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第二話
新帝国歴20年5月1日、皇帝アレクサンデル・ジークフリード・フォン・ローエングラム臨席のもと、御前会議が招集された。

会議に参加した帝国軍最高首脳は、摂政皇太后ヒルデガルド、国務尚書ウォルフガング・ミッターマイヤー、軍務尚書エルネスト・メックリンガー元帥、統帥本部総長ナイトハルト・ミュラー元帥、宇宙艦隊司令長官カール・エドワルド・バイエルライン元帥、帝国首相フリッツ・ヨーゼフ・ビッテンフェルトであった。

まず最初に口を開いたのは、首相のビッテンフェルトであった。

「海賊風情に敗北したあげく、独立宣言をあげさせられるなど、トゥルナイゼンは何をやっているか! これでは帝国の威信が丸つぶれではないか」

「いや、報告を聞く限りでは、トゥルナイゼンに落ち度はない。彼は慎重な行軍に徹しているし、破れたのは軍の練度の低下と敵軍の戦術が組合わさった結果と言わざるを得まい」

ミッターマイヤーがビッテンフェルトを制しつつ、話を続けた。

「しかし、巧妙なものだな。質量兵器を使うやり口といい、艦艇を行動不能にするやり口といい、敵は老練なものだな」

「現在のところ、わかっているのは、ジェイムズ・アーロンという銀河革命戦線正統政府の首謀者のみです。我が軍のデータバンクに問い合わせましたが、過去100年にわたってその名前の人物は存在しませんでした。現在、バーラト自治政府に問い合わせているところです」

メックリンガーが数少ない情報を報告すると同時に、バーラト自治政府のキャゼルヌ大将からのホットラインが入って来た。

キャゼルヌは帝国軍首脳に一礼すると、現在知り得た情報のすべてを報告した。

「ジェイムズ・アーロンという将校は確かに実在しました。最終階級は少佐。巡航艦ラガシュの艦長をつとめています。ランテマリオ会戦時に未帰還、戦死扱いになっています。生きていれば、ちょうど60歳。我々の政府にも流れて来た独立宣言の放送の外見とも一致します」

ミュラーが口を開いた。

「何にしても、情報が少なすぎる。敵の戦力がどれほどかも、現在のケルンの市民がどの状態に置かれているかも、我々には何もわからないのですから」

皇太后ヒルデガルドがさらにつづける。

「これは純軍事的な問題だけではありません。銀河帝国のあり方自体も問われている問題でもあります。もし、銀河革命戦線正統政府を我々が容認すれば、第2、第3の銀河革命戦線正統政府が現れるでしょう。そうなれば、銀河唯一の政体である帝国の存在意義そのものが失われる結果にもなります。我々には、バーラト自治政府に自治権を許した前例があります。自治権を際限なく独立した星系にも与えなければならなくなるかもしれません」

「皇太后陛下。もとは自由惑星同盟の将校が起こしたことです。ケルンの内情を探るために捜査官の潜入をお許しいただけませんか」

「お心遣い、ありがたくちょうだいいたします。キャゼルヌ大将。潜入に際しては、我々が全面的に協力する事をお約束いたします。……それでよろしいでしょうか。皇帝陛下」

キャゼルヌの提案を受けたヒルダであったが、今回の議長は息子であるアレクサンデルであった。彼女は、この御前会議を最後に国政を息子のアレクサンデルに任せようと考えていた。

そのことはここに列席している一同が承知している事であったから、固唾をのんでプリンツ・アレクの皇帝として初の発言を見守った。

アレクサンデルは父から譲り受けた豪奢な金髪を振り、皇帝として初の公式の命令を発した。

「キャゼルヌ大将の申し出ありがたくお受けしよう。帝国軍が全責任をもって潜入官を護衛する。銀河革命戦線正統政府の解釈についてはハイネセン大学のミンツ助教授の意見を聞き、ケルン市民に危害、ならびに何らかの犠牲がある場合、帝国艦隊は直ちに出兵、これを鎮圧するものとする」

後にメックリンガーはこの様を「威風堂々にして華麗、金髪のグリフォンがヴァルハラより舞い降りたかのようであった」と述懐している。

歴史のページがまた一つ紡ぎ上げられる……


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