◆Firo◆
本当に寝てしまった馬鹿姉を放置する訳にもいかず、フィーロは恥ずかしい思いをしながら女子寮まで運んで行った。同室の女子生徒――確かモランという名だったか――に明け渡す。モランの苦笑いが当分頭を離れることはないだろう。
げんなりしているフィーロは自室に帰るべく男子寮に向かってフラフラしながら歩いて行った。
寮は正方形に区切られた広大な学園の西側にある。隣接しているとはいえ、玄関から玄関まではやや遠い。全寮制ゆえに規模は半端なものではない。
フィーロの部屋は三人部屋だ。
余程の理由が無いかぎり、二、三人部屋が当たり前だ。だがフィーロには変える条件は十二分に揃っているように感じる。
恐る恐る扉を開く。
「ガナァ―――ッシュッ! 今日こそ一緒にィィィィ!」
「止めろっ! 離れろクソ!」
やっぱりやっていた。
短髪で切れ目の男が短剣を逆手に持って黒髪の男の至近距離に入り込んだ。黒髪の男は蒼色の波打つ太刀を振るう。切れ目の男がそれをかわし、間合いをとる。切れ目の男はベッドの上に片膝をつく形で着地。対する黒髪は床で太刀を構え腰を落としている。両者が膠着状態に陥る。
切れ目の男がレイジ、長髪の男がガナッシュと言う。
端的にコイツらの特徴を挙げるなら、『変態』と『シスコン』。
それに限る。
レイジは生粋の両性愛主義者で、悉く生徒を襲おうとしている。男女問わず、だ。
曰く本人には拘りがあるらしい。知るか迷惑だ。
なまじ学科が盗賊学科というのもあって質が悪い。気配を消して近づくのだ。こんな奴と同室で俺の貞操は守られるのだろうか。フィーロはいつもそう思う。
ガナッシュは常識人の範疇には入るが、故郷の妹の話になると気持ち悪くなる。間違いなくシスコンだ。
何故その変体共が武器を片手に戦っているのか。
簡単だ。レイジがガナッシュを襲おうとして、ガナッシュが抵抗をするうちに戦闘になったのだ。見なくとも解る。
「くっ……! フィーロ! お前も協力しろ!」
「面倒臭い」
対峙する二人の間を突っ切って服を着替え始める。付き合ってられない。
「おおおぅっ! フィーロっ! 不味いっ! それは不味いでぇぇぇっ!!」
一人興奮して身悶えするレイジ。気色悪いことこの上ない。
「らあぁっ!」隙有りと言わんばかりのガナッシュの斬撃(一応峰打ち)がレイジを叩きのめす。
「がふっ……」
気絶するレイジ。白目を剥いているが口元は笑みだ。気色悪い。
まあ、何時もこんな感じだ。
フィーロはロープを投げ渡す。
ガナッシュは脱出不可能にするため、武器を全て押収した上できつく縛り上げる。それを部屋の外に投げ捨てた。これで大丈夫だろう。
部屋の真ん中にあるテーブルを囲むように二人は席に着いた。
「ご苦労さん」
「全くだ。なんでアイツと同じ部屋なんだ」
ガナッシュは溜め息を吐く。
「知らないよ」
「さっさと殺すべきだ」
さらっと恐ろしいことを言う奴だ。同意見ではあるが。
ガナッシュは立ち上がり簡易キッチンで湯を沸かし始める。コーヒーでも煎れるのか。フィーロは「俺の分もな」と言った。溜め息が返ってきた。了承ととろう。
もう一度席に着いたガナッシュは頬杖を突いて口を開いた。
「今回の依頼はどうだったんだ? 確かアルハーレン近郊の魔物の討伐だと言ってたけど」
「ほとんどシェリカがやった。俺は……」
「どうせ後ろで見てたんだろ」
何故分かるんだ。
態度に出ていたのか、ガナッシュはフィーロを見てまたもや嘆息した。失礼だ。謝れシスコン。
アルハーレンは商業都市で、中規模ながらも利益を出している都市だ。最近は魔物の襲撃が多かったらしく、都市の自警団では対処できなかったため依頼をしたらしい。
魔物は獰猛かつ賢しい事で有名な一角狼、ダイアウルフの群で、老いた群れの長が連携をとっていた。なるほどさすがに自警団には厳しかろう。
