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新部突入、どんどんぱふぱふー
オーヴァーチュアは序曲という意味です。
♯10[オーヴァーチュア]
 妙な浮遊感。
 それでも、身体が重く沈みこんでいて。
 ぼんやりとした頭でいるのが幸福で。
「愁くん……おっはよ」
 しっかりと響いた甘い声が、鼓膜をこそばゆく揺らす。
 何かに導かれるように、ゆっくりと、目を開けた。
 眩しい。
 日の光も、目の前の人も。
「小夜歌……さん?」
「うん、小夜歌だよ♪」
 僕の首元に頬をよせて、上目遣いに微笑んでいるのはまちがいなく小夜歌さんだろう。
 小夜歌さんは自らに掛け布団をくるんでいるけど、僕が少し足を動かしたり、小夜歌さんの背中に触れている手に力を込めたときに返ってくる感触からわかったことがある。
 ……服越しの感触じゃ、ない。
「小夜歌さん……なん、で……」
「まったく、ぽけぽけさんなんだから♪」
 小夜歌さんは身動ぎ、腕を伸ばした。
 ツン、ツン。
 伸ばした白い指で、僕の額を突く。
 僕にはちょうど、腕の付け根辺りまでが見えるようになって。
 つまりはその横のほうもうっすらと見えるってことで。
 服があるはずのそこには、白い膨らみがムニュッとなっている場景が広がっていた。
 裸。半裸でもない完璧なる、人のあるがままな姿。
「愁くん……」
 グッと小夜歌さんが近づいた。
 僕の手が、掛け布団からはみ出した白い太ももに触れる。
 結構付け根のほうだったのか、太ももとは別のものに触れた感触まであった。
 僕の鼻先に小夜歌さんの顔がある。
 僕の鼻先に小夜歌さんの瞳がある。
 僕の鼻先に、愛しい人の姿がある。
「おねがい……」
 まるめられた手を僕の胸に置いて、濡れた瞳で見つめてくる。
 少し目を下へやれば、きっと小夜歌さんの上半身が隠されることなく露になっただろうけど、僕はじっと小夜歌さんの瞳を見返して。
「愁くんの優しい……キスをちょうだい」
 その言葉をまっすぐと受け止める。
 キス。二つの母音をもつ単語。その意味は深く、神秘的でいて、一瞬の事象。
 そっと閉じられた瞳。僕の時間の訪れる。
 頭はぼんやりとしたまま、何かに操られるようにして僕は小夜歌さんの髪に触れ、己の身を起き上がらせた。
 小夜歌さんの手が触れる僕の胸が、トクントクンと鼓動する。
 ゆっくりと近づき、少しだけ戸惑って、小夜歌さんの髪の香を胸いっぱいに吸い込み、願望という衝動に身を任せた。
 ――愛しい。
 流れる髪に指を絡ませ、壊れやすいものを触るように慎重に。
 僕と、小夜歌さんの距離は――


 CROSS! 2nd〜そして、物語は交差する〜♯10[オーヴァーチュア]


「ということで、クリスマスパーティ、通称クリパのクラス出し物を会議したいと思います」
 正樹の声が響いた。
 眠気眼を擦り、欠伸する。
 まだ雪が降り始めていない空。空気は肌を刺す冷たさを帯び始めている。
 薄い雲が覆い始めているから、もう数日もしたら積雪の時期だろうか。
 季節が変わっても変化しない机、そして教室。
 シンッと静まり返っている理由も、正樹がしゃべっているからということで納得がいく。

