あらすじ
物語の続きが気になるかたもおられるかもしれませんので、全体のあらすじを掲載いたします。
[第1部]
ガイラグルの勇者カザンは、暴走トラッグにはねられて死に、日本の高校生新藤研二に転生した。
研二が十六歳のとき、カザンの意識が目覚める。
研二は、目立たぬように高校時代を過ごすことを決める。
化学教師をいたぶる場面を研二に見られた御堂麗子は、研二が学校にいられなくなるよう画策するが、失敗する。
ある日、研二の幼なじみの藤崎しのぶと新井谷浩介が、不良・奥寺益男とその仲間に襲われる。
不良たちを一瞬でたたきふせた研二に、麗子は興味を持つ。
(ここまでが第1部第1話)
麗子の取り巻きの東雲蘭子は、麗子が研二を好きになったと誤解する。
そして、研二に接近し、化学教師は女子生徒を妊娠させて捨てたため麗子が仕置きしたのだと説明する。
蘭子が研二に近づくのを見た麗子は、蘭子が研二を好きになったと誤解する。
互いの誤解は泥沼の譲り合いに発展し、気が付けば研二を生徒会長に押し上げる相談がまとまっていた。
この計画を知った森崎しのぶと新井谷浩介は全面協力を約束。
本人の知らないところで選挙戦は始まり、終わってみれば圧倒的大差で研二は生徒会長に当選していた。
選挙スタッフはそのまま生徒会役員となる。
リコールをねらって無茶な企画を次々打ち出す研二だったが、優秀すぎるスタッフのせいで、予想外の好結果ばかりが生まれる。
進級して生徒会長を退任できたと安心したのもつかの間、成績に悩む後輩に冷たい言葉をかけたのが誤解され、自宅で勉強会を開くはめになる。
勉強会を盗聴した校長は、全校規模で実施するよう研二に迫り、やがてこの勉強会は都知事と府知事に注目され、研二は時の人となる。
おまけに、隣家の柴犬ジョン・ウィンダム3世にライバル認定され、日々の平穏を脅かされる。
まとわりつく森崎しのぶを追い払うため、自分は実は異世界の勇者だと告白する研二。
驚いたしのぶだが、人間離れした許容力を発揮する。
「どんなになっても研二君は研二君だもん」と、いっそうまとわりつくようになるのだった。
浩介からのラブレターを研二からのものと勘違いした情報戦士・山中小梅。
麗子誘拐事件をきっかけに研二と協力関係を結んだ傭兵たち。
目立たぬように高校時代を過ごしたいという研二の願いと裏腹に、周囲はどんどん騒がしくなっていく。
そんなある日、研二は精神が肉体から引きはがされるような異常な感覚を覚える。
気が付けば、ガイラグルの世界でカザンの体に戻っていた。
実は、転生ではなく、カザンと研二の精神が互いに入れ替わっていたのだった。
研二の憑依したカザンは、対立する部族同士をまとめ上げる画期的な活動をしていたらしい。
今からカザンは全部族の代表者たちに演説をしなければならないのだという。
[第2部]
それから五年の月日がたった。
カザンは全部族の〈調整者〉として、忙しい日々を送りながら、違和感を募らせていた。
ガイラグル本来の価値観からは考えられない妙な慣習や出来事が多すぎるのだ。
調べていくうちに、はるか昔からの禁足の地である〈隠された山〉に重大な秘密があることが判明する。
選抜された英雄たちを率いて広大な〈山〉に挑むカザン。
少なからぬ犠牲を出しながらも、彼らはついに恐るべき真実にたどり着く。
〈山〉には、〈ささやく者〉と呼ばれる恐るべき種族が住んでいる。
彼らこそ、ガイラグルたちを互いに争わせつつ、この世界を裏から支配してきた存在なのだ。
〈ささやく者〉たちと対決すべく、ガイラグルの英雄たちは〈山〉の地下にある迷宮に挑む。
[第3部]
元の体に戻った研二と仲間たちは、それぞれの分野に進み、世界中で活躍していた。
高校時代に掲げた無茶な目標を、それぞれ本当に実現しつつあったのだ。
彼らは、世界で妙な事態が進行中であるのに気付いていた。
総合された情報は、ある一定時期にアメリカのある場所において、想像を絶する量の電力を供給しようとすることを示していた。
一体その計画の目的は何か。
計画を進める者たちの背後にいるのは何者なのか。
再び結集した研二チームの戦いが始まる。
[第4部]
ついに〈山〉の最深部に到達したカザンたち。
徐々に明らかになる真相は、おぞましいものだった。
ガイラグルの精神を操ってきた〈ささやく者〉だったが、長い長い時の果てに、ガイラグルは抵抗力を高めてきた。
そこで〈ささやく者〉は、異世界に移り住んで、抵抗する力を持たない異世界人を支配し、今度こそ完全な王国を築こうとしていたのだ。
試行錯誤の末、ニンゲンの住むチキュウと接続することができ、まずは何人かの〈ささやく者〉が精神のみチキュウに移動してニンゲンに憑依し、受け入れ準備を進めていた。
研二とカザンの入れ替わりも、その実験の影響だったのだ。
すでに準備は完成しつつあり、〈ささやく者〉は、肉体ごとチキュウに移ろうとしていた。
カザンたちは攻略を急ぐが、間一髪で転送施設の制圧は間に合わず、〈ささやく者〉はすべて旅立ったあとだった。
英雄たちは、厄介払いができたと考えたが、カザンは納得できなかった。
自分たちに幻影を見せ、欺き操っていた者たちを取り逃がすことを、戦士としての誇りが許さなかったのだ。
[第5部(完結編)]
砂漠の中の巨大なドーム。
ここがすべての始まりだった。
人類の宇宙移住を想定した壮大な実験。
七十年前、ここに入った科学者たちは、隔離された環境で生活を営んだ。
一般には十年で中止と発表されたプロジェクトは、今もなお続けられていた。
ここで生まれた子どもの精神構造は〈ささやく者〉たちの影響を受けやすく、今やドームの主要メンバーはことごとく〈ささやく者〉に憑依されていた。
彼らはここから有力な科学者や政治家や財界人の精神を支配し、仲間を迎える準備を進めていたのだ。
ドームに突入する研二チームと傭兵たち。
だが転送装置の破壊は間に合わず、〈ささやく者〉たちは地球に到着してしまう。
耐性を持たない地球人たちは、手もなく精神を支配されていく。
絶望しかない状況の中で、転送装置が一人のガイラグルを吐き出した。
カザンである。
帰れない旅であることを承知で、彼は〈ささやく者〉との決着をつけるため、ガイラグルの肉体を持って地球に来たのだった。
カザンの思考波と同調できた新藤研二が、森崎しのぶが、新井谷浩介が、山中小梅が、新井谷豪子が、ジョン・ウィンダム3世が、御堂麗子が、護藤竜司が、トインビー・マクレーンが、久江、銀子、蘭子が、そしてなぜか奥寺益男が、精神の自由を取り戻す。
最後の戦いが始まる。
お読みくださり、ありがとうございました。次回の期間限定公開作品は、ERRPG(拡張現実ロールプレイングゲーム)を題材にしたSFの予定です。辺境の老騎士第1章完結後に掲載いたします。