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六花義姉さん
作:石鍋 盥囘し


ベッドに体を倒す。

視線をテレビからはずし、ぼんやりと外を眺めた。雪が降っている。
「やっぱ降ってきたのか」
部屋のテレビには、苦手な芸人がアップで映し出されてはしゃいでいた。
もう、そのやや甲高い声を聞くのも嫌だったから、コンポに手を伸ばした。その番組はまだ見たかったから、チャンネルは変えないままで。

僅かの間があってから、お気に入りのバラードが流れ出す。
半分くらいの曖昧な聞き方で、うっすらと積もり始めた雪をただ見つめていた。

不意に、ノックもないまま勢い良く部屋のドアが開いた。
「桂、雪だよ雪!」
「……義姉さん、いつもノックしてって言ってるだろ?」
僕は何時ものように、とりわけ平静な声を繕ってから体を起こした。
風呂からあがったばかりの義姉さんは、やっぱり何時ものように、ほんのり桜色に上気した肌に下着、そしてぞんざいにブラウスを羽織っただけの格好だ。
酷く不精な格好だけれど、御世辞を抜きにして美人な義姉さんだからこそ、そんな不精さが美点に見えるのかもしれない。

「またそんなだらしのない格好で」
溜め息を溢す素振りで、僕はやっと視線をテレビへと逃がした。あぁまだこの芸人。

母さんが義父さんと再婚してまだ1ヶ月しかたってないっていうのに、義姉さんは昔からの姉弟みたいに僕の事をみている。
というか4つも歳下の僕の事を子供扱いしているだけなのかもしれない……。
とにかく、仲良く出来ているのは良かったとは思うけど、義姉さんにはどぎまぎさせられてばかりだ。
「もう、もったいないわね」
義姉さんは、僕の言葉に反応もしないで、テレビとコンポの電源を切った。
「ほら」
義姉さんはのそのそとベッドへ上がり込んで、僕を押しのけて、自分の座るスペースを作った。そして電車に乗った子供のように、ベッドに膝立ちで外の雪を見つめている。
「雪が降る音がするよ」

義姉さんはたまに真面目な顔をして、全くもっておかしなことを言う。
こんなときになんて切り返したらいいのか、少し迷う。
「うわ、可愛くないねー」
表情に出ていたのか、無言の僕をちらりと流し見て、義姉さんは大袈裟に嘆いて見せた。
なんだか少し気に障った。
「だって雪が降る音がするって……そんなの無いだろ」
「生意気にっ。ちょっと黙ってなさいよ」
義姉さんは「しぃ〜」なんて口元に一本指をあてた。
やっぱり僕の事を子供扱いしている。

「まったく……」

肩が触れる程の今の距離に、平静を保つのが精一杯だっていうのに、義姉さんは無防備に目を閉じた。

雪が降る音が聞こえるっていうのなら、今の僕のじゃじゃ馬な鼓動まで聞こえるんじゃないか、なんて考えて気恥ずかしくなった。

「ほら、今の!」
「何が?」
どきりと、一際強い音。
「今の音よ!さはさは、って」
「さはさは?」
耳をすませて聞いてみる。
聞こえるのは、耳鳴りがしそうな静寂に、義姉さんの吐息と、僕の早鐘。

そして、くちゅん、と義姉さんのくしゃみ。

「……ほら、今夜は寒いから」
「大丈夫なのに」
「まったく世話の焼ける義姉さんだ」
「生意気ー」

義姉さんは、僕を小突いて立ち上がった。
「じゃ、おやすみなさい、桂」
「おやすみ。風邪ひくなよ」
「おー」
ドアが閉まった。一度廊下からくしゃみが聞こえた。



部屋には、改めてテレビをつけるのがもったいないような静寂が流れていた。

嘆息。
少し早いけれど電気を消して布団にもぐる。

はさり。

はさり。


六花義姉さん。

六花(りっか)というのは、北海道辺りで雪の結晶をさす言葉なのよ、素敵でしょう。

義姉さんの言葉を思い出す。
はさり。

はさり。


春が来て、暖かい日がさしたなら、僕につのるこの雪も、なんとか綺麗に溶けるのだろうか。


はさり。

はさり。


枕越しに、雪が積もる音が微かに聞こえていた。




どうなんでしょうか。

色々な箱を明け閉めしたような、そうでもないような。


まぁ、満足かなぁと言うところですか。

携帯から書くのは堪えますね。


読んでいただき、ありがとうございました

また精進精進☆













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