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BASEMENT

作者:鷹原美毅
ホラー……のつもりですが、自分の弟に読んでもらったところ「ホラーと言えばホラーだけど……」と言われてしまいました。
ホラーに感じられなかったり、つまらなかったりしたら申し訳ないです。
「何か出ないのかな。兄貴から“出る”って聞いたんだけど」
 夜の中学校で、肝試しを企画した少年タツヤが呟いた。
「でも、兵隊の幽霊が出るっていう地下も封鎖されちまってるらしいからね」
 タツヤの親友タカフミが校内を見渡す。
 この学校は、戦時中には大日本帝国海軍の地下基地があった場所のすぐ近くに建てられていた。地下基地自体は、今や完全に封鎖されていて、地上部分にはテニスコートも設けられており、決して入ることはできない状態だった。
「でも、今年の体育祭のとき、グラウンド整理してたら“銃弾を防ぐ盾”が出てきたろ? 盾のちゃんとした名前はわからないけど。
 もしかしたら、他にも基地への入口があったりするかもよ?」
 タツヤは楽しそうに言った。
「まっさかあ!」
 二人の幼なじみのトモヨが驚いたように言ったが、タツヤが応じる。
「いや、ないとも限らないぜ。おれ、盾が出たときの話をジイちゃんにしたときに教えてもらったんだけど、その盾ってやつは、基本的に重要な陣地の前に設置されたらしいよ」
「え〜!」
 双子の兄弟ユウタとユウキが同時に驚きの声を上げた。
「ってかさ、何の計画もせずに学校に来たわけ?!」
 怒鳴るような口調で、学年で一番勉強のできるタクミがもっともなことを言った。
「ん〜、下見とかしたら、楽しくないじゃん? 下見役は」
「確かに。誰か他のヤツにやらせりゃ良かった」
 タカフミの言葉に、全員が頷く。
「でも、わたしたち以外で、ここの近くに住んでる子なんていないわよ。それにこれは肝試しというより、単なる学校探検に思えるのは気のせい? とはいっても、学校の奥に行ってみなきゃ始まらないわね」
「じゃあ、今から夜の学校探検に名前を変えよう」
 トモヨとタツヤは視線を交わし、先に歩いていった。

「ねえ、怖いよ〜」
「なんか雰囲気、ヤバイって!」
 ユウタとユウキが真っ先に音を上げたが、他の四人も学校内の異様な雰囲気に圧倒されないわけにはいかなかった。
「ま、まあ、大丈夫だよ、たぶん。行こう」
 六人は、校舎に入って突き当たりを右に曲がり、学校の北校舎と東校舎を繋ぐ天廊(渡り廊下)をくぐってミルク室の裏に出た。
「ここ……ってさ」
 タクミが静かに口を開いた。
「もしかして、女の子の幽霊が出るっていう……」
「え、例のミルク室の裏だっけ?」
 タカフミには暗くてよくわからなかったが、例のミルク室だった。二十年ほど前、昼休み中にかくれんぼをしていた女子生徒が空になった牛乳用の冷蔵庫の中に隠れた際、誤って下降式のカンヌキが閉まってしまい、そのまま凍死したという学校の怪談が残る場所だ。現実的に考えて、牛乳が段階積みになった冷蔵庫に人間が入るなどおかしな話だが、実際に桜の木に囲まれた夜のミルク室は、学校の外から見ても不気味で、出そうな気がしてならなかった。
「さっさと行くべ!」
 タカフミの怯えきっているが思い切ってもいる言葉に勇気付けられた一同は、先に進むことにした。その場所では、カチッという謎の物音以外は何もなく進むことができたが、結局はその物音の正体がわかることはなかった。