「出し物での役割分担は前半後半と分かれていますが、学年発表劇の出場者はそちらを優先することになっていますので、今から呼ぶ人は準備係に回ってください。役の重大さによっては係ナシの方向にもなります」
 文化祭がないのにクリパがある。なんておかしな風宮学園。
 体育祭も変な競技があった。
 この島は夏祭りやらで大きく盛り上がるほどだから、お祭り好きな人が多いのかもしれない。
「美月さん、片瀬祐さん、片瀬愁さん、千明希さん……」
 んん、気のせいだよな、今僕の名前が呼ばれた気がするんだけど。
 僕は顔をあげた。
 学年発表劇というのは、保護者や観覧者の方々にみてもらう生徒発表作品で、生徒会が人選権限や部の協力要請をもって作成する。
 教師が口を挟むことは許されていない、完全な生徒作品。
 ちなみに選ばれた生徒に拒否権はなく、選ばれるということは有名だったりする人だという証明になるわけだ。
 部の協力というのも演劇部が主。コンピューター部が照明を用意したり、聖歌部がBGM作ったり……間違いなく陸上部とかは活用されない。
 という現実逃避を終えて一言。
「僕なのかよ……」
 僕の呟きが聞こえたのか聞こえなかったのか、他に数人の名を呼び上げる正樹はにっこりと微笑んでいた。


「っていうことで我らが学年の一大発表のため、大切な放課後の時間だというのに集ってくれた諸君らに感謝を祝し、ここに用意した仮な台本を配布しようと思う!」
 トモダチが指揮ってテキパキとノートのようなものを配っていた。
 生徒会室に集まっている人の数は結構多い。僕もその一人だ。
 長方形の角を丸くしたようなドラマにでてきそうな黒塗りの机、会議に相応しい。
 少し首を回して、辺りを見てみた。
 みんな結構な美形。ちょっとだけ肩身が狭かったりする。
 隣にいる祐に目を移すと、ほ〜っと驚いて台本を見ていた。
 僕も台本を開き、驚愕する。

 【劇名】インテルメッゾの、美しきカンタービレ
 【役名=生徒名】
 ・主人公ヒーロー=片瀬愁
 ・主人公ヒロイン=天城小夜歌
 ・悲しみに染まった麗しき女性=片瀬祐
 ・悪無き魔女=中久保なかくぼ千明希
 ・詩人=美月梓
 ・木=トモダチ・デッドヒィト
 ・壁=トモダチ・デッドヒィト
 ・城=トモダチ・デッドヒィト

