストーンヘンジとそっくりだ。それにしてもでかい。ハポンの原住民アイヌ族の遺跡でその石舞台の上で彼らの信奉する神々が寄り集まって遊ぶ場所と聞く。雪を抱いた北上山地を背景に玄武岩の巨石を組み合わせた構造物が異形にそそり立つ。ヴァリアーノは暫し、遥か遠くよりやってきた旅の疲れも忘れ、感慨に打たれ、跪くと十字を切り、神への祈りを捧げる。「天にまします我らが神よ。願わくば、み國を栄させたまえ・・・」「パードレ様。あちらに小屋が見えます。なにやら煙が立ち昇り、人が住んでいるように見えます」「これも、神の引き合わせかもしれぬ。そちらへ行って布教してみようか」小屋に向かう枢機卿と従者三人。一行の前に赤き着物を纏った黒髪の美少女が駆け寄り、我が身を雪の中に投げ出して叫ぶ。「ぎ、ぎ、ぎぶみー あ しょこら!」「な、な、なんと申した?しょこらとな」「ぎぶみー しょこら!」「判らぬ。何をこの私に願っておるのじゃ」「パードレ。この娘、枢機卿が命より大事にしているchocolatを欲しいと言っているのではありませんか?」「泣いている。なんという可愛い娘じゃ。雛人形のようだ」「しょこら。しょこら。ぷりーず」小屋の中から白髭の老人が出てくる。ヴァリヤーノを認めると近づいて、流暢な阿蘭陀語で話し掛ける。「ヴァリアーノ枢機卿。遠路はるばる誠に辛酸な旅で御座いましたろう。ご苦労様でございます。今この娘が神父様にお願いした件、私がそうしろと申したことでございます。皆様。外は寒気が厳しいですから、中に入ってくだされ。そこで詳しくお話致します」「左様か。皆のもの、老人の言葉に甘えさせてもらい小屋に入り暖をとろうではないか」ヴァリヤーノと従者、それに絵里が入ると小屋は狭く燃え盛るストーブで暑い位だ。「実はノ。枢機卿。この娘は絵里さんといい、北上郷随一の美女だ。昨日突然この娘が私のところへやってきた。しょこらを手に入れたいと言う。愛する人にがとおを設えたいのだ」「ご老人。基督教伝道のため我らは諸国を行脚し、もしもの時のため、法王庁より与えられたしょこらひとかけらは、いかにも所持しておる。然しながら言うまでもなく、この品はサンタマリアクルスにも勝るとも劣らぬ、我らにとって命より大事な品。いかに美貌の少女から懇願されても、分け与えることは出来ぬ」「この娘、しょこらが手に入らぬとあらば、この場で自害致すと申しておる。それでも譲って下さらぬと申すのだな。パードレ。そもそも貴公らの教えは、愛は全てに勝る崇高な行為と説いているのではないか。愛の為我が身を捨てるという純真な行為に悖ることをしようとしているのでありますぞ」「む、むっ・・そこまで言われるのではいかしたがあるまい。ヨーステン。その頭陀袋よりしょこらをひとかけらこの娘に分け与えるのだ」「よ、よ、宜しいンで?」「枢機卿の言葉に二言はないっ」いつしかあたりは日もとっぷり暮れ、外は満天の星が輝いている。「どろ、どろ、どろ、・・・」しじまを打ち破る重低音。雪崩のような地鳴りが聞こえて来る。何時の間にかカムイヘチリコホの周りには、村人が大勢集まり、篝火が焚かれている。どんつく、どんどんつく。太鼓が腹に響くように鳴り始める。ピィーと笛が鳴ると見るからに恐ろしげな鬼の面を被った異形な黒装束の若者が赤いタスキをかけ乱舞し始めた。老人の後について皆外に出る。「神々の集まりか?」「お、鬼剣舞だ・・大和朝廷に最後まで反抗して、この地で果てたアテルイの生まれ変わり。千二百年前の怨念が篭っている・・」「うむ。なんというエキゾチズム。亜細亜の果てで斯様な土俗的なシャマニズムが見れるとは・・。お前達。眼を見開いて良く見ておけ。アフリカ奥地でもこのような珍奇な踊りは見られぬぞ」踊り手の頭上には山鳥の羽が一杯につけられ、踊るにつれ羽ばたくように見える。「キエ〜っ」時折奇声が上がり、踊り手も段々と増え、今では八人ほどの乱舞。トランス状態になり半狂乱な男も混じる。「か、かずやぁっ!」今までじっと黙って踊りを見つめていた絵里が叫ぶ。どんつく。どんつく。どろどろどろ。ピイーっ!ピイーっ!踊りは最高潮。中央で一人白い鬼面をつけ恐ろしげに踊り狂う若者。