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アンダーワールドゲート~"ALICE"  『観測者の少女と夢見る少女』 作者:此峰 優

二章 力の解放編

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第29話 成果と代償

「博士ー、研究の資料見てくれー」

「お邪魔しますわ博士。」

「ん?ちょっと待ってくれ、今行くぞ。」


私達は今博士の研究所へと足を運び、ハンネスの持ってきた資料について博士に意見を聞こうと部屋を訪れたのでした。

博士も何か研究の最中らしく、忙しい様子。



ドアの中から聞こえる機械音。
何か作ってるのかしら?


そう考えている最中、機械音は止まり、ドアはゆっくり開いた。

そして白く立派な顎髭を撫でながら博士が顔を出した。

「なんじゃ、お前達か。
今回は…ハンネスの研究をみて欲しそうじゃな。」

「頼むぜじいさん。
これが分かればもしかしたら適正の少ない奴でも無茶なく魔法が使えるかも知れねぇからな。
それにこれがあれば…」

「おうおう、話は中で聞くぞ。
取り敢えず中に入りなさい。
ミールは付き添いか?お前さんも見てくといい。」

「あら、ありがとうございます博士。」


博士に誘われ、その部屋のなかに入る。

すると、いつもは散らかっている部屋はやけに綺麗にしてあり、代わりに机の上に奇妙な機械が置いてあったのです。

一見顕微鏡見たいな形なのですが、どうやら何かを照射する機械の様で、危ないから触らない様にと念を押されました。


そして一息ついて、待ちかねた様子でハンネスが喋り出した。

「今回見て欲しいのはこれだ。
さっきも言ったが、これがあれば適正の無い魔法術師でも魔法が扱える。
誰でも魔法が使えるんだ。

これまで適正のある人をスキルジョブ、適正の無い人をノーマリティ何て差別的に呼んでたが、それを無くす目的で作ってみたい。

俺の親父たちもノーマリティな上、博士が居ないところだと色々言われてるみたいだからな。」

「なんじゃと!?それはすまなかったの…もっと気を配って置くべきだった。」

「じいさんのせいじゃねぇよ、多少適正があるだけで見下すのがおかしいんだよ。
とにかくこれがあれば誰でも便利な術式を扱える訳だ。

それに、もしもマモノとかヤバいやつらに襲われたら身も守れないんじゃ可哀想だからな。
リミット付きで攻撃魔法も撃てるようにしときたい。」


ハンネスはペラペラと次々にその論文を読み上げていく。

ハンネスの言っていたようにこの世界にはノーマリティと言う普通の人間と、スキルジョブと言われる「ゲート事件」以降に現れた魔法適正のある人達で口論や抗争が起きていたのです。

私達の国、ジーティリアス王国、隣のオースレイト王国、その他ハースロット中東王国、北ナイジャックス連邦国等、各国々はそれで数々の問題や事件を起こしていた。

ゲートの事件はその実そんなに多くなく、魔法や人体被害の大半は抗争や紛争による物だったのでした。

それを見かねて彼はそんな馬鹿げた事で争うのはゴメンだと、今回の研究に取りついたのでした。

それに、前回の事件で何も出来なかった自分を一から鍛え直すとか…努力家ですわね。


「じいさん、いや博士。
あんたの力が必要なんだ。

分子抽出を魔素分解と称して分子を抽出、魔素分解によって抽出したエネルギー源となる分子Aを電気や熱を通しやすく、比較的持ち運びやすい大きさの銀と錬成。
そうすることで一時的に分子を含んだ錬成合金が出来る。
それの中に混ざった分子を維持し、継続的に外部から抽出し続ける事で分子を絶えず中に留まらせ、使用する事で減った分子は自分自ら自動的に外気から吸収する仕組みのSA(スキルアーツを組み合わせれば…キャスト(詠唱行為)によって如何なる魔法も発現するはずだ。」


「成る程な…しかし、そのSAは既にSLL等で実現はしておるが…あれはかなりの大きさだ。
しかも比較的軽くて質量も小さいアルミや亜鉛等で作っておる。
銀を使用しても…金属が魔素を消滅させてしまうのでは無いのか?」

