第21話 パーティ結成
○36日目
「神様、お久しぶりです」
「雄介、しばらくぶりじゃな。
カサンドラ、ワシの従者を辞め、GWOのプレイヤーになりたいとは本気か?
おぬしは何の戦闘経験もない。
いい加減な気持ちなら許すことはできんぞ」
「はい、本気です。
雄介さんの力になりたいというのも有りますが、自分の力を試したいのです」
「自分の力を試したい、か。
力を試したいだけなら、他のことでも良いであろうに」
「私、神様がGWOを創った本当の理由を知ってます。
だからGWOに全力を尽してみたいんです」
「本当の理由じゃと?」
「神様がこの世界をGWOの舞台に選んだのは、このままだと魔物によってこの世界の人間が滅ぼされてしまうからですよね?
そしてプレイヤーを勇者として送り込むことで、この世界の人々を救うつもりですね。
だったら、私も自分にできることをやります」
「(どういうことだ?
神がGWOを創ったのは、自分がVRMMORPGをやりたいからだけじゃないのか?
このままだと魔物によってこの世界の人間が滅ぼされてしまうから、それを救うため?)」
「おぬし、気が付いておったんじゃな。
確かにこの世界は人間に比べ魔物が強すぎる。
地球からプレイヤーを差し向けることで、この世界の人々を救うことも目的の1つじゃ。
まあ、VRMMORPGを遊びたいというのも正しいがのう。
じゃが、生命の危険を冒してまでなぜやろうとする?
自分自身の願いを叶えるために戦わなければ、やがて人を助けたいという気持ちは擦り切れてしまうぞ」
「それは……もしこのまま狭間の世界にいて雄介さんが死んでしまったら、きっと私は後悔します。
自分に出来ることがあったのに、やらなかったら必ず後悔します。
私は雄介さんに生きていてほしい。笑っていてほしい。
それが私の願いです」
「命をかけても叶えたい願いが見付かったんじゃな。
それなら仕方なかろう。
じゃが、管理者補助としての知識と幻獣召還魔法は取り消しにするぞ。
それを与えれば、他のプレイヤーに比べ優遇し過ぎになるからのう」
「分かりました。
あの、今まで覚えた精霊魔法や魔力と精神の高さはそのままということですか?」
「仕方あるまい。おぬしはそれくらいはないと危ないからのう」
「あ、有り難うございます。
でも、それだけで充分優遇ですよ」
「元従者なら少々優遇しても良かろう。
では、契約書にサインと拇印をするが良い」
神はGWOの契約書を差し出した。
カサンドラはサインを記入し、拇印を押した。
神の従者と管理者補助を辞め、GWOのプレイヤーとなったのである。
「それでは、さらばじゃ。
雄介、カサンドラを泣かせたら承知せんぞ」
「え…分かりました。気をつけます」
「もう、神様ったら」
神の姿がフッと消えたのだった。
「まずステータスを見てみますね」
カサンドラ・ディアノ
LV:1
年齢:21
職業:召還魔法使いLV52・精霊魔法使いLV36・念動魔法使いLV21・時空魔法LV18
HP:150 (E)
MP:2046 (SS)
筋力:27 (E)
体力:32 (E)
敏捷:21 (E)
技術:6 (E)
魔力:426 (SS)
精神:384 (SS)
運のよさ:39 (E)
BP:20
称号:元管理者補助・プレイヤー・βテスター
特性:火炎属性中耐性・水冷属性高耐性・大地属性中耐性・風雷属性中耐性・聖光属性高耐性
スキル:自動翻訳
魔法:幻獣召還(幻獣次第)・ファイアーアロー(3)・フレイム(10)・ファイアーバースト(40)・アイスストーム(5)・ダイヤモンドダスト(40)・コキュートスアラウンド(120)・アイシクルディザスター(220)・アースランス(20)・ガイアシールド(40)・タイタニックノア(100)・エアスライサー(5)・エアロガード(20)・プラズマブレイカー(50)・ヒール(10)・レジストマインド(20)・ホーリーヒール(80)・ホーリーカルナシオン(180)・強化魔法(任意)・念動魔法(任意)・クロックアップ(150)・クロックダウン(150)・テレポート(距離次第)
装備:黒のローブ
所持勇者ポイント:0
累計勇者ポイント:0
「すげぇ~~。MPと魔力と精神がめちゃ高いし。
精霊魔法も相当強いのが揃ってるね。
暗黒属性以外全属性魔法が使えるとは」
「チュートリアルをするために必要な能力は神様から与えられたんです。
