Another OnePDFで表示縦書き表示RDF


Another One
作:水菜


「え〜これから、報道部の報告会及び説明会を始めます」
お昼時のとある教室、並べられたテーブルには数人の生徒が座っていて正面に見える黒板の前で部長が長い説明をしている。
「これで報告は以上、次に今後の事についてだが・・」
 ただ見ているだけじゃ何だか眠くなってきた、早く終わって欲しいと思う。
 テーブルに頬杖をついてぼ〜っと見る、視界には黒板に長々と書かれた文字文字文字、飽きてくるなぁ。
「おい横山、聴いてるのか?」
「あ、はい!!聴いてます!!」


『Another One』


 突然呼ばれて私は思わず立ち上がって返事をした、ヤバイ。
「そうか、ならこの企画は横山に頼もうか」
 部長はこつこつとこちらに歩いてくる、嫌な予感だ・・・
「企画・・ですか?」
「ああ、話題のこの二人の調査だ、頼んだぞ」
 そう言って二枚の写真を渡される、その写真を見た時私にはがーん!!と衝撃を受けた気分になった。
「え?・・この二人って」
 私には荷が重過ぎる、記憶が正しければこの写真の二人は私一人でできる問題じゃないよ。
「無理だと思うが頑張れよ、よし解散!!」
 部長は私の肩にポンと手を置くと解散を宣言した、すると掛け声と共に周りにいた生徒も部長も教室を出て行ってしまう。
 残された私は呆然とするしかなかった。
「この二人って・・マジで?」


 記憶が正しければ・・・・校内で一番の・・


 「・・・どうしよう」
 放課後の廊下で溜息をつきながら荷物を持って教室の前で佇んでいる、私の名前は横山遥よこやまはるか、おさげが特徴の高校の二年生で報道部の部員である。
 私が所属している報道部とは名前の通り迷惑をかけない範囲でこの学校におけるスクープを見つけ出し、それを学校の新聞として掲載する部・・・なのだが。
「調査対象があの二人なんて無理に決まっているよぅ・・」
 懐から部長から貰った二枚の写真を取り出す、写真にはこの学校の生徒である男女がそれぞれ写っていて見た目は両方ともなかなかの美人だ。
 するとがらりという音と共に教室のドアが開き中の生徒達が出てくる、その中の一人に写真と同じ人物がいた。
―――出てきた。
 少し長めの下ろした髪に眠そうな顔、背は少し低くポケットに手を突っ込んでいる。
 彼の名は井上明人いのうえあきと、最近転校してきた二年生で性格は見た目に反してクール・・ではなくとんでもない無愛想なやつ、先生や三年生にまでタメ口で面倒な事はなるべく避けようとするやつだ。正直話しかけにくいのだが任された以上やるしかないか。
「すみません」
 愛想を好くして近づいて声をかけてみる、迷惑ですと言わんばかりの表情で返事をしてきた。
「・・・なに?」
「報道部なんですけど少し聞きたい事が・・・」
「めんどいんでパス」
 そう言ってスタスタと歩いて行ってしまう、これだ。
「いや、少しで良いんでお話を・・」
 こちとて誇りある報道部員、負けられるものか!!隣を歩きながら無理にでも聞いてやる!!
「これから部活なんだけど・・」
「その部活についてもできれば・・」
 すると彼は足を止め此方を向ききっぱりと「や」と断わった、すっごいムカつく。
 この男は何時もそうだ、面倒な事だとすぐに逃げたがる事でも有名だ、でも!!それでも必死に聞くしかないのだ。
そんな時・・


「そんなに謙遜しないの、少し位話してあげたら?」


 突如後ろから女の人の声がした。
「あ・・・」
 振り返るとそこには一人の女生徒がいた、彼女は・・・
「だってこいつらこの前だって・・・一度相手したらしつこいんですよ先輩」