「なんで超脇役!? ってか一人で三つは無理よ!? その前にそれくらい作れるでしょうが!?」
 トモダチが泣きそうになっていた。
 というか集まっている人の数と合わない役数だ。だから仮なんだろうけど。
 おおまかなストーリー設定、曲の感じ、台詞に誤字が見つかったから即席だろうけど、だいたいの流れはつかめた。
 悲しみに染まった女性ってのが愛する男性を失っていて、ヒロインはそれを慰めるメイドで、ヒロインの相談相手で親友なヒーローがヒロインを励まして、悪無き魔女ってのがヒロインに願いを叶える〜的なことを言って、詩人がサラリとキザなことをいいながらヒロインを迷わせて、ヒーローがそれに割り込んで、女性を助けるほうへと後押しして、魔女が対価としてヒーローの命を要求して、戸惑うヒロインをまたヒーローが後押しして、ヒーローが消えたところで女性が立ち直って……木と壁とお城がでてくる。
 そんなトゥルーエンド物語だ。
 っていうか偽名を記されてるぞトモダチ。周りの人たちは納得してるぞトモダチ。そっちのツッコミはなしでいいのかトモダチ。
 記されている情報の少なさに不満や疑問を持った人が多いのか、ざわざわといくつもの囁きが交差する。
「コホン……っと」
 一人の咳払いによって、騒音となりつつあったざわめきが沈められた。
 生徒会室の開け放されたドアに背を預け、ヒラヒラと手を振っているのは――伊里嶋先輩。
「今日指示されて、即活動開始〜……ってのはつらいかなっと思って。
今日は劇の題名と話の流れだけ掴んどいてくれれば良いよ。渡したのは仮どころじゃないただのネタだし」
 普通に変なことを言うのが伊里嶋先輩だ。
 トモダチがおそるおそる挙手する。
「つまり……もう帰ってもいいってことですか?」
 伊里嶋先輩はにっこりと微笑んだ。
「そういうことだね」
 トモダチはプルプルと震えて、絶叫する。
「よっしゃ! 帰るよ帰っちゃうよ!」
 リーダーぶってたというのに帰る気満々のトモダチが、伊里嶋先輩の隣を横切ってそそくさと生徒会室をでようとした。
 そのとき、バンッと机を叩いて立ち上がる者が。
 その振動が机に置いていた肘に伝わり、僕は少しだけビビる。
 ゆっくりと首を回し、視線を集めてしまっているその人を見た。
「……聞きたいことが、あるんですけど」
 小夜歌さんだった。
 いつもの感じと違って、真剣すぎる表情。
 僕にとっては意味もなく恐いと感じてしまう部類の空気が漂い始めた。
「……なにかな?」
 伊里嶋先輩は表情を変えず、そう訊ね返す。
 小夜歌さんは若干前へと流れた髪を手で払い、低い声で言った。
「この役設定……確定じゃ、ないんですか?」
「まあ、ね。明日には役がどれだけ必要かとか決まるだろうし、それからジャンケンか推薦ってことでいいでしょ?」
 妥当だろうと、僕は思うんだけど。
 表情を和らげない小夜歌さんは、納得がいかないようだ。
 小夜歌さんが何かを言うために、息を吸う。
 その時間がとても長いもののように思えて、仕方がなかった。
 動悸が早い。なぜだかはわからないけど、つらくなるほどに早い。
 小夜歌さんはゆっくりと、何かを押し殺すように、言った。
「今、立候補してもいいでしょうか……?」
 僕は弾かれるようにして伊里嶋先輩へと顔を向ける。
 伊里嶋先輩は小夜歌さんの鋭い視線を受けてか、困った風に肩を竦ませた。
「僕は生徒会役員でもないからなんともいえないけど、決めるのは会長でもあり、みんなでもあるからね。
今日何かをするつもりはなかったけど、立候補に対して賛成を募るくらいならすぐ済むだろうし……何より君は、『まだ役の数も決まってないのに立候補も何もないでしょ、一日待ってください』なんて言葉は聞いてくれそうにないからね。
いいよ。それで――何の役がしたいの?」
 伊里嶋先輩の瞳に宿る光は、何かを楽しんでいる光だった。
 小夜歌さんはそれを覚ってか、目を僅かに細める。
「……主役、です」
 同時に、BGMのようなざわめきが起こった。
 疑問や驚きの声が多い。
 伊里嶋先輩は顎に手を当てて、僕ら外野の者へと目を向けた。
「どうだろう? みんなは、天城さんが主役でいいかな?」
 今一度静まり返る外野。
 僕はゆっくりと、手をあげた。
 ぞろぞろと続く挙手。
 いつしかその数は、この場にいる人数に優るとも劣らないほどとなって。
「うむ。それじゃ――会長に言っておくよ」
 伊里嶋先輩はあっけらかんとした風にそう言って、呆然としているトモダチより先に外へとでた。
 それから少しして、終わったということをみんなが悟る。
 僕は立ち止まったまま、遠くなるざわめきを耳で受けていた。
 座ったままな僕と、立ったままな小夜歌さん。
 小夜歌さんは僕へと振り向いた。
 目がらんらんと輝いたのをみて、心の警笛が鳴り響く。
 僕は腰をあげ――ようとした。
「やったよぉ♪」
 それよりもはやく机を飛び越して抱きついてきた小夜歌さん。
 素晴らしい跳躍力。勢いもそれ相応にあるのだということを、身をもって実感した。
 床を背に、ぼおっと天井を見つめる。
「これで計画が……ムフフフフ」
 小夜歌さんが少し恐かったり、する。
 また何か考えてるんだろうなぁと思った僕は、なぜか微笑んでいた。
「何を考えてるんですか?」
 思わず訊ねている。
 小夜歌さんの答えは大体予想できた。
「ん〜…………ひ・み・つ♪」
 意地悪な笑みを浮かべて、そう言い切る小夜歌さん。
 僕しか見れない小夜歌さん。
 それが、とても嬉しくて。
「そうですか」
 自然と頬が緩んで、微笑んでしまうことを、止められなかった。
 幸せだ。
 少しバカっぽいけど、甘すぎるけど、幸せなことに変わりない。
 もうすこしくらいならいちゃついてもいいかな――なんて考える僕は、小夜歌さんのことで頭いっぱいなんだろう。


