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100万ポイントの勇者(旧版)  作者: ダオ
第5章 ジェバラナの町
33/67

第29話 ジェバラナ防衛戦

○50日目


「くそったれ、ニンゲンなんぞに負けるとはな。

だが、今頃あの町はもう終わってるだろうぜ。

町を攻めるとき、村と同じ程度の数で攻めると思ったか。

もう1つの部隊が攻撃してるはずだ。

あっはっは、残念だったな」


「グレーターデーモン、残念なのはお前だよ。

ジェバラナの兵士に結界石と聖水を渡してあるんだ。

結界石を使えば、聖光属性の結界が一晩に渡って続くからな。

アンデットや悪魔にはよく効くぞ」


「ゆ、雄介さん。

……あの結界石はこれを予想して?」


「予想はしてなかったが、防御は考えておいた。

アンデットの群れが襲うのだから、その対策をしておくのは当然だ。

800匹以上の群れを俺達だけで足止めできるとは限らないからな。

というか俺の運の悪さだと、アクシデントが起きるのはある意味必然だからな」


 結界石とは聖光属性の結界を張るアイテムで、旅人などが野外で一晩の安全を確保するために使用する物である。

低級な物から高級な物まであり、高級な物ならBクラス程度までの魔物を寄せ付けない。

特にアンデットなら聖光属性は効果抜群なためAクラスでも近づけないのだ。


 聖水とは神官によって作られた聖光属性を持った水であり、人間には無害だが魔物にはダメージがある。

特に暗黒属性の魔物には効果が高い。

死体にかければアンデット化させない効果がある。


 雄介はあらかじめこの国に来ることになった時点で悪魔対策としてある程度の高級な結界石や聖水を購入していた。

それでも足りないかもしれないため、昨日カサンドラがテレポートで戻った際に大量に買わせておいたのである。

アンデットの襲撃があればそれを使うように兵士達に渡しておいたのだ。



「一つ聞かせろ。

アスタナ共和国以外の国を攻撃する計画はあるのか?」


「ああ? 俺がそんなことを答えるわけねえだろ」


「そうだろうな。

なら、これでも喰らえ」


 雄介はグレーターデーモンの傷口に聖水を流し込んだ。

悪魔にとっての聖水は、人間にとっての硫酸のようなものだ。

流石のグレーターデーモンも絶叫した。


「ぎゃあああああぁ」


「これでも答えないつもりか?」


「……俺はどうせ死ぬんだ。

答えてたまるかよ」


「そうか。

アスタナ共和国を滅ぼしたら東隣のハッセルト帝国じゃないのか?」


「な……」


 グレーターデーモンの顔に驚愕が表れる。

隠そうとしていたが、その表情が肯定を示していた。


「鎌をかけただけだ。

俺が悪魔王(デーモンロード)の立場ならハッセルトを攻めるのが効率的だからな」


 カサンドラはそんな雄介を見て、若干ショックを受けていた。

雄介はGWOを始める前には持っていなかった敵に対する冷酷さを、この50日間で身につけていたのだ。


「これ以上聞き出すのは無理だな。

カサンドラさん、ステータスを確認したらジェバラナに戻ろう」


 雄介はグレーターデーモンに止めを刺し、亡骸を亜空間に収納した。

流石にアンデットの討伐確認部位を確保している余裕はなかった。

雄介がふと見ると、カサンドラの表情が暗かった。


「カサンドラさん、少し休憩する?」


「雄介さん……いえ、大丈夫です。

ジェバラナの人たちが心配ですからすぐに戻りましょう」


滝城雄介


LV:44


年齢:22


職業:冒険者LV36・精霊魔法使いLV32・強化魔法使いLV27・念動魔法使いLV21・時空魔法使いLV18


HP:1715 (S)


MP:1594 (S)


筋力:361 (SS)


体力:331 (S)


敏捷:410 (SS)


技術:376 (SS)


