見捨てられた教会の地下で盗賊を捕らえ、怪物を退治し、見事共犯の疑いを晴らすことの出来たワタルは、カッツによってハイランダーの称号を与えられた。
その後、彼はキ・キーマ、ミーナ、ジョゾと一緒に宝玉を探す旅に出ていた。
これまで2つの宝玉を手に入れていたのだが、残りの3つはまだ分からないままだった。
幻界での生活は、現世での生活とまるっきり違うため、まだまだ慣れないことが多かった。
それでもワタルは仲間にも囲まれ、少しずつこの世界に愛着を感じ始めていた。
ある日、村で商品を送り届ける作業を終えた彼らは、村人から呼び止められた。
「旅人さん、あなたはハイランダーの腕輪をつけているけれど、それは本物かね?」
「はい、本物です。ガサラの街でカッツさんからもらいました。」
ワタルの返事を聞いて、街の人の目が変わった。
「そうか、それなら引き受けてくれそうだ。」
「この人ならば、何とかしてくれるだろう。」
「でも、まだ子供ですよ。いいんですか?」
「何かあったのか?おれ達でよければ話を聞くけれど。」
人々があれこれ語り合っている中で、キ・キーマが問いかけた。
「実はな…。ここ最近、この近くで盗賊が出没しているんだ。」
「そうそう、私達が精魂込めて作った野菜を根こそぎ盗んでいってしまうの。」
「野菜ばかりじゃない。家畜も奪い去っていくんだ。」
村人達は盗賊によってどんな目にあってきたのかを話した。
「ひどい…。そんなことを出来るなんて…。」
「気持ちは分かるような気がするな。おれだって商品を何者かに盗まれたりしたらたまったもんじゃないからな。」
ミーナとキ・キーマが答える中で、ワタルは一人で黙っていた。
ハイランダーである以上、討伐に出かけなければならないだろう。しかし彼の心には不安がつきまとっていた。
以前、共犯の疑いを晴らすために、見捨てられた教会に行った時には、大きな怪物と戦うはめになった。結局は勝てたものの、本当に食べられてしまうのではないかという不安に襲われた。
また戦わなければならないのだろうか。また怖い目にあわなければならないのだろうか。
そんな気持ちが頭をよぎっていた。
自分の目的は、宝玉を5つ集めて運命の塔へ行き、女神様に願いをかなえてもらって現世へと帰ることだ。
戦いは出来るだけ避けたい。もし宝玉がそこにあるということが分かれば話は別なのだろうが…。
ワタルはしばらくの間返事に困っていた。
しばらくの間、異様な静けさが続いていると
「旅人さん、その腕輪は偽者かね?」
「お前さんなら、すぐにはいと返事し、討伐に行ってくれると思ったのだが…。」
「だめなら仕方ありません。他の勇敢な人でも探すしかないわ。」
と、村人達の言葉が飛んできた。口調はさっきよりも厳しかった。
「ワタル、どうするんだ?ハイランダーだろ、お前。」
「どうするの?」
キ・キーマとミーナが心配そうに聞いてきた。ワタルの頭上にいるジョゾも彼の頭をなでながら答を出すようにせかしてきた。
ここで断れば、ハイランダーとしての役目を損なうことになる。
せっかくカッツさんに認められたのに、このままでは面目がつぶれてしまう。
「…分かりました。行きます。」
心の中ではまだ迷いがあった。しかし心の中で(僕は勇者なんだ。)と必死に言い聞かせていた。
村人達はまだ半信半疑ながらも、ワタルが討伐に行くことを決意してくれたことを歓迎した。
そして、早速被害にあった場所へと案内してくれた。
村の集落の外にある農地では、もうすぐ収穫を控えていた農作物があらされていた。
あちこちを踏みにじられ、多数の実がもぎ取られ、ひどいありさまだった。
それを見て、ワタルはテレビでニュースを見ていた時を思い出した。
『昨夜、何者かが農地に侵入し、収穫を間近に控えた作物が盗まれるという事件が発生しました。』
