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他の作者の方の小説を読んでいて勢いで書いてしまいました。

逆乙女ゲーの真友情END

作者: 書きミン

他の作者の方の小説を読んでいて勢いで書いてしまいました。


活動報告から設定(ネタバレ?)を引っ越しました。

私は乙女ゲーの世界なるものに転生しました。


ヒロインこと山季節花やますえせつかとなった少女の願いによって作られた世界に。

それに気がついた私は攻略対象をさけながら普通の一般生徒として生きようと決意したのに……。


どうして攻略対象(あんたたち)毎回(いつも)私の周りに集まるのよ!?

何故イベントが起こる!?

そのセリフを言うのは私相手じゃ無いでしょ!?

どうしてこいつが攻略完了になってるのよ!

そりゃ私も、お人好し風吹かせて攻略対象にこっそり助言したり

怪我しないように助けたりしたのもいけなかったのかもしれないけどさ!

けど私はやりきったはずなのだ。

ヒロインがどうしてこの世界を望んだのかを聞き出し

節花の攻略対象の悩み解決を影から協力して、彼女は本当の願いを叶えた。

……そして私は千回目のゲームで無事に『友情END』を迎えたはず……だった。


しかし私は千一回目の校門を潜っていた。


そして桜舞う四月が過ぎ、新緑の五月。ゴールデンウィークを終えた後、私は気がついた。

この『親友』の存在が異常である事を。


「……気づいちゃったんだね。光」


海辺美月うみべみづき

彼女は何度巡っても私の親友だった。

『私海辺って言うの。あなたは河辺さんだからなんかお揃いだね』

自己紹介を終えた後、毎回そういって話しかけてくれて毎回親友になった。


いつからか無意識に、私は攻略対象を避けるとき必ず彼女に居場所を聞いていたのだ。

そうして助言に従って逃げた先で必ず『他の攻略対象』に出会うのだ。

そう思い返してみると次々と違和感がわき上がった。

図書室に誘われたら、影で本を読む見た目俺様な生徒会長が居た。

買い物に誘われたら、CDショップでバンドを聴く真面目君な委員長が居た。

夏祭りに誘われたら、逆ナンされている腹黒いショタが居た。

文化祭に誘われたら、倒れている他人の幼馴染がいた。


何もしなければ私は彼女の導きによって必ず『ハーレムEND』を迎えていたのだ。


「美月……どうして?どうして私と攻略対象をくっつけようとしてたの?」


彼女は私の恋のキューピッドがしたかっただけなのだろうか?

その為に一緒に居たのだろうか。


「光をこの世界に繋ぎ止めたかったから」


「……え?」


「この世界は、2人の少女の願いによって作られたの。」


乙女ゲームのヒロインになって攻略したいと願った山季節花。

乙女ゲームの傍観者として攻略を眺めたいと願った海辺美月。


「私ね、前世(まえ)はすごく病弱な子だったの」


私の頭をよぎるこの映像(スチル)はきっと美月の過去なのだろう。


「病院内を歩く事さえ苦痛なほどひどい病気だった。

最初は優しくしてくれた両親も、弟が出来たら私の事を疎ましく思う様になった。

そして交通事故で死んだ」


病院服を着た子供。髪が無くてやせ細っていて、ひとりぼっちな少女。


「私の手元に残ったのは、それなりの財産と弟が受け取るはずだった一台のパソコンだった。

だから私はそのお金でゲームを買ってみた。

それくらいしか病院のベッドの上で出来るものなんてないもの。

たくさんいろんな種類のゲームをしたけど、その中でも乙女ゲームと呼ばれるものにはまったの。

この中なら私は病気なんて無かった。

この中なら両親が愛してくれた。

この中なら学校に行けた。

この中なら恋を知れた。

……この中なら親友が出来た」


ー病気になんてなりたく無かった。

ー両親に愛されたかった。

ー学校に行ってみたかった。

ー恋をしてみたかった。

ー……友達が欲しかった。


「私が入学するたびに光に話しかけた言葉、覚えてる?」


「……うん」


『ねぇ?あなた河辺さんだよね?私海辺だからなんか親近感湧くな』


「あれさ、一番最初に光が私に話しかけてくれた言葉なんだよ」



HRが終わった最初の休み時間、私は一人うつむいていた。

周りはみんな、新しく出来た友達同士で固まって楽しそうに話していた。

念願の学校。自由に動く体に、初めての外。

戸惑う事ばかりでどうしたらいいのかわからなくなって……。


「ねぇ?」


ビクッ!!

