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朝起きたときの話3
 朝起きたときの話


 妖精
 茶封筒
 コンビニ


 宅配便が来た。差出人は御劉。茶封筒は不自然に盛り上がっている。ちょうど拳ほどに。本当に不自然だ。
「ありがとうございます」
 会釈された。会釈を返す。宅配人は若いお姉さんだった。柔らかい微笑みに対して『君のスマイルをラージサイズで』などと言いたくなる。マックドではないことに気づく。仕方なくボケるのを諦めた。
 ドアを閉める。バイク音が去っていく。そして、茶封筒を開けた。
 手紙がある。開く。文字が書いてあった。上から順に読み下し始める。


 プラスチック爆弾だったら、今頃お前死んでいるね?


 茶封筒にプラスチック爆弾は収納できるのか。疑問だ。
 とにかく前に進もうと思う。


 今回お前に送ったものは、我等がおやつの時間を惜しんで開発した『対人間専用A-ティン神経強烈刺激薬』通称『クロスコロリ〜愛にいざなう禁断の欠片〜』なる惚れ薬だ。惚れ薬以外の何物でもない。ある意味身体に毒な薬だ。


「これか……」
 錠剤の詰め込まれたケースを手に取る。振る。ガチャガチャと音が鳴る。


 ぶっちゃけ創ったは良いが興味がなくてな。お前は周囲に女性が多いから、いろいろとおもしろいデータが取れるんじゃないかという輝弥の意見でモルモットはお前に決定した。女性をどうこうしたいと思わない俺とは違って、お前は前にも『モテたい気がしなくもなくなくなくなくない』だとか言ってたような気がするし、お前がハーレム願望持つことでCROSS!登場キャラの大半が幸せになれると言わざるを得ない。彼女との関係を深めるも良し。不倫をするも良し、不倫相手と本命とを同時に愛するも勝手。商店街で偶然出会った可愛いあの娘に飲ませるのも使い方のひとつ。総ての女性はお前のためにあるのだよ。……ふむ、なかなか良い言葉だね? 御劉名言集に追加しておくとしよう。


「しらねぇよ」
 ぶっちゃけ、もう読み飽きてきた。


 まあ、とにかく。今日の小説の目玉な薬だ。どう使うかはお前次第だが、使い方によっては主人公から下ろされると思え。いや、もう下ろされていたかな? 愉快愉快、アッハッハッバリッ!


「……さて」
 破り捨てた紙を茶封筒に詰めなおし、じっくりと錠剤を眺める。
 迷うべきは、使うか使わないかじゃない。
「誰にどれだけ飲ませるかだよ、諸君」
 とりあえず美姫には飲ませたくない。悪夢という俺専用の煉獄を作るだけなのは明白。
 まず、試しとしてちょうどいいのは――
「……優衣か」
 家族だろうと容赦しないのが俺クオリティ。
 引込思案だからそんなに変わるかはわからんが――まあ、近場だし。
 居間へと歩く。ケースは後ろポケットへ。
 目標対象は、探すまでもなかった。
「祐夜さん。ピンポンの方はどんなご用でしたか?」
「ああ、御劉のピンポンパンダッシュだった。殴り飛ばすのに時間がかかっちまったよ」
 少し言い訳臭い。しかし、優衣は納得したのか、テレビへと目を戻す。
 人を疑わない性格――限りなく不安だ。お兄ちゃんとしては。
 ということで俺がもらっちまえばいいということだよな。グヘヘ(←キャラ変貌