戦闘は圧倒的戦闘力を誇る魔術士シェリカの火の魔術、竜炎殲で燃やし尽くした。ダイアウルフの戦略はシェリカの暴力には勝てなかった。
フィーロはそれを黙ってみていただけだ。何せする事が無いのだから。
概ね話した後、ガナッシュは三度目の溜め息を吐いた。
「お前、もう少し真面目にやれよ。なんで冒険者になったんだ」
「さあ?」
興味ない。そもそもフィーロにとって冒険者になることはさして重要なことじゃない。強いて言うならシェリカのお守りのためだ。
ずぼらな天才魔術士は放っておくと何かやらかしそうで恐ろしい。
「大体ガナッシュはどうなんだ。お前はなんで冒険者になるんだよ」
「ボクは妹のためだ」
ほらやっぱりシスコンだ。言い切りやがったもの。
ファンクラブまで出来るくらいのモテっぷりなくせに、中身がこれでは幻滅だ。
「なんだその顔は」
「別に?」
「……。まあいい。それより、明日の授業はサボるなよ」
「めんどくせー」
「馬鹿か。明日は考査だぞ」
学園というだけあって授業もあるのがローズベル学園だ。
考査とは個々のスキルを測るためのもので、生徒同士の勝ち抜き戦やチームで目的のダンジョンに行ったりと様々だ。
明日は学部別戦闘だったか。
「フィーロ。ボクは少なからずお前を認めてるんだ」
「そりゃどうも」
「茶化すな。少しは真剣に――」
カタカタと音がした。湯が沸いたらしい。ガナッシュは立ち上がり、カップにコーヒーを煎れる。
水色のカップをフィーロに渡す。
「インスタントかよ」
「嫌なら飲むな」
仕方なく啜る。インスタントらしい味だ。まあ、嫌いではない。
しかし、夜にコーヒーって……寝れなくなるぞ。
「とにかく、明日は頼むぞ」
「ハイハイ」
どうしてそこまで拘るのだろうか。ガナッシュの気持ちはよく解らない。解ろうとしていないだけか。
何にせよ暫らくは眠れそうにない。布団に転がれば答えは見つかるだろうか。
「熱い……」
ヒリヒリする舌を出しながらそんなことを考えていた。
にしても、痩せ我慢はするもんじゃない。俺は猫舌なんだ。
◆◆†◆◆
翌朝。カフェインの覚醒効果も効かないほどの眠気に襲われた頃に眠ったフィーロは体調は万全とは言い難かった。
起き上がり体をほぐす。
剣を手に取り、縦に何度か振る。
別に今日が実技だから、ではない。単なる日課だ。フィーロは基本的に三日坊主だがこれだけは欠かしていない。
「ふぅ……」
だいたいが終了する頃には小腹が空いていた。「飯……食うか」タオルで体を拭きつつ呟く。
ガナッシュは既に起きている。今は外で同じように剣でも振ってるんだろう。努力家なのだ、アイツは。
学生服に着替え、階下に行く。もう結構な人数が活動を始めていた。
「朝練は終わったのか?」
背後から声を掛けられた。振り向くとガナッシュだった。
「ああ。朝飯、食いに行こう」
「解った」
並んで食堂に向かう。
「あ、そういえばレイジ捨てっぱなしじゃないか?」
「誰だそれは」
「………」
ガナッシュはなかなかにひどい奴である。まあ、俺もあの馬鹿を解放する気など毛頭ないが。自ら危険に飛び込む気にはなれない。
フィーロは即刻記憶から消去することにした。
学園には食堂は三つある。
普通の(あくまで自分基準)店は一つで、二つは特徴がある。弥都と呼ばれる独自の文化をもつ都市の郷土料理を出す店〈天理〉と、激辛料理しかない店〈ムムーチョ〉だ。
天理は新鮮な魚料理等が人気で、それなりの売上のようだが、ムムーチョにいたっては味覚のおかしい奴らしか利用しないためあまり売上は芳しくないらしい。
最近下手物にも挑戦し始めたらしく、不人気の原因はそこにもあるとフィーロは判断している。