「大丈夫だ、銀の中に更に砂鉄を混ぜることにした。」

「砂鉄じゃと?」

「そうだ、な?ミール。」


ぽーっと見てた私も名前を呼ばれ我に帰る。
そう言えばもしかしたら説明を振るかもとお願いされたのでした。


「そ、そうですわ。
砂鉄に各属性の最下級魔法を当てて、分子の滞在時間を図ってみた所、砂鉄はその当てられた分子全てを吸収し、滞在させましたの。
…これでいいの?」

にこっと微笑み、グーサインを出すハンネス。

何とか説明できてほっとした。
何故かは分かりませんが…最近ハンネスの隣に居ると妙に落ち着かなくて…なんでしょうこれ…?


そしてハンネスが続ける。

「分かったか博士?
これで大きさに囚われず、SLLの要領で擬似的に分子吸収体を作れる。
それに認識振動音波装置を組み込み、キャストによって発動…消費された分子は金属に音波を当てたキャストスペルによって残った振動を利用して外気からSLLの要領で分子を取り込む…これで完成だが…一つ足りない。」

むっとした顔でうつ向く。
博士は不思議にもそれが分かっていた。

「…コア…じゃな?」

「…そうだ。
人間が魔法を使うとき、atom…つまり原子となる物を介して発動する。

しかし金属やそれにはそれがない。
分子を消費するだけでは緩急もつかず、原子がなければ発動する魔法も制御できん。

コアを…人工的に作れればな…これまで色んな研究者が挑戦したが、人工的なコアを完全に作ることは成功していない。

精々受けたキャストや魔法をそのまま流す程度だ。
それには勿論スキルジョブが介入しないと発動しない上に実用的じゃない。

あのへっぽこ隊長が使ってた奴だな。」


外部から受けた魔法を増幅して放つ…
しかし機械自信で発動してないので、それではただの垂れ流しだと言いたげだった。


「コアさえあれば…この正式な人工術式展開型魔法発現装置が…くそっ!ここまで理論は出来ても肝心の原理が足らねぇんじゃ意味がねぇ。」



ここまで話したところで、博士は立ち上がり、彼に一つの四角い箱を取り出した。


それを空けると、なんとガラス玉の様なものの中に黄色の光が渦巻いていた。

「な、なんだこれ?ビー玉…じゃねぇよな?中のこの光はなんだ?」


「これは…属性付加した分子の結晶石じゃ。」


「結晶!?そんなものが!?」


博士はにこやかにその結晶について話し出した。


「実はな、あの少女に言われ、近くの遺跡に行ってみたんじゃ…すると大きな扉の前に光輝く大きな石があっての。

それがどうやら魔法を宿した"魔素結晶"と呼ばれる物でな。
少し削ったら赤色やら黄色やら…色んな色に分かれて出てきおった。

もしかしたらこれを機械に取り組めばお主の"機械による魔法発現"も実現するかもしれん。

さっきの機械音はこれを磨いて形を整えておったんだ。」


それを聞いてハンネスの顔はみるみるやる気と希望に満ち溢れていく。


「そうか…分子の影響を受けるのは人間だけじゃなくて自然にも影響を及ぼしていたのか…!!
何でも人工的ではなく、自然の力を活用する…一見出来ている様で、実は自然的な物は調べていなかった。
金属等も既に加工された物を実験で使っていたが…原石や付近の鉱石、草、木、土なんかも実験の足しになるかも知れない。