「なあ、みんなに聞きたいんだけど……」
 一番後ろを歩いているユウタが呟いた。
「ん、何?」
 すぐ前を歩く弟のユウキが聞き返した。
「おれの後ろから足音がするんだけど、後ろに誰かいたっけ?」
 全員の毛が逆立った途端、双子の兄弟を置き去りにして三人は駆け出した。それぞれが持っている懐中電灯が走っている持ち主に揺さぶられ、学校の窓ガラスに乱反射して、彼らの周囲は少し明るくなった。
「おいおいおいおい、勘弁してくれよ! 地獄の扉をくぐる勇者にはまだなれないぜ!」
 学校でも二番目に足の速いタカフミが先頭を走りながら声を上げる。
「全くだ」
 いかにも冷静そうにタクミが応じたが、その表情は引きつっている。
「おい、無事か?」
 タカフミが懐中電灯を当ててみんなの顔を確認する。ユウタも無事だった。
「ふう……大丈夫、みたいだな」
「バカ野郎」
 タツヤがユウタに拳を振り下ろす。
「おれのせい?」
「そうだ」
「なぜ?」
「呼び寄せやがった」
 なんて無茶な論理だ、と誰もが思ったのは言うまでもない。
「呼び寄せたくて呼び寄せたわけじゃないよ」
「呼び寄せたくて呼び寄せていたなら、おれはお前を殺す」
 真顔でタツヤは応じた。
「ヒドイなあ」
 ユウタが苦笑いをしたが、タツヤの表情は緩まなかった。
「まあ、とにかく、争うのは後回しだ」
 タクミは二人を制止し、先に行くよう促した。

 全員が猛ダッシュしたお蔭で、他の恐怖を味わうことなく、彼らはテニスコートの入口にたどり着いた。
「な、なあ、あれ……」
 タクミが人差し指を向けた先には、地面に黒い空間がうがたれていた。
 残りの五人は無言で応じる。
「行ってみる……しかないよな」
 タツヤが勇んで前に出た。
「だな」
 タカフミも踏み出す。
「ついてこいよ。あと、後ろは見るな」
 全員がゆっくりと歩き出した。黒い空間に向かって。何も音はない。辺りは、不気味な音がするときよりも恐ろしい空気に包まれた。
 黒い空間……そこに懐中電灯の光を当てると、階段が続いていた。
「……ここって、封鎖されたはずだよね」
「前言撤回」
 トモヨが呟くと、タカフミが即答した。
「ふざけ――」
「ふざけてない」
 またも即答が続く。タカフミ以外の全員の表情が強張る。
「ね、ね、大丈夫?」
 トモヨはタカフミの顔を覗き込む。石像のように無表情だった。
「大丈夫……じゃない。なぜ開いているんだ。誰が開けた?」
「最初から開いてたってことは?」
 ユウキが意見を言った。
「ここはテニスコートの中だから、開いてたら部活ができないだろ」
 タクミが冷静に応じる。
「じゃあ、やっぱ……幽霊?」
 トモヨの表情が恐怖に包まれた。
「そうとも限らないよ。もしかしたら、他の子が開けてそのままなのかもしれないし」
「なるほど」
 タクミの言葉に、全員が納得した……いや、しようとした。
「入ってみる?」
「絶対にイヤ」
 トモヨが言うと、双子の兄弟が同時に答えた。
「このまま帰るのも、夏の思い出話にならないしな……」
 タツヤが呟くと、タカフミが彼に視線を合わせた。
「おれらだけで行くか?」
「ああ」
 二人は頷き合い、ゆっくりと階段を降りていった。
「みんなはここの近くで待っててくれ」
 階段をかなり下ったところから、二人の声は聞こえてきた。
「ああ、わかった」
 タクミが呟くように返事をした。

 残された四人の声が聞こえなくなったころ、タツヤとタカフミは、長い階段を降りたところにいた。カビの臭いと何かの腐敗臭が漂っている。
「行こう」
 少しだけ息を吐き、二人は歩き出した。懐中電灯の限られた光が、基地内の不気味さをむしろ際立てている。赤茶色の壁を照らしていた光が異なる色を捉えて動きを止めた。
 ……黒い、どす黒い染み。二人が近づくにつれて、嫌な臭いが鼻をつくようになってきた。
「血……血だ!」
 タカフミが叫び声を上げてから数秒が経過した時、地上で彼の声が聞き取れたのか、四人の悲鳴が聞こえた。二人は急いで月光に照らし出された階段を目指したが、その光は突然に途絶え、カチッという音が聞こえた。
「鍵、閉められた……?」
 タツヤが恐怖に顔を引きつって呟く。
「やべぇな」
 答えるように呟いたタカフミも、狼狽しきっていた。