 彼に続くもう一人の調査対象であり、この学校一の有名人なのだ。



「え〜っと・・横山遥さんだっけ?」
 大きなテーブルが一つだけある教室、否彼らの『部室』に入り全員椅子に座っている状態で尋ねられる。あの後この人に連れられて私は案内された。
「はい、そうです」
「どういったご用件かな?」
 ニコニコと笑いながらのお言葉。
 彼女は真田明日香さなだあすか、三年生でロングヘアーが特徴、スタイル抜群で性格は麗しく爽やか、聡明という言葉がぴったし、成績は何時もトップクラスの優等生で教師からの信頼もある。笑顔を絶やさないこの学園のアイドルだ。
 一説には男女関係なく本人非公認のファンクラブまであるとか、しかし彼女はアイドルらしく自分に関する事は殆ど漏らさず彼氏だっていないという。今まで告白してきた男性のアプローチを全てはじいてきたまさしく謎のアイドルなのだ。
「え〜っとお二人のご関係についてなんですが・・」
「あ、ごめんなさい。そういうの答えられないの・・・別に変な関係って言うわけでもないんだけどね」
 ばっさりと切り捨てられた、何も無いなら話してくれたって良いというのに。
 これがこの人の答え、信じている人は多くないけどね。
「ただ部活が一緒ってだけだろ」
 隣に座っている彼が嫌そうに口を挟んでくる。
「・・・本当にそれだけですか?」
 先ほどのこともあり、じっと睨むと彼もにらみ返してそのままお互い黙ってしまう。
「「・・・」」
 睨む睨む睨む、それに対して真田先輩はニコニコ見ているだけだ。
「ならとことん調査させたら?」
「「・・・はい?」」
「密着取材ってやつかな?私達はいつも通りやる、それで何も無かったらこれ以上は調査を断念するの」
 笑顔でのこの提案、この人は突然何を言い出すのだろうか・・
「いいですよ、やりましょう」
 そして井上明人本人の了承の言葉、ってえ!?
「なんだよその顔、何も無いんだからそれで良いだろ。今日と明日ってことで、先輩もそれでいいですよね?」
「ええ、いいわよ」
「突然そんなの私・・」
「調査したいんでしょ?」
「・・・はい」
 反論しようとしたが真田先輩の笑顔の前に破れる、そもそもこの人自分の言ってる事を理解しているのだろうか?密着取材なんてこの人たちが良いとしても私はそこまでやろうとしている訳でもないのだ、一つでも証明できるものがあればそれで片付くのにわざわざ密着なんてやりすぎだよ。
「それじゃ、私達はこのまま部活始めるから、ゆっくりしてね」
「・・・はあ」
 そう言って二人は教室の椅子に座ったまま各々で行動し始めた。真田先輩は本を鞄から取り出し読み始め、井上明人は携帯電話をポケットから取り出し弄くり始める。
 そのまま数十分が経った。
「・・・あの」
 恐る恐る手を上げる。
「なんだよ」
 それに対して不機嫌そうに井上明人が答える。
「何してるんですか?」
「部活だけど?」
 本当だろうか、見た感じでは部活というより寧ろサボっている風に見える、って言うかさっきから何もしてないし!!


 ここで整理しておこう、そもそもこの二人が騒がれ始めたのは彼らが作ったこの部活・・『探求部』なのだ。
 部員はこの二人だけ、なのに同好会ではなく部活扱いで彼ら以外に部員はいない、所属したがった生徒がいても入部拒否、しかも具体的な活動は見られないというわけの分からない部活動だ。その上部員は転校してきた男子生徒と学園のアイドルである。
 そして彼、井上明人は周りには無愛想なのに真田明日香に対しちゃんと先輩として相手をしていた。 そして彼女、真田明日香も彼に対して友達以上の信頼関係を築いているように見える、何せお互い名前で呼び合っているのだ、もっとも”君”と”さん”をつけている、それは普段からよく一緒にいることで目撃されているのだが・・・二人はいたってそのような関係ではないと主張、そうなれば周りは当然騒ぎ出して一度は私とは別の人物が調査をした・・・が失敗、個人的に調べる者もいたが失敗、騒ぎになったせいで教師も調べたが何も無しでまさに格好のスクープネタなのだ。
 そしてその騒ぎというのは今も続いている。

 そして二人はそのままで時間が過ぎていき、私はただ椅子に座ったままと言う状態が続いていった。
 頼むからなにかしてよぅ・・・。
「そろそろ終わりの時間ね」
 真田先輩は本を閉じて時計を確認した、既に窓からは太陽の光は無く蛍光灯の光が教室を照らしている。
「そうですね。おい、教室閉めるぞ」
 ケータイを閉じて私に声をかける、私だけにに対して態度が変わりすぎだぞ・・・。
「はい、分かりました」
 何も無く半分うとうとしていたが声をかけられて意識がハッキリしてきた。


「じゃあ、明人君彼女の事よろしくね」


 そう言って鞄を持って真田先輩は教室を出ようとする、今この人なんていったの?
「は?明日香さんでしょ、こいつの密着取材」
 彼は私をビシリと指さす。
 あまり考えたくないが・・いやな予感がする。
「私、今日用事あって家空けるから、明人君今日の分頼むね」
「そんな!!先輩ならまだしも男となんかと・・」
「わかりました、じゃあそれで」
 慌てる私とは裏腹に冷静に返事をする彼、真田先輩の言っている事が分かっているのだろうか?
「別に隠す事なんて無いんだから大丈夫だろ、お疲れ様でした」
「うん、じゃあね」
 そう言って彼女は手を振って教室を出て行った、頭の中に不安と言う言葉が湧き出てきる。
「おい、さっさと帰るぞ」
 彼は鞄を持って教室を出る。横山遥17歳、彼氏もいないのに男の家に一人で泊まる事になりました。