魔力:318 (S)


精神:320 (S)


運のよさ:-999 (評価不能)


BP:60


称号:プレイヤー・βテスター・三千世界一の不運者・黒不死鳥王(ダークテンペスト)の加護・黒不死鳥王(ダークテンペスト)の寵愛・スラティナ王国の勇者・スラティナ王国武術指南役・スラティナ王国情報管理指南役・竜殺し(ドラゴンキラー)・スラティナ王国最強の男


特性:火炎属性絶対耐性・水冷属性至弱・風雷属性中耐性・聖光属性至弱・暗黒属性絶対耐性


スキル:自動翻訳・疾風覇斬(100%)・天竜落撃(100%)・フレアブレード(100%)・サンダーレイジ(100%)・ブラッドブレイク(100%)・思考加速(100%)・流水(100%)・韋駄天(100%)・記憶力上昇(100%)・金剛力(100%)・真 疾風覇斬(80%)・真 天竜落撃(80%)・ディメンションエッジ(40%)・超回復(100%)・神移(50%)


魔法:ファイアーアロー(3)・フレイム(10)・ファイアーバースト(40)・クリムゾンフレア(150)・エアスライサー(5)・エアロガード(20)・プラズマブレイカー(50)・ライトニングインパクト(120)・ブラインドハイディング(5)・シャドウファング(20)・マジックサーチ(5)・ブラックエクスプロージョン(80)・アビスグラビティ(220)・強化魔法(任意)・複合魔法(魔法次第)・クロックアップ(150)・クロックダウン(150)・シルバーゾーン(200)・テレポート(距離次第)


装備:水晶竜牙の太刀・水晶竜鱗の鎧・水晶竜鱗の兜、水晶竜鱗の小手・水晶竜鱗の具足・光王虎のマント


所持勇者ポイント:2682


累計勇者ポイント:2682


「勇者ポイントが2682!

