第一話。伝説のギルドハンター
今日も軍事都市アレグリアのギルドでは、沢山のギルドハンターが依頼を紹介してもらっている。
ギルドとは、依頼者がギルドに登録した依頼を、ギルドのマスターがギルドハンターに紹介するというものだ。依頼とは大まかに、内容、期間、難易度の三つから成り立ち、この三つの平均から報酬が割り出される。
この報酬で飯を食べているのがギルドハンターというわけだ。
このギルドハンターであるが、やはりギルドハンターの中にも有名なギルドハンターというのが存在する。それが、アレグリアのギルドで伝説のギルドハンターと言われる、リューマとゴードンという二人の男のコンビだ。
特に有名なのはリューマという、侍が着ているような袴とボサボサな髪の毛が印象的な男。ギルドハンターの間ではキング・リューマと呼ばれている。
そして、もう一人のゴードンという男。誰が見ても思うであろう巨漢で、ぽっこりとでたお腹が特徴的。だが、リューマが目立ちすぎているせいでいまいち目立たず、ギルドハンターの間ではリューマの相棒と呼ばれている。
そんな二人は、今日もギルドに依頼を紹介してもらいに行く真っ最中。ギルドへ向けてアレグリアを歩いていた。
しかしそのときだ。「きゃ〜!」という叫び声をあげながら一人の少女が二人の横を走り去っていく。その直後。三人の男が、逃げた少女を追いかけるように走り去っていった。
この出来事に、都市の人々はザワザワし始めた。それと同時に、リューマとゴードンは、ギルドに行くのをやめ、走り去っていった少女と三人の男を追いかけ始めた。
二人は都市を出て手分けして探そうとした。だがその必要は無かった。少女が「誰か助けて!」と叫んだのである。二人はすぐに声がする方へ走った。
二人が向かった先で起こっていたことは、三人の男が少女を捕まえて連れ去ろうとしているところであった。
リューマは、その光景を見てニヤッと笑い、「ちょっと待てい!」と叫んだ。
叫び声を聞いた三人の男はビクッとして二人の方を振り向き、慌てて「誰だ!」と大声を発した。
リューマは何も答えず、瞬く間に三人の男に近づき剣を抜く。リューマが剣を一太刀浴びせたと思うと、三人の男は地面に倒れた。
「怪我はねえか嬢ちゃん?」
リューマは、倒れた三人の事など居なかった人物のように無視して襲われていた少女に声をかけた。
少女は「おかげ様で大丈夫です。ありがとうございます!」と頭を下げる。
「そっか。じゃあもう大丈夫だな。俺達はちょっと大事な用があってもう行かなきゃなんねえんだ。もう襲われたりすんなよ」
リューマは、笑顔で少女にバイバイと手を振って、また都市へと戻ろうとした。
だが、戻ろうとしたリューマを阻むようにゴードンがリューマの前に立ちふさがり、一発リューマの頭にゲンコツをお見舞いした。
「いてえな! 何すんだよドン!」
リューマは、頭を押さえながらゴードンに抵抗する。
「どうしていつもそうなんだお前は! よく考えてみろ。まだ見た目も幼い女性が三人の男に襲われてたんだぜ。普通なことじゃないだろうよ」
「だから助けたでしょうが! これ以上、俺に何しろってんだ!」
二人が言い争いを始めてしまったことで、どうしていいか分からなくなった少女は、勇気を出して「あのぉ……」と言い争いをしている二人に声をかけた。
同時に、二人が睨むように少女を見た。少女はその目をみて、なんだかわからないが「すいません!」と、ビクッとしながら謝った。
その言葉で、ハッと我に返ったリューマとゴードンは言い争いをやめた。
「すまんすまん。醜いところを見せちまったな。それはそうと、君に聞きたいことがあるんだが、なんで三人もの男に追われてたんだ? 普通の暮らしをしてればあんなことにはならないはずなんだがなぁ」
ゴードンは、優しい口調で少女に問いかけた。問いかけられた少女は、困った顔をしたまま何も話そうとしない。
「いや、話せるところまででいいんだよ。なにか君の助けになれるかもしれないしよ」
ゴードンが、また優しく問いかける。リューマは、黙ってはいるもののあくびをしたりして面倒くさそうにしている。
少女は、自分の心の中で自問自答したのか、一つ首を頷くと、ゆっくりと口を開いた。
「分かりました。お話します。まずはこれを見てください」
少女はそう言うと、何か呪文のような言葉を唱え、掌に炎をつくりだした。これを見て、さっきまであくびをしていたリューマも、優しく語り掛けていたゴードンも唖然とした。
