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『文芸部会議〜部内方向意味深視線照射状態女子への勘繰り対抗策開始〜』
『文芸部会議〜部内方向意味深視線照射状態女子への勘繰り対抗策開始〜』


 それは唐突にはじまった。
 片瀬愁と正樹のじゃれあう様子を眺める女子の目が遠くなったのも、御劉と輝弥が並んで街中を散歩しているの見た女子が激しく過敏なまでにテンションを上げることも、予兆に過ぎない。
 あるひとつの冊子が存在した。
 それは御劉や輝弥をもってしても索敵されていなかった腐れ物。
 その一部を繰り広げてみようか。

      ○  ○  ○

 ………………。
 …………。
 ……。

      ○  ○  ○

 何物かに阻害されたようだ。
 これはある意味、四人の邪念や怨念が作用したのだろう。
 影響外の元主人公、元ハーレムの三井祐夜は自らの幸福を痛感していた。
 そのまま、欝の内にある四人へ励ましの言葉を送る。
「いやまあさ……よく描けてるじゃんか、裸体の絡み合い」
「てめぇコラケンカ売ってんのか元ハーレム野郎」
「買ってやろうじゃんか」
 約二名が反応を返した。御劉と輝弥だった。至極興奮状態ではあったが、それは三井祐夜の発言自体が悪いのだろう。
 苦笑いを浮かべた三井祐夜は言葉を続ける。
「ま、まあさ。それだけ人気っていうか、薔薇の似合う男っていうかさ。
男の絡みに使われるって案外凄いことなのかもよ?」
「何を言っている、同士三井……アンパンマンがアンパンを嫌いになるくらいくだらないぞ」
 どれくらいなのかは未知数だ。
 三井祐夜以外の三人がうんうんと頷いているところを見て、少し距離と次元の違いを感じた元ハーレムは置いておくとして。
 四人の足元には、闇の中の禁断を記した堕ちし書物。
 そこには、正樹と片瀬愁の絡みや御劉と輝弥のぶっちゃけ交尾としかいえないものが漫画となって何ページも何ページも何ページも……
「ってか、コレどうしたの?」
「真紀恵から奪った」
「友達って選んだほうがいいのかと痛感したよ」
「俺は恋人を選び間違えたと痛感した」
 妙なところで三井祐夜と御劉が共感していた。
 真紀恵のガードの低さはなんだろうなどと考えるものはいない。奪い手が御劉だから、納得できる。
 ちなみに、輝弥は春花にいろんな意味で敷かれているので少し弱くなった。
 三井祐夜の場合。取るなんて行動をしたりしない二竜以下の常識人とのことですでに視野外へ放り投げられているといっていい。
 といっても女性陣しか三井祐夜の壊れを知らないからだろうが。そこはさまーすもーるすとーりーを参照してほしい。
「ということで、だ。
我々には、この偽りを正す必要性と憤怒を彼の罪人に叩きつける義務があるとは思わないか……? 否、あるのだよ!
我々が動かなくて誰が動く! さあ諸君。私が『ある日ある時真紀恵を見つけてちょうど高性能超小型盗聴器と高性能広範囲超小型発信機を持っていたりしてポイッと投げてみたら偶然にも真紀恵のスカートの裏側に定着したりして同じく偶然持っていた受信機二つで首謀者とそのアジトを偶然にも見つけてしまった』わけなのでさっさと突撃しようではないか!」
 そんな偶然はない。


「というわけで……だ」
 『生徒会室〜立ち入り禁止〜』と張り紙のされた洞窟に来ていた。
 生徒会室のはずがない、明らかに怪しいと断言できる。
 張り紙の書き主は相当のアホだろう。
 四人は氷山の一角に対して漫才していては埒が開かないと気づき、足を進める。
 すぐに、有刺鉄線の茨によって道を塞がれた。
「ペンチで切り取れるかな……」
 といいつつ有刺鉄線へと手を伸ばした三井祐夜。
 その指が有刺鉄線の、棘と棘の合間へと触れ――
「ぐあああぁああぁぁああぁぁああぁぁ!!」
 ライトニングボルトが三井祐夜を駆け巡った。