 祐夜は『クロスコロリ〜愛にいざなう禁断の欠片〜』を使った


 ピロピロリン♪


 優衣は誘惑にかかってしまった

「どんなクソゲー形式だよ」
 ちなみに作者はこういう形式でRPGな小説を書いてみたかったりする。
「……祐夜、さ、ん?」
 なんだ――声を返そうして、しかしできなかった。
「ムフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフ――ムフッ♪」
 魔神・優衣の降臨。
 そんな言葉が浮かぶ。
 どちらかといえば、誘惑の妖精な気がする。
 とにかく、だ。
「優衣、気をしっかり持て!」
「ええ〜? 何もおひゃしなひょとなんひぇ、なひぃでふひょ〜?(おかしなことなんて、ないですよ〜?)」
「その口調とか、俺を押し倒してるお前とか、いろいろとおかしいだろうが!?」
「んん〜……すりすり」
「頬擦りすなッ!」
 優衣がおかしすぎる。誰がこんな風に優衣を変えてしまっ――
 あ、俺か。
 優衣が座っていたソファへと引き込まれ、いつの間にか乗られてしまっている。ていうか、絡まれている。
 優衣の両脚は俺の股の間にすっぽりと収まっており、ちょっと揺れるだけでこちらは大ダメージだ。いろいろと。
 視界に広がる、豊満に実る乳房が俺の胸板に潰れる場景は、あまりにも卑屈で卑猥――はだけた服の隙間から覗ける胸元は、あまりにも白く艶やかで。
 しかしほんのり赤く染まった優衣の頬も魅力的で、潤む瞳にも目を奪われてしまいそうで。
 ――どういうことだ、これは。
 おかしい。惚れ薬なんて夢のあるもんじゃない。これは現実的で悪魔的な媚薬の効能に合致している。おかしい。おかしい。
「……御劉か」
 俺をだましたか。いや、もしかしてまだ試してないせいで媚薬の効能だということに気づいていなかったのか。
 まて、それは違う。A-ティン神経を刺激するものと御劉の手紙は言っていた。そこまで思案できて、効能予測ができないはずがない。
 だまされた――歯軋り。舌打ち。きっと今の俺の顔は、苦渋に満ちていることだろう。
「おにいちゃぁん……堕ちよ?」
 どこにだ。
 とろけそうな魅惑の笑みを浮かべる優衣というのも見ていておもしろいが、見とれてる間に俺はバッドエンド直行を辿ることになってしまう。ここは我慢だ我慢。
「あのねあのね、なんかお尻の辺りがグシュグシュってなっててね、おにいちゃんに抱きついてると体中がじんじんってなって気持ちいいの……」
 エロすぎる。CROSS!が消されるから止めろ。このサイトは十八禁非対応なんだっ。
 少し乱暴だが、危機回避のため――優衣の腹を全力で蹴った。
 戸惑いなく迷いなく、容赦なく。
 怯んだ優衣へと、普段から常備しているもうひとつのアイテムを行使する。

 祐夜は『クロロホルム』を使った


 ピロロロロロロン♪


 優衣は眠ってしまった

 さすが即効性睡眠薬。っつうか、眠っても優衣の魅力は脅威すぎる。眠って無防備な感じが強力なのか――まあ、そんなことはいい。
 俺は居間から飛び出し、茶封筒を開けた。
 手紙の断片ABCDEFGHIJKMNOPQRSTUVWXYZαβγδεζηθικλμνξοπρστυ?χψΩ……を繋げ、できるかぎり修復。使い方の載っている文を探し、見つけた。


 『クロスコロリ〜愛にいざなう禁断の欠片〜』の使い方は簡単。『クロスコロリ〜愛にいざなう禁断の欠片〜』らしい『クロスコロリ〜愛にいざなう禁断の欠片〜』の正しい使い方なんてないし、『クロスコロリ〜愛にいざなう禁断の欠片〜』を使うことに奇妙な条件は付いていない。いや、あるか。条件はたったひとつ。惚れさせたい相手に飲ませることそれだけ。『クロスコロリ〜愛にいざなう禁断の欠片〜』の能力はそれだけだとぶっちゃけただの凄い媚薬でしかない。13.5時間ほどしか発情させられんから、おもしろくもなんともない。だが、『クロスコロリ〜愛にいざなう禁断の欠片〜』の使用に一工夫を加えればあぁら不思議! 永久に惚れてくれちゃったりするんだなこれが! 自分のDNA、血液や髪の毛などを液体と錠剤で混ぜて対象に飲ませる。たったこれだけの工夫で自分だけに発情してくれる女性に早変わりってわけだ凄いだろ凄すぎるだろ褒めろ称えろ喝采発しろワッハッハッハッ! 錠剤を投与し発情させた後でもオッケーなのはなぜかわからん。まあ、こっちのほうが楽だろうな。だって対象は発情してるんだし? 飲ませるもんってったら唾液から精……コホンコホン、これ以上は確かにCROSS!排除になりそうだな。よし、止めておくとしよう。ということで、錠剤投与後に上の口か下の口かに注ぎ込むのも手段としては使えることをここに指導する。嬉しく思えよ? ワッハッハッハッハ!