 そう・・周りを見る余裕なんて・・・・・・・・・・なかったんだ・・・・・・


 夜。
 ぼおっとテレビを眺める僕と祐。
 テレビの内容が頭に入ってこない。僕は寝ようと決心して立ち上がろうとした。
「……ねぇ」
 祐が声をかけてきた。
 腰をもう一度ソファーへと沈ませ、振り向く。
「何?」
 祐はテレビをじいっと見たまま、暗黙した。
 気のせいだったか、と思う。
 そんなことはない、と思った。
 祐はきっと何か大切なことを真剣に言おうとしてて、それが言えないでいる。
 僕はじっと、待ち続けることにした。
「……あのさ」
 思ったよりもはやく、祐は消え入りそうな声で訊ねてくる。
「愁は……天城さんのこと、好き?」
 唐突だった。
 ちょっかいかけられてると普段では思ってしまうけど、祐の横顔から感じる何かがそう思わせない。
 僕は目を閉じ、開き、言った。
「……好きだよ。多分、誰よりも」
「………………そっか」
 ゆっくりと立ち上がった祐。
 おぼつかない足取りで、リビングから去った。
 それを追おうとして、やめる。
 ついていっちゃいけない。そんな気が、したんだ。
 僕はもうすこしだけテレビを眺めて、祐と同じ道を歩いて、自室へともどる。
 眠れそうになかった。

      ○  ○  ○

 親がいなくなった。
 お兄ちゃんが泣いていた。
 お父さんとお母さんはどこにいったのと聞いた。
 お兄ちゃんは答えなかった。
 お兄ちゃんはいつも私より泣き虫で、将来はおんなのしりにしかれると思ってた。
 お兄ちゃんはまだ泣いていた。
 お腹が空いた。
 ぐぅぐぅ鳴りそうだった。お兄ちゃんもきっとお腹が空いたんだろう。
 だから泣いてるんだと思って、いっぱいいっぱいご飯を作ろうと思った。
 お母さんに教えてもらったことは少ないけど、おりょうりの番組は見たことがある。
 おいしいご飯を食べれば、きっとお兄ちゃんはまた笑ってくれる。
 だって僕は、お兄ちゃんの笑顔が大好きだから。