「入って良いぞ」
 井上明人の住所は少し古いアパートだと聞いていたがまさしくその通りの所だった、鍵を開けると真っ暗な小さい部屋で彼は入って明かりを点ける。
「・・・お邪魔します」
「飯、何食う?」
 彼は黒いエプロンを着けながら言った、意外と様になっている。
 どうやら自炊しているようだ。
「いいですよ、カップ麺持ってきてるんで」
 持ってきた大きめの鞄から取り出してみせる、家に帰って持ってきたのだ。ちなみに両親には知り合いの女の子の家に泊まると伝えた。
 男の家なんていえないもん。
「こっちが嫌な気分になる」
「あ!?」
 そう言ってひょいと私の手からカップ麺を奪った。
「ちょっと待ってろ」
 そう言って彼は小さな台所に立ち料理を始めた。


「ご馳走様でした」
 両手を合わせて丁寧に言う。
「お粗末様だ」
 そう言って彼は食器を運ぶ、以外に彼の料理は美味しかった。内容は野菜サラダにパスタ、その他もろもろといった栄養を考えたメニューだった。
「あ、洗い物やりますよ」
 食べさせて貰ったのだ、せめてそれくらいはやらせてもらいたい。
「じゃあ頼むわ、風呂は勝手に入ってくれ。俺は寝る」
 遠慮も無くそう言って彼は制服のまま布団に潜り込んでしまった。
「え?!早すぎませんか?」
 時間はまだ九時過ぎくらい、少なくとも世間の高校生の寝る時間ではないはずだ。この人どうなってるの?
「いいんだよ俺朝シャン派だし、少しでも多く睡眠とらないと調子狂うんだよ」
 すると彼は瞬く間に寝てしまった。しかし・・・
「・・・これじゃ取材できないじゃん」
 その日結局何も聞くことも出来ず、彼に言われたまま勝手にお風呂に入って私も寝てしまった。


「おい」
 頭がぼ〜ッとするなかであまり聞きたくない彼の声が聞こえる。
「起きろ報道部員」
「イタッ!?」
 頭に衝撃が走り上半身を起こす、そこには彼が制服姿で仁王立ちしていた。
「何時まで寝てるんだ、学校行くぞ」
 しかし別にこんな起こし方しなくても良いと思う。
「今何時ですか?」
「八時くらい、後三十分くらいで学校が始まるな」
「な!?何で起こしてくれな・・・あれ?」
 勢いよく起きようとするが立ったと同時に体がふらついた、うまく体が動かないよ。
「おい?」
「あれ?」
 おかしい、なんかだか凄いダルくて動かない、私はそのまま布団の上に倒れてしまう。それを見て彼はよってきて尋ねてくる。
「どうした?二日酔いか?」
「なわけ無いでしょう・・なんか体が・・疲れてるって言うか・・動かないっていうか・・」
 彼は溜息をついて出口に向かう。
「とりあえず学校行ってくる」
「わたしどうするんですか!?」
「適当に言い訳しとく」
 そのまま彼は部屋を出て行ってしまった。学校で変な誤解を生まなければ良いのだが・・・っていうか・・・
「・・・お昼ごはんどうしよ・・」



 お昼ご飯の時間である、体はある程度回復したが全快には程遠い、そしてお腹がグ〜グ〜鳴っている。
 料理はハッキリ言って私は出来ない。カップ麺も彼が隠してしまい何所にやったかわからない。誰かご飯頂戴〜。
 するとこんな昼間にドアの開く音がした、顔を向けるとそこには・・・
「調子どうだ?」
 買い物袋を持った彼がいた。
「・・学校はどうしたんですか?」
「校長に言ったら面倒見ろって言われて追い返された」
 校長先生なんかに話したのか、彼はムスっとしながら部屋に入ってくる。
「・・真田先輩にいいんですか?・・」
 意地悪のつもりで言ったら問題ないと無表情で答えた。
 本当に自覚が何だろうなぁ。
「本人も来ている」
「へ?」
 すると彼の後ろから本人が顔を出した。
「やっほ、調子どう、貧血かな?だるくない?」
 こちらに来て真田先輩は心配してくれる、ありがたいものだ。
「大丈夫です、だいぶ良くなりましたし明日には学校に行けますよ」
「でなきゃこっちが困る」
 彼がエプロンを着けながら口を挟んでくる・・こいつは何所までも嫌なやつだ。
「なら良かったわ、そうだ、こんな事になっちゃったし質問、答えてあげる」
「質問・・ですか?」
「うん、報道部の、何か収穫が無きゃ部長さんに怒られるでしょ?」
 先輩はとっても良い人だなぁと感激した、この部屋の主とはえらい違いだ。
 そうして私の質問タイムが始まった。

