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結構短いです。
これからもよろしくおねがいします。
♯04[小さなでしゃばり]
「はぁ……」
 私はため息を吐いた。
 でも、息を潜めているからまわりには聞こえないとおもう。
 まわりを気にしなくても、今は自分の部屋だし……
 それでも声を潜めるのが私の悪いところ。
「はぁ……」
 またため息をだしてしまう。
 考えるのは彼ばかり。
 彼は私に話しかけてくれた。
 彼は私に微笑みかけてくれた。
 私は――


『お前なんか無能者――』


 私は頭を抑えた。
 こんなことを思い出す私はバカ。
 今はなにもないというのに。
 今は何もされていないというのに。
 ただただ突き刺さったままの棘は、私に食い込んでくる。

『微笑まれる価値なんてない――』

 嘘。嘘嘘嘘ウソウソ……
 私は彼をそんなもので汚したくなくて。
 でも汚れるのは私の記憶のなかの彼だけで。
 本当の彼は汚れなくて。
 でも――嫌だ。

『遊んでくれるって言ってたのに……みんなウソツキ……』

 今更、こんなものを思い出す私。
 今更、こんなものを引きずる私。
 でも、これはやっぱり私のなかでは大きなもので、私の中から消えなくて――
 ただ、ただただ彼が汚れないことを願いました。




CROSS!〜物語は交差する〜♯04[小さなでしゃばり]




「ふぅ……暇だなぁ……」
 俺はぼ〜っとした心とともに、ただぼ〜っと窓のそとをみた。
 授業は進んではいるが、興味がわかない。
 というか、授業に興味をもてるようになるのなら、それは俺が俺でなくなるということではないだろうか。
 −−そして昼食のことを考えてしまう。
 気が早い。
 そう思うが、とりあえず学食のメニューが浮かんだ。
 そして、ふと前にした約束を思い出す。
 口約束なので、向こうも忘れているかもしれない。
 そう思いながら瑞樹をみる。
 瑞樹が一人で食事――雰囲気はある。
 もしかしたら、家でも一人なのかもしれない。
「そんなわけはないか」
 俺のところの事情ならともかく、あの神社経営を一人では無理というものだ。
 まあ、アルバイトという可能性もあるが、それは置いておこう。
「だが、神社のほうが忙しくて食事が――という可能性も」
 そう考えると、あの昼食同行の約束も大きなものになっているかもしれない。
 ――うぅむ。忘れていたことは伏せて、今日あたり誘ってみるか。
 そのとき、都合がいいことにチャイムが鳴り響いた。
「……さて、じゃあ今日はここまで。
そろそろ復習はじめなよー」
 先生はそういって、教室をでていった。
 席の生徒ほとんどが立ち、それぞれに会話や移動をはじめていく。
 俺はすぐさま瑞樹に駆け寄り、肩を叩いた。
 ビクッと震え、恐る恐る振り返ってくる。
 そして、ほっと胸を撫で下ろしたようだ。
「えっと……邪魔したか?」
「あ、いえ!! そんなことないです!!」
 瑞樹は全力否定してくる。
 とりあえず安心。
「でさ……まえに約束したことなんだけど、今日でいいか?」
「え? −−あ、はい」
 瑞樹はおぼえていたようだ。
 忘れていた俺が恥ずかしい。
 そのとき、瑞樹がキョトンとした目で俺をみていた。
「――どした?」
 まさか俺の背後に幽霊が――
 んなわけないだろうな。
「約束覚えていてくれてたなんて……うれしいです」
 瑞樹は僅かに微笑む。
 まあ口約束だし、忘れやすいのかもしれない。
「ってことで、昼食いっしょでいいのか?」
「はい。不束者ですがよろしくおねがいします」
 そういってペコリとお辞儀する瑞樹は、はっきり言って抱きしめたくなるかわいさだ。
 俺は自然に崩れそうな顔を引き締め、席にもどる。
 そのまま頬杖をつくが、今はスケジュールありなので、年に関係なくわくわくとした心の高ぶりをおぼえる。
 そして、睡眠学習へと身を転じたのだった……




