「くそ! コイツ等どんだけ出てくるんだ!」
戦い続けること約30分。日も沈みかけ、夜が近づいて来た。夜の戦いは非常に苦戦を強いられるだろう。まだ日があるうちに全滅させたい。それに、体力もそろそろ限界に達しようとしている。戦闘場所は玄関。逃げるのは容易だ。
しかし、己のプライドが逃げることを許さない。
その少年“隼人[ハヤト]”は右手に“広範囲攻撃可能高電圧ラケット(電気蝿叩き)”を、左手に“高圧広角噴射機(殺虫剤)”を握り、不規則的に現れる敵と戦っていた。足下には蝿叩きや殺虫剤の餌食となったヤツ等の死骸がゴロゴロ転がっていた。
何度も何度も対峙し、苦戦の果てに撃退してきた敵、そう、夏の天敵“蚊”だ。
額の汗を拭い、手汗を拭き、ヤツ等の奇襲に備える。
「さぁ!! いつでも来い!! 全員仕留めてやる!!」
隼人は己に葛をいれなおした。
「来た!!」
隼人は素早く殺虫剤を噴射した。直撃をくらったヤツ等は少しの間ヨロヨロと飛び、次々と地に伏した。
『皆の集! すでに気付いているかと思うが今回のヤツの武器は今までよりも飛び抜けて強力だ! 最善の注意を払え!』
他のヤツ等と比べて少しばかり大きいヤツがいる。おそらくアイツが親玉だろう。
「倒しても倒しても湧いてきやがって! いい加減にしやがれ!」
再度言うが逃げることはプライドが許さなかった。
『恐るることはない! 我等に負けはありえない! 我等には数多の同胞がいる! 再度言う!恐るることはない! さぁ! 目の前の敵を戦滅してやろうではないか!』
ワラワラとたかっていた大量の蚊の一部が一斉に飛んで来た。
「負けるか!」
蚊を目掛けて殺気に溢れた蝿叩きを振るった。隼人は攻撃の手を休めない。続けざまに殺虫剤を噴射し、攻撃をしながら防御壁を展開した。
『くそ! 第1派がやられた! 怯むな!第2派参れ!』
何匹来ようが要領は一緒ボタボタと地に落ちる。
「今日の俺は一味違うんだ!!」
すでに何十匹もの蚊の体や誰かの血がこべりついていたラケットを振り続ける。
今までの蝿叩きなんかとは圧倒的に威力が違う。元来の蝿叩きならヒットしても生き延びる可能性はあったが、コイツなら当たったら最期、一撃のもとに消し炭となるだろう。
しかし、いくら武器が高性能でも必ず欠点がある。
『・・・はたして、我にそれを命中させることが出来るかな?』
そう、どんなに強い武器を使用しても当たらなければ意味がない。
「絶対に仕留めてやる!!」
言い終えると同時にヤツ等は辺りを飛び回り、隼人を翻弄した。
「クソ!! 素早い!!」
目で追うのもままならない。これでは敵に攻撃を与えるなど到底出来ない。
『ハーハッハッハッ!! どうしたどうした!! 我を仕留めるのではなかったのか!!』
隼人は手にした武器を巧に活用して親玉を追撃しようと試みるがそれを上回る巧な動きで華麗に全てかわしていく。
「くっ!!」
“あれ”を使うしかないのか・・・。
『そのような武器では我を仕留めるなど夢のまた夢!』
ヤツは高らかに笑った。
「ならばコレでどうだ!!」
隼人は右手に殺虫剤を、左手に“手動式小型着火機”(またの名を“ライター”と言う!)を構え、ライターを着火!そして殺虫剤を噴射!
殺虫剤×火=火炎放射
『む! これはマズイ!』
親玉は紙一重でそれをかわした。しかし、この攻撃により、かなりの蚊は黒焦げになって地に伏した。
「これで大分減ったな。」
しかし、安心してもいられない。蚊の生き残りが次々と襲い掛かってくる。
「しつこい!!」
隼人は向かってくる蚊達に殺虫剤を噴射……
しようとしたがすでにエネルギー切れ。
「ちっ!!」
隼人は殺虫剤の缶を捨て、ラケットを振った。
しかし、数匹の蚊が攻撃をかいくぐり、隼人の腕に張り付いた。
「しまった!!」
急いで叩き潰すも、しっかり血を吸われてしまったらしく、赤く腫れ上がってきた。
『やったぞ!! ヤツにダメージをあたえることが出来たぞ!!』
「仕方ない・・・。これだけは使いたくなかったが・・・。」
隼人は一旦家の中に戻って、ある物を持ってきた。
「コレさえあればオマエ等の命もおしまいだ!!」
ある物とは、殺虫効果のある水を煙に変え、広範囲に渡ってその効果を発揮するという恐ろしい産物だ。
「くらえ!!」
隼人がそのスイッチをいれようとしたとき、
「隼人ー! 晩ご飯できたよー!!」
母の声が。
「マジで!? 今行くー!」
隼人はさっさと家に戻っていった。
プライド? 知ったことか。そんな安いプライド捨てちまえ。
今日も平和な夏だ。
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