「これで終わり?」
「はい、有難う御座いました、でもやりすぎたかな・・・」
 最後の質問が終わり持っていたメモをしまう。外はもう真っ暗で部屋の持ち主である彼はもう布団に入って寝てしまった、それに今日も晩御飯まで食べちゃった。
「迷惑かけたし、これで済むなら良いわよ」
 そう言って笑ってくれる、でも収穫らしい収穫は無かったんだよなぁ、どうしよ。
「もう深夜前ですね」
 時計を見るともう0時前、もうすぐ0時丁度だ。我ながらよくここまで続いたと思う。
「・・?・・何してるんですか?」
 すると何をしているのか真田先輩は自分の時計をじっと見ていた。
「こういう時ってカウントダウンしたくならない?」
「はあ・・」
 私はそうは思えないけど。
「・・10・・9・・8」
 彼女はお構いなしにニコニコしながら数えはじめた。
「・・5・・4・・3」
 0時が近づいてくる。
「・・2・・1・・・・0」
「あれ?」

 彼女が0と言ったと同時に私の目の前は真っ暗になった。


「ハルカ、ハルカ!!」
 誰だろうか?真っ暗の視界の中で若い女の子の声がする、今までに聞いたことの無い声だ。
「ハルカ!!起きなよ!!」
「え!?」
 次の瞬間、耳元でその声が大きく聞こえた、そのせいで寝ていた体を起き上がらせる。見るとそこには見たことの無い外人の女の子がいた。
 何なのこの子?・・私は知らない。
 聞こうとして口を開くがその瞬間おかしなことが起きた。
「・・おはようレナ」
 ・・・?!何で?
 思わず自分で口を塞ぐ、なんで私知ってるの?
「おはようハルカ、さっさと起きて。もう仕事始まるよ」
 そう言うとレナと呼んだ彼女は私から離れる。
 ここは何所だろうか?視界に移るのは木造の壁、いやよく見るとベットもテーブルも何から何まで木製、かぶっている布団なんてとても古いし着ている服だって何処かの民族衣装のようだ。
「どうかした?」
「え?・・いや別に・・」
 慌てて答える、私は彼女のことを知らない、なのにレナと言ったのは何故だろう。そもそも私はあの古いアパートにいたはずだ。
「変なハルカ、妙に静かだし」
「そ、そうかな」
「まあいいや、ほら、仕事いこ?」
 彼女は私の手を引っ張る。
「仕事?」
 私は学生のはずだ。
「忘れたの?レイおばさんのとこで畑仕事、しないと給料もらえないよ?」
 そのまま私はわけの分からぬままこの家の外まで引っ張られていった。


「・・・なんなんだろ」


 太陽が真上にあるお昼、休憩と言われて私は村外れの木にもたれかかって休んでいる、顔にかかる風が気持ち良い。
「夢にしては長すぎるしリアルすぎだし」
 仕事場についてみると持たされたのは鍬、その後は洗濯に掃除とまるで主婦か家政婦のように働かされた。
 環境は時代を間違えたまさに田舎。どの家も木造で水道も電気も機械も無い、周りは森に囲まれていて若い男は鎧に剣や弓をもって森に出ていく、帰ってくるときにはいくつものモンスターを狩ってきて食料にしていた。
 ・・・まあ美味しかったんだけど。
 こめかみに手を当てて考える、村の人は全員私の事は覚えていた、でも私は覚えていない。第一文化が違いすぎる、まるでゲームのようだ。なのにどこか普通に感じている私がいる。
「・・・どうしよ」
 考えていると彼女が走ってきた、レナだ。
「ちょっとちょっとハルカ!!」
 なにやら慌てた様子である。
「どうしたの?」
「・・・はぁ、いま・・・村に旅人が来てさ、二人、宿探してるんだって」
 村の入り口を指差す、その二人がいるのだろう、何やら人だかりが出来ていた。
「それで?」
「もう、今日のハルカほんと変だよ・・んでさ、その二人薬探してるんだって」
 まるで変なもの見る眼で見られる。
「薬?」
「そ、森に咲いてるやつが原料の。それでさ!!原料でもあったら高く買い取ってくれるって!!」
 レナは宝物を見つけたように目を輝かせ上機嫌に答える。
「ふーん」
 これじゃ本当のゲームみたいだ。
「二人でさ、取りにいこ!!」
「え?」
 驚くと彼女は私の顔を覗き込んできた。
「・・・・ほんっと大丈夫?変なもの食べてない?」
 これ以上は危険だと私の本能は告げた、偽者に勘違いされたら困る。
 そう思った私は・・・
「う、うん大丈夫!!いこいこ!!さあいこ、すぐいこう!!」
「ちょっとハルカ!?」
 彼女の手を引っ張り森へと向かった。


