旅芸人 2
ガ ッ シャ ン ! ! ! !
オズマさんの部屋のドアを叩こうとした時だった。
何かが割れる音だ。
「 ! 」
リンが躊躇無く、オズマさんの部屋に入る。
鍵はかかってなかった。
「 ぁ、すいませ・・・・・・ 」
部屋ではオズマさんがすさまじい格好で転がっていた。
こけたらしい。
「 ちょっと気が動転しまして・・・・・・ 」
ソファでオズマさんは小さくなっていた。
「 いや。別にオズマさんが無事ならいいんですよ 」
この言葉を言った後、ヤバい。また泣くかな・・・・とか思ったけど全くそんなことは無かった。
ていうか、かなり落ち込んでいる。それどころじゃないらしい。
「 落し物しちゃいまして・・・・・・ 」
そこでリンに肘で小突かれて自分はやっと気付いた。
あのピアス。
「 すごい喜んでたね 」
右側で歩くリンもにっこり笑って頷いた。
ピアスを渡した後のオズマさんは狂喜して「 ありがとうございます 」の連発。
テンションがハンスさん並に上がっていた。血圧大丈夫だろうか。
コ ン コ ン
ドアを叩く音がした。
そしてそのすぐ後に聴こえる、使用人の女性のものであろう声。
「 リン様、ラン様、夕食のご用意が出来ました 」
リンと二人で、みんなで食事をするホールに行く途中だった。
赤い絨毯の敷かれた廊下。
その途中にあの黒いローブの子供がいた。
隣りに居るのは、もう一人の旅芸人だろう。
同じく、黒いローブを頭からかぶっている。
子供はちらりと自分達を見るとすぐに目を逸らした。
リンが少し眉を顰めて立ち止まる。
それに、もう一人の旅芸人が気付いた。
「 ぁ、王子様のお連れの方ですか ? 」
振り向いた時、眼鏡だろうか。天井の明かりに反射して光った。
声からして女性。
朗らかに、子供とは対照的に愛想良く話し掛けてくれる。
「 今夜はよろしくお願いしますね。私どもも、王子様方に自分の芸を見てもらえて光栄です。
私は、踊り子の 【 水晶蝶 】と 申します 」
ローブの端を持って旅芸人の女性――水晶蝶さんは礼をする。
そして、隣りの子供を指した。
「 こっちが、団長の―――といっても二人だけですが―――【 紫幻想 】です 」
自分達は驚いて子供―――紫幻想を見た。
「 ぇっと、そっちが団長なんですか ? 」
「 はい。無愛想な上司で、正直困ってます 」
水晶蝶は苦笑した。
「 余計な事は言わないで 」
あいも変わらず、紫幻想は抑揚の無い声で言う。
「 はいはい。ぁ、お二人もホールまで一緒に行きましょうか 」
紫幻想は舞台が始まるまで一言も話さなかった。
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