『犯人は何人かが手分けして、短時間のうちに作物を摘み取り、箱詰めして立ち去ったものと思われます。』
『本当に悔しいです。私達が丹精込めて育て上げたものを…。』
『犯人が分からないのでは、誰を恨んでいいのか分かりません。途方にくれるばかりです。』
『こんなことが出来る人がいるというのが信じられません。』
あの時、コメンテーターが冷静に原稿を読んだ後で、農家の人達が無念そうにインタビューに答えるシーンが心を打った。
そういうようなことが幻界でも起こった。あの時は警察が犯人を捕まえてくれることを祈りながら、農家の人達はかわいそうだなとしか思うことが出来なかった。
しかし今度は違う。自分で犯人を突き止め、捕まえなければ…。
ワタルの心は急に使命感に燃えてきた。
「心配しないで下さい。きっとこの役目を果たしてみせます。」
さっきまであった迷いをふっ切り、ワタルは勇者らしく言った。
村に戻ったワタル、キ・キーマ、ミーナは村人達から盗賊達に関する情報を色々聞いてまわった。
そして彼らのアジトは何処にどこにあるのか、一体何人くらいの人がいるのか、どのような武器を持っているのかを聞いてまわった。
話によると、彼らは剣やムチを持っていること、抵抗すれば平気で人を傷つけること、主に夜に活動していることが分かった。
しかし肝心の場所までは分からなかった。
そのためワタル達は討伐に行こうにも、出発することが出来ないまま夜を迎えてしまい、村人達と共に一夜を過ごすことになった。
キ・キーマ、ミーナ、ジョゾがすでに熟睡した後、ワタルは用心しながら体を横にした。
その時『ワタル。』と、何処からともなく声が聞こえてきた。
間違いない。謎の少女の声だ。それを聞いて上体を起こし、立ち上がった。
「君は、以前僕を見捨てられた教会に行くように教えてくれた…。」
『そうよ。あなた、かなりお困りのようね。』
「う、うん…。ねえ、君はこの村を荒らしている盗賊の居場所を知っているの?」
『あら、いきなりそんな質問?』
「だって、君なら知っているかなと思って。」
『もちろん知っているわよ。教えてほしい?』
「はい。お願いします。」
『それならいいわ。いい?よく聞いて。』
「はい。」
『盗賊達のアジトはね、ここから東に6km行ったところにあるわ。そこにある山のふもとにもう使われていない牧場があって、廃屋となった家の中に彼らは住んでいるの。床下に地下室があって、そこには10人くらいの人達が秘密基地にしているわ。』
「君、詳しいんだね。村人達は誰も知らないことなのに。」
『フフフ…。私にかかれば簡単なことよ。』
「あ、それからもう一つ聞きたいことがあるんだけど。」
『何?』
「盗賊は、今夜この村にやってくるの?」
『何でそんなこと聞くの?』
「不安で寝付けないんだ。せめて来るかどうかが分かればと思って。」
『残念だけれど、今夜は来ないわよ。ゆっくりやすみなさい。』
「ありがとう。それを聞いて安心したよ。」
『じゃあ、気をつけてね。幸運を祈っているわ。』
謎の少女の言葉はそれ以降聞こえなくなった。
ひとまずいつ襲われるかという不安から開放されることが出来、ワタルは再び体を横にして、眠りに落ちていった。
翌日の朝、ワタル、キ・キーマ、ミーナとジョゾは目的地へと進んでいた。
村人達は武器となるようなものを何か渡そうとしたが、ワタルは勇者の剣があるという理由、キ・キーマは持ち前の怪力があるから心配ないという理由で受け取らず、ミーナだけが受け取った。
彼女が手に入れたものは、中に辛子が練りこんである玉で、敵に投げつけて撃退するものだった。
ダルババ車は、もしもの時に備えて荷台を空にしていた。
「大丈夫かなあ…。10人もの人達を相手に戦えるのかな。」
「怖いのか?ワタル。」
