お花見day〜桜の様な笑顔〜
この話はボーイズラブです。苦手な方はご注意ください。
今日はお花見をしている。
と言っても家の中からだけど。
僕――響は花粉症。外に出ると、鼻水・くしゃみが出て、目は赤くなる。すごい時は喉が痒くなるのだ。
外にいればとてもじゃないけど、楽しくお花見ができそうじゃない。だから家の中からのお花見となったのだ。
偶然僕の家の外には枝垂桜があり、2階にある僕の部屋からとても綺麗に見えるのだ。
枝垂れ桜を独り占め。大翔もいるから、二人占め?
まぁー二人一緒にいることができるからどっちでもいいかな……。
「綺麗だな」
隣に座っていた僕の恋人――大翔がぽつりと呟く。枝垂桜を見ている彼の姿。とても見惚れてしまう。
カッコいいってもんじゃない。素敵?って感じだ!!
「うん。綺麗だね……」
外で風が吹いているのか、桜の花弁がひらひらと舞っている。本当に綺麗……なはずなのに、それが僕を寂しくさせていた。
不安定と言うのだろうか?
桜の花弁のように、僕自身が舞うというか散ってしまいそうなんだ。
その原因は僕の大好きな大翔である。
「どうしたんだ?元気がないな。熱でもあるのか?」
心配そうに俺のおでこに手を当てる。大翔の手は冷たくひんやりして、とても気持ちがいい。それとも僕のおでこが熱くなってるからそう感じるのだろうか?
「ううんっ!大丈夫」
本当は全然大丈夫じゃない。心がズキズキと痛むのだ。
恋をしていた時のズキズキじゃない。なんかモヤモヤとしてるんだけど棘がある感じ。表現するのは難しいんだけど、とにかく今僕は悩んでることがある。
付き合い始めて、八ヶ月。好きって何度も言ってくれた。キスも会うたびにくれるし、僕からもする。
それで何が不満だ?と言いたくなるかもしれない。でも僕はそれだけじゃ足りない。
―――もっと大翔が僕に触れてほしい。
そう思うのだけど、怖くて怖くて大翔にはそう言うことは一度も言ったことがない。
「枝垂れ桜っていいものだな」
なんでだろう?僕じゃ駄目なのかな?
「ねぇ?大翔。僕って小さい?」
「何だ?突然」
「いいから答えてっ!!」
「あぁ。小さいな。お前何センチだよ?確か165だよな。男にしては小さいんじゃないか?」
随分はっきり言うんだ。まぁーそんなところも好きなんだけどね……。
えぇ?惚気話はいい?
すみません……。
「そう言うことじゃなくてね。なんというか……男としてなんか頼りになる、とか?」
自分でも何を言ってるのかよく分からない。
僕は大翔に認められているのだろうか?ちゃんとした一人の男、恋人して認められているだろうか?
認めていないから、触れないんじゃないかと僕は思ってる。
「大丈夫。響はちゃんと男としても、しっかりしてる」
じゃあどうしてなんだろう。どうして大翔は僕に触ってくれないのかな……。
「どうしたんだ?なんかあったのか?」
やっぱり大翔はすごい。僕の異変をすぐに分かってくれる。
「ううんっ何でもない」
「何でもないわけないだろ?言ってみろよ」
そんな風に言われても簡単に言えるわけないじゃんかっ。聞いた方がいいかもしれないけど、聞きにくいものだってあるんだ。
僕はギュッと口を締めた。
「言ーえ」
大翔は僕を驚かせようと、脇腹を擽ってきた。
僕がわき腹が一番感じやすいと分かっているからだろう。僕は必至に抵抗する。
「いーやーぁ」
体を一生懸命くねらせる。大翔はまだ擽ってくる。
「うぅ……うぅ…」
くすぐったい。
「響」
突然、大翔が僕の耳元で名前を呼んだ。優しそうな、でもどこか心配そうな声。
その瞬間、僕の口が自然と開く。
「何かあったのか?言いにくいことでもあったのか?」
僕に視線を合わせて少し屈んでくれた。僕を喋りだすのじっと待っている。
「大翔が……」
「俺が何だ?」
ずっと見つめられると思うとどうも恥ずかしい。視線をそらして話すことにした。
「大翔が僕のこと……触ってくれないから嫌いになったんじゃないか、心配で……」
恥ずかしすぎて死にそうだ……。僕は思いっきり大翔から顔を逸らした。
大翔は意味が分からなかったらしく、首を傾げてる。
「触ってくれないってどういうことだ?」
鈍感っ。心の中でそう言っても大翔には届かない。
決心した僕は大翔の耳元で囁く。
「……っ!!」
その言葉を聞いた瞬間、大翔は顔を真っ赤に染めた。思っていなかった一言だったらしい。口を少しパクパクさせている。
「響!!そんなこと考えていたのかっ」
そんなこと?
大翔にはそんなことでしかなかったんだ……。
僕はショックが大きすぎて言葉が出なかった。
「響?おい響!!」
えぇ?ふと顔をあげる大翔の顔が霞んで見える。
「あれれ?」
頬を伝っていたのは涙。悲しくて涙が出てきた。
「響泣くなよ。そうじゃないんだ…っ。あぁーもう!!」
大翔は強引に僕を抱きしめた。どういう状況かよく分からなくて目をぱちくりさせる。
「泣かせるつもりなかったのだ。ごめんな。ただそのヤッて……響を怖がられるのが怖かったんだ」
優しく僕の背中を擦ってくれる。優しい大翔。僕の体のことまで考えていてくれたんだね。
やっぱり大翔だ。僕の大好きな大翔だ。
「僕こそごめん。ただ僕はね、大翔が僕を求めてくれない方が怖いよ」
大翔が優しいのは分かってる。好きってくれるキスもくれる。でも僕はもう、それだけじゃ足りないんだ。
僕は大翔の頭に手を回す。
そう言えば自分から大翔に誘ったことあったっけ?
してもらいたいとばかり言って、自分から何もしてあげていないことに気付いた。
だから今日は僕から……。
唇を重ねて、強引に僕は大翔の中に舌を潜り込ませた。驚いているのか大翔の目が点になっている。
本当に可愛いな。僕は一旦唇を離す。
「大翔。ほっぺが桜色に染まっているよ?」
綺麗な桜の花びらの様な色に染まっていた。ベースに窓の外に見える桜の舞い。
「響もね」
自分も顔が染まっている。と言われて、もっと顔が熱くなった気がする。
そんな僕の顔を見て、大翔は笑った。
――――大翔の桜の様な笑顔。僕がずっと独り占め。
「響×大翔」シリーズどうでしたか?
いつの間にか、シリーズ化していました。
そこでお知らせなのですが、毎月14日に、「響×大翔」シリーズ、更新しようと思います!!
よろしくお願いします。