 四人が悲鳴を上げた理由は、何もタカフミの叫び声を聞いたからではなかった。
 また、あの足音が聞こえたからだった。
 四人はまとまって駆け出す。そして、彼らは地下基地への扉を閉めてもいなかった。
「ど、どうして! どうして、おればっか!」
 足音はなおも聞こえていた。しかも、一番足の遅いユウタの後ろから。ゆっくり歩いているはずなのに、足音は遠のかない。
「あっ……!」
 暗闇の中で、ユウタの視界が反転した。月明かりが目の前に広がり、ユウキの声が遠くから鼓膜を刺激したが、やがて目の前は暗闇に覆われた。


 地下に取り残された二人は、意を決して歩き出していた。血痕のようなものも記憶の隅に追いやっていた。
 ゆっくりした歩調で先に進むと、二人の視界にボウっとした白い人影が飛び込んできた。二人が顔を見合わせて近づくと、彼らの歌に呼応するかのように歌声が聴こえてきた。
『赤い太陽に流れる汗を 拭いてにっこり大砲手入れ 太平洋の波、波、波に 海の男の艦隊勤務 月月火水木金金……』
「ジイちゃんがよく歌っていた曲だ」
 タツヤには聞き覚えがあった。海軍出身の者なら、知らぬ者はいないというほどの伝説的な軍歌だった。
 立ち止まった二人に恐怖はなく、妙に落ち着いていた。
「でも、ここだと“陸上勤務”じゃ……」
「それより、見つからないうちに逃げよう」
 タカフミが言いかけたが、タツヤは思い出したように遮った。
「でも、出口は塞がれたのにどうやって?」
「もしかしたら――」
 タツヤは口を尖らせて考えていたが、しばらくして、自分の言ったことを思い出した。
「盾が見つかったところにあるかもしれない……」
「あ、他の入口!」
 タカフミが思わず発した声に、人影は気づいたようだった。声もなく、音もなく、背筋を奔る悪寒だけが彼らに接近を知らせたのだ。
「隠れ……るとこなんてないな」
 タツヤは静かに呟き、観念したような表情で影の方に振り向いた。タカフミも同じように意を決して、影を睨みつけた。



『ヨシコ、行ってくるよ。どうか、お元気で』
『……うん』
 タツヤとタカフミの耳に、誰かの声が届いた。立っているが身体は動かない……というより、四肢の感覚がなかった。
 やがて、二人とも目の前の光景がハッキリしてくることに気づいた。そこは、二人で何度か訪れたことのある横須賀の面影がある場所。似ているが、本当に横須賀かはわからなかった。目の前で、紺色の軍服に身を包んだ背の低い青年水兵が、ポッチャリとした美しい少女に敬礼をしていた。
『立派に戦って……』
 少女は小声で言ったが、口を閉じた後に続く言葉はタツヤだけに届いたようだった。

 ――必ず、生きて帰って。


『海の男の艦隊勤務……』
 タカフミの意識の中へ、歌が飛び込んできた。
『月月火水木金金!』
 彼は、甲板で水兵たちと肩を組んでいた。さっき聞こえてきた歌と同じものを、何故か歌うことができた。
『もし、陸上勤務になったらどうするよ?』
 一人の若い水兵が、背の高い水兵に話しかけた。
『そんな不名誉なことあってたまっか! だったら名誉の戦死を遂げてやる!』
 若い水兵に言い返すと、背の低い水兵は笑顔を浮かべて続けた。
『我が身に宿りし海の魂、決して、決して、陸のホコリになど汚されるものか!』

 ……タツヤは船の上にいた。日の丸旗の掲げ、多くの水兵たちが乗り込んだ大きな船に。
『こんなところで!』
 先ほどの背の低い水兵が銃座を操作し、迫り来る飛行機に銃弾を叩きつける。別の飛行機が黒い物体を海に落とした。黒い物体は見えなくなったが、やがて船の側面が吹き飛んだ。タツヤも他の水兵と同じように身体を投げ出され、何か柔らかいものの上に落ちた。
 水兵だった。首が異様な方向に曲がっている。それでも、まだタツヤの身体は動かない。横を向いたまま、彼は虐殺されていく水兵たちを見つめるしかなかった。
 逆さまに見える銃座から、青年も吹き飛ばされるのが見えた。タツヤからは、頭からジャンプしたように見えたが、言うまでもなく、実際は違う。
『貴様らは、おれの大切な全てのものを奪うのか!』
 青年はタツヤの近くに転がり、叫んだ。左足首から先がなくなっていた。
『友人も、親父も、兄も……全て貴様が!』
 青年は天を睨んで叫び続ける。“貴様”が誰なのか、タツヤにはわからなかった。