普通の(もちろん自分基準)店〈ベルベット〉のある第一食堂に足を運ぶと既に盛況だった。
バイキング形式のベルベットは朝は三十分食べ放題がある。五百テールで食べ放題なのだ。学生にとっては『おいしい』店なのだ。
最早目の前は戦場である。生徒たちは押し退け押し退け立ち並ぶ食べ物を山ほどのせる。中にはその場で食らい付く者までいる。まさに地獄絵だ。
「ヤバイな」
「ああ。ヤバイ」
「どうする? お盆に唾でも吐きかけるか? みんな手が止まるぞ」我ながら天才的な提案だ。
「馬鹿かお前。今のアイツらは鼻糞が交ざったとしても食らい付くぞ」しかし一蹴。
「……じゃあどうするよ?」
「……斬る」
退学になります。
ガナッシュも大概アホである。二言目には「斬る」と言うのはこいつの悪い癖だ。
しかしながらフィーロ自身何かいいアイデアがあるかと言えば首を横に振るしかない。はてさてどうしたものやら。
「おや、学年トップのガナッシュ君じゃないかい?」
背後からねちっこい声が聞こえた。ガナッシュは無茶苦茶嫌そうな顔だ。十中八九見当がついているからだろう。
振り向くと身なりのよい男と明らかに取り巻きと思われる男二名がいた。フィーロはもう一度前を向き、ガナッシュも前を向いた。無視を極め込むことにした。
「おやぁ? 学年トップのガナッシュ君は下の者には興味ないと? 随分余裕ですねぇ」
いちいち絡んでくる奴だ。淋しいのか? 友達少ないのか?
ガナッシュは溜め息を吐きながら振り返った。
「やあマルオ」
「マルスだっ!」唾を飛ばすマルスなる男。
マルス・サーレストン。
サーレストン流剣術の始祖アーネルド・サーレストンの血筋の者だ。
サーレストン流は多くの弟子もいるかなり大きい規模の流派で、始祖アーネルドも〈五剣聖〉という五人の剣の達人に数えられていた。現当主は五剣聖にはなれなかったが、それに匹敵する実力を持つらしい。
マルスはその武家の一族に生まれたのにも拘らず、学園で剣士としては学年首席の座をガナッシュに奪われたのだ。それが気に食わないのかやたらガナッシュに突っ掛かるのだ。
「随分と余裕じゃないか。さすが学年トップは違うね。トップ自ら下位剣士に指南かい?」
下位剣士とは俺のことか。フィーロは少しむっとした。だけど文句は言わない。事実、フィーロは学年下位の座をほしいままにしている。
先ほどから学年トップを強調するマルス。ガナッシュを挑発しているのだ。ウザイことこの上ない。ガナッシュは挑発するマルスを見て、「話は終わりかい?」と言った。やれやれ、全く長い話だねといった完全に見下した感じだ。
「ボクらはこれから朝食なんでね。もう話はしてられない。失礼するよ」
「な、な、な……」
憎憎しげに血走った目で睨み、声にならない怒気のこもった声を洩らすマルス。それを冷静な態度で一瞥し、直ぐに踵を返してガナッシュは歩き去る。フィーロは小走りで隣まで行った。するとガナッシュは止まって首だけ曲げて後ろを見る。
「ああ、そうそう。下位剣士をあまり見縊らない方がいいよ」
そう言ってまた進みだした。
フィーロはただ過大評価だな、と率直な感想を呟いた。ガナッシュにそれが聞こえたかは定かではないが。
というか当面の問題はマルスより朝飯だ。目の前の戦場に足を踏み入れるのは勇気がいる。
俺たちは無事朝食にありつけるのだろうか。
かなり不安になった。
◆◆†◆◆
ギリギリ朝食を摂ることに成功したフィーロとガナッシュは一度寮に戻り、身支度を整えた。
とはいっても歯を磨く程度だが。エチケットは大事だろう。うん。
「行くぞフィーロ」
「ああ」
部屋を出る。一人足りない気がするが気のせいだろう。
あまり悠長に出来る時間でもないため、小走りで教室に向かう。フィーロたちのクラスはB組だ。別にランク分けしてるわけではない。単なる組分けだ。