 作者は中学三年生です。
「……これだ」
 使い方の下。最後の笑いのその後に添えつけられた言葉。この場を打開するためのキーワード。


 あ、あと、セブンイレブンのからあげ棒を体内に入れれば錠剤が無効化され、発情が解除されてしまうから気をつけろよ。健闘を祈る、アディオォォォォォゥゥゥゥゥゥスッ!


 ただのからあげじゃだめってことか。っつうかなんで普通のじゃだめなんだ。
「フライパンで焼いて食べられるからあげならあるんだがな……」
 今から買いに行くしかあるまい。いざコンビニへ。
 しかし――しかし、だ。
 優衣を一人にするわけにはいかない。俺が出かけている間に起床したら、逆レイプの道に走り始めることになりかねん。どんな気この話は十八禁ルートへ直行できる選択肢が多いんだ。
 惚れる対象の後付……俺の血を飲ませれば、良いのか。
 そうしとけば、とりあえずは逆レイプフラグを討伐できる。
 しかし、だ。それはつまり、優衣を俺のものにするということ――なんて素晴らしい未来。
 いや、違う。妹の輝かしい未来を簡単に潰してしまう兄貴というのはどうなのか――結構結構。妹にもっと輝かしい未来を与えてやるんだ。素晴らしい兄貴だろうが。
 ……頭を壁に打ち付ける。
 理性と本能が交じり合う思考がヤバイ。本能と理性が戦いあってるように見えて、実は本能が理性の隣を素通りしてる辺りがヤバイ。理性は壁に喩えられると思わせておいて、実はドアでしたというほどにヤバイ。
「どうするか……」
「弟君〜、からあげ棒が破格な値段で売ってたから思わず買い占めちゃったの〜♪ 運ぶの手伝って〜♪」
「美姫ナイス!」

 美姫が現れた

 祐夜はスキル『ダッシュダッシュ奪取!』を使った


 デロデロデロデロ……ピロロロローン♪


 祐夜は『からあげ棒』を盗んだ

 両腕にスーパー袋をかけ玄関に入ってきた美姫から、からあげ棒を一本奪取。即座に折り返す。減速を最小限に抑え、玄関から居間へと一直線。

 祐夜は優衣に『からあげ棒』を使った


 ピロピロピロリン♪


 優衣の『誘惑』が解けた 


 ……なんとかなってよかったよ本当に。
 あ、それと、『クロスコロリ〜愛にいざなう禁断の欠片〜』は無駄遣いしてないからな。ちゃんと世界の害にならないよう丁重に処理させていただいた。
 今頃は……そうだな。虫の類が生殖活動を活発にしてるんじゃないか。家の庭辺りに住んでる虫の類が。


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「はい、というわけで夜更かしさんのお休みの時間、次回予告のコーナーだよ!
 なんかよくわかんないんだけど、風宮ふうぐう島の風宮かざみや学園で活動していたS・Mさんが何者かによって重傷を負わされたらしいってさー。恐いご時世だよねー。何の因縁で? とかいろいろ気になると思わない? 迷宮入りなんていうアニメっぽいことになることはないだろうけど、もしそうなったらーって考えるとワクワクが止まらない! 警察さんとか検察官さんとかがんばりなさいよ!
 とまあそんなこんなでお送りしますこのコーナー! 次回のタイトルは『朝起きたときの話4』。なんとなんと、新たな恋が始るよ・か・ん! 学園有数の問題児と学年屈指の生徒会会長、二人の恋は実るのか! 敵は多いぞお姉ちゃんキャラ! 唇にマンガに演技、三つのキーワードが織り成す物語はどたばたコメディにも優るとも劣らないギャグコメっすよ!
 というわけで以上、お相手は作者の都合により奈奈氏のまま登場な『可愛いあの娘なわ・た・し』でした! 次もずっと私のターン!」


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12/1(昨日)と12/2(今日)で1000読者数越えしたのが嬉しくて、二つ目更新。
さきに言っておく……明日投稿できるかわからないっ
一番最後のナレーションにちょい時間喰いました。自重('◇'*)
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