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アンダーワールドゲート~"ALICE"  『観測者の少女と夢見る少女』 作者:此峰 優

二章 力の解放編

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第30話 マモノ

学園前噴水広場。

ハンネスとミールは博士に貰った結晶を眺め、見据えた最後の実験へと移ろうとしていた。


「よし、これをセットしてから…理論演算ボックスにこれを…よし入った。」


「わざわざ事前にコア用の隙間を作っておくなんて…ちゃっかりしてますわ。」


「どのみちここに色々入れてみようとしてたしな。
…爆発するかもしれんけどな!」

「ちょっと!?私を巻き込むのはごめんでしてよ!?」

「冗談だよ…よし…行くぞ。」



コアとなる結晶を嵌め込み、スイッチを入れる。

小さな起動音と共に色鮮やかなランプが光る。

手にすっぽりはまるくらいの筒状の機械は正常に作動していた。

「あとはキャストだ。
何にしようか…青色入れたし…ウォーターボールとかそこら辺にしとくか。」

「か、軽くですわよ!私離れてるから!」

「だから爆発しねぇって!!何か不安になっちゃうだろぉ!?」


そう言いながらも、キャスト認識用のボタンをゆっくりおす。
噴水に向かってそれを向けて、マイクとなる部分に喋りかけた。

「うぉ、ウォーターボール!!」




ポワン!

万が一の為に目を瞑ったがどうやらなにも起こらなかったらしい。

そう思って噴水を見た。


「…浮いてる…水が浮いてる!ウォーターボールが発現してる!!
やったぞ!!成功だぞ!!ミール!!」


「や、やりましたわハンネス!!完成ですわ!!」


思わず二人とも抱きついて喜びに飛び跳ねる。

が、直ぐに我に帰り、二人して目を背ける。
ちょっぴり恥ずかしそうにするハンネスと心臓をバクバクさせながら赤面するミール。

噴水も相まってか差ながら初デートのカップルの様な絵面。
それを見かねてハンネスは振り向く。

「ミール。
お前の数々の協力もあって、これを完成させられた。
本当にありがとう。
この通り感謝する。」

頭を深く下げ、彼は全力の一礼をした。

ミールもすぐ振り向き、同じく一礼。

「わ、ワタクシも!この…研究に付き合ってて楽しかったですわ…その…だから…おめでとうハンネス。」

彼の手を優しく握り、感謝と尊敬の意を込めて彼に微笑んだ。


ハンネスはそれを見て微笑み返し、彼女に言った。

「片言になってるぞ…まあいいや、でもな?
終わったみたいに言うなよ、これからもどんどん続けてくんだ。
まだまだ一歩踏み出したばっかりだぜ?」

「まあ!確かにそうですわね。
研究始めから8ヵ月程度で完成したのだから次はその半分でもっと便利な物を作る事にしましょ!」

キラキラと目を輝かせてハンネスを見つめる。

いや、流石にそれはキツいだろと言わんばかりに苦笑するが、その威勢は満更でもなく、二人揃って笑っていた。




「み、ミールさん!?!?」

と、そこで水を挿すように白衣の少年が現れた。


「あら?あなた一年生の…どうしましたの?」

「そんな…その男の人…」

ハンネスを指差して驚いた表情で指をさす。

「お、俺?俺はハンネス。
こいつと同じ二年で、今丁度研究に一段落ついて……」

「ミールさん…僕の研究…手伝ってくれましたよね?」

「あのー…話聞いてルー?」

ハンネスを無視しミールに迫る。

「もしかして世界分子解熱式融合合金の話…だったかしら?
あれは…確かあなたが待っててって…」

「そうです!!完成させたんですよほら!!」

少年が懐からそれを取り出す。

紫のラインが入った金色のバッジ。

「それが…あれは確か出来ないって…」

「出来たんですよ!!
ある人が手伝ってくれて…いや人と言うより…ウサギ?まあいいや…ふふふ、これで!これをつけると魔法の威力、その人の精神が強化されるんです。見てください!!」

少年が白衣を脱ぐと、シャツの上にそのバッジが深い紫の煙を放ちながら禍々しくくっついていた。

様子が明らかにおかしい。

「…それ…大丈夫ですの?何だか顔色が…」

「さあ…ミールさんもつけてください…」

「えっ?」

「これは…罰です、そう!罰なんです!!
僕だけ…僕とだけ研究をしてくれる…そう思ってたのに!!
そんなちんけな男と一緒になって……きっとその男に何か弱味を握られてるとか!?
そうなんですね!?」