 お兄ちゃんはちっとも泣き止まない。
 どうしてだろう、おいしくなかったのかな。
 わんわん泣いてはいないけど、まだ泣いていた。
 お兄ちゃんは泣き虫だ。僕が助けてあげないと。
 お兄ちゃんを笑顔にするためには何が足りないんだろう。
 いっぱい考えた。そしたら、おじさんとおばさんが家にやってきた。
 今度こそ答えてもらえる、そう思って僕はお兄ちゃんに聞いたことと同じことを聞いた。
 そしたらおじさんとおばさんは僕が悪いことをしたときのお父さんとお母さんみたいな顔になった。
 僕の肩をぎゅっと掴んだおじさんは、遠いところにいったんだよって教えてくれた。
 ――痛かった。
 遠いところってどこだろう。
 ――痛くて仕方が無かった。
 どれだけ大人になったらいけるのかな。
 ――痛くて痛くて。
 僕にはいけないところなんだろうか。
 ――痛くて痛くて痛くて。
 それならしょうがない。
 ――イタクテイタクテイタクテイタクテイタクテイタクテイタクテイタクテイタクテイタクテイタクテイタクテ。
 僕がしっかりして、お兄ちゃんを支えないといけないんだ。
 お兄ちゃんの笑顔が、とても見たかった。
 おりょうりはうまくいかなかった。どうすればいいんだろう。
 お母さんのように、お兄ちゃんを支えたいな。
 女の子じゃないからだめなんだろうか。
 男の子は支えるんじゃなくて、支えられるんだろうか。
 困った。それじゃ、お兄ちゃんを支えられない。
 ――まだ痛かった。
 お兄ちゃんを支えるためには、女の子にならなくちゃいけないんだ。
 ――痛いのは肩じゃなくて。
 仕方ない。
 ――胸の中にある何かだったけど。
 は、になろう。
 ――お兄ちゃんの微笑みを思い出せば。
 そうすれば支えられる。
 ――痛みは安らいで。
 でもおりょうりはもっとうまくならないと。
 ――つらい何かを見なくてすむ。
 お兄ちゃんの笑顔が、見たいから。
 ――いつの間にか。
 おじさんもおばさんも・・・・・・・・・・いらない・・・・
 ――頬には。
 私がお兄ちゃんを・・・・・・・・微笑ませるんだ・・・・・・・
 ――涙が流れていた。

      ○  ○  ○

 長い髪。
 伸ばし始めたのは、いつからだっけ。
 あの頃は女の子と男の子の区別がつかないくらいだったから、いろいろと簡単だった。
 一番最初に来たのは、男性器から。
 女性と男性の違いで最も特徴的なもの。女の子には不必要なもの。
 今でも見るたびに、自分が男の子だと自覚して変になる・・・・
 その次は足だった。その次は腕だった。その次は口の周りだった。最期は骨格だった。
 女の子でいるために・・・・・・・・・いろいろいじくった・・・・・・・・・っけ・・
 男の子になると、お兄ちゃんを支えられなくなるから。
 何か嫌なものを見ちゃ・・・・・・・・・・うから・・・
 だから女の子になったんだ。大変だったけど、やっと望んだ今がやってきたんだ。
 完璧を在り続けさせなくちゃいけないんだ。何があっても・・・・・・
 私がずっとお兄ちゃんを笑わせて、私がずっと傍に居るんだ。
 あのときと同じように、私の頬には――涙が流れていた。
 そして、ふと気づく。

 アノトキッテイツノコ・・・・・・・・・・トダロウ・・・・

      ○  ○  ○

 ようやくだ。
 ようやく、すべてが壊れ始めた・・・・・・・・・
 涙はいくつ流れるのだろうか。いくつ彼の夢が壊れるのだろうか。何人の人が崩壊するのだろうか。
 絶望、絶望、絶望――思わず口元が歪む。
 僕は彼とは違う。彼は確かに完璧だった。ただそれは自分という個体を登場させないという誤算を含んでいただけ。
「僕こそが完璧だ……」
 自分すらも計算に入れられる機械マシン
 今度こそ子供の頃から空虚に蝕まれていた心が満たされる。
 計算しつくした。どんな事象も、誤差で収まる。
 いろんなものが見れるだろう。本当にいろんなものが。
 結果なんてどうでもいい。何かがなければ、いけないんだ。
「しっかり踊らされてくれよ……僕の大好きな、愁」
 彼の笑みは人を巻き込む。
 だけど僕は変わらなかった。
 微笑みとはニセモノ。人の真実とは、もっと違うもののはずだ。
「みせてくれよ……君達の本当を」
 僕も動かなくちゃならない。
 結果も、もしかしたら待ち遠しいかもしれないな。
 彼の微笑みがどのように崩れ、壊れるのか――
 そんなことを考える自分は、一番自分らしかった。

 タノシミデタマラナイ・・・・・・・・・・

      ○  ○  ○

 月は、何も知らぬが故に淡く輝き続けていた――
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