朝起きたときの話10
……ごめん。
○ ○ ○
朝起きたときの話
夢から覚めても
フェンスの向こう
十字架
○ ○ ○
「うわっ!?」
ばっと頭が反射的に上がる。まるで十字路で飛び出してきた猫を引きそうになった運転手がごとく、俺は夢中で目を開けた。
ぼやけた視界。定まっていく焦点。高鳴る鼓動をなんとか沈めようと荒い呼吸を押さえつけ、だんだんと鮮明になっていく光景に頭を切り換えていく。
「はあ、っ……」
息が整わない。心臓も猛ったまま。全身が汗ばんでいることに今更ながら気がついた。
ようやく思考が戻ってくる。同時、気づく。
「弟君……私は思うのよ」
「そうか。勝手に思っててくれていいぞ、美姫。だから、俺を十字架に縛りつけるんじゃない」
暗い暗い牢獄、といったところか。
場面は大分違うが、それでもメロスを待つセロヌンティスの気分なのは変わりない。
……セテヌンティスだっけ? セヌンティスネロだっけ?
ま、どうでもいっか。
「ツンがないことの、何がだめだっていうの!? デレにデレを重ねてる私のどこがだめだっていうの!?」
「ツンデレへの文句を俺にぶつけるんじゃない」
どうみても今のお前はヤンデレだという言葉は、胸の奥に留めておく。
デレすぎるって意味では同じだろうからな……
「ツンという苦味によってデレの甘みが強調される、なんていう小細工がなんだていうのよ!? 私だって惚れちゃいそうよ!!」
そうなのか。
「でも、でもね……最初から最後まで自分の心に一直線なデレデレのほうが、環境には良いんだからね!?」
製作者の労働時間を短くできて、いいんじゃないか?
話が捻れないって意味ではつらいだろうけどな。それに、波乱がないだなんて、売れなくなるぞ?
「確かにツンデレのほうが好評を得てるよ? でも、でもね……甘甘も極めればきっと好評をもらえるはずだよ♪」
それを属にヤンデレというのではないか、と思うわけだ。
「だから、結局なんなんだ?」
「だ〜か〜ら〜♪」
擦り寄ってきた美姫の瞳には、暗い光が宿っていた。
「弟君に修行のお手伝いしてもらうのぉ♪ デレデレお姉ちゃんから、美姫ちゃんは更なる進化を遂げるんだよぉ〜」
これは間違いなくヤンデレ……ッ!
よし、仕方ない。これは、ニコツー動画で手に入れたあの技を使うしかないよな。
キョン君に第一期最速クリアをさせたあの技をぉぉぉぉぉぉおおおお!!
知ったこっちゃねぇや(【キョンが第一期を最速クリアした様です。全イベント通過】の5:40秒あたり的な意味で。
よし、十字架からの抜け出し完了。
「そんな……ッ!!」
悪い。今日は見たいテレビがあるんだ。
いっくぞぉ(←走り逃げる合図的な意味で
美姫に背を向けて走り出す。幸運なことに、道は続いていた。走り続ければ出口に――
「ぉ持ち帰りぃぃぃぃー!」
背後からの美姫の声。怖い、怖すぎる。捕食者の、悦楽に満ちきった声だ。怖すぎると言わざるを得ない。
「今日は見たいテレビがあるんだぁぁぁぁああああ!!」
サザエさーん。
全力疾走に命懸け始めた頃、少し先に眩い光が見え始めた。
ゴールだ。走りきれ、俺の両足。走り切れぇぇぇぇぇええ!!
はい、フェンスに躓きました。
OK、諸君は何も見ていない、そうだろ?
……ごめん。
○ ○ ○
朝起きたときの話
夢から覚めても
フェンスの向こう
十字架
○ ○ ○
「うわっ!?」
ばっと頭が反射的に上がる。まるで十字路で飛び出してきた猫を引きそうになった運転手がごとく、俺は夢中で目を開けた。
ぼやけた視界。定まっていく焦点。高鳴る鼓動をなんとか沈めようと荒い呼吸を押さえつけ、だんだんと鮮明になっていく光景に頭を切り換えていく。
「はあ、っ……」
息が整わない。心臓も猛ったまま。全身が汗ばんでいることに今更ながら気がついた。
ようやく思考が戻ってくる。同時、気づく――
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