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俺の周りには厄介な女ばかり 作者:リュミエール
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第12話 ライブの誘い

 俺と小野寺が同棲を始めて一週間が経った。
 楓や柊に同棲のことを話して(問い詰められて)以降、二人の態度が変わった。
 なんと言うか、いつもより当たりがきつくなった気がする。
 いつもはもうちょっと丸かったと言うか、無理矢理俺を呼び出すことはしなかった。
 だが最近は、学校で小野寺と二人でいるとき、無理矢理引き離そうとしているように感じる。
 気のせいかとも思ったが、最近の二人の動きは目に余るものがあるので、昼休みに話をすることにした。
「で?最近の俺と小野寺を引き離すような行動について、詳しく話を聞こうと思うんだけど…」
「えっと…和樹?もしかして、怒ってる?」
「……気のせいだろ?」
 正直言うと、いい気分はしない。
 好きな人との時間を邪魔されれば、誰だってイラッとくる。
「な、ならいいけど…えっと…二人を引き離そうとしていたのは、理由があって…」
 やっぱり引き離そうとしてたのか。
「その理由ってのはなんなんだ?」
「えっと…それは…」
「私が説明しよう!」
 楓が顔を赤くして、答えにくそうにしているところで、柊が前に出る。
「お前はすでに、私と契約を結んでいる…よって、他の女と契約を結ぶことは許さん!」
 ……なに言ってんだこいつ?
「俺は誰とも契約は結んでない。変な設定を加えるな」
「変な設定ではない!これはれっきとした事実で…!」
「で、楓はこいつの妄言に付き合わされたって感じなのか?」
「えっ!?あっ、うん。そんな感じ」
 つまり、今回の発端は…
「お前かぁーーー!」
「ちょっ!痛い!痛いって和樹!」
 俺は柊の頭を二つの拳でぐりぐりした。
「やかましい!人をおちょくりやがって!お仕置きだ!」
「楓!た、助けてくれ!」
「えっと…その…」
 楓は助けようとはしているが、どうすればいいかわからずにオロオロしていた。
 こうして俺の頭ぐりぐり地獄は、昼休み終了のチャイムがなるまで続いた。

 

 小野寺と同棲してからは、二人で登下校をしていた。
 楓たちに問い詰められた理由はこれである。
 端から見ると、俺たちは恋人の雰囲気を醸し出していたと楓は言った。
 だって、仕方ないと思う。
 好きな人と二人きりで登下校は、ちょっとした夢でもあったのだ。
 一緒に登下校して、帰りにちょっと寄り道して楽しいひとときを過ごす。
 健全な男子高校生なら、一度は考えたことがあると、俺は信じてる。
 まあさすがに付き合ってないので、寄り道はせずに真っ直ぐ帰っているが。
 それに最近、学校を休むことが増えてきている。
 ステラとしての活動が忙しいのだろうが、詳しいことは教えてくれなかった。
 そんなことを考えながら、今日も二人で下校しているとき、小野寺が言った。
「あのね?一週間後にライブがあるんだけど、よかったら来てくれないかな?」
「ライブ?でもお前って、顔出しNGじゃ…」
「その辺はちゃんと考慮されてるよ。どんなライブになるかは教えられないけど」
 フム。ステラの初ライブか…
「確かに言ってみたいけど、チケット持ってないぞ?」
「それなら大丈夫!和樹君の分のチケットは確保済みだから!」
「マジで!?」
「マジで!」
 俺は一瞬、ステラのファンに申し訳なく思ったが…
「それじゃあ、絶対行くぞ!」
 誘惑には勝てなかった…
 小野寺の家に帰った後、香織さんからライブのチケットを受け取った。

 

 ライブ前日の夜。
 俺が寝ようと布団に潜ったとき、小野寺が部屋に入ってきた。
「ごめんね…眠れなくて…」
 小野寺はベットに座りながらそう言った。
 どうやら、明日のライブのことで緊張しているようだ。
「いや、俺は構わないさ。俺も明日のことを考えると、眠れなくなっちゃうからな」
「そうなの?」
「ああ。デビューした頃からのファンだからな。初ライブなんて興奮するさ」
 俺の言葉を聞いた小野寺は、少し憂いのある表情になる。
「そうだよね…やっぱり、期待してくれる人は、大勢いるんだよね?」
「……怖いか?」
「えっ?」
「ファンの期待に応えられなかった時のことを考えて、怖くなってるんじゃないか?」
「そ、そんなこと!」
 小野寺は一度、俺の言葉を否定しようとしたが、途中でそれをやめた。
「そうだね…やっぱり、怖いかな…レコーディングとかは、失敗したらやり直せたけど、ライブは、失敗したらそこでおしまいだもん…」
 俺には、ライブに出るということがどれだけプレッシャーがかかるかわからない。
 だけど、出来ることはある。
 俺は小野寺の手を握って言った。
「小野寺。ファンの期待通り、いや、期待以上のライブを出来たとき、舞台はどうなると思う?」
「えっ?えっと…やっぱり盛り上がるんじゃないかな?」
「そうだな。ファンは満足して、それを見たお前も満足できる…だったら、それを目指せばいいだけだろ?」
「でも、もし失敗したら…」
 俺は小野寺の頭を、空いた手で軽くチョップする。
「今は、成功した未来を目指せ。失敗したときのことは考えるな。お前のやりたいことをしろ。それに…」
「それに?」
「頼りないかもしれないけど、俺も見守ってるからさ…だから、お前は…」
 小野寺は、俺が言葉を言い終わる前に、顔を胸の辺りに乗せる。
「頼りなくなんかないよ…和樹君は、とっても頼りになるよ。昔も、今も」
「そ、そりゃどうも…」
 俺は今、鼓動が激しくなっていて、今のように返すのが精一杯だった。
「ありがとね。なんか、元気出てきた」
 小野寺の表情には、もう不安は感じなかった。
「明日は最高のライブにしてみせるからね!」
 そう言って、小野寺は部屋を出ていった。

 

 ライブ当日。
 朝起きてみると、すでに小野寺も香織さんもいなかった。
 おそらくライブの準備に出かけたのだろう。
 リビングに行くと、そこにはおにぎりと書き置きが置いてあった。
 書き置きには、『朝に食べてください』と書かれていた。
 俺はおにぎりを食べ、ライブの時間を確認する。
 会場が出入り可能になるのは午後三時で、ライブの開始時間が午後五時だ。
 今が午前九時なので、まだだいぶ余裕がある。
 どうするか悩んでいたとき、俺のスマホが振動した。
 どうやら香織さんから電話のようだ。
 俺は電話に出ると、スマホから血相を変えた香織さんの声が聞こえてきた。
「和樹君!お願い…ライブ会場まで来て!」
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