 日が沈む夕方の森の中、私とレナはバスケットにいっぱいの薬の原料である花を詰め込んで歩いている。噂の薬の原料は思ったより簡単に見つかった。
「これならしばらく生活に困らないね♪」
「そ、そうだね」
 そんなに困ってた記憶なんて無いのに・・・
 レナと話すことである程度理解してきた、まずこの世界は私のいた地球ではない事、この世界では政府なんて無くていまだに王政が続いている事、私の世界のような犬や猫のような動物ではなくモンスターがいるって事。
 そう、まさしくこの世界はゲームのようだった。
「でもちょっと長居しすぎたんじゃない?モンスターとか出るかも」
 正直私は怖い、見るのも襲われるのも。
「大丈夫大丈夫、そんなやばいのでないし、それに夜でもなきゃ出ないって」
 そんなもんなんだろうか・・・まぁ、だとしたら安心だ。もっとも、これがいまだに夢なのかリアルで漫画やテレビのような展開になっているのか心配なのだが。
「まあ、なるようにしかならないか」

「・・ねえ」
 隣を歩いていたレナの足が止まった。
「どうかした?」
 するとレナはある方向を指で指す、その先には・・・
「あれって・・・」
 その指先が示す場所には男性が一人、うつ伏せに倒れていた。
 けが人だ!!
「えっと、どうしよレナ・・」
 遭遇した事の無いような状況に私が慌てていると。
「私、村の人連れてくるから、ハルカあの人見てて」
「わ、わかった」
 そう言ってレナは村の方向に走っていった、私も倒れている男性の下による。
「だ、大丈夫ですか!?・・・・・!!」
「あ・・・・ああ・・・」
 男性は服はボロボロで所々怪我をしていて声もほとんど出てない、だが私はそれ以上にその姿に驚いた。


「・・・・部・・・長・・・?・・」


 その男性は顔が、微かに聞こえる声が、体格が、報道部のあの部長そっくり、瓜二つだったのだ。
「部長!!こ、声聞こえますか?」
 部長を仰向けにして意識を確かめる。
「ああ・・聞こえる・・」
 声はかすれていた。
「今知り合いが助けを呼んでるんで大丈夫ですよ!!」
 すると彼は右腕を上げ、人差し指立てた。
「あっ・・ちに・・しり・・あいが・・・いるんだ」
「ほ、ほんとですか!?」
「たす・・け・・」
 だとしたらそっちに行って此方につれて来なければその人は助からないかもしれない、そう思った私は指された方へと部長を置いて走り出した。
「ここにいれば村の人が来るんで部長はそこで安静にしてください!!」

――――――――
「レナちゃんこっちであってる?」
「はい、任せてください!!ここら辺は何時も来てますから!!」
「・・・・・」
 私の後ろに軽そうな鎧を着た男女が共に走っている。
 私は村に助けを呼びに行ったが村の男は皆夕食の獲物を取りに行っていて駄目だった、そしたらあの旅人達が自分達が行こうと言ってくれたのだ。
「よし!!ここで・・す・・・?」
 確かに彼が倒れていたところまでたどり着き足を止める、だけど・・・

「・・・誰もいないんだが・・・」
「そうね」

 そこにはハルカもあの男も誰もいなかった、ハルカったら・・・朝からどうしたのよ・・
――――――――

「・・・はぁ」
 部長の指さした方に走ってしばらく経つけど・・・どれだけ進んでも人どころか動物一匹も見当たらないという状況に私は落ち込んでいた。
「全然見つからないし、迷ったとか?」
 だとしたらとんでもないピンチだ、村の方へはレナについて行っただけで全然覚えてないし空は少しづつ暗くなってきている。
 突然奥からガサガサと音がした。
「も、もしもし?」
 すると音は消え静かになる。
「・・・だれかいますか〜?」
 もしかしたら部長の言っていた人かもしれない、そう思い木の枝や草を掻き分けて進む。