そしてその魔素結晶…それがその一例って分けか。」


博士はそれにつけ加える様に彼にそれの性質を語った。


「きれいなだけじゃなく、この結晶はな…ミリボルト!!」

突然博士が叫んだ。

するとどうだろう、その手に持った結晶から電撃が放たれた。

それは壁にあたり、直ぐ様消えてしまった。

ハンネスと私は驚愕して口を開けていた。

その様子を見て博士はほっほっほっと笑う。


「私はノーマリティ…なのにミリボルトが撃ててしまった。
どういうことじゃ?」


ハンネスは興味津々な子供の様に食いつくように答える。

「それは色に応じた属性の魔法がキャストによって結晶に反応し、発現させた…って事だな!!」


うむ、と頷く。
そして二人は答えを、その例を見ることによって研究の理論を完成させる。

「魔素結晶なら…機械で他をカバーすれば誰でも魔法が扱える!!
じいさんとんでもない物を見つけたもんだな!!すげぇぜ!!」

「私は博士だ、当たり前じゃろ?まあリキャスト(最発動)には少しだけ時間がかかるがな…ほれ。」


そう言うと3つ、磨いたガラス玉のような結晶をハンネスに渡した。

赤色、黄色、青色。

三原色を彩り微かに光るそれを博士は彼に授けた。


「いいのか?貰っちゃって…」

「当たり前だ、お前は私の一番弟子みたいなもんだ。
お前さんの両親にも良く手伝ってもらってるしその縁だ。
…絶対にそれを完成させるんじゃぞ?」


「…博士…」

「良かったですわねハンネス!」

「ああ!これなら充分コアに使える…よし、明日から忙しくなるぜ!
人工術式展開型魔法発現装置…完成させてみせる!ありがとな博士!じゃあな!」

そう言うと即刻ドアを開いて走っていってしまった。

「ほっほ、若いってのはいいよの。」

「あら、最近博士…何だかお爺様みたいですわ。」

「若ぶるってのはもうやめじゃよ、あんなに有望な若いやつらが居るんだ、もう任せても安心じゃろ。」

「まあ、博士もまだまだですわ。
それにしても、あの結晶はシルヴィアさんからの情報でしたか…やっぱりあの子ただ者じゃ無いですわね…」


ふと私がそう言うと、博士が驚いた表情を見せる。


「シルヴィア…彼女はシルヴィアと言うのか!」


私は何故驚いているか分からないが取り敢えず答えた。

「ええ?彼女…あ、そうですわ。
彼女も姓がパーシヴァルでしたのよ!もう驚いて…博士?」


博士はそれを聞いて更に驚く。
まさか…いや、あの子は…と何かボソボソ言っていたが直ぐに私に向き直り、微笑んだのでした。


「なんでもないよ、そんな偶然があるもんじゃの。」

「そうですわね……あっ!私もハンネスを追わないと。
ではごきげんよう博士。」



私はそのまま博士に一礼し、ハンネスの後を追った。
私も出来るだけ彼に手伝いをしたい…そう思いながら走ったのでした。






彼女達が居なくなり、静かになった部屋のなか。

博士はランプの光を見つめ、昔の事を思い出していた。




過去、博士には一人の娘が居た。

母親は事故で居なくなり、私は一人であの子を育てた。

しかし娘は、妻を無くし研究続きの私を見て、出ていってしまった。

僅か七歳。
一人で出ていってもなにもできないと思っていた。

しかし帰ってこなかった。

後日電話が掛かってきた。
彼女が誘拐されたとの話だった。



直ぐに私は向かったが、誘拐した奴らはその少女をそのまま野放しにしたと言った。


そして、見つからなかった。



他の連中からは、見ていなかったから、構わないからと罵声を浴びせられ、そして終いには娘は死んだとの話も聞かされた。


それを気に私は何もかも忘れ、研究で日々を過ごした。

僅か3ヶ月だ。
それで博士の地位と知識を得た。


私の娘の…居なくなった娘の名前はシルヴィア。


そして、後に"爆心地"にて今のエシルアを見つけた。

シルヴィアそっくりだった。
黒髪、青色の眼。

だけど記憶も思い出も全く違うものだった。

私は娘を彼女に重ね育てた。

そして今……

彼女に良く似た、何だか懐かしいような寂しいようなあの少女…

金髪青眼の少女。
彼女の名前はシルヴィア…パーシヴァル。





「あの子は全く別人じゃ…偶然じゃな…エシルアはエシルア…あの子はあの子。
少女もあの子何かじゃないはず。

……今更じゃな。
研究を続けるとしよう。」




博士は目の前にある結晶に機械を当て、再び磨き始めたのであった。
そろそろ話も安定してきたような気がする(気がするだけ)
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