 ドサッ←倒れる音

 そして、三井祐夜は静かに息を引き取っ……
「爆竹イリュゥゥゥゥゥゥゥジョンッ!!」
 爆竹とは思えない爆発が有刺鉄線をなぎ払う。
 あえていおう、三井祐夜はゴミにされたと。
 砂煙が舞う中、埃まみれで立ち上がった三井祐夜は額に青筋をピクピクと浮かせて投爆竹者の御劉を睨む。
「御劉……お前の、親友に対する行動がコレなのか? コレでいいと思ってるのか?」
「ばっちぐー」
「……良い根性してるじゃねぇか」
 爽やかな笑みとともに親指を上げた御劉。
 三井祐夜は真剣に友人関係について思考するべきだとしみじみと実感した。
 障害の消えた道を、輝弥が先頭となって進む。
 三井祐夜はとぼとぼとそれに続いた。
 有刺鉄線以外の罠はなく、道なみに進んだ五人は……
「怪しい」と片瀬愁。
「怪しすぎる」と正樹。
「ってか、妖しい」と御劉。
「というか馬鹿っぽいね」と輝弥。
「……御劉、輝弥。ちょっとキツくないか? こんな馬鹿みたいな扉があってもいいじゃんか。洞窟なんだし」と三井祐夜。
 洞窟であっても、いきなり板の壁になったりはしない。
 壁の一部、【生徒会長室♪】と記された扉のノブに、ゴム手袋装着の手で触れた輝弥。
 ゆっくりと回す。
 ………………。
 …………。
 ……。
 回しきった時、扉が発火した。
 即座に御劉が前へと出る。
「消火器イリュゥゥゥゥゥゥゥゥジョンッ!!」
 学生服の袖から突き出たストロー。
 そこから、人一人殺せちゃう勢いをもった白き濁流が放たれた。
 火は一瞬にして消される。
 正樹は真剣な表情で呟いた。
「生徒会長室以外の部屋なんて見かけた……?」
 言葉を返せる者はいない。
 白い煙が周囲へと霧散し、灰と化したドアの残骸の転がる先には――
「あ、美姫ちゃん。ここの性器はもうちょっと黒光りさせといて♪」
「黒光りって……どれくらいの配色かわからないんですけど」
「もう。本物見たら一目瞭然なのになぁ♪」
「せ、先輩。わ、わわわわわ、私にそんなことぉ!?」
「うんうんわかってるって。美姫ちゃんは百合が好きなんだよね♪」
「わかってないと思いますよ……というか私、なんでこんな薔薇作品執筆を手伝ってるんでしょう?」
「気にしちゃだめよ♪」
「そうですね♪」
 鷺澤という天使が、美乃宮という悪魔に絡め取られている場景が広がっていた。
 輝弥はちょっと泣きそうになった。三井祐夜は壁へと頭を打ち付けたくなった。
 机に紙を広げ、言葉を交わしながらペンを走らせている美姫と春花とその他生徒会員。
 主に女子。すべて女子。目を若干血走らせて興奮している女子。
 その中の一人、真紀恵が五人を見つけてあっと声をあげた。
 美姫と美乃宮も気づき、手を止めて近寄ってくる。
「やっぱり御劉君と輝弥君が兄弟だった。っていうオチのほうが人気でると思うよね?」
 美乃宮は平常心満点で、裏発行物の空想設定相談を、普通は隠しておくべき相手に言っていた。
 というか、すでに暴走列車は臨界点に達しているように思えてならない。
「ごめんね……乙女の妄想が止らなくって、こんなことになっちゃった♪」
 それで済めば警察はいらないだろう。いや、人権保障が無意味となる。
 言い出したのが本編で一度しか登場していない愛姫先生だったからか、片瀬愁脳内ランキングでの順位が極端に下がったのはいうまでもない。
 五人は予想外の待遇に少し複雑な感情を抱く。
 鷺澤と三井祐夜が。美乃宮と輝弥が。真紀恵と御劉がそれぞれ対峙した。
 ちょっとした修羅場だろう。
 真紀恵は恐る恐る口を開いた。
「あの……誓兎、くん」
「言いたいことはわかってる。弁解してくれようと――」
「輝弥くんとは、その、どう?」
「たまに君のことがわからなくなる。これは夢ってことでいいかな?」
 御劉は現実を捨てたくなっていた。
 第二波。
 鷺澤が口を開く。
 三井祐夜は第一波を思って力強く身構えた。
「え、ええとね、弟君……」
「……何?」
「そ、その、わ、わわ、私は……弟君が双頭で鬼畜で両刀使いで貪欲で性欲の虜で可哀想な青春の人だったとしても気にしないからねっ?」
「可哀想なのはお前だ」
 三井祐夜という存在に現実と虚構が入り混じっていた。どちらかといえば現実という枠に妄想が詰め込まれていた。つまりこの五人は勘違いされていた。
 絡みに出演してはいなかったがやっぱりそういう物はあるのかと欝な三井祐夜。
 小説には著作権があり、無断で再配布・転載する事は著作権法で禁じられていたりするが、人権及び友人関係の二次創作、もとい裏設定付での創作も禁じたほうがいいのではないかと思った片瀬愁に、一人の女の子が近づいてくる。
 血走った瞳を爛々と輝かせて。
「あ、あの……ひとつ聞いてもいい?」
「……なんですか?」
 片瀬愁は少しガンを飛ばしながら相槌を打った。
 女の子はもじもじとしながらも、まくしたてる。
「ほんとに君と正樹くんは……その……夜な夜なお互いを擦りあうようなな――」
「御劉部長! もう帰りましょう。っていうか帰りたいです」
 長くい続けるとそれこそ洗脳されそうだ。
 女性陣の熱気、というか妄想と暴走、略して妄走はとどまることを知らないだろう。
 というか、正樹はすでに退散していた。
 人気度を考えて推察する。迫ってきた鬼が多かった故の仕方なき逃走だろう。
 御劉は決断する。
「……離脱する」
 苦渋に満ちた台詞だったが、言った本人すらも少し安堵していた。