幻獣召還が使えないといけないので。
元々魔法は向いていたみたいですけど。
多分、パートナーの幻獣の召還が終わったら、召還魔法は使えないようになっているはずです。
それに管理者補助としての知識も失われるでしょう」
「精霊魔法使いLV36・念動魔法使いLV21・時空魔法LV18ってかなり凄いんだけど?」
「管理者補助の仕事は数年続けてますし、仕事の無いとき魔法使ってましたから」
「なるほどね。
そういえば戦った経験がないって聴いたけど、それで戦えるの?」
「大丈夫だと思います。
レジストマインドを使えば、恐怖とか不安とか戦いにマイナスになるような感情を防ぐことが出来ますから」
「まあ、やってみて様子を見るしかないか。
あと、幻獣は何にするの?」
「バハムートにしようと思います」
「バランスの良いドラゴン系の中でも総合力でトップクラスとされる幻獣だね」
「そうです。
じゃあ、召還するので着いて来てください」
「ちょっと待って、召還の前に質問が有るんだ」
「う~ん、答えるのが許されている範囲ですよ」
「自分のステータスの平均値より200以上弱い相手なら経験値は0になる設定って言ってたよね。
運のよさが-999だと平均値が下がるけど、経験値多くなったりしない?」
「ステータスの差が、相手が上なほど経験値が多くなり、相手が下なほど少なくなります。
だから運のよさが-999だと、相当経験値は多くなりますね。
1月でLV39になれたのも、その影響は大きいと思います。
でも、運のよさが低いのは凄く不利ですから、本当に危険なんですよ」
「まあね。状態異常攻撃はホント危険だからなぁ。
あ、運のよさが-999なら他のステータスがSSSクラスより更に上がるよね?」
「えっと、多分そうなると思います。
実例がないので断言はできませんが」
「あとさ、SSSクラスでも強い相手と戦い続ける人ならLVUP出来るよね?
そういう人は居ないのかな?」
「居ることは居るのですが、長期間戦い続けられる人は滅多にいません。
回復魔法でも治せないほどの傷を負ってしまったら、もう強い相手とは戦えませんから。
リタイアするか、魔法で一掃できるような相手を倒す生活になってしまいます」
「なるほどね。
まあ、超回復があれば俺は大丈夫か」
「その超回復ってスキル、物凄くレアなスキルですよ。
私も聞いたことないですもん」
「はは、そうなんだ。
(黒不死鳥王の寵愛の効果だからな)」
雄介とカサンドラは今後の予定や悪魔への対応についてしばらく話し合った。
そして以前と同じ直径8mほどの魔法陣がある場所に向かった。
カサンドラが魔法陣に魔力を通した。
バハムートの魂の召還を始める。
ダークテンペストと同じ魔界からの召還であった。
魔法陣の中央から群青色の光が放たれだした。
カサンドラが近づき、ナイフで左手を切って血を振りかけた。
そのとたん、群青色の光が膨れ上がった。
体長16mほどのドラゴンがそこに居た。
数本の角と4枚の翼を持ち、紅玉色の瞳と群青色の背中と白い腹をしていた。
バハムートは一個体の名称ではなく、種族名である。
王ではないが、ドラゴンの中でも上位種だ。
ダークテンペストほどではないが、高速飛行ができる。
無属性のブレス攻撃であるメガフレア、更に成長すればギガフレアを使う。
全体的にバランスの良い強さをしており、知能も高い。
状態異常攻撃に対し高い耐性を持つ。
水に潜ることができる。
「我はバハムート。そなたが我のマスターか?」
「私はカサンドラ・ディアノです。
あなたのマスターですよ」
「マスター、我に名前を」
「そうですねぇ、あなたはブルーダインよ」
「良かろう。我はブルーダイン。
そなたの命が終わる日まで、そなたと共にあり、そなたを護ろう」
「ブルーダイン、あなたは変身はできるの?」
「この姿を他人が見れば驚かせてしまうな。
蒼鷹ならどうであろうか?」
ブルーダインは蒼鷹に変身した。
蒼鷹とは羽毛が青色を帯びている鷹である。
全長55cm、翼長110cmであった。
「これなら良いですよ」
雄介とダークテンペストは邪魔にならないよう横で見ていた。
「(バハムートは余と同じ魔界の種族で、ドラゴンの中でも希少種だ。
戦ったこともあるが、かなりの強さだぞ。
余のほうが強いがな)」
「(ほぉ、そうなのか。
しかし黒王の召還のときと大分違うな?