A〜Hまである組。組を分けるのは基礎課程の授業の円滑化が一番だったが、基礎課程の終了した今は『親睦を深めるため』がメインだろう。
因みにクランは組とは違うため、結成は他クラスの生徒と組んでも構わない。実際、ユーリとモニカはC組だ。オマケでレイジはE組だがこいつはどうでもいい。
フィーロとしてはシェリカと同じ組というのは何かの陰謀かと感じるが、今の組にそこまで不満がある訳でもない。
五分前に教室に入る。シェリカは既に着席していた。隣にモランがいる。面倒見のよい女の子なのか。気軽に女子寮に入れないフィーロの代わりに手の掛かる馬鹿姉の面倒を見てくれるモランには感謝だ。
ガナッシュは女子生徒に囲まれている。モテ男だからな。シスコンのくせに。
フィーロはガナッシュを一瞥したあと、一人の女の子の座る席に近づいた。
「おはよう、クロア」
「……おはよ」
灰色よりの黒、いや黒よりの灰色といったほうがいいのか、少し曖昧な色の髪の少女。深いエメラルドグリーンの瞳と、赤子のように白い肌。何より目を引くのは尖った長い耳だ。
少女の名はクロア。亜人である。
この世界の人種は大きく分けて三種類である。
人間、獣人、そして亜人だ。
人間は最も多い種で、フィーロやシェリカ、ガナッシュはそれに該当する。獣人は見たとおり獣じみた人で、獣の耳やら尻尾を持つ。それ以外はあまり人間とは変わらない。種族によっては毛皮に包まれた者もいるが。知り合いに中ではモニカやモランが獣人の部類に入る。
昔、人間と獣人は戦争をしていた。文化や思想、何よりも容姿の違いからくる戦争だ。今から考えれば阿呆臭いが、その阿呆臭いことで多くの命を失った。
その中で亜人は被支配側の種族だった。人間に似て非なる種族の亜人は人間や獣人の奴隷として扱われていたのだ。
亜人の派生は解らないが、人間と獣人の混血やいろんな説があった。しかしなんであれ彼らの立場が変わることはなかった。
戦争が終結したあとも、亜人の被支配は続いた。時には迫害され、蹂躙された。
ある時何人かの善良な者たちはその現状に憂いた。そして人種差別の撤廃を求める運動が始まった。『亜人解放運動』である。
最初こそ見向きもしなかったが、次第に熱心な演説が共感を呼び大きな勢力となっていった。
そして二年後、亜人の権利を保障する法律が施行された。
彼らは漸く解放されたのだ。
今現在は人種の垣根はほぼ消え去っている。しかし今だに差別をする人も存在する。差別や偏見は人の性だと諦めているが、自分自身は人種などさして重要視していない。
フィーロにとっては仲間であることが重要なのだ。
「………どうしたの?」
「ん? ああ、いや少し考え事してた。悪い。……その本面白いか?」
「……うん」
小さい声だが肯定した。面白いらしい。『Firo Watching Diary』か。訳すと『フィーロの観察日記』。ん? フィーロ観察? いやまてまて。おかしいぞ。何かがおかしいぞ。
「何で俺を観察してるんだ?」
「………?」心底不思議そうな顔のクロア。不思議なのはこっちだ。
「何処から見てるんだ」
「窓から」
窓か。そういや最近カーテン閉め忘れてるな。うん。これからはぴっちり閉めよう。絶対に。そう決意した。
――キーンコーンカーンコーン。
ありふれたチャイムの音が鳴り響く。同時に扉が勢いよく開けられ男が入ってきた。
「二秒以内に座れ」
開口一番に無茶な要求。
さすがに慣れたが、やはりムカつく。死ねばいい。
特別睨み付けたわけではない。ガン見していた訳でもない。なのに男はフィーロの心を読んだかのように「なんだフィーロ・ロレンツ。文句があるなら言うがいい」と言った。
超絶ムカつく野郎だ。しかし我慢だ。何せアイツは担任だ。そう、担任なのだ。