『ギジャアアアアアアア!!』
「・・・・・・・ほにゃ?」

 そこには5メートルくらいだろうか、大きな蛇のような・・・いや足が付いてるのでトカゲかな?その様なモンスターがいました。
「・・・・・・・えっと、まさか部長襲ったのってこれ?」
『シャアアアア!!』
 チロチロと舌を出しながら近づいてくる。
「・・・失礼しましたぁ!!」
 叫んで私は反対方向に走り出そうとする、ヤバイのはいないんじゃなかったの!?あんなのがいるなんて聞いてはいないよ!!
 間違いなくあれはヤバイの分類に入るだろう。だがその意思とは反対に足が止まってしまった


「・・置いて来たのになんでいるんですか?部長」
 怪我してるはずなのに普通に立ってるし。
 目の前には部長がニヤつきながら私に向かってナイフを向けていた、体中に汗が流れる感覚が広がる。
「なんでって、これが目的だからね・・・それと、その部長とか言う変なの、やめてくれる?」
「きゃっ!!」
 彼に押し倒され頭を地面にぶつけてしまう。
「あんたみたいなお人よしを捕まえて金にするわけ、んでそっちのがさっき言った知り合い」
『ギシャアアアア!!』
 大きなトカゲが返事をするように吼えた。
「あんな化け物どうやって・・・」
「そういうのを技として使えるんだよ、モンスターテイマーってやつさ」
 彼に圧し掛かられて体の動きを封じられる。
「さっきの子もくるんだろ?あそこの村のやつなんて対して脅威じゃないし、頂こうかな」
「!!」
 こんなの・・・部長じゃない・・・
 しかし行っている事は確かにそうだ、おそらく村の人はこんなの見たらそそくさと逃げ出すのが目に見えている。だとしたら・・・レナが危ない!!
「そういうわけだから大人しくしてもらうわ」
 彼は懐から注射器のようなものを出してこちらに向けた。
「や、ンー!!」
 じたばたと反抗するが男性の力と重さには勝てず動けない上に口を防がれる。
「はい、ざんね・・・・・・きちゃったか」
 目の前まで迫ってきた注射器が止まり体に乗っかっている彼は別の方を向く。
 レナだった、そこにはレナ一人が息を切らせて立っていた。
「・・・あんた倒れてたのに何してんの?」
 レナは私を見ると部長を睨みつけた、部長は動じずに答える。
「見ての通りさ、ついでに俺の後ろの奴も見えてるだろ?抵抗はやめてくれよな」
『ガアアアア!!』
「・・・・わかったわ」
 彼女はその場で降参と言うように両手を上げる。
 駄目だよレナ!!
「ただ・・・」
「?・・なんだ?」
 何か言おうとするが彼女は黙ったままだ。


「あなたが乗ってる娘から離れてくれるかしら?」

別の女性の声がした。
「だ・・ぶっ!?」
「ぷはっ!?」
 誰のでもない声と同時に体にかかっていた彼の重さが消えた、蹴られ吹き飛ばされた彼は吹き飛びトカゲの元まで吹き飛んだのだ。そしてそうしたのは・・・

「!?・・真田せんぱんっ!?」
「ごめんね横山さん、あなたが私のこと知ってるのここでは無い事になってるの」
 片手で口を押さえられ言葉をとめられる、だがそこいるのは紛れも無くもとの世界にいた真田先輩そのものだった。鎧を着てもう片方の手には刀を持っている。そして・・・
「・・・覚えてる・・」
 今まで誰も知らないはずなのに先輩は私の事を知っていた。
「とりあえず、レナちゃんと一緒に離れててね」
「は、はい!!」
 言われた通り私はレナの元に駆け寄る。
「あらあなた学校の・・・まあいっか、こっちでは関係ないし。お引取り願える?」
「っざけんなよ・・・手ぇ出した事後悔させてやる」
 見ると彼は鼻血を出しながらも起き上がりやる気満々だった。
「いけっ!!」
『ギシャアアアアア!!』
 手を上げ彼の合図と共にトカゲは大きな口を開け真田先輩に地を這い襲い掛かった。
「先輩!!」
 だけど先輩はそれを見ても余裕で持っている刀を構えず、ただそれを見ていた。どんなに近づいてきても余裕で見ているだけだった。