何と言うか素直な感じだ。
何よりマスターなんて言われてないぞ)」
「(うむ、本来召還された幻獣はあんなものだ。
マスターに従順で相性の良い個体が選ばれる。
余は相性より強さで選ばれたようだ。
マスターと呼ばれたいのか?」
「(今更マスターなんて呼ばれたらむず痒い。雄介でいいさ)」
「(うむ、余も雄介と呼ぶ方がよい)」
「もう契約は終わったみたいだな。
俺は滝城雄介。
カサンドラさんとはパーティを組む予定なんだ。
ブルーダイン、よろしくね」
「余はダークテンペストである。
雄介のパートナーであり、黒不死鳥の王だ」
「雄介殿もダークテンペスト殿も、マスターの仲間なら我の仲間だ。
ダークテンペスト殿の名前は魔界でも聞いたことがある。
よろしく頼む」
「殿付きなんだ」
「余のことは黒王と呼ぶが良い」
その後しばらく2人と2匹で自己紹介タイムとなったのである。
カサンドラがステータスを確認すると、筋力30・体力70・敏捷50・魔力20・精神30・運のよさ50上昇していた。
また、魔法:幻獣召還(幻獣次第)が消え、称号:バハムートの加護、特性:状態異常高耐性を得ていた。
「へ~、バランスが良いと言われるだけはあるね。
BPはどう使うの?」
「まずは体力をつけないと戦えないですから、体力を上げます」
カサンドラのステータスは体力:122 (C)まで上がった。
「装備品はどうする?」
「初期装備程度ならあるのですが」
「王都で装備品は揃えるから大丈夫だよ」
「分かりました。
じゃあ、準備をしてきますね」
カサンドラは自宅に戻ると、1時間後魔法の布袋に荷物を詰めて戻ってきた。
「お待たせしました」
「じゃあ、パーティ申請をするね」
雄介は少し恥ずかしそうに右手を差し出すと「我が名は滝城雄介。我と共に冒険に挑み、我と共に戦い、我と共に勝利を掴むなら、この手を握れ」と声を張り上げた。
カサンドラは嬉しそうに雄介の手を握ると「我が名はカサンドラ・ディアノ。汝と共に冒険に挑み、汝と共に戦い、汝と共に勝利を掴む者なり」と言葉を返した。
「(これでパーティ結成したはずだけど、念話通じる?)」
「(聞えますよ。
雄介さんと念話するとこんな風に聞こえるんですね)」
「(そうみたいだね)」
プレイヤー同士のパーティ結成はこのように行われる。
申請の言葉は同じような意味であれば、他の言葉でも構わない。
パーティを組むと念話で話ができるようになり、相手の現在のHPとMPと状態異常があればそれも頭に浮かぶようになる。
パーティーメンバーの幻獣とも念話が使えるが、使われることは少ない。
戦闘時、一緒に戦っていれば獲得経験値と獲得勇者ポイントは分配される。
戦いに参加しなければ、一緒にいても分配されない。
獲得経験値は低ステータスの者が多く分けられる。
獲得勇者ポイントはパーティメンバーのプレイヤー全員が均等に分けられる。(端数切り上げ)
GWOの世界の人がパーティに居ても勇者ポイントは分配されない。
GWOの世界の人にはBPによる強化は存在しないが、経験値を得ることで自然と強くなっていく。
パーティは最大で6人である。
パーティの破棄は各メンバーの意思で行える。
「もう準備は良いかな?」
「はい、大丈夫ですよ」
「王都に移動するね」
「分かりました」
ダークテンペストは黒鷲になり、ブルーダインは蒼鷹になった。
雄介はカサンドラたちを連れ、テレポートで王都近くの草原に移動した。
「まずはカサンドラさんの装備を整えようか?」
「そうですね。
後でティアナさんとルカさんに紹介して下さいね」
「それは構わないけど、勇者のことや異世界のことはどうしたら良いの?」
「ティアナさんとルカさんには話します。
でも、他の人には話さないでください。
ただの冒険者ということにしましょう」
雄介とカサンドラは武具屋に向かった。
「武器はどうするかな。
俺が前衛で、カサンドラさんが後衛で良いよね?」
「タイプ的にそうですね。
なので、ロッドが良いと思います」
「それなら、このムーンライトワンドはどうかな?
1番得意って言ってた聖光属性強化のロッドなら王都で最高級品だよ」
「う~ん、暗黒属性以外の5属性魔法が使えますからね。
魔法の威力を底上げできる精霊石の杖にします」
「ふむふむ。防具はエレメンタルローブ・スターサークレット・精霊銀の腕輪・疾風のブーツでどうかな?」
「わあ、良さそうですね。それらにします」
「じゃあ、買うね」
雄介は精霊石の杖・エレメンタルローブ・スターサークレット・精霊銀の腕輪・疾風のブーツを購入した。
「収入が入ったら返しますね」
「まあ、パーティ結成祝いってことで贈らせて」
「そんな、悪いですよ」
「まあまあ」
雄介は有耶無耶のうちに贈ることにしてしまった。
次に冒険者ギルドに向かった。
冒険者の登録をすると、カサンドラに身分証明書がないためFクラスからの開始であった。
冒険者証明書
名前:カサンドラ・ディアノ
種族:普人族
性別:女
年齢:21歳
クラス:Fクラス
技能:読み書き・計算・火水土風光系魔法・強化魔法・念動魔法・時空魔法
夕方が近づいた頃、王城の自分の部屋に移動した。
ティアナとルカも帰っていたため、呼び出した。
「雄介、どうしたん?
お、美人さんやん。
うち、ティアナて言うんや。
よろしゅうに」
「初めまして、ルカにゃん」
「初めまして、カサンドラです。
よろしくお願いします」
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