ヴァイス(先生)。
有名な冒険者でもある。《剣狼》ヴァイスと言えば単独で竜族を撃破した猛者だ。平たく言えば化け物だ。彼の持つ剣、切り刻む王者の牙はかの『空白の時代』と呼ばれる時代の遺産だ。切れ味はそこらの刀剣の三倍はあるだろう。
まあ、そんな凄い奴が担任なのは非常に喜ばしいが、性格に問題がある。端的に言うと愛想が無い。壊滅的なほどに笑顔が欠損している。ヴァイス(先生)の授業は生徒から影でこう呼ばれていたのだ。
――極寒地獄の青空教室。
ヴァイスは基本的に屋外での実践演習を担当する。そして底冷えするほどの冷たい視線の前で行われる授業ゆえの名前だという。
ちなみに極寒地獄は本当にあるダンジョンで、普段の五倍着込まないと凍えて死ぬが、着込めば動けずに敵に捕捉され全滅させられかねないという冒険者に最も不人気なダンジョンだったりする。その嫌われている点も掛けているとすれば命名した奴は大したセンスだ。
「フィーロ・ロレンツ。言う事が無いなら失せるか座れ」
陰険野郎は座るより失せるほうを選択肢の始めに持ってきやがった。マジでぶっ飛ばしてやりたい。無理だけど。
逆らえるはずも無いのでおとなしく席に着く。せめてもの抵抗でスピードを遅くした。座るまでヴァイスの舌打ちが聞こえた。最悪な担任だ。エイトビートの舌打ちか。クソ。引っこ抜きたい。
ヴァイス(先生)が出席をとる。
計四十二名の名前を読み上げていく。途中フィーロの名を読み上げるときだけとても憎憎しそうだった。滅茶苦茶嫌われてないかな、俺。
連絡事項は無かった。すぐに校庭に行け、とだけ言われる。具体的に時間まで言ってくれるのはいいが、ここから十秒ではさすがに無理だ。二階だぞ、ここ。
校庭に出たフィーロたちを待っていたのは、他クラスの生徒たち。全部で三百五十人足らずくらいか。
半分以上の人間がこちらを見る。敵視というか若干殺気めいたものを感じる。視線で人が殺せるなら既に俺は死んでいるだろう。フィーロは身震いした。
だが、別にフィーロが見られているわけじゃない。自分の両隣だ。
近戦学部の生徒はガナッシュを、魔戦学部の生徒はシェリカを見ているのだ。
二人は各学部、学科内で首位の実力を誇る。天才剣士と天才魔術士。遥か高みにいるこの二人は一年生大半の目標なのだ。
「やあ、ガナッシュ君」
またマルスがやってきた。フィーロの方は見向きもしない。端から下位剣士に興味など無いようだ。
「何なのアイツ」シェリカが袖を引っ張る。
「学年二位の剣士だよ」
「気に食わないわ。フィーロの方が絶対強い」
その確信はどこからくるのやら。俺のレベル知ってるだろ。つか運悪く聞こえていた様で、マルスはこちらを睨んできた。俺は悪くないぞ。
「ふん。所詮下位の剣士ごときにこの僕が敗けるわけ無いだろう。まあ、指名するくらいは構わないが?」
マルスは鼻を鳴らす。
見下す態度だが誰も文句は言わない。それだけの力を持っているのだ。言いたいことがあるなら剣で勝つしかないのだ。シェリカだけは歯軋りしながら睨んでいたが。
「全員集まれ!」
ヴァイス(先生)が集合を叫んだ。ぞろぞろと集まりだす。ルール等の説明をするのだろう。
シェリカは袖を掴んだままフィーロに向かって「行くわよ」と言って歩きだした。ずるずると引き摺られる体勢になるフィーロ。
引き摺られるがままにB組の列に並びに行くフィーロは内心でこう呟いた。
帰りたいなぁ、と。
両刀を本来の意味で捉えていた方は申し訳ありません。
いたく反省しています。ただいま画面の前で土下座してます。
更新は不定期かつ遅いですがお付き合いいただけると嬉しいです。
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