「う、うん。でもハイランダーである以上、行かなきゃ。たとえ相手が強かろうと、自分が損をしようと、悪いことをする人はやっつけないと。」
「まあ確かにそうだよな。だが心配するな。おれ様がいれば百人力だからさ。」
「ありがとう、キ・キーマ。」
「それから、ミーナは何でついてきたの?村で待っていればよかったのに。」
「私?私も何か役に立ちたかったから…。」
「そう言って、本当はワタルと離れたくないからなんだろ?」
「…。」
キ・キーマに冷やかされ、ミーナは思わず顔が赤くなった。
「大丈夫だよ。ミーナだって充分戦えるよ。」
「ありがとう。ワタル、私頑張るね。きっと役に立つから。」
「うん。」
3人は目的地まであと1kmになったところでダルババ車を降り、ジョゾをつれて歩いていくことになった。
いよいよアジトらしき牧場が見えてきた。
そこには人も家畜もおらず、あちこちに柵が残っていて、いくつもの干し草が山積みになっていた。奥にはボロボロになった建物があった。
ついに戦う時が来たのかと考えると、3人の緊張はますます高鳴ってきた。
『ワタル。』
ふと、謎の少女の声がした。キ・キーマとミーナには聞こえなかったが、ワタルにははっきりと聞こえた。
「何?」
『気をつけて。盗賊達はあなた達が近づいてきていることを察知しているわ。いつでも戦える準備をしておいて。』
「はい、気をつけます。」
「どうしたの?誰に向かって話をしているの?」
ミーナが不思議そうに聞いた。
「ちょ、ちょっとね。そんなことより、いつ襲われるか分からないから注意して。」
ワタルは勇者の剣を鞘から出して構えた。
キ・キーマとミーナの表情も引き締まった。
ジョゾもただならぬ雰囲気を感じ取ったのか、ワタルの頭から離れ、うなり声を上げながら3人の周りを飛びまわっていた。
いよいよ建物の入口まで来た。ドアはもう跡形もなくなっており、代わりに何かの動物の毛皮がぶら下がっていた。
毛皮をそっと持ち上げて内部をのぞくと、シーンと静まり返っていた。何も知らずに来たら、誰もいないただの廃屋にしか思えなかっただろう。
不気味な静けさの中で、ワタルは本当に誰かいるのか確かめたくなった。しかし、下手に声を出せば自分達がここにいることを相手に知らせてしまうことになる。
そのため、何を言えばいいのか分からないまま黙っていた。
その時後方から
「誰だ!」
と言う大声が響いた。
3人ははっとして振り向いた。すると、山積みとなっている干し草がガサガサと音がし、5、6の男達が一斉に飛び出してきた。彼らは熊やオオカミの姿をしていた。
「ここに何しに来た?」
「けがしたくなかったら、おとなしく帰んな!」
「ここは柵がたくさんあるからな、逃げられんぞ!」
彼らはじりじりと近づいてきた。
ワタルは先頭に立ち、剣を構えながら相手をにらみつけた。
キ・キーマは横でファイティングポーズをとっていて、ミーナは2人の陰に隠れるようにして立っていた。ジョゾはワタルの頭上で小さく火を吐いたりしながら威嚇していた。
「お前達か!村の作物を荒らして回っている盗賊達は!」
ワタルはきつい口調で問いかけた。
「盗賊?おれたちゃそんなのとは無関係だ。」
「人違いだ。坊や。」
「他をあたりな。」
「証拠はあるのか?」
彼らはしらを切るようにして言い返した。
確かに証拠と言っても、それを示せるようなものはない。盗んだ作物などがあればいいのだが、辺りにそれらしきものはない。
本当に人違いかもしれない。3人はどうすればいいのか迷った。
『ワタル!』
その時、再び謎の少女の声が届いた。
“何?今大変なところなのに”
『その人達の言うことを信じてはだめ。彼らは本当に村を襲った盗賊達よ。証拠なら地下室にあるわ。私を信じて。』
“はい。”
『それから後ろにも人がいるわ。気をつけて!』
“後ろ?”
