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第一話
新帝国歴20年4月21日、ジャムシード星域において、宇宙海賊と思われる艦隊約5,000隻あまりがジャムシード星域の惑星ケルンを占領したとの報告が帝国領内を駆け巡った。

事態を重く見た帝国軍首脳は直ちに、近くを哨戒中のイザーク・フェルディナンド・フォン・トゥルナイゼン大将の艦隊を派遣した。

トゥルナイゼン大将は先帝ラインハルト・フォン・ローエングラムとは同年でこの歳43歳にあたる。長らく閑職に追いやられていたが、先頃、艦隊司令官として復帰する事に成功した。

4月25日、トゥルナイゼン艦隊がジャムシード星域に到着した。

「静かすぎますな。まるで、攻めてくださいと言わんばかりです」

艦隊参謀長のティルピッツ少将が口を開いた。

「だが、星域に入らない事には情報がつかめん。哨戒艇を通常の倍の数を出して警戒を厳重にするように通達せよ」

トゥルナイゼンは若い時の失敗を繰り返すまいと、慎重な行軍を徹底させた。

4月26日23時、オペレーターの悲鳴が艦橋に響き渡った。

「艦隊後方より質量体多数接近!」

「なんだと……! 各艦、艦隊密度を薄くし、質量体の接近を回避せよ!」

トゥルナイゼンの命令が行き渡る前に、小惑星に簡易ブースターを取り付けた質量兵器の群れが艦隊に殺到し、陣形が側面から一気に突き崩された。さらに陣形が崩された隙をねらい、海賊艦隊が奇襲を仕掛けて来た。

「天頂方向より敵艦隊! 数、およそ3000!」

「邀撃せよ!」

トゥルナイゼンは陣形を再編し、海賊艦隊を迎撃しようとしたが、平和な時間が長かった帝国では、古参兵や実戦経験の豊富な将校が数多く退役し、秩序をもって抵抗できた艦はわずか1000隻に満たなかった。

海賊の戦術は巧妙そのものだった。スパルタニアンとワルキューレの混成部隊が大型艦の機関部を破壊し、小型艦の多い艦隊は岩礁に潜み、襲撃、撤退を繰り返し、たちまちのうちに帝国艦隊を行動不能にさせた。

そのさまは猛獣に追い立てられ、慌てふためく巨像の群れのようであったとトゥルナイゼン艦隊の生存者は後世証言している。

「……してやられた! ……全艦、退却……」

抵抗らしい抵抗が出来ず、歯噛みしながらトゥルナイゼンは退却を指示したものの、ジャムシード星域から脱出できた艦は3000隻に満たず、残りの艦はことごとく捕獲、もしくは破壊された。

わずか一日の会戦で、トゥルナイゼン艦隊は戦力の8割を失ってしまったのだった。

4月30日、ジャムシード星域第17番惑星ケルンで、ジェイムズ・アーロンを首班とする銀河革命戦線正統政府がローエングラム朝銀河帝国に対し独立を宣言した。

新帝国歴20年、銀河の歴史がまた一つ扉を開ける……


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