      ○  ○  ○

 五人はひとつの丸テーブルを囲んでいた。
 多分こういう風に集まっているから嫌な妄想をされてしまうんだろうが、本人たちは至って普通だ。
 五人のうち四人はへこんだままで、溜息を何度も何度も吐いている。
 それはリストラされた後も妻には会社に行くと言い続けて公園のベンチで暇を潰している元サラリーマンのよう。
 つまり、残り一人が出世組ということだ。
「……そろそろだな」
 たった一人さっぱり澄ました顔をしている御劉が、ミックスジュースを片手に呟く。
 その意図を、四人は知らない。
 ………………。
 …………。
 ……。
 そのとき、どこかからか爆発の轟音が響き渡った。
 煙がドクロのように上がるその場所は、洞窟があった場所だなぁと思う四人。
 そして悟る。御劉がどさくさにまぎれて何か細工したんだなぁと。
 誰も咎めはしない。御劉を恐れもしない。ただ賞賛の言葉を思い浮かべるだけ。
 彼女等が創作していた書物の生む負の感情が、男たちを勝利へと導いたのだ。




 ちなみに。
 事の発端ほったんは二竜が女性陣の癇に障る、もとい男性陣の青春をときめかせる百合書物を裏で作成したからなのだが、知らぬが仏というものだろう。
 後日、復讐と名目打って堂々と百合作品を創作した二竜が女性陣に叩かれ、その女性陣もまた復讐に薔薇作品を創作しまた二竜が【その他三名】を引き連れて破壊工作をし、その復讐にまたまた百合作品を……という無限ループを知った【その他三名】
 彼らこそが一番の被害者だろう。



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