ワタルが問いかけた時、地下室と建物の反対側から何人もの人達が入ってきた。
これで相手は10人。うち、2人は女の人だ。
逃げ道はない。相手は薄ら笑いを浮かべながらじりじりと近づいてくる。果たして勝てるのだろうか。
ワタルとキ・キーマは表を向いているのに対し、ミーナは2人に背を向けていた。
彼女は最初は玉を両手に持っていたのだが、それを素早くポケットに隠した。
“ワタル。”
ミーナが小声で問いかけた。
“何?今大変なところなのに”
“私にいい考えがあるわ。私が相手の注意をひきつけるから、その隙に…。”
ミーナが作戦を伝え終わると、いきなり彼女の正面からじりじりと迫ってくる相手に向かって走り出した。
次の瞬間、大きくジャンプし並んで立っている相手の女性2人の肩に手をついた。そして、さらに高く飛び上がり、何回か宙返りして床に着地した。その光景は体操の跳び箱のようだった。
「ミーナ!」
意外な行動に驚いたキ・キーマが叫んだ。相手も驚いていた。ワタルはその隙を見逃さなかった。
そして「僕は勇者なんだ!」と叫びながら飛び掛っていった。
一方、ミーナは着地をするとそのまま一目散に割れたガラスの窓に向かって走り出した。そして思い切りジャンプしてその狭いガラスの隙間をすり抜け。外に飛び出していった。
「まずい。盗賊だと知られる!」
「捕まえなきゃ!」
跳び箱の台の役割を果たしてしまった2人は、逃がすものかとばかりに彼女の後を追いかけた。
(注:この時、自分達が盗賊だと暴露していることに、彼女らは気づいていなかった。)
しかし、大人の彼らがすり抜けられるほどのすき間がなかったため、持っていた武器でガラスを叩き壊すはめになった。
やっと外に出られた時にはミーナはかなり離れたところにいた。
「待てーーー!!」
2人は必死に彼女の後を追った。
ワタルは勇者の剣で相手を叩きつけ、まず2人をなぎ倒した。しかしその後は相手の反撃にあって防戦一方となり、第2の宝玉のエアクッションを駆使して必死に攻撃を防いでいた。
キ・キーマは何度も相手の攻撃を受けたが、それでも持ち前の怪力を駆使して戦っていた。
ジョゾはあちこちを飛び回って敵の注意を引き付け、隙を見つけては火を吐いて応戦していた。
2人と1匹はそれぞれが役割分担をしながら懸命に戦っていた。
ミーナは懸命に外を走り回ったが、足の速さは盗賊達には叶わず、さらにはあちこちにある柵のせいで度々進路を阻まれたりしたせいで、次第に距離が縮まってきた。
相手の2人はしめたとばかりに二手に別れて挟み撃ちにする方法を取った。
一方のミーナは走りながら玉を取り出し、いつでも敵に投げつけられる準備をしていた。玉は2個しかないため、失敗は許されない。
しかし、走っているうちに後を追いかけている人との距離はどんどん縮まり、つかまるのは時間の問題となった。しかも前方には柵がせまっていた。
「もう逃げられないわよ!」
盗賊の一人が手を伸ばしてきた。
これまでかと思ったその時、ミーナは急に頭から滑り込み、柵と地面の間のすき間をすり抜けていった。
一方、盗賊は勢い余って柵に思い切り激突してしまった。辺りには「ガン!」という大きな音が響いた。
彼女はそのまま気を失ってしまった。
先回りをしていたもう一人もそれに気づき、ミーナに向かってきた。
彼女は立ち上がると玉を両手に握り締め、冷静に狙いを定めた。
相手があと2m前方にまで迫ってきた時、ミーナは右手に持っていた玉を投げつけた。
玉は「ベシャッ!」という音を立てて相手の目玉辺りに命中した。
「ぎゃあああああっ!」
彼女は中に練りこんであった辛子が目に入ったせいで、痛みに顔をゆがませ、転んでしまった。
ミーナは至近距離まで近づくと、左手に持っていたもう一つの玉を右手に持ち替えて投げつけた。
玉は口の中に吸い込まれていき、「ベシャッ!」という音を立てた。
今度は強烈な辛さに襲われ、相手はとうとう観念してしまった。
一方、あまり戦いに慣れていないワタルは、相手の攻撃を防ぐのに精一杯の状態だった。
いつ盗賊達にやられてもおかしくない状態だったが、その度にジョゾが火を吐いて応戦し、ワタルへの攻撃を防いでいた。
このままではラチが開かないとでも思ったのだろうか、残っている盗賊の一人は後ずさりをしていき、剣の代わりにムチを取り出した。
そしていきなりワタルめがけて放ってきた。
ムチは勇者の剣にからみついた。
「わっ!」
「よおし、これでその剣は使えまい。覚悟しろ!」
「こんなことでやられてたまるか。僕は勇者なんだ!」
ワタルはそう叫びながら第1の宝玉を作動させた。
勇者の剣はスクリューのように勢いよく回り始めた。
するとムチはさらに絡み付けていき、相手から武器を取り上げる形となった。
「こ、この野郎!」