「大丈夫よ、もう一人いるし」

 もう一人って・・・まさか・・・
 すると先輩は空いている手で上空を指差す、見上げるとそこには一人の人影があった。
「・・・・エトゥッフェ」
 空から落ちてきていた本人がそう言うと手元が光りそこから大きなハルバード・・いや刃が大きく鎌と言ったほうが良いだろう。その武器が現れそのままトカゲの頭目掛けて投げつけられトカゲの頭を貫いた。
『!?!?!?!!!!!!!』
 トカゲは刺さった鎌に口も開けられずそのままジタバタと勝手に暴れたれて暫くすると口から血を流して動かなくなってしまった、即死だ。
 ストンと綺麗に着地した本人は何事も無かったの用に刺さっている鎌を抜き、ついた血を振り払う。
「ナイス明人君、さすがパートナー♪」
「・・・冷やかさないでくださいよ、武器出してるんだから戦ってください明日香さん」
 そう、着地したのはあの井上明人だった。
 何事も無かった様に堂々とし、あっけに取られていた部長を睨みつける。
「おい」
「ひっ!?」
 あのトカゲを失った部長は先ほどまでの威勢のよさは無く、悪役のように今にも逃げようというような態度だった。
「帰れよ、捕まえるつもりは無いからさっさと消えろ・・うざったるい」
「う、うわああああ!!」
 まるで本当にヤラレ役のような声を出して部長は森の中に消えていった。
「うん、これにて一件落着ね」
「明日香さん殆ど働いてないじゃないですか」
 あんな事があったのに二人はあいからわずマイペースだ。
「・・・はあ」
「ちょ!?ハルカ!?」
 気が抜けたのだろうか私はその場で気を失ってしまった。



「とりあえず何が聞きたい?」
 あのまま私は家であった場所まで二人に運ばたらしい。今はレナが村長さんの所に事情を説明しに行っていて家にはベットに座っている、家には私と椅子に座っている真田先輩、壁にもたれかかっている井上明人だけである。
 どれくらいの時間が経ったのだろうか、空は真っ暗だがこの家に時計なんて無いので時間は分からない、家の中ではランプが部屋を照らしている。何が知りたいと言う真田先輩の言葉に私はこう答えた。

「全部です」

 全てが知りたいと思った、今更一部だけ知った所で私は満足はしない、全て聞くつもりだ。
「じゃあ一から百まで言わないとね」
 真田先輩は壁にもたれかかっている彼に目で合図を送る、彼はドアから顔を覗かせ誰もいないのを確認した。
「・・・大丈夫?」
「・・・いいですよ」
 確認が取れると真田先輩は此方を向く、聞かれちゃいけないんだ。
「まずここがあなたの知っているとこじゃないのは分かるでしょ?」
「はい」
 それは既に承知だ。
「カンパネラ、この世界は地球じゃなくそう呼ばれてるらしいの」
「らしいのって・・」
 あやふやだなぁ。
「でもね、大陸の形も生きている人も、もとの私達の世界と何の変わりも無いの。そっくりそのままコピーしたみたいにね」
「コピー・・」
 この事に今更驚きはしなかった。
「そう、この世界の人は私達みたいに『あっち側』、つまり『地球側の記憶』を持ってないの。それで当然『こっち側』、カンパネラ側の記憶はあっちの私達も知らないで別の生活している」
・・・なんかよくわかんなくなってきた。
「・・・質問、一年って何日?」
「えっと・・365日です・・」
「半分正解、それは『あっち側』だけ、もしくは『こっち側』だけの人の答えよ」
「って言うと?」
 井上明人が代わりに答えた。
「正解は倍の730日なんだよ、『あっち側の記憶ままでこっちを迎えてる』俺らみたいのにはな。正月も誕生日も二回だけど」
 彼が口を挟んできたがまだよく分からない。
「つまり、いったんどちらかの一日が終わる。次にはもう片方の世界の一日が始まる。それを繰り返してるのよ、この世界全体はね」
「・・・」
 なんとなく分かってきた、つまり今の私はもとの地球、『あっち側の記憶』で生活している、おそらく私はこうなる前までは『こっち側の記憶』で生活していたんだろう。だからこの村の人は私のことを知っているしレナとも一緒に暮らしているのが分かる。毎日こっちとあっちを記憶だけを変えて生活していたのだ。
「・・・こんな世界何が原因なんですか?」
「何も無いわよ、『こういう造り』なだけで皆はそれを知らないだけ」
 この世界が自然体って事だろうか、ならば何故私達は片方の『あっち側の記憶』でいるのだろう?
「・・・私達は何なんですか?」
 言う事が本当ならこの世界にとって私達はイリーガルな存在だ、神様がいたなら私達を見て黙ってはおかないだろう。
「知らないね、だからこうしてるんだ」
 これまた意味不明な答えだった。
「・・・私達が旅人っていうのは知ってる?」
「はい」
「・・この世界のずっと東に『賢者』がいるらしいの」
「賢者?」
 賢者と言えばゲームなんかに出てくる強い魔法使いの事だ、それがどうしたと言うのであろうか。
「賢者は賢い人、当然言うからには全部知ってるはず、だからそれを聞きに行く旅ってわけだ」
 なるほど目的がハッキリしている、でも・・・
「二人だけでですか?」
 たった二人でなんてとんでもないことだ、危険である。
「世界全体には俺たちみたいのは知られていない。・・・ここまでくるのに俺たちみたいなやつはお前以外会わなかった、風の噂だと世界中探せばそんな感じの変人が何人かいるって言うけどな」
 この時聞いていて私は思った。