それが絵里の想い人の一弥。「ウオーっ。モッコ。モッコォ。モッコォ」「素敵。素敵よ。一弥。好きっ」篝火が消え、祭りは終わった。村人は去り、今は誰一人いない真の闇に戻る。「さあ、私らも出発だ」ヴァリヤーノ一行も去って、絵里と老人だけが残される。「中央で踊っていた若者がいたであろう。あの男こそ、千二百年前の英雄、アテルイの数えて百二十六代、隠れアイヌの子孫、一弥殿だ。今は名を変えているが本当の名はカヅルイだ。この秘密はワシを初め極少数の人しかしらぬ」「本当なのですか?一弥さんは王子様だったの?」「左様だ。見るからに気品あふれる風格。優しくて古今無双の怪力の持ち主。我らが救い主なのだ」「どうしましょう。わたしアノ人がそんなエライ人とは知らず、愛してしまいました」「それで良いのである。絵里様こそ、アテルイの王子カヅルイの后に相応しい、非常な美貌と気品。私は及ばずながら応援に努めまする」今や老人は絵里に傅くように頭を垂れ、従順な僕となることを誓い、手の甲に口付けする。「しょこらは手にはいった。後は如何にしてがとおに仕立てるかじゃ」「おじいさま。ありがとう。偶然一弥様の鬼剣舞も見れたし。幸せだわ」「なに。これからも大変だ。がとおを作らにゃならん。明日は材料の買出しだ。今晩はもう遅いからわしのところに泊まって行って下され」老人に抱かれ絵里は寝入ってしまう。「ほんに、可愛いお姫様だのオ」次の日、老人と孫娘のような絵里は村村を回って風呂敷一杯のがとうの材料をかき集めた。小麦、砂糖、鶏卵、香料・・・「うむ。これで充分であろう。絵里様。我が小屋が目下の厨房。遠慮なく使ってください」「そうさせて頂きます。何から何まで、こんなにご親切に・・一体お爺様は何処からいらしたの?お名前は?」「わしか・・わしは名乗る程の者ではない。一介の風来坊じゃ。縁あってこの江釣子に居を定めた。名か。名は仮にA山とでも呼んで貰いましょう」「間違っていたらご免なさい。A山老人はもしや一弥さんのことをご存知なのではありませんか?昨日の鬼剣舞を見ていた時、ふっとそんな気がいたしました」「流石鋭い。一弥はワシの教え子です。しかし不肖の弟子での。ワシの言うことも聞かず、ぷいっと何時の間にか、俺のもとを去ってこの村に帰った。ワシはノ、一弥が不肖の弟子だけあって、心配で堪らなくなり、この村まで追いかけて来た次第。面目ない」「なにを仰いますの。一弥さんは素晴らしい男性です。わたくしは知り合い、お互い好意を持ってまだ日は浅いのですが、これだけは言えます。あの方は男の中の男です。勇気があって優しい。まだ唇しか許していませんが、今度このがとうを差し上げる時、全てを彼に捧げようと想っています」「うむ。お喋りはこの位にして、早速がとおをお作り遊ばれては。拙者もお手伝い致します」本棚に隠れた小屋奥の扉を開けると、そこは近代設備が施された高級厨房である。「まあ、凄いキッチンだわ。お爺様、こんな田舎によくもマア、こんな素敵なキッチンを造っていましたね」「うむ。ワシは本以外唯一の楽しみは料理での。以前より順次整えていき、今はホテルオークラの厨房より優れた設備が揃っている。さあ、絵里様。このエプロンをお着けになって。超可愛いなぁ」「さあ、まず初めどうすればいいの?」「鍋に出来たがとおが剥がしやすいように和紙を敷いておく。次にしょこらを細かく刻み、湯煎にかける」「湯煎って?」「ほら、酒の燗をつける如く、沸かした湯の中に別の入れ物に入れたしょこらをば、ゆっくり暖めて溶かす。さすれば百度以上にはならぬから、焦げ付く恐れはない」「では、この小鍋に刻んだしょこらを入れ暖めます。わぁ、少し溶け出した」「上手じゃないか」「そこに牛酪、鶏卵の黄身のみを取り出し加える。そうじゃ。いかん、白身は絶対混ぜてはいかん」「ご、ごめんなさい。もう一度作るわ」「おおよしよし。今度は上手くいったようじゃ」「湯煎したままゆるりとかき混ぜる」「こうですか?オタマ杓子を使います」「うむ。飲み込みがよい。次はめれんげ作りだ。少々難しいぞ」「頑張ります」「先ほどの黄身を取り去った残りの卵白をこの茶筅でかき混ぜる。