『文芸部会議〜マイクロスカートとミディススカートとマキシススカートについて〜』
『文芸部会議〜マイクロスカートとミディススカートとマキシススカートについて〜』
「片瀬愁………スカートは何のためにあると思うかね?」
「………えっ、ファンションじゃないかな?」
「めくるためにあるんだよ」
「その通りだ輝弥よ」
「先輩たちの思考絶対おかしいよ」
片瀬愁は頭を抱えた。
凡人VS変人×2の戦いは無謀すぎるということはわかりきっている。
援軍はいない。というか『またか……』という溜息とともに世界が隔離されている。
文芸部部室。世界を大いに盛り上げるスルメイカの団とはまったく無関係であることをここに記す。某涼宮とは一切合切大喝采関係ない。
変人×2と纏めるに惜しい御劉と輝弥は、二竜コンボを嫌な方向で発揮している最中だった。
「いいか? 女子高生の間でミニスカートが流行したのはルーズソックスというダボダボの靴下が流行した頃だ。あの靴下は一見してサンタからプレゼントを大目にもぎ取る、つーかかつアゲために考案されたものかと思われたが実は違った。あれは……悪を正義とする礎だったのだよ!!」
長文言い切りに呼吸数は1.さすが御劉。
「女子高生をターゲットにした戦略は馬鹿受けし、一斉にルーズソックスは一世を風靡。ルーズソックスの大きさにあわせるためにスカートは段々と領土を奪われ、ついにはフトモモにまで到達してしまった。ということなんだよ愁くん」
嘆かわしい、などということをハイテンションなモーション付で表した輝弥。
御劉は拳を上げ、叫んだ。
「ミニスカートというものはね。間違っているのだよ。
我々男子らは悪戯に欲望を刺激されているだけなのだよ。
そこに愛があるのかね。そこらにいる売春婦に魅せられているに等しいのだよ。下半身で生きることほど愚かなことはないだろう。
我々は男子だ。雄ではない。美学を追求する者たちなのだよ!!」
「さすが我が同士御劉!」
「同士輝弥よぉ!」
がっちりと手を握り合う御劉と輝弥。そのもう片手は片瀬愁を罪人かのように束縛している。
「……結局何が言いたいんです? 馬鹿騒ぎならよそでやってくださいよ」
イライラしつつ呟く片瀬愁に、先輩への尊敬はない。誰も咎めはしないだろう。
御劉は輝弥から離れ、ふ〜っと気分を入れ替える。スイッチを替える。机へと腰掛ける。
ちかちかと点灯するサイボーグHO☆TA☆RUを脇に置いた御劉が、静かに語り始めた。
「今日はミニスカートについて論議してみたいと思います。司会は私御劉誓兎です。お集まり頂いた皆様、どうかご静聴の程をお願いいたします。では、始りにあたって質問のある方は挙手してくださいませ」
ひとつの挙手。
手の主は、もう悲しいくらいに哀愁で憂愁な片瀬愁。
「僕の意見は完全無視ですか」
「消えろ、いや消えるな」
御劉は失言をすぐさま撤回するという変な脅しをかけた。
片腕を未だ輝弥に掴まれているからか、逃げようとしている様子はない。
はぁっと溜息をついて片瀬愁は諦めを決心した。
御劉はそれを見届け、語りを再開する。
「風宮学園制服で使用されているスカートの平均はミニとロングの中間にあるミディスカート――ニーロングスカート、膝丈スカートなどと呼ばれるものですが、ぎりぎりでミニスカートと呼べるものでしょう。ここに、真紀恵から奪取した現物を提示させていただきます」
「………………」
犯罪じゃねぇの? と思った片瀬愁は軽くスルーされて。
「今ここに宣言しましょう。世の中こんな短いスカートでは燃えません。いや、萌えません。
長いからいいというもの、長いからめくりがいがあるというもの。尚、ラップスカートやサスペンダースカート、サロペットスカートやジャンパースカートも、膝下または膝上何センチということで判断させていただきます」
○ ● ○
ラップスカート(巻きスカート)は1枚の布を巻き付けてウエストで留めたシンプルな物。
スコットランドのキルトなどもこのカテゴリに入る。
○ ○ ○
サスペンダースカート(吊りスカート)とはウエスト部分に取り付けた左右一対の細紐(吊り紐)で肩から吊り下げるようにしたスカート。
紐は共布で作られ、背中では十文字に交差されるものが多い。
日本では戦前に流行して以来、学校の制服など主に少女服を中心に多く用いられた。
1980年頃から、ファッションの多様化にあわせ、吊りスカートは大人にも着用されるようになり、銀行やデパート、企業の女子職員の制服としても用いられた他、ウエストを締め付けないで着用できるので、動きの多い喫茶店等の制服としても多く用いられた。
近年のめまぐるしい流行の変化により、吊りスカートはすっかり影をひそめ、少女服のカテゴリからも、ほとんど見かけなくなってしまったようだが、ここ数年、新たなデザインの吊りスカートや吊り半ズボンが、若者のファッションとして復活の兆しである。
日本以外の国では、アジア諸国、それにペルー、キューバなど中南米諸国を中心にハイスクールの制服やガールスカウトの制服に多く見られる。
また、ヨーロッパ諸国では、フランスなどの女子校生、いわゆるリセエンヌの制服として存在したほか、スイス、エストニアなどの民族衣装にもその例が見られる。
○ ○ ○
サロペットスカート(胸当てスカート)は胸当ての付いた吊りスカートのことをいう。
普通の吊りスカートとジャンパースカートの中間的な物。