「じょ……嬢ちゃん。これはまさか……」
少女がつくった炎を指差してリューマがそう言う。
「はい。魔法です」
「ちょっと待てよ。魔法って架空の存在のはずだろ!?」
リューマが混乱したように大声をあげる。
「いや、魔法は存在する。ただし、魔法を使える人物はこの世界にただ一人だけ。そんなことを聞いたことがあるが、まさか本当だとはびっくりだぜ。そりゃ追われるわけだ。その魔法の力があれば、色々と悪用したり出来るからな。そうだろ?」
ゴードンは、さっきまでの優しい口調で少女に問いかける。しかし、顔は真剣そのものだ。
ゴードンの問いかけに、少女は悲しそうにゆっくりと頷いた。
「どうするリューマ。俺はこのまま放っておくのはなんだか気の毒でならねぇ……あの子自体は何にも悪くないんだもんよぉ……」
ゴードンは、小さな声でリューマに耳打ちした。
ゴードンに耳打ちされたリューマは、ジッと少女を見つめて口を開いた。
「なぁ嬢ちゃん。正直な話、嬢ちゃんは俺たちにどうしてもらいたい? 遠慮なんてする必要ねえよ。本音で俺達に言ってみな」
リューマはゴードンと違い、とても厳しい口調で少女に問いかける。問いかけた後も、少女をジッと見つめている。
少女は少しの沈黙の後、一呼吸ついて口を開いた。
「助けて欲しいです。私を狙う人たちから守ってもらいたいです」
彼女は言った。しっかりとした嘘偽りない心の叫びで。きっと、こんなことを言っちゃ悪いだろうとか、駄目なんだろうという感情もあっただろう。その感情を振り切って言ったのだ。
この言葉を聞いたリューマは口元をニヤッとさせた。
「言えたじゃねえか。さっきからビクビクオドオドしてたから、ちゃんと言えやしないと思ったぜ。分かった。俺達が嬢ちゃんを全力で守ってやる。しかし、これは依頼としてだ。分かったな?」
「すいません。私お金が無いんです……だから、依頼の報酬金なんてとてもじゃないけど払えません……」
少女は申し訳ないといった顔でリューマに謝った。
リューマは、少女が謝っている姿を見て、ハァ? といった表情をしている。
「おいおい。なんで俺が、まだ胸もあまり発達してないような女から金をとらなきゃいけねえんだよ。出世払いでいいぜ出世払いで。まぁ、たんまり報酬はいただくから覚悟しとけよ」
少女は、そんなリューマの言葉を聞いて、精一杯深々と頭を下げ「ありがとうございます」と言った。
リューマは、そんな少女を見て少し照れていた。
「お前にもいいとこあんだな。流石は俺の相棒だ」
ゴードンがまた小さな声でリューマに耳打ちする。リューマは即座に「うっせえ馬鹿」と耳打ちを返す。
そこに、また少女が改めて二人に頭を下げ「私はフェイといいます。迷惑かけますがよろしくお願いします」と自己紹介した。
「ああ。よろしくな。俺はリューマ。そんでこの大きいのがゴードン。んでよぉ。俺の要望なんだが、さんづけとかやめてくれな。苦手だからさ。好きなように呼んでくれていいからよ。別に敬語も使う必要ないしな」
リューマが笑顔でそう言った。ゴードンは、「この大きいの」という言葉に少し反応しそうになったが、大人気ないところを見せたくないのでグッとこらえた。
「はい! じゃあ、リューちゃんとドンちゃんって呼ばせてもらいます!」
フェイが元気良くそう言うと、リューマがプッと吹き出し、ゲラゲラと大笑いを始めた。これには、フェイはもちろんのこと、ゴードンもビクッと反応した。
「ドンちゃんって、ドンにぴったりな名前だな。フィットしすぎだっての! お〜い。ドンちゃ〜ん! アハハハ!」
リューマはゴードンを指差して笑っている。どうやらツボにはいったようだ。
このリューマの行動には、流石に我慢ならなかったようで、勢いよく起き上がった。
「どうやら殺されたいみたいだなぁ……えぇ? リューちゃんよぉ?」
「やっべ! フェイ。俺の背中乗っかれ。アレグリアまで逃げるぞ。そんでアレグリアについたら、うまくドンに話しつけてくれ。大丈夫だ。ドンはお前には甘いからよ」
「うん……出来る限り頑張ってみる!」
「約束だぜ。よし逃げるぞ!」
リューマはフェイを背中に乗っけて全力で走った。ゴードンは、逃げるリューマを全力で追う。
彼らはこのままのペースでアレグリアへと帰ることとなりそうだ。
こうして、グダグダではあるが、三人の旅が始まろうとしている。 |