突然話しかけられて肩が弾んだ。


「ご、ごめん。そんなに驚くなんて思ってなくてさ」


顔を上げると一人の少女が必死に笑いをこらえながら肩をふるわせていた。


「あなた、海辺さんだよね?」


そんな彼女に戸惑いながら頷く。


「私河辺だから親近感湧くな」


この時、私は本当の学園生活が始まったって思えた。


「もしも良かったら私と友達になってくれないかな?」


こうして、私はずっと欲しくてたまらなかった『親友』を得た。



私が?

忘れていた。ずっと繰り返す世界の中でもう最初の方の思い出なんて残ってなかった。


「最初はただ傍観する為だけに『助言者(アドバイザー)』をしての能力を願った。

それを使って誘導はしたけども攻略対象達と光がくっつくかどうかなんてどっちでも良かった」


「どうして?」


「だって光に『恋人』が出来ても私は光の一番の『親友』でいられるもの」


そういって美月は笑った。


「二周目を迎えた時、周りを見ながら呆然としている光を見てひょっとしたらと思った。

けど光は望んでここに居る訳ではないとわかった時怖くなった。

光は……光がこの世界を出て行って居なくなるかもしれないって」


美月は言葉を紡ぐにつれて一見無表情な顔を歪ませていく。

そしてその両目からぽろぽろと涙がこぼれ始めた。


「……」


「元の…世界に、帰っちゃう、かもしれないって」


「……美月」


うつむいて両手で顔を覆っても溢れ出た涙が、ぽたぽたと地面に吸い込まれていく。


「一人はもうやだよ!

図書室で光と一緒に勉強したい!

光と買い物に行って服を選び合いたい!

夏祭りに行って花火を見て、文化祭をまわって!」


「美月」


「光とずっと一緒に居たいよ!!!!!」


「美月!!!!!」


「っ!?」


驚いた美月の肩が跳ねる。


「私の話を聞いて」


「……」


興奮したせいか、少し荒い息を吐いて肩をふるわせていた。

そっと顔をあげて私を見る。

ぎゅっ。唇をかんで小さく頷いた。


「確かに私はこの繰り返しの終わりを願った。

けど、もう元の世界に帰りたいなんて思ってない。

たしかに最初は、ずっとその事ばかり考えてた。

帰りたい、帰りたい、帰りたい……ってずっと。

だけどね、もう私は帰れないんだよ。

美月……私覚えてないんだ。

両親の顔も、友達と過ごした日々も、……自分の名前さえ。

だから、私は『この世界』の河辺光なんだよ。


図書室で一緒に勉強をしよう。

買い物に行って服を選び合おう。

夏祭りに行って花火を見よう。

文化祭をまわろう。

後輩の面倒を見よう。


……この学園を卒業しよう。


美月と大人になりたい。

時々喫茶店で会って他愛ない会話をしたい。

自分の子供を紹介し合いたい。

この一年(ゲーム)が終わったって一人にならない。

だって……」


どんっ。

私の胸に飛び込んできた美月を優しく抱き寄せて。

耳元に囁いた。


だって……私たち一番の『親友』でしょう?