ジーンズで作られたオーバーオールのスカートもサロペットスカートといわれるが、サロペットとは本来は吊り紐が背中で交差された物をいい、現在主流のハイバックタイプはサロペットには分類されなかった。
○ ○ ○
ジャンパースカートは吊りスカートと混同されがちだが、こちらは前後共に身頃の付いた、ワンピース状のスカートのこと。
ジャンパードレスともいう。学校や企業の制服、マタニティドレスとして幅広く用いられている。
ワンピースとも異なるので注意が必要だ。。
○ ● ○
「はい、御劉部長!」
「部長だったんだ……」
「なんだね? 輝弥議長」
「議長だったんだ……」
片瀬愁のツッコミはことごとくスルーされつつ、輝弥が立ち上がり宣言した。
というか御劉以外のこの二人は前述のスカート説明中にイスをせっせと運んでいた。輝弥がにっこり微笑んで指図した。片瀬愁が運んだ。なんという不運な役割だろう。
とにかく、輝弥は叫んだ。
「スコットはどうですか? 見るだけではいろいろと刺激的で、我々にはよろしいと思うのですが?」
「そのことについては少し前で結論づけたはずだ。あえていおう――君は雄であると。
その程度で男子を語る威厳はない!」
「ああ……部長、僕は間違っていたんですね!?」
「よく気づいてくれた、議長よ!!」
「……モウカエラセテ……」
またまた団結に燃える御劉と輝弥の横で呟いた片瀬愁。
そのとき、救世主が立ち上がった。
御劉と輝弥が獣の目つきへと変わる。
「元主人公は帰れ」
「そうだそうだ。ハーレムになれなかったハーレム野郎は帰るべきだよ」
「てめぇら俺の親友だった気がするんだが……なんだその態度は」
「……主役と脇役の違い?」
「ハーレムの抜け殻に興味はない、っていうか?」
「お前等……言いまくりだな」
三井祐夜の憂鬱。
そんな名目が打てそうな場景だと思えた。
依然主導権は二竜の手の内に――
「誓兎……私とスカートとどっちをとるのっ?」
「ぐおぁ!?」
特別部隊、対二竜抑止用天敵女子三名。
真紀恵が先行にて御劉を撃沈した。
片瀬愁は、スカートと自分を比べさせる人がいたことに驚いていた。
決まり文句ではあるが、将来的には食事前に『お箸と私とどっちをとるのっ?』といわれそうで複雑だった。
愛情も裏を返せばただの嫉妬と抑制心だ。
「輝弥君……」
片瀬愁が少し目を移せば、第二波の戦場が見えた。
色ボケだけど所詮は悪魔、風宮学園生徒会副会長、美乃宮春花。
それに対峙するは少し微笑みの仮面が当たって砕かれている輝弥。
「な、何かな……?」
「えっとね、そのぉ……輝弥君がどうしてもって言うんならぁ」
輝弥は若干生命の芽を吹き返した。
だが、悪魔の戯言は甘い事実をしっかりちゃっかり忘れていた。
にっこりと微笑む美乃宮春花。
「すべてを忘れさせてあげるよ♪」
反転。表向きな雰囲気もそうだが、身体も反転した。
伸ばされる脚。射程範囲にいた輝弥はあっけなく叩き伏せられる。
爽戒なんていう言葉が似合いそうな、第二波の惨状。
もう見る価値はないと判断した片瀬愁はさらに目を泳がせた。意外にも黒かった。変な会議に付き合わされた憤怒や憎悪もあるのかもしれないが。
「……弟君。何か言うことはある?」
「え? え? え? 俺も? なんで??」
「……ひどいよね。今になってもまだすっ呆ける気なんだ。お姉ちゃん悲しいな」
「ちょ。あの……なんて罰ゲーム?」
正義は最後の最後でしか幸せになれないようだ。十字を切った片瀬愁。
というか、若干鷺澤先輩はヤンデレだなっと思った片瀬愁であった。
「………………死」
「ハッ!?」
背後の気配。色は黒。というか混沌。
混沌に色があるのかはこの際保留にしておいてほしい。とにかく危機というナイフを首元に押し当てられている片瀬愁。
声の主は千明希。いや、ダーク千明希。カオス千明希でも過言ではない。片瀬愁は己の名前が入る状況に顔を染めた。
「………………死、私、施」
同じ読みであるというのにちゃっかり漢字に分けられていた。それが片瀬愁の感じている恐怖の度合ともいえる。
そのとき、輝弥が片腕を上げた。
「………………しグフェ!?」
「し? 死にたいの? それとも悲愴の詩になりたいのかな? とにかく、一回私物の拷問室でしっかり話を聞かせてもらおうかなぁ?」
そんなものを私物所有している人はきっといない。
説教を受ける三井祐夜。連撃を叩き込まれている輝弥。上目遣いで諭されている御劉。どちらかといえば御劉が一番マシだといえよう。
そして一番ヤヴァイ一位を、輝弥と片瀬愁が競っている。
いえることはひとつ……どちらも地獄なことは変わらない。
「次はスカートの形について……」
「絶対しない」
「同じく」
解放された後。
御劉の言葉に否定を言ったのは、三井と片瀬愁のみ。
輝弥は無反応。それどころか存在自体が部室から消えていた。幻聴的な叫び声が聞こえる気もしなくはない。
女性陣にこっそりとカツアゲされた男性陣は、ただただ呆然と生きていることの幸せを噛み締めていた。
後書
コレ書くためにスカートについて三時間も調べるはめになった。
あえていおう、実力テスト前日であると。
そして問おう。実力テストは実力でやるべきではないかと。
結局は、無駄な抗いでしかないのだ。
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