第九話
出撃に前後して、皇帝アレクサンデル・ジークフリード・フォン・ローエングラムは交信可能な全てのチャンネルを用いて演説を行った。
「銀河帝国は銀河革命戦線正統政府なる政府の存在を一切認めぬ。海賊には騒乱罪と帝国反逆罪をもって鎮圧するものである。ケルン市民には一両日中に自由と安全を回復させる事を、予は宣言するものである」
演説に際してのアレクサンデル・ジークフリードの目には優しさではなく、厳しさと静かな怒りの光がたゆたっていた。
そのことを知った、ジェイムズ・アーロンは愕然とした。
「なんと言う事だ。我々の国が、我々の存在が一切認められないとは……こうなったら、交戦しかない。戦って、我々の存在を認めさせるのだ。艦隊の状況はどうなっている」
アーロンはウィーデマンに尋ねた。
「艦船の整備は突貫作業で行っています。現在1万7千隻が稼働出来ます。一会戦分の武装も補給体制も万全です」
ウィーデマンは答えた。彼らは政府としての体制を整えると同時に、艦隊の整備を行っていた。その多数はトゥルナイゼン艦隊から捕獲したものであったが、十分に帝国軍と渡り合える数だけの数を確保していた。あとは、どの戦場で帝国軍を迎え撃ち、撃滅するかであった。
ケルンは攻めにくく守りやすい地の利をもつ惑星である。二つしかない回廊を塞いでしまえば艦隊で突入することは困難であった。
故にアーロンは回廊の地形を活用して防御戦を挑もうと考えたが、軍の責任をまかされたウィーデマンは反対した。回廊の防御のみに固執してしまうと数的回復力、兵力に劣る自軍が圧倒的に不利であったためである。
ウィーデマンはむしろ回廊自体をおとりとして、一会戦で決着を付ける事を主張した。最初は納得出来なかったアーロンであったが、ウィーデマンの作戦案を聞き了承した。
同時刻、帝国軍でも討伐軍総旗艦ポセイドンにて作戦会議が開かれていた。今回の作戦の総司令官のロバート・ウェブスター中将が口を開いた。
「我々には時間がない。一会戦にて敵を壊滅させなければ、市民に危害が及ぶ可能性がある。それは断じて避けなければならない」
ウェブスター艦隊副司令官のフィリップ・バーノン少将が言った。
「しかし、ケルンの地理的状況を見ると敵が回廊の地形を利用して防御戦を挑んでくる事が予想されます。そうなると厄介です。消耗戦になりはしませんか」
「大丈夫だ。そのために我々がいる。我が艦隊の機動力と火力を活かして敵の防御を突破する。回廊突破の後、我々は直ちに反転し、回廊の地形を逆用して敵を回廊に閉じ込めウェブスター艦隊と挟撃して敵を討つ」
ランベルツが作戦案を述べた。僚友の言葉に頷きながら、ウェブスターは幕僚たちに言った。
「その通りだ、だから今回は先陣をランベルツ艦隊としてまず縦列陣をしき、短期決戦で回廊の防御線を突破し、敵艦隊を撃破する。異論はないか」
諸将が全員起立した。作戦の方針が決まったのだ。作戦の細部を確認しあい、作戦会議は終了した。
それぞれの思惑を胸に、戦いの準備が着々と進んでいく。
銀河の歴史がまた一つ紡ぎ上げられる……
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