「ふわぁ……」
 俺は唐突に夢から覚め、チャイムに紛れて欠伸をした。

 俺はそのとき瑞樹と昼飯を食うつもりだったことを思い出し、あたりに目を走らせ――
「……お目覚めになりましたか?」
「ぬわぁっ!?」
 俺は飛び上がる。
 そして振り返ると、イスの背で俺と同じく驚いた顔の瑞樹がいた。
「……まったく、うしろからいきなり声かけるなよな……」
「す……すみません」
 子犬のように縮こまった瑞樹の額をコツンと叩いてやる。
「驚かされたお返しだ」
「え……?」
 瑞樹はキョトンと額に触れた。
 俺はその様子にニヤリと笑うと、瑞樹の手を引いて歩き始めた。
「ほら、いくぞ。はやくいかないと飯が逃げる!」
「は……はい?」
 瑞樹は首をかしげながらも必死についてくる。
 俺の中ではとびっきりの昼食メニューが浮かび、ひそかに笑みをもらしていた。

      ○  ○  ○

「よし、準備はいいか……」
「は、はい……でも……恐いです……それに大きくて長いです……」
「大丈夫だ。俺を信じろ、な?」
「………………はい」
 そういって瑞樹は頷いた。
 俺はゴクリと唾を飲んだ。
「……いくぞ」
 そして、俺は獣となった。


 ――超特大の横長カツドッグサンドにだ。
「もぐもぐ……うめぇ……」
「おいしいです……でも大きいです……」
 瑞樹はそういいながら超特大横長カツドッグサンドを両手でなんとか持ち、もぐもぐと食べている。
 俺はサンドにかぶりつき、その長さを小さくしておく。
「大きいからこそうまいんじゃないか」
 俺はそういって大げさに笑ってやる。
 瑞樹は複雑そうにしながらも、もぐもぐと食べていく。
 ちなみにソッチ系を考えた人はそろそろ正義を語れないだろう。
 三大欲求は間違いなく食欲、睡眠欲と……なんだったかな。
 浮かんだには浮かんだがその欲を言ってしまっては正義を語れなくなるのでやめておこう。
 瑞樹へと目を移し、癇に触れた。
 瑞樹はちびちびと食べているようだが、十分の一では減るとはいわない。いや、言わせない。
 俺は高らかに、おとこらしく、瑞樹へと教え諭す。
「いいか瑞樹? このサンドは豪快に食べるものだ」
「え……でも……」
 そういって瑞樹は目を伏せた。
 むぅ、漢らしくない。いや、それ以前に漢でも男でもないか。
 そんな都合の悪いことは棚の上にあげ、俺は瑞樹のまえで豪快の言葉が似合うかぶりつきをしてみせた。
 うむ、うまい。
「ほら、うまいぞ?」
「………………」
 瑞樹は目をつぶり、頬を赤く染め、瑞樹にしては大きく口を開けてサンドを食べた。
 あくまでもかぶりついたには程遠い。
「どうだ? うまいだろう?」
「………………はい」
 瑞樹は少し慣れたのか、先ほどより少しスピードを早くして食べ始めた。
 俺は何度か頷き、がぶりとサンドに喰らいつく。
 肉の旨味が広がり、パンと肉の食感が絶妙なうまさをつくり出す。
 カツに塗りたくられたソースが大胆な第一味覚を与えてくるのも又良い。
 ふと、瑞樹が俺をみていることがわかった。
 俺はその視線い合わせてみる。
 瑞樹は顔を真っ赤にして逸らしてくる。
 追求したいが、可愛い顔をみせてもらったのでやめておこう。
 瑞樹はちらちらと俺をみてはうつむき加減でサンドを食べている。
「そういえば、そろそろテストだとかいってたな」
 俺はそう切り出した。
 瑞樹はおずおずと相槌を打つ。
「そうですね………………ページ数からして今週あたりからはじめておくと、後半に余裕ができますから」
「へぇ」
 俺は常にテスト前日や前々日にしかやらないからか、そのあたりはわからない。
 ほとんど徹夜だから、テストってニガテなんだよな………………
「普段からやっているとテスト前のリスクが少なくなるのできらいになることも少ないですし、
テスト前の週は全般的な見直しだけで済みますから」
 瑞樹はサンドの存在も忘れ、今までの雰囲気を他所にぺらぺらとしゃべりはじめた。
 歴史は普段からわからない単語を調べておいてテスト前に問題プリントをやるといいですよーとか、俺にはきっとできないであろうことを流暢に語る瑞樹は笑みを浮かべていた。
 俺は話を止めない程度に相槌をうち、瑞樹の笑みを鑑賞する。
 瑞樹は勉強の話題だと口が軽い。そう脳裏にメモっておいた。
 だが俺とは話題合わないな……奈々織とかが合うか?
「ということでやっぱり睡眠時間を減らすことはいろいろとリスクがあるのでオススメできません。
短時間でやるのはやっぱり単語帳とかですのでそれをコツコツと……」
 それにしても、瑞樹がひまわりのように開花し始めてきた。
 笑みが絶えないぞ、これは予想外。
 俺の中の瑞樹印象レポートを書き直さなくてはいけないかも知れない。
 まあそんなもの存在しないが……
「と、こんな感じです」
 瑞樹は一息ついたようで、にこっと微笑みかけてきた。
 俺はその微笑みを見つめる。
 すると、瑞樹は明から暗に変わるように、表情をなくしていった。
「すみません……でしゃばってしまって……」
 今にも消えそうな声で一人呟くようにいう。
 俺は複雑な顔でうなるしかない。
 それすらも瑞樹は敏感に反応してビクビクと震える。
「瑞樹さ……どうして恐がるんだ?」
 俺は単刀直入に聞いてみる。
 こういうのはオブラートに包んでも伝わることは同じなものだ。
「その……小学生のときにいろいろありまして……」
 瑞樹は言いづらそうに目をそらした。
 それは言いたくないというより、思い出したくないといった感じだ。
「そうか――」
 俺はそういって瑞樹の髪にぽんっと触れる。
 そして撫でるようにした。
「言わなくていい」
 俺はそう言う。
 瑞樹は髪をなでられることで頬を赤く染めるが、軽く怯えた感じで首をかしげていた。
 それは元々なので気にすることはないだろう。
 言葉を繋げる
「言いたいことがあったら言ってくれ――俺はお前の友達のつもりだから。」
 しばしの静寂。
 きょとんと目を瞬き、だんだんと今の言葉が染み込んで言ったらしい瑞樹が口をパクパクさせて、カクカクと頭を下げた。
「……不束者ですがよろしくおねがいします……」
 俺は躊躇ためらうように心の中だけで頭を抱える。
 健気だ。謙虚だ。今時では希少動物以上に希少な部類の女の子だ。
 上目遣いにもグッと来るものがある。そんな個人的感情、いや、個人的感動はおいといてもいいだろう。
 切り替える。そして言う。
「ああ、よろしく」
 かすかに、瑞樹との距離がせまくなったのだろうかなどと思ってしまうが、あまり近くなっていない気もする。
 瑞樹にとってはどうなのだろうか。
「ほら、さっさと食え。時間なくなるぞ」
「……は、はい!」
 小さく、それでも少し感情の込められた返事は、すこし明るく感じられた。