ってことは、……1398も上がったのか!」


「ええ! それは凄いですね。

2人で2796ポイントってことですか。

あとLV3も上がってますよ」


「BPは体力に割り振ろう。

今後はまた1000匹以上の魔物と戦うことも有りそうだからね」


「私ずっとブルーダインに乗っていたのに相当疲れましたよ。

やっぱり体力は大事ですね」


 雄介のステータスは体力:391 (SS)に上がった。



「私のステータスは………LV5も上がりましたよ!」


「LV5か、やったね。

勇者ポイントも1729になったし、大したものだよ」


「ロードインフェルノ(280)も覚えました。

……これを受けてたら死んでたんでしょうね」


「あれは危なかったね。

魔法陣の完成に時間がかかったから助かったよ」


「そうですね。

BPは……体力・敏捷・運のよさにします」


「うん、それで良いと思うよ」


 カサンドラのステータスは体力:312 (S)・敏捷:241 (A)・運のよさ:269 (S)に上がった。


「じゃあ、ジェバラナに移動しよう」



 雄介達がジェバラナの町に行くと、数百人の兵士と冒険者達がアンデットどもと戦っているのが見えた。

現時点のアンデットの数は800匹ほどのようだ。

ケガや疲労すると結界に入って回復魔法と休憩を取っているため、兵士と冒険者達は互角以上に戦えているようだった。

グレーターデーモンはアンデットの群れの奥で指揮を取っているようだ。


 雄介とカサンドラの頭にクエストが浮かんだ。


クエスト:ジェバラナ防衛軍の救助・大型悪魔(グレーターデーモン)討伐・アンデット討伐


獲得勇者ポイント:救助者数次第・486・討伐数次第



「俺と黒王はグレーターデーモンと戦う。

カサンドラさんとブルーダインはアンデットの群れを頼むよ」


「今ロードインフェルノを使ったら2~3発でMP切れになるのですが、使っても良いですか?」


「1発撃ったら、あとは防衛してる人たちの回復に使って」


「はい」


 カサンドラはアンデットが最も集まっている場所の上に移動してロードインフェルノを発動させた。

当然近くに兵士たちが居ないことは確認している。

カサンドラはブルーダインに乗っているため、アンデットどもは阻害できなかった。

カサンドラを中心に炎の光線が辺り一面を駆け巡っていく。

やがて半径50mほどの魔法陣が描かれ、火の精霊が天井知らずに活性化していく。

凄まじい火炎が立ち昇り天を焦がし、大地が融解し溶岩となり更に気化していった。

アンデットは欠片も残らず燃え尽きていく。

その後には直径100mにも及ぶクレーターが残っていた。

この一撃でアンデットどもの戦線は崩壊し、一気に兵士と冒険者達側が有利になるのだった。


 雄介はダークテンペストに乗り、グレーターデーモンに向かった。

グレーターデーモンはライトニングインパクトで雄介達を狙ったが、ダークテンペストのスピードには対応できなかった。

雄介は飛び降りると水晶竜牙の太刀を持ち、構えを取る。

上級魔法を使わせないよう神移で距離を詰め、真・疾風覇斬の連撃で追い詰めて真・天竜落撃で重傷を負わせた。


「くそっ増援か。ここまでだな。

貴様ら全員逃げろ。

てめえの顔覚えておくぜ」


 グレーターデーモンはアンデットどもに撤退の指示を出すと、テレポートを使い逃げ出したのだった。


「ちっ逃がしたか」


 アンデットは知能の高い者から撤退を始めた。

兵士と冒険者達は何が有ったのか分からず混乱していて、追撃するかどうか意見が分かれているようだ。

雄介が近づき、声をかける。


「重傷の人は居ませんね?

ボスのグレーターデーモンは撤退しました。

アンデットは追撃して数を減らすべきです」


「あなたは、北方の迎撃に行った冒険者ですね。

良かった。無事だったんですか。

皆軽傷の者ばかりです。

全員、アンデットの追撃を行うぞ」


「「「「「おう」」」」」


 撤退中の敵を撃つのは、一般の戦闘より遥かに容易である。

雄介達がアンデットの足止めをして逃げる数を減らし、兵士と冒険者達が打ち倒していった。

やがて朝日が昇るとアンデットは大幅に弱体化し、最終的に逃げ切ったアンデットは200匹も居なかった。

この戦いでは雄介とカサンドラのLVUPはなく、獲得勇者ポイントはそれぞれ983であった。



 雄介達と兵士達がジェバラナの町に戻ってみると、住民たちは涙を流さんばかりに喜んでいた。

いや、実際に歓喜の涙を流している人さえあった。

領主が前に進み出て言った。


「雄介殿、カサンドラ殿、この度のご助力深く感謝致します。

兵士達よ、冒険者達よ、本当によく戦ってくれた。

今晩にはささやかながら宴会を開こう。

それまでゆっくりと休みを取るが良い」


 

 雄介達も流石に疲労困憊しており、朝方であったが宿屋に向かった。

宿屋では女将さんと娘さんが満面の笑顔で出迎えてくれた。


「いらっしゃい。大変だったそうだね。

ベットも朝食も用意してるからね」


「お兄ちゃんお姉ちゃん、大活躍したんでしょう。

みんながそう言ってたよ。

あとでぜひお話してね♪」


「ルジェナちゃん、今晩ならお話するわね」


「今は流石に疲れてるからな。

朝食を食べたら休憩するよ。

お話はその後ね」


 宿屋の朝食は朝食とは思えないほどのボリュームがあった。

パンと肉入りのスープ、野菜炒めであり、味付けは日本とは違っていたが美味であった。

女将さんが腕によりをかけて作ってくれたことが伺えたのだった。


 

