ブックリスト登録機能を使うには ログインユーザー登録が必要です。
この作品外伝となっていますが、今までの主人公とは違った視点から書いた小説です。読まなくても話が分かるようにはしたいですが、読んだ方が確実に分かりやすいと思います。
 
外伝〜第1話:少女の心
 
 私の父はハンターでも有名な凄腕の大剣使いで、仲間達からの信頼も厚く頼りにされる様な存在だった。
 だけど、父はギャンブルが大好きで、いつも母と喧嘩をしていた。母は私が5歳になった春に家を飛び出して帰って来なかった、噂では新しい男の人と暮らしているらしい。私はそんな父も母も大嫌いだった。
 14歳になった私は早くあの家から離れたくて、がむしゃらに勉強と鍛練をこなしハンターとしての資格を学んだ、そして西シュレイド王国から南へ数日下ったところに位置するココット村でハンター見習いとして暮らし始めてから1年が過ぎていた。

 ある朝、いつものようにハンターズギルドへと向かっていると、村長に呼び止められた。

「おぉ〜、見習ハンターのエレナ君、丁度良かった。お主に頼みがあってな、ほれ『特産キノコ』の採集クエストに行ってくれんかの?」

 小さな体にぼけっとした雰囲気からは想像もできないが、若い頃はココットの英雄と呼ばれるぐらい凄く強いハンターだったらしい。
 
「はい、いいですよ。『特産キノコ』ですね、場所は何処ですか?」
「おぉ〜行ってくれるか、助かるわい。場所は森丘じゃよ、最近の報告でのぉ〜気の強いリオレウスが住んどるらしいから気を付けてな」


 私は直ぐに森丘へ向かう準備を始めた。
 オトモアイルーとして雇ったルトーも一緒に来てもらうことにする。半年前にやっとネコバァから見習いハンターとして認めて貰い、一匹のアイルーと契約を交わした。それがオトモアイルーのルトーだった。
 オトモアイルーとは私達ハンターにとって一緒にクエストに挑み、戦う大切な仲間なので、雇えた時はとても嬉しかった。ルトーもとても可愛くて、よくギューって抱きしめさせてもらってる。
 準備を始めてすぐに家の呼び鈴が鳴った、急いで扉を開けるとこの町の住人ではないボロボロの鎧を纏ったハンターが立っていた。

「あなたは……エレナ=アシュレイさんですか?」
「あっはい、そうですがどなた様ですか?」
「はい、俺はチャド=ダンパー、ハンターです。……最近ギルドで噂になっていた、ラオシャンロン襲撃の件は知っていますよね?」

 何日か前に村でも大騒ぎになった、ラオシャンロンが目覚めて移動を始めたってやつかな?見習である私に関係あるはずもなく、大変だな〜と言うぐらいにしか思ってなかったが、

「はい、知っていますが何か?」
「……俺はその件でラオシャンロン撃退の為に砦へと向かいました、……あなたのお父さんと一緒に…………、尊敬するあなたのお父さんは勇敢にもラオシャンロンと闘いましたが…………」
「……死んだのですか?」
「……はい、俺はあなたにこれを渡したくてこのココット村に立ち寄りました。あなたのお父さんが使っていた、道具袋と鎧のかけらです。前にココット村で暮らしている、あなたのことを聞きましたからどうしてもこれだけは親族の方に渡したくて」

 あの父が死んだのか、……人としては最悪だったけどハンターとしては一流だったのに、

「そうですか、……わざわざありがとう御座いました。お礼に上がって貰いたいところなのですが、生憎これから森丘でのクエストがありまして……、連絡先を教えて貰えますか?後日伺います」
「いえ、俺が勝手にしたことなんで……ではまた」

 そう言うと、彼は立ち去ってしまった、私も家の中へと戻り椅子に腰かけた。
 心に大きな穴が空いた様になにも頭で考えることができなくなる、私は父が嫌いだった、でも死んだと聞いて心は悲みと絶望でぐちゃぐちゃになっていた。受け取った道具袋と鎧の欠片が腕の中で重みを増す、力を入れて抱きしめるように抱え込むが上からポタポタと雫が垂れ茶色い道具袋に濃い斑点がいくつもできた。