武器を失った男はあたふたしながら叫んだ。とっさに腰の鞘にしまいこんだ剣を取り出そうとした。
しかしそれより一瞬早くワタルがムチが絡まったままの剣を振りかざして突っ込んできた。回転はすでに止まっていた。
「くらえーーー!!」
ワタルは叫びながら力いっぱい振り下ろした。
「ガシーン!!」
剣は大きな音を立てて相手の頭に命中した。
男は叩きつけられた衝撃で気を失ってしまった。
キ・キーマは怪力に物を言わせて、5人の相手をなぎ倒した。
そしてついに盗賊達全員を懲らしめることが出来た。
倒した人数はワタルが3人、ミーナが2人だったので、結果的に一番活躍したのはキ・キーマだった。
ジョゾは敵を倒したわけではないが、注意を引き付ける役割を果たし、2人を陰で支えていた。
「ふう〜、勝った…。」
緊張から開放されたワタルが大きく息をしながら言った。
「よくがんばったな。けがはないか?」
「大丈夫。何とか無傷で済んだみたい。でもキ・キーマ、何ヶ所かけがをしているじゃないか。」
「なあに、これくらいなら大したことじゃないさ。あとで薬でもつけときゃ治る。」
「でも…。」
2人が会話をしていると、ミーナが心配そうな表情を浮かべて戻ってきた。
「ワタル、キ・キーマ。心配したけれど大丈夫?」
「うん、何とか。僕もミーナのこと心配だったけれど、けがしなかった?」
「しなかったわ。でも怖かった。もし捕まったらどうなるのかと思って…。」
3人は嬉しそうな顔をしながら会話をしていた。ジョゾも楽しそうにはしゃいでいた。
その中で、ワタルは自分をサポートしてくれた謎の少女のことを思い出していた。
(今回は、あの人の声に感謝しなければな…。あれがなかったら場所も分からなかったし、不意打ちを受けて、もしかしたら返り討ちにあったかもしれない…。姿も名前も分からないけれど、一度会ってみたいな。会ってお礼を言ってみたいな…。)
ワタルには、自分を何度も助けてくれた少女が、眩しく思えていた。
それからしばらくして、村人達が合流した。
ワタル達は彼らと協力して、捕まえた盗賊達をハイランダーの元に送り届ける役割を果たした。
残りの人達は建物の地下への入口を見つけて、中に入り込んでいった。
そこには盗まれた作物がたくさんの箱に入って保管されていた。恐らくは商品としてどこかに売りさばくつもりだったのだろう。
しかし家畜は細かく切り分けられ、食肉として売る状態にされていた。
いずれは肉となる運命だったとは言え、こんなことになってしまい、村人達には落胆の表情が浮かんだ。
しかし、しばらくすると現実を受け止める覚悟が出来たのか、彼らの気持ちに変化が出始めた。
「みんな、手塩にかけて育てたものがこうなってしまったのは残念だけれど、もうそのことはよしとしよう。」
「そうだな。あのお若いハイランダー達のおかげで、被害を食い止めることが出来たし。」
「あの人達にはわしらに出来る精一杯のお礼をしようじゃないか。」
「そうね。見ず知らずの私達のために勇気を振り絞ってくれた彼らに感謝しなければね…。」
村人達は挫折を乗り越えて、また再び立ち上がる決意を誓い合った。
その後、近くの山のふもと付近で、生きた家畜がおりの中に閉じ込められた状態で発見された。
その日の夜、村に戻ってきたワタル達は、村人達の用意したごちそうに舌つづみを打っていた。
「本当にありがとうございます。僕達のためにここまでしてくれて。」
「どういたしまして。確かあなたはワタルさんと申しましたっけ?」
「はい。そうです。」
「それにしても、あなたは本当に勇気のある人ですね。」
「ハイランダーだったら当然のことだと思います。僕は勇者ですから。」
ワタルはすっかり村人達の輪の中に溶け込み、色々と会話を交わしていた。
その様子を、ミーナとキ・キーマは楽しそうに見つめていた。
翌日、ワタル達は村人から食料を分けてもらい、再び旅に出ていった。
3つ目以降の宝玉に関する情報は聞けなかったが、それでも彼らの表情は明るかった。
ダルババ車に揺られながら、ワタルは現世にいる母親、邦子のことを思い浮かべていた。
(お母さん、あれから元気になりましたか?僕はこうやって幻界でがんばっています。これから先、あとどれくらい時間がかかるか分からないけれど、きっと宝玉を5つ集めて運命の塔にたどり着いてみせるから。きっと家族を元に戻すから。どうか心配しないで待っていてください。)
本当なら今すぐに母親の元に帰って、胸元で甘えたかった。
しかし幻界にいる以上、それは出来ない。ワタルはまだ11歳というあどけなさをそっと胸にしまい、これからまだまだ続く旅に備えた。
空を見上げると、青空の中でたくさんの雲が風に流されながら進んでいた。
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