 夕方に起きだすと、宴会の準備が進んでいた。

精一杯の宴会であったが、ジェバラナは魔物の襲撃を恐れ外にほとんど出られなかったため、食材が不足しているようだった。

雄介はダークテンペストに乗ると30分ほどで5mほどの大猪を取ってきた。


「これで焼肉にしましょう」


「うおお、これなら数百人分の焼肉が出来るぞ」


 宴会が始まると広場全体が宴会場のようになった。

皆、歌ったり踊ったり、酒盛りをしていた。

しばらくするとジェバラナの住民が次々とやってきて挨拶と感謝の言葉を述べていた。

無礼講ということで、雄介達は焼肉とお酒を飲みながら応対した。

改めて領主がやってきて今後も町に留まって欲しいと引き止められたが、雄介達は断った。

それらが一段落すると、カサンドラが雄介の隣に座った。


「この町を私たちが護ったんですよね。

雄介さんがGWOの世界の人たちを助けるために戦うって言った気持ち、今なら分かります。

戦うのって本当に大変ですけどね」


「カサンドラさんもよく頑張ったね。

日本なら命がけで何かするってことは少ないけど、こっちじゃ当たり前に起きるからね」


「……あの悪魔に聖水をかけたり釜をかけてる雄介さんは凄く冷たい目をしてました。

正直驚いてしまったんですけど、半日休んで気持ちの整理が出来たみたいです。

この世界の人々を護るために必要なことだったんですね」


「え、あ、あの時のカサンドラさんの様子ってそういう訳だったんだ。

悪魔から情報を聞き出すためにプレッシャーをかけようと厳しい顔をしてたんだけどな。

冷たい目、か。

そうかもしれないな」


「今の雄介さん、優しい目をしてますよ。

戦いのときは仕方ないですけど、私と一緒のときはそういう目でいて下さいね」


 雄介は優しく握った、カサンドラの肩を。


「分かった。

気をつけるよ」


 カサンドラは雄介の肩にゆっくりともたれかかった。


「お兄ちゃんお姉ちゃん、お休み中?」


 横からルジェナが顔を覗かせた。

カサンドラは真っ赤な顔をして雄介と離れるのだった。

雄介は少し残念そうに答えた。


「少し休憩してたんだよ。

ルジェナちゃん、どうしたの?」


「あの~お話聞かせてほしいなぁ」


「ああ、朝に言ってたことか。

良いよ、こっちにおいで」


「私の膝に乗ったら良いですよ」


 ルジェナはカサンドラの膝の上に座ると雄介達の話を聞いていた。

10歳の女の子にとっては英雄譚のように感じたらしく、楽しそうに笑っていた。

話が終わるとルジェナは寂しさと嬉しさの入り混じったような表情を浮かべた。


「あのね、あたしのパパは魔物に襲われて死んじゃったんだ。

だから、パパの仇を取ってくれてありがとね」


「……ルジェナちゃんのパパってそうだったんだね。

ルジェナちゃん、おいで」


 雄介はルジェナを抱きかかえると優しく頭を撫ぜるのだった。

父親を思い出したのかルジェナは泣き出してしまい、しばらくすると泣き疲れて寝てしまった。

その晩はジェバラナの宿屋に泊まった。


「ねえ、お兄ちゃんとお姉ちゃんは帰ってしまうの?」


「そうだね。もう帰ろうと思ってる」


「ええ~嫌だよう。

帰らないでこの町に居てよ」


「えっと雄介さん、どうします?」


「アンデットの襲撃は当分はないだろうけど、悪魔の攻撃は有り得るからなあ。

ちょっとこの町を護る方法を考えてみるよ。

一旦帰るけれど、また来るから」


「きっとだよ。絶対来てね。

待ってるからね」


「ああ、約束だ」


スラティナの王都に帰った。

自宅に戻ると、ティアナとルカとアルジェが心底心配していた。

ギルドマスターに報告を済ますとその日は一日、雄介はティアナたちに付き合うのだった。



次回の投稿は明後日0時となります。

サブタイトルは「弟子の選定」です。

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