「・・そこまでする事は無いんじゃないんですか?」


「「・・・」」
 二人は黙っていた。
 私の言いたい事はこうだ、無理して旅なんてやる必要は無い、モンスターだっているし何時命を落とすのか分からない、今日の私のように周りに流されてもう一つの生活を楽しめば良い、と。
「そうする必要が無いからやってるのよ」
「?」
 真田先輩が言う。
「ようはただ単純に知りたくなったからやってみただけだからな」
 彼もそう言う。
「・・・」
 そこで私はようやく分かった、彼らは私が言った事をそのまましていたのだ。
 確かにここの生活もあるがそれ以上に『知りたい』という興味、好奇心が勝ったのだ、彼らの旅は世界を救うような重さや平和を築き上げるような壮大さなんて無くてただなんとなくやりたいと思ったから、それは過激な娯楽旅行みたいなものだ。
 目標にたまたま距離と高さがあったからそう感じたのだ。仮にだけど目標が達成されたら多分次は別の物を探して知りたがるのだろう。
「もしかして探求部って・・」
 そこに私はもう一つの事実に気づく。
「そ、これが探求部の活動なの」
 なるほど、確かに探求だ、主な活動は『こっち側』でだったのだ
「部活にするのはやりすぎだと思うけどな」
「団結には形が必要だからね、ボランティアだって皆チームでやるでしょ?」
 どうやら立ち上げたのは真田先輩だったようだ、すると先輩は懐中時計を懐から取り出す。
「先輩?」
「・・もうすぐ深夜ね」
「もうそんな時間・・ってそれって・・」
 それは日が変わり意識が『あっち側』へ変わるという事だ。
「次はアパートだな」
「慣れなくて体の調子が狂うと思うけど頑張ってね」
「もう迷惑掛けんなよ」 
 そう言ってドアから二人は出て行く。
「えっ!?待ってくださ・・!?」


そこでまたあの時のように目の前が真っ暗になった。


 意識が晴れた時、アパートの部屋には主である彼も先輩もいなかった。
 彼らの荷物も無く時計を見ると完全に遅刻の時間帯になってて先輩の行ったとおり私は体が少しふらつくが学校へ行った。
 学校では部長に会った、だけど彼は『あっち側』での事は知らない。その時私は自分が『あっち側』の別世界の住人である事を実感した。

 学校を終え私は今自分の部屋で時計を見ている。
「・・・・9・・8・・7・・」
 時計の時間を確認しながらカウントダウンをする。
「・・5・・4・・」
数えていると共に自分の鼓動が早くなっているのが感じた。
「2・・1・・・0」
 目の前が真っ暗になる、暫くして目を開けるとそこにはいっぱいに広がる草原と青い空に雲、そしてあの人の顔・・・
「おはようございます真田先輩」
 起き上がって背伸びをした、空気が美味しい。
「おはよう新入部員さん、調子はいい?」
「はい、なんとか」
「それと、明人君起こしてくれる?」
「わかりました」
 返事をして傍で寝ている彼を揺すって無理矢理起こす、寝ぼすけさんめ。
「何時まで寝てるんです、起きてください」
「・・わかった」
 寝ぼけながらも起き上がる彼、井上明人はまだ眠そうだった。
「目指すは東、今日も部活、頑張りましょう!!」
「はい!!」
「・・ん」

知りたくなったその日から私は報道部をやめ、探求部へと入部した。


元々は連載用として考えてたものですが無理して纏めました。出来るならばご意見ご感想頂き次第連載してみるかどうするか考えようと思ってます、酷評でも良いので是非仰りたい事があったらよろしくお願いします。













ケータイ表示 | 小説情報 | 小説評価/感想 | 縦書き表示 | TXTファイル | トラックバック(0) | 作者紹介ページ


小説の責任/著作権は特に記載のない場合は作者にあります。
作者の許可なく小説を無断転載することは法律で堅く禁じられています。




◆BACK
小説家になろう