「……♪」
 私はそっとベッドに倒れこむ。
 今日はうれしくてたまらない。
 朝の感じはわるかったけど、お昼はいいことがあった。
 そう、とてもいいこと。
 人とご飯を食べれたのだ。
 父親以外の人と――
 何日ぶり、何ヶ月ぶりだろうと、自然に顔を緩めてしまう。
 それよりも嬉しかったことがある。
「約束……おぼえていてくれた」
 昔とは違うということをはっきりさせてくれた、約束をまもってくれたということ。
 それがとてもとても嬉しい。
「それに――」
 私を友達にしてくれた。
 私なんかが友達になっていいのか。そう思っていた。
 でも、彼はいってくれた。
 友達のつもりだと――私がただ不安がっているだけなんだと、わからされてしまう。
 だから、私は素直になろうと、勇気をだそうと決めた。
 友達になる――そういうでしゃばり。
 心がうきうきとして、動かないでいることがもどかしく感じる。
 いっしょにご飯を食べれたこともうれしかった。
 こんなにもご飯がおいしく感じられたのははじめてかもしれない。
 だから――本人に伝えられなかったとしても言おう。
 今此処で、これからの自分のために。
「私を友達にしてくれて――私の友達になってくれて――」
 その続きは若干掠れてしまったけど。
 心の中では、耳鳴りのように響いているその言葉。
 私はすこし、変われた気がする。
 それは小さな変化だけど、きっと大きなものになる気がする。
 友達。
 そんな言葉を口にする機会をつくってくれたあのひとに感謝を。
 そして、これからあるであろう心のうきうきすることに、それをくれるあの人に感謝を――






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