段々手早くせよ。そう、そうだ。もっと。もっと混ぜなさい」「モオ、手が痛くって」「ここで休んだら、膨らみのある柔らかながとおは出来ぬ。もう少しだ。そりゃ。頑張れ。もうそろそろ、ワシが代わってやろう」「おじいさま。お願い」「よっしゃぁ。どうだ。こんなに卵が泡立ち、白濁し茶筅を引き上げても泡が立ったままになった。これで良し。次に砂糖、小麦粉を篩にかけゆっくりと加えていく。それをかき混ぜる場合決してダマが出来ぬよう手早く切るようにさっくりと混ぜねばならぬ」「混ざったかな?さすれば先に溶かしておいたしょこらをばコレの中に流し込む」「上手。上手。絵里は中々才能がある。可愛いばかりじゃないのお」「あら。褒められちゃったわ。おじいさまのご指導が宜しいからですわ」「今度はこれを、そこのオーブンに入れ四十分ほど焼く」「上手く焼けるかしら」「大丈夫。火加減はほれ、こんな具合じゃ。あとは焼きあがるのを待つだけ」「あら。凄く美味しそうな匂いがしてきた。おじいさま、少し膨らんできたようです」「もう少しだ。オーブンは無闇に開けてはならん。我慢するんだ」しばらくするとがとお独特な香ばしい、甘い匂いがキッチン全体に漂ってくる。「うむ、そろそろ、良さそうだ。絵里ちゃん。開けて取り出しなさい」「わぁっ。緊張する」トレイをゆっくり引き出すと丸い型に入った見事な黒くふっくらして中は瑞々しいがとおしょこらが出来上がっている。「わぁオっ!出来ました。美味しそう」絵里は感激で涙を零しながら、老人に抱きつく。「うれしいわ。早く一弥に食べさせてあげたい」「生クリームをつけて食べても良い。じいが生クリームを作っておいたから一緒に持って行きなさい」「おじいさま。本当にありがとうございました。早速これを持って一弥さんの家に行ってまいります」「気をつけなさい。雪で道がすべる。このじいが一弥殿の家まで絵里ちゃんを背負って行ってあげる」「そ、そんなぁ。こんなおじいさんに負ぶってもらっては。気が引けるわ」「なんの。なんの。可愛い子のためにゃ、なんでもするんじゃ」老人に背負われ、絵里は一里先の一弥宅に着いた。途中自宅に寄ってお洒落に着替えている。ピンクのミニスカートに白兎のショートコートの下は第二ボタンまで外した白い絹のシャツ、ストレートの自慢の長い黒髪は十二分に櫛を入れ輝いている。ルージュはピンク。メイクはナチュラル。アイシャドウとペディキュアはローズだ。美しい脚にはロングブーツ。「ごめんください。上江釣子の絵里でございます」「おう。絵里。良く来た。さあ、早く中にお入りなさい。おや、その老人は?」「な、なんでも御座いません。孫娘を負ぶってこちらまで送ってきただけでございます。直ぐに退散いたします」「そうですか。じゃあ、絵里ちゃん。こっちにどうぞ。前に一度来たから、ボクの部屋解っているでしょう。キミの好きな寄せ鍋を用意しているよ」「そう。私、貴方にプレゼントがあるのよ。前喫茶店でデートしたとき、がとおしょこらを一度食べて見たいって言っていたでしょう。でも私作り方も解らないし、材料も手に入らない。無論がとおを作る設備も無かったの。でも貴方の希望は絶対適えなければならないと思って、村外れに住むさっきのおじいさんを尋ねたのよ。そしたら、あのおじいさん親切で、何から何まで教えてもらって作ったの」「えっ。あの、が、がとおを作ったの?以前ボクの畑作りに手伝いに来ていた、オランダ人技師がさ、オランダにはがとおしょこらという名の極めて美味なる菓子があると聞いて、一生に一度でよいから食べて見たいと思っていたんだ。絵里ちゃんが作ってくれたの?嬉しすぎる」「さあ、この箱の蓋を開けて一口食べて御覧なさい。生クリームをたっぷりつけて。そ、そうだわ。私が一弥に食べさせてあげる。さ、あ〜んして。どお?」「ん、ん、ん、んめえっ!!て、天国じゃぁ。天国の食べ物じゃぁ!!うっめえ!美味すぎる!」「私にも口移しで食べさせて。あら、本当に美味しいネ。一弥好きよ」二人は長く長く口をつけはなれようとしない・・・
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