 目の前が真っ白になった。
 タツヤは身体を動かすことができるようになり、タカフミはタツヤの後ろに立っていた。だが、二人は言葉を交わすことができなかった。
『ヨシコ……』
 小さな声が聞こえると、また青年の姿が二人の視界に入ってくる。
 痩せ細った死体を抱きしめ、青年は病院のような場所でひざまずいていた。その場所の周りは焼け野原で、高い建物は何もない。
『おれ、帰ってきたのに……』
 青年はゆっくりと立ち上がり、松葉杖をつきながら病院のような場所を出て行った。

 気がつけば、どこか暗い部屋にタツヤとタカフミはいた。あちこちに機械が置いてあり、カビと汗の臭いが二人の鼻をつく。
『なあ、高橋。海の男も……終わっちまったんだなあ。これでおれは、陸のホコリにまみれてしまう……か』
『ああ、可哀想にな。その足じゃ、この基地で働くのがやっとだろ。おれは最初から陸上勤務だったけど』
 青年がしみじみと呟くと、同僚と思しき高橋という兵士が呆れたように言い返した。
『しっかし、お前も大変だな。兵隊が足りないとはいえ、片足が大して使えないってのに、まだ酷使されるなんてよ』
『まあ、いいさ。おれには、もう残されたものもほとんどないんだ。戦友も、親父も、兄も……恋人も、みんな戦争で死んじまった』
『……すまん、余計なことを言った』
 高橋は頭を下げた。
『ああ? 気にするな。おれが勝手に話し出したことだ』
 しばらく無音の時間が流れたが、けたたましい警報音が沈黙を破った。
『B−29だ!』
 空襲を生き抜いた日本人のほとんどが「二度と聞きたくない」というB−29独特の飛行音が、立ち尽くすタツヤとタカフミの耳にも届いた。
 静から動へ時は移る。多くの兵士たちが地下基地に入り込み、爆撃の危険を避けようとした。
 ――地下に閃光が降り注ぐ。出口から範囲の狭い、しかし強烈な光が辺りを照らした。
『おい、出られなくなるぞ!』
 誰かの叫び声が聞こえる。タツヤとタカフミも、慌てて外に出ようとしたが、爆撃の被害を受けるわけにもいかず、出るに出られない状況だった。
 何度か叫び声が上がった。落ちてきた岩に押し潰される者、頭を打って気を失う者が多くいたが、タツヤとタカフミが被害を受けることはなかった。
『誰か、誰か生きているヤツはいないか?』
 タツヤとタカフミには、もう聞きなれてしまったあの水兵の声だけが地下基地の中をこだまする。
『小隊長殿! 高橋! 吉沢! 柳原!
 ……みんな死んじまったのか。また、俺だけ――』
 B−29の飛行音に続いて、もう一度轟音が鳴り響くと、辺りは完全な暗闇に包まれた……。