叫ぶ少年にミールは困惑しつつも反論する。

「ま、待ちなさい!私はあなたの実験に協力するって言ったわ。
確かに2ヶ月前、あなたに頼まれて…でもあなたちょっとおかしいですわ!」


───────────────────────────────

2ヶ月前。


シルヴィアが何処かに行くと言って離れていた時期。

彼は私に声をかけて来た。


「あの!ミールさん!」

「あら?あなたは…?」

「僕は一年のシオって言います!
実はお願いがあって…」


話を聞くと、世界分子解熱式融合合金の理論があっているか確かめてほしいとの事だった。

なぜ私に声をかけたのか分かりませんでしたが、実験には手を貸しました。

爆発系の炎属性魔法をその金属に当て、炉解仕掛けた鉄を予め用意した抽出分子に融合させるもの。

しかし、それはハンネスが以前行っていて、失敗する事は分かっていました。

「も、もういちど!」

「残念ながらそれは無理ですわ…もう少し理論が足りないと思うんですわ…でも、もしあなたがそれを完成させたら…また協力して差し上げますわ?」

「本当ですか!?完成させれば…あなたと研究を出来るんですね?」

「勿論協力しますわ、頑張ってね…シオさん。」





───────────────────────────────

「思い出しましたわ、シオさん。
でもあの理論は既にハンネスが失敗してて不可能だった筈ですわ…」

「ふむ、解熱式合金は確かに無理だった…一体何を…」


「ウサギさんに力を分けて貰ったんですよ。」

そう言うと、右手からどす黒い黒煙を出してみせた。

それを見て咄嗟にハンネスはミールの前に立つ。

おぞましい程の恐怖とプレッシャー。

間違いなく異常なエネルギーだった。

「下がれ!こいつ何かおかしいぞ!」

「し、シオさん一体どうしたんですか!」


少年は薄ら笑い、答えた。

「僕はこの力であなたを僕の物にしたい…ずっと憧れて…好きだったあなたを…認めて欲しかった…だけど足りなかった。

そしたら!!あのウサギが僕の前に現れたんだ!
その力がほしいかってね?
勿論頷いたさ。
そしてこの力を手にいれた…ねじ曲げ、湾曲し、世界の理何かなーんにも関係ない絶対的な力!
これで完成させたんですよ…ほら!凄いでしょ?認めて下さいよ!!ミールさ…」


「恥ずかしく無いんですの?」

「…はっ…?」

ミールはハンネスの前に出て彼に言い放った。

彼の望んだ顔とは真逆。強く、厳しい表情で。


「ウサギ…と言うのが誰かは知りませんが、そんな意味のわからない物に囚われて…恥ずかしく無いのですか?」

「ち、ちゃんと完成させたんですよ!?ほらこうやって…」

「…あれは失敗だって言ってるのよ!!」

「ひぃ!?」


彼女は声を荒らげた。
この言い方は相当頭に来てるな、とハンネスは思った。

「どう考えたって怪しいじゃない!!
あなたも顔色が悪いし…あと、あれは絶対に成功しないの!ハンネスが証明してるの!!

あなたのそれはただの幻、歪んだ現実から目を背けて、挙げ句意味のわからない力に踊らされた故の幻!!
あり得ないの!!理解しなさい!!」


─────パシン!!



強烈な打烈音が響いた。


少年はミールの頬を叩いたのだ。
ミールの左頬は赤くなり、突然の事に呆気に取られていた。


そして少年は震えながら激情を露にする。

「あなたに…何がわかるんだ!!
僕は!!出来なかった!!
そうだ!出来なかったんだ!でも…あなたが好きだった。
だから認めて欲しかった!!

何もかも犠牲にしていい…そう思って…なのに…なのに!!!

認めてくれないなら…

力ずくであなたを奪ってやる!!」



「ミール!!!離れろ!!」


ハンネスの言葉が届くと同時に、目の前の少年はみるみる肥大化していき、大地は震え、強烈な恐怖とプレッシャーが回りを包み込んだ。

上空には雲が現れ、薄暗く辺りを灰色に染める。


頬を抑え、恐怖しながら上を見上げた彼女の先には


胸のバッジから異様な力を吹き出しながら大きな爪を鳴らす化け物が立っていた。


「きゃああああああ!!!!!!」

「ミール!!!!!」


「グォォォオオオオオ!!!!」

化け物が大きく右手を彼女目掛けて降り下ろした。

ミールは腰が抜けたようで動けず座り込む。

絶体絶命だった。
思わず目を瞑り、覚悟を決める。










ガキン!!!と強烈な金属音が回りに鳴り響く。

座り込むミールが瞑っていた目を開けると…


そこにはシルヴィアがその手を小さな剣で制止して立っていた。

「ドリームクラフト…ソードアサルト!!」

彼女が叫ぶと、その剣を高速で切り抜き、化け物の手を木っ端微塵にしてしまった。


「グォォォオオオオオアアア!!!」


化け物が悲鳴をあげ、後ずさる。
その隙にシルヴィアが手を貸してミールをハンネスの元へ待避させる。

「大丈夫?怪我は?」

「シルヴィア…!助かりましたわ…死ぬかと思いましてよ…」

「間に合って良かったわ。」

「おいシルヴィア、アイツ急に化け物になっちまったけどなんだあれは!!」

彼女が剣を地面に刺し、右手の手袋を外す。
そして右手の甲から手首にかけて紋章が浮かび上がる。

それを準備しながら彼女は答えた。

「あれがこの世界…いや色んな世界で問題を起こしているマモノよ、見て、あの胸のバッジは擬似的にゲートの役割を担ってるわ。」


良く見ると、バッジのなかに黒く渦巻く裂け目が見えた。

「なんてこった…こんなの知らねぇぞ!」

「まさかゲートを介さずにこんな事するなんてね。
でも助かったわ。
あれなら完全なゲートじゃないから彼を無力化すれば助かるわ。」

「そいつはほんとか!?よし、俺もやるぜ。」

「あんたは邪魔よ!私が…」

「友達を信じられねぇってのか?」

「…はあ…危なかったら下がりなさいよね。」

「お前だってまだ完全に本調子じゃねぇだろ、お前こそやばかったら下がれよな。」


そうこう言ううちに化け物が唸り声と共に襲いかかる。


そして二人は構え、息を整えた。

「行くぞ!」

「ええ!」




ハンネスは初めてのマモノを前にして怯える事なく勇敢に立ち向かい

彼の勇気を支えるように、シルヴィアは力を貸すのだった。
おま……ヤンデレかよぉ!!!
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