「はは、……大っ嫌いなのに涙が出てるよ……」

 父はもうこの世にいないということに実感がわかない、涙を拭い顔を二度叩く

「父とはもう1年も前に別れているのよ、しっかり自分!」

 そう、この村に来る前から分かっていたこと、今さら父が死のうが関係ない。心に言い聞かせるように、私は村長から受けたクエストをもう一度確認しつつ準備を再開させた。
 私はルトーが間違えて父の道具袋を持ち物の中に入れていることに気がつかないくらい頭が回っていなかった。





----- 森丘 ------





 ふう、一人でのクエストは初めてなのでかなり緊張している。ルトーは張り切ってぴょんぴょん私の周りを飛び回っている。
 
「ご主人、頑張って『特産キノコ』探すニャー」

 モンスターに気を配りつつ、採取ポイントを探す。森の方へと足を進めると3匹のモスを見つけた、このモスは外見は豚そのものでキノコが大好物の小型モンスターである、ハンターが近づいてもキノコを探し続ける変わったモンスターだ。彼らのあとを追い、キノコが生えている場所を探した。
 数時間すると持ち物はキノコでいっぱいになり、特産キノコも20個ほど集まり納品すればクエストクリアーだ。

「そろそろ帰ろうかルトー、…………あれ何かな?何かが落ちてくるよ」

 木々の間から何かが空から草原のある方角へと猛スピード落ちていくものが目に止まった、

「ちょっと行ってみよう」
「ご主人危険だニャーー」

 ルトーの制止も聞かずに私は何かが落ちていった方角へと歩きだした。
 数十分歩くと、ズルズルと引きずるような音が聞こえゆっくりと茂みを掻き分けながら前に進むと、図鑑でも見たこともないモンスターが血まみれで倒れていた。ルトーが危にゃいニャー、と止めるもその血だらけの姿に朝の話が頭をよぎる。

---- お父さんは勇敢にもラオシャンロンと闘いましたが…………-----

 頭を振り雑念を消す、足早にモンスターに近ずくと、横たわっていたモンスターはとても幼い顔立ちの幼竜だった。意識はなく、苦しそうに唸っている、背中からはおびただしい量の血が流れ、片翼は黒く焼け爛れている。

「うにゃ〜、この傷痕はリオレウスにやられたんだニャー、背中の傷から奴の毒が入っているにゃ、翼は火炎ブレスでもくらったにゃね、リオレウスに会うなんて運の無い奴にゃ〜」

 ほっとこうにゃ〜と、言うルトーに

「駄目よ、この子は助けるわ」
「にゃんでニャー!」
「いいから、持ち物全部持って来て」

 急いで持ち物を漁る、解毒薬は入れた記憶があるが、採集クエストだった為に回復薬を全く持って来ていない。中身を探していると、父の道具袋が紛れているのを見つけた、ルトーに確認すると間違えて入れてしまったらしい、兎に角中を確認すると、とても高価な『秘薬』を見つけた。

「ギニャーー!それはご主人の父上様の形見なんだにゃ、こんな雑種の幼竜なんかに高価な『秘薬』を使っちゃダメニャーー」

 ニャーニャー騒ぐルトーを無視して、解毒薬と秘薬を使った。幼竜の傷はみるまに塞がり、黒くなっていた翼は綺麗な色へと戻った。昔に飼っていた犬のクーちゃんの毛の色にそっくりでとても面白かった。
 
 脱力したように倒れこんでいるルトーを抱き上げて近くの岩に腰かけた、木々の間からみえる空はとても青く澄み渡り、風が小さな雲を運んで行く

 帰ったら、父の道具袋と鎧の欠片は村の桜の木の下にでも埋めよう、父は桜の木が好きだったから。
 晴れ渡る空と太陽が目に沁みて涙が一雫頬を撫ぜた。
 



+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。