二、刃を抜き払う。
もむもむ……『ガトーしょこら』うめぇなぁ……ぅんもっぐ、ぅんもっぐ、ふんもっふ!
「……」
なぁなぁ主人公。
「なんだ?」
オレっち、困ってるんだぁ。
「何を?」
いやぁさ……この小説での戦闘描写なんだけどさぁ。
ギャグっぽく行くかで悩んでんだぁ。
「でも――もう目の前に、敵来ちまったぞ?」
そうなんだよなぁ、どうすっかなぁ。
まあ、エルエフとかメルストっぽく行っちゃおうかぁ。おじさんいつもどおりぃ。
それでは、本編へアデュー。
紡がれる、自分の心――届くことを、伝わることを願って――るぁぁぁぁッ!!
CROSS! Fantasia〜もしもを超えての、想いの交差を〜
『永久の絶望を背負わされし我々。永久の希望を背負わされし貴様等。現実とはおかしなことだな』
「……はぁ」
曖昧に相槌を打つ祐夜。その前にいる紫の巨人――アークデーモン――は、赤い瞳を三日月にする。
『力在る我々が幸を得ず、力無き屑である貴様等が幸を得る――なんておかしなことだ』
「……はぁ」
曖昧に相槌を打つ祐夜。その声は溜息に似ている。
『世界の定理はただひとつ。弱肉強食のみ。それ以外はあってはならぬし、それ以外はなんと醜きものか。
人が自らに科している束縛も、所詮は己等の安心欲するがためのもの。そうであろう?』
「……はぁ」
溜息を吐く祐夜。
『貴様等屑は我々に劣るというのに、卑怯にも虎の威を借る狐のごとき臆病さで我々を圧倒した。
しかし、そこに覇があるというか? 渇きを満たせるというか? 猪口才な貴様等は、邪道ともいうべき道を歩んでいる。
我々は、あるべき姿へと貴様等を叩きなおしてやろうとしているだけなのだ。
この世界を薄汚くした貴様等への寛大な処置、嬉しく思ってもらうは当たり前。そうだろう?』
「……つまり、弱い者いじめがしたいっつうことか?」
『貴様等カスは我々に食われるべきだといっているのだ』
迸る波動。それは、巨人の本領の一角。それは、恐怖を植え付ける蛇の眼。
巨人は残虐に、五体をひとつずつ切り刻まんと思案する。
生身で硬直していたら、糸も簡単に切り裂かれることは確定。
「まあ落ち着けって……」
祐夜は巨人に微笑みかけた。
それを命乞いと取った巨人は、醜い笑みを強くする。
『さぁ、貴様はどうやって刻まれたい? 我という圧倒的な存在を前に、どんな絶叫をあげたい? 選択させてやろう。瞬殺か地獄か』
祐夜は口を閉ざす。
返答を待つ巨人は――ゆっくり動き出す祐夜の唇を凝視した。
「――贖罪の煉獄に、鎖せ。悪なる螺旋の虜どもを、今再び」
そして、巨人は聞いた。
それだけだった。
聞いた、ただそれだけ。
その次はない。
言葉という徴を知る資格しかあらぬ巨人は――朽ちた。
おうおうおうおう、よくわからんままに戦闘終えやがってこんちくしょう。
「そういうなって……」
読者の皆様が困ってるだろうが、自重しろ自重。
なあ、女王美姫様?
「まったく、アンタってほんとバカねぇ。それでも主人公?」
「……またそれッスか」
またこれッスよ。オレっちの大好物的ネタッスよ。萌え萌えハアハアッスよ。
ぉ持ち帰りぃぃぃぃー! してよろしいでザンスか?
「まあまあ作者――いや、『レコードを築く者』イアンゾムリク」
本名バラすんじゃねぇよ、御劉。
「いや、伏線というものは早めに設置してこそ読者を仰天させられる……のではないか?」
うぅむ……オレっち難しいことは嫌いなんだなぁ。
「だから『落ちる』か『滑る』かしそうなんだな」
オイ糞主人公、高校受験目の前にしてる作者様に対してなんだその言い草はァ?
「まったく、アンタってほんとバカねぇ。それでも主人公?」
「……タイミングの図られた美姫の発言。恐るべし」
ハッハッハァッ! オレっちなめてると痛い目見るぜ主人公?
「……まぁと・に・か・く、【竜園】を目指すとしようか主人公?」
説明しよう。
【竜園】は量産戦闘生体兵器『破壊竜』の住処である。
量産戦闘生体兵器『破壊竜』は魔物ではない。
如何なる致命傷でも、細胞の一片が消え失せても蘇生する。生態系が意味を失う、存在してはならない生物。不老にして不死。それとともに、総てを沈める中和力を依ることから『神殺し』とまで呼ばれた『帝竜』の三匹『黄昏』『絶滅』『再誕』
その派生体である『破壊竜』は≪和≫と≪崩≫の息吹にて『帝竜』の威厳を受け継いでいる。
といっても、『帝竜』とは比べ物にならないほど能力は低い。しかし、人が簡単に対抗できる相手ではない。
それでも人が『破壊竜』と『帝竜』を脅威と見ないのは、『帝竜』が今はもう滅び朽ち果てているからだ。
統率者のいない『破壊竜』も着実に数を減らしている。戦う威を忘れているのか、人が対抗できるほどに貧弱な『破壊竜』がほとんど。
王都ギルセルクに一番近い【魔境】であーる。
「……特に目指す当てもないしな。それでいいけど」
「まったく、アンタってほんとバカねぇ。それでも主人公?」
「そろそろ美姫を元に戻せよ!?」
こうして主人公一行の旅は始ったのであった――るぁぁぁぁッ!
○ ○ ○
「君は、世界に顕在すべき王の名総てを知っているかい?」
オレっちは尋ねる。
「……魔王、国王、女王、勇者王」
妥当なところが連ねられていく。
「――覇王」
「……ククク、そのとおりだ。そのとおりすぎる。なんて素晴らしい」
総てを知りはしないというのに、言い当てられてしまった。
オレっちは話す。語る。言い募る。
「【覇王決定壮大儀式】【魔王断片封印吸収者】【次魔王決定権限有権者束縛儀式術】【絶対不干渉領域完全連結】【無秩序無概念無区域有神国ベルセクス・テンネル】【天使化結晶人間化侵食疾患】【運命記録書上書訂正改正変更】」
「――それが、この物語の狂い総て?」
「ああ、そのとおりだ。我が右目『草薙』」
「……私の存在意義『イアンゾムリク』」
ハハ、モテモテの男はつらいッスね。
「――死にに行くなんて、言わないで」
「……それは、無理だ」
一蹴しちゃうのは忍びないけど、嘘はつきたくないからなぁ。
「……なら、私が動く」
背後から消える気配。
やれやれと、勝手に漏れてしまうオレっちの溜息。
「……世界は、書き手の描く物語に、こんなにも忠実だというのに。
どうして書き手は――こんなにも不完全なのだろうか」
完全とは何か。
わからないから、おれっちは――描き手は不完全なのだろう。
「題するならば……そうだな」
【崩壊の道を知らぬ愚者どもと、崩壊の道を知る弱虫】
○ ○ ○
『竜』と名の付く物の総ては息吹を行使するってご都合設定ー。
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