 壁に背を預けて座り込む形で気を失っていたタツヤは、ゆっくりと目を開いた。遠くに小さな光が見える。
「……あれは夢だったのか」
 隣に横たわったタカフミが呟いた。
「どうだろう。俺は、可愛い女の子と背の低い水兵が出てくる夢を見てた。彼は戦場に行った」
「同じだ……」
「同じって……おれたち、死んでない?」
「たぶん、生きてる」
 タツヤは答えると、タカフミのみぞおちに勢い良く拳をねじ込んだ。
「あ……うっ! 生きてる、みたい……だな!」
 と言いながら、タカフミはやり返した。
「う、お……。そのようだ……」
 二人は立ち上がり、光に向かって歩き出した。
「ところで……あの人影は?」
 タカフミは辺りを見回した。
「わからない。あれも夢だったのかもしれないよ」
 タツヤが肩をすくめて答える。
「かもな。
 にしても……おれたちって、幸せな時代に生きてるんだなあ」
 タカフミはゆっくりと溜め息をついた。
「ああ、そうだな。戦争のない世界……か。でも、それって、おれたちだけの世界なんだよな……。友達が武器を取っているところなんて、見たくないもんな」
 タツヤはしみじみと言って、自分たちを置き去りにして逃げてしまった四人のことを思い出した。
「みんな、無事かな?」
「……あの光のところに行ってみよう。例の出口かもしれない」
「だな」
 二人の判断は正しく報われた。タツヤが考えた通り、もう一つの扉があったのだ。扉は半開きの状態だったが、鍵がかかっているのか、二人がかりでも完全に開けることはできなかった。
「重い!」
 タカフミが悲痛な声を上げる。
「諦めんな、押せ!」
 タツヤは大声で返した。
「……え?」
 二人の身体が急に軽くなった。何かが彼らの背中を押すかのように。あるいは、彼らと共にドアを押しているかのように。
 身体が軽くなったことで、二人の押す力は強まり、扉は軋みながら開いた。
「うぉっしゃあ!」
 タツヤとタカフミは、曙光に照らされた空に向けて、同時に声を上げた。地下基地跡の中から涼しい風が吹き上げたことに驚き、二人は扉を閉める。開ける時よりも、だいぶ軽くなっていることに二人は気がついた。
「それにしても、もう朝か」
 急にテンションを下げて、タツヤは呟いた。
「あ!」
 タツヤの呟きなど聞いていなかったかのように、タカフミが叫んだ。
「みんな!」
 タカフミが人差指を向けた先には、離れ離れになってしまった四人がまとまって倒れていた。
「おい、起きろ!」
 タツヤとタカフミは四人を起こして回った。
「お……おう。お前らも無事だったか」
 タクミが眠そうな顔でタツヤに言った。タカフミはあとの三人を起こしていた。
「ああ、無事だよ。お前らこそ、どうしたんだ?」
 タツヤが聞き返すと、タカフミが笑いながらタクミの肩を殴った。
「ヒデーよな、置いてくなんて」
「あれは悪かった。謝るよ。また足音が聞こえてね。おれたちは何とか逃げ切れたと思ったんだけど、気づいたら――」
 タクミが肩をさすりながら、申し訳なさそうに言うと、六人はそれぞれの体験を話し始めた。

 ――話が終わると、ユウキが怯えた顔で言った。
「そろそろ、ここから出た方がいいかもよ。そんな夢見たなら、マジで呪われてっかも。おれらの体験だって、結局は何も――」
「いや……大丈夫だよ。きっと、呪いなんて、本や映画の中の世界だけ」
 タツヤが遮ると、タカフミも頷きながら言う。
「だんだん、わかってきたんだよ、おれたち」
 もしあれが夢だったら、何でお前らに話せるほどちゃんと覚えているか、疑問に思わないか?」
「じゃあ、あんたたちが見たのは何よ?」
 トモヨが怪訝な表情を浮かべた。
「きっと、あれは……“チビっこい兵隊”の――」
 タツヤは落ち着きを払って、だんだんと明るくなっていく空を見、次にタカフミに視線を移した。
「何をやってるんだ?」
「いや、軍隊っぽく敬意を払ってみようかと思ってね」
 タカフミは直立不動の姿勢を取った。
「お、それいいな。よっしゃ、全員起立!」
 突然の声に驚きながらも、全員がそれぞれのペースで立ち上がり、地下基地跡の入口を挟むように並んだ。タツヤは北側に、残りの“六人”は南側に。
「俺達に幸福な時代を贈ってくれた――」
 タツヤは、最も上手く直立不動の姿勢を取っている六人目に気づき、笑顔を向けた。
「海の男に敬礼!」
実体験を基に書きました。言うまでもなく脚色はしていますが……もし私の作品に興味を持ってくださって実話の部分を知りたくなった方がいらしたら、感想や評価の際に遠慮なくお尋ね下さい(こういうこと書いていいのかな??)。知らないでおく、というのも手ですが。
なお、六人とも実在する人物を基に書かせていただきましたが、名前の方は仮名を使っております。

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