激しく泣きじゃくりだした親友の背中をただなでていた。






ーエピローグー


冬だと言うのに桜舞う


「俺様が真ん中だろう」


「男性は背の低い女性に前を譲ってください。という事で後ろです」


「と言うかなんで先輩方居るんですか!?今日は関係者以外立ち入り禁止です!」


「卒業生だから関係ある」


「俺が教師として許可を出したんだ。いいんだよ」


「可愛がっていた後輩達が卒業するのを見に来たんです。先生方も快く許してくださいました」


「せっちゃん達の晴れ姿を見に来たのに!もっと喜んでくれたっていいじゃん」


「節花。感謝こそすれ、だよ。」


「せつ!もう少し右!」


「あぁもう、美月も光も少しは突っ込んでくれたっていいじゃない!」


「よし!行くよ!」


「ちょっと待ってください!」


「僕らも一緒に入れてください先輩!」


「あぁもう!並び直しじゃない!!」


「もう押すよ?押すからね!!」


「光!急いでほら!」


「美月!手引っ張らないで!!」


幾度となく入って来た校門を私は出て行く。



ー終ー







【活動報告から引っ越しました】2019.05.05

以下ネタバレ?短編に描かれなかった時間経過の、あらすじを真面目に考えてみた。


1、逆乙女ゲーのフラグ逃亡【1周目から???周目まで。】

繰り返される世界。

ある日、主人公はこの世界が『乙女ゲーム』の世界だと気が付く。

知識を持つ主人公は見ぬふりが出来ずおせっかいを焼いてしまう事で

意志に反して攻略対象を攻略していた。

このままじゃいけない!

やっとフラグを全て回避し『友情END』を迎えたと思いきや。

「……そういえばそうじゃん。この世界ってヒロインが願った世界だった!」

まだ周回は終わらない。


2、逆乙女ゲーの真逆ハーEND【999周目、1000周目。】

相変わらず恋愛フラグを逃亡し続ける主人公はふと気がつく。

「本当にヒロインは逆ハーを狙っているのか?」

自分を目の敵にしだしたヒロインに自ら協力を申し出て、

ヒロインの逆ハーENDを目指すことに。

ゲームヒロインの目的は?彼女が世界に願った『願い』とは。


3、逆乙女ゲーの真友情END【1001周目☆一年生(4月)】

ヒロインの『もう繰り返しを願わない』と言う約束の元、未知なる二年生に思いをはせる。

しかしまたあの校門を潜っていた。

困惑する2人の転生者。

たどり着いた『この繰り返しを願うものがもう一人居た』という答え。

まだ周回は終わっていない。


4、逆乙女ゲーの友情イベント【1001週目☆一年生】

繰り返される事の無い、最後の高校一年生。

とは言え最初からやり直しのイベントに『協力な助っ人』!?

対面する、前週の記憶を引き継いだ攻略対象と、『影の救済者』こと主人公。

美月と2人で送るはずだった青春計画は、豪華ゲームキャラ達を加えてハチャメチャに!


5、逆乙女ゲーの続編フラグ【1001週目☆三年生】(真友情ENDのエピローグもこの年)

繰り返しで身につけた『知識』と『包容力』で生徒会長に祭り上げられる主人公。

今年の新入生は個性豊かなだなと感心していた。

そんな主人公の元に一人の新入生が相談を持ちかけてくる。

思い込みで自分の親友を攻略しようとするヒロインから助けてほしいと。

「ぞ……続編が出ていたなんて!!」



(2013年のあとがき)

自分もブームに乗ってみました。


もしも、これがゲームだったら。

『友情END』を終えて満足して、このシナリオにたどり着かない。

隠しシナリオ。


『逆乙女ゲー』


攻略対象とのENDを目指すのではなく

逆に避けていく事でストーリーが進行していく。

適当に選択すると必ずハーレムENDになる。

個別ルートはあるものの恋人にはならない。


感想お待ちしております。


(2019.05.05)


アップ当時考えていた時は、主人公も転生者で、だからこの世界の周回を認識する設定でした。

ちなみに主人公の転生の願いは学園(乙女ゲーム)と関係なかったので、周回するか否かには反映されていません。

内容はわすれてしまいましたが、三人の転生者それぞれに能力?もしくは役と呼べるものがありました。

海辺の『助言者(アドバイザー)』のようなものです。

当時の乙女ゲームものは、あらすじなどで回避すると言いつつもなんだかんだ誰かとくっついていたので、

どちらでもない感じの話はないかと思ったのが始まりだったような……。

あと、どの話を読んでも、ハーレムエンドが最後に解放されるような描写だったので、いっそのこと逆のパターンは存在しないのかと思ったんです。


ちなみに乙女ゲームをしたことはないです。

一番近くてサウンドノベル(DS)はやったことがあります。



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― 新着の感想 ―
[一言] これはいい。 恋愛ゲームなのに友情√を目指すというのは稀にありますが、最終的には流されて誰かと恋愛するパターンが多いです。 本当に友情√に進んでいるというのが好印象です。 個人的にはループの…
[良い点] すごくよかったです!! それしか言わなくていいと思います! ブームにはのっているものの、 文句無しの出来だと思います!
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