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短編集

マリーちゃんのダンジョン

作者:天界


 ダンジョン。
 迷宮または遺跡などと呼ばれる建築物。
 凶悪な魔物が棲み、罠や宝箱がある。
 迷路のような複雑な構造の物もあれば、簡単な構造の物もある。

 ただどのダンジョンも街の外などにあり、時には険しい山脈の中ほどにあったり、極寒の吹雪の止まない絶野などの人が入り込むのが難しい場所にあったりする。

 数多くの宝と魔物から取れる高価な素材を求めて幾人もの探索者が挑み、散り、一握りの幸運者のみが莫大な富を築くことの出来る浪漫溢れる場所、それがダンジョンだ。

 今日もそんな浪漫を夢見て人々はダンジョンに足を踏み入れる。


「こんにちは、マリーちゃん」

「こにちわ~」

「やぁ、マリーちゃん。今日も頑張ってくるよ」

「いてらっしゃぁ~い」

「やっほーマリーちゃん。今日こそ40階を突破してみせるよ!」

「がんばて~」


 数多くの探索者が声をかけてダンジョンに入っていく。
 ここは数多く存在するダンジョンでも例外中の例外とされるダンジョン――マリーちゃんのダンジョンだ。
 世界各地に点在するダンジョンはそのどれもが街中に存在することが出来ない。

 だがこのマリーちゃんのダンジョンだけは例外であり、街中に存在している唯1つのダンジョンだ。


「ぎゃばっ」

「ぐあえ」

「あぎゅ~」

「おかえりなさーい」


 光を反射して輝く銀髪と対照的な健康的な褐色の肌の幼女であるマリーちゃんに数多くの探索者が声をかけてダンジョンに入っていく中で、マリーちゃんのダンジョンの入り口の脇にある排出口と呼ばれる脱落者排出用の穴からは一定時間毎に何人かがボロ雑巾のような形で吐き出される。

 彼らは意気揚々とマリーちゃんのダンジョンに突入し、中の魔物にやられた者達だ。
 普通のダンジョンではこうはいかない。
 魔物にやられることは死ぬことだ。
 死ぬとダンジョンに養分として吸収され死体すら拝むことが出来ない。

 だがマリーちゃんのダンジョンでは魔物に殺されることもダンジョンに吸収されることもない。


「くっそー……。あんなところにミノタウロスが12匹もいるなんてー」

「マリーちゃんモンハウが出来てたよーやられたー」

「あーせっかく今夜は豪華な夕飯が食えると思ったのに~」

「残念でしたー。また明日がんばてください~」


 ボロ雑巾となった探索者パーティは殺されない代わりにその日獲得した収穫の全てと所持金の一部をダンジョンに吸収され、排出口から吐き出され帰っていく。

 そう、マリーちゃんのダンジョンは殺さない代わりに倒されると所持金の一部やダンジョンで獲得した物を代わりに吸収するのだ。


「いやっほー。無事きかーん!」

「よっしゃー! 今日は宴会だー!」

「マリーちゃん今日は稼がせてもらったぜー!」

「お疲れ様でーす。よかたですね~」

「おうよ! はいこれ。今日の稼ぎの1割なー」

「毎度ありがとうございます~」

「また明日も稼がせてもらうぜー!」

「がんばてください~」


 敗者がいれば当然勝者が存在するように、引き際を誤らなければダンジョンで獲得した物をしっかりと持って帰ることができる。
 ただその場合、マリーちゃんのダンジョンでは決まりごとがあり獲得した素材などの1割分をマリーちゃんに納める必要があるのだ。
 これによりマリーちゃんは日々の糧を得ている。

 なのでマリーちゃん的には勝者となって帰ってきてくれる方が嬉しかったりする。

 今日もダンジョンに入っていく者、ボロ雑巾で出てくる者、ホクホク顔で出てくる者と数多くの人達とマリーちゃんは出会いと別れを繰り返す。

 数多くの人達が行きかうマリーちゃんのダンジョンでも人通りが途切れることはある。
 そんな時はマリーちゃんは仕事をする。


「25番と89番のダンジョンで120階突破者か~。そろそろ狩り時かなぁ~」


 マリーちゃんが気分よさげに左右に体を揺すりながら、指令を発する。
 次の瞬間には25番と89番のマリーちゃんの統括するダンジョンでベテランの探索者の集団の命の灯火が消えた。


「さすがあの階層まで行く探索者はお金持ちだなぁ~。これでこっちのダンジョンの拡張が出来るよ~」


 マリーちゃんはマリーちゃんのダンジョンを維持するためにたくさんのダンジョンを各地に設置しているダンジョンマスターだ。
 最初はあまりにも簡単に死んでしまう探索者の力の底上げの為に作り上げた非殺傷ダンジョンだったのだが、こっちの方がメインになってしまうほど人々との交流が楽しくなってしまっていた。

 今ではマリーちゃんのダンジョン以外のダンジョンで資金やエネルギーを確保し、マリーちゃんのダンジョンにその全てを注ぎ込むようになっている。


「やぁ、マリーちゃん。今日は新作のパンを作ってみたんだけどどうかな?」

「いただきまぁ~す」


 いつもお昼時になると露天のワゴンをひいてくるお兄さんからお昼を貰いかぶりつく。


「マリーちゃん、今日は新作のジュースを作ったんだ。試飲してくれるかい?」

「はぁ~い」

「マリーちゃん、今日は――」


 いつの間にかマリーちゃんの周りにはたくさんの飲食系の露店ワゴンが集い、その匂いに引かれてたくさんの人達が集まってくる。
 ほとんどの露店からおすそ分けや試食を貰い、今日もマリーちゃんは幸せいっぱいにお昼を堪能するのだった。


挿絵(By みてみん)


 世界に点在する凶悪無比なダンジョンの約半数を支配する最強最悪のダンジョンマスターマリーちゃんは今日も優しい優しいマリーちゃんのダンジョンの前で人々と幸せな日々を過ごしている。
某所で開催された同じ挿絵を使った祭りに参加するために書いた短編です。

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