14.Actually feeling
必死の思いでマンションに戻って、扉に鍵をかけたあたしは、玄関の床にへたり込んだ。
とっくの昔に慣れたと思っていた死臭が、体中にまとわりついて、あたしをどこか深い闇の中へ引きずり込もうとしているような気さえした。
あたしは。
何を勘違いしてたんだろう。
ここは、夢の中の世界じゃない。
勝手に泣き出した自分を、どこか遠い場所から眺めているような感覚で思う。
ここはどこだろう。
なんだって、あたしはここにいるんだろう。
何をすればいいんだろう。
どうすれば、助かるんだろう。
そもそも、助かるってなんだろう。
あたしは、何がしたいんだろ・・・
堂々巡りの思考の中に、何度も何度もあの肉片が浮かぶ。
どうみてもあれは、人間の・・・・・・
頭を強く横に振ってみても、体の感覚は戻って来やしなかった。
あんなふうにはなりたくない、と思う。
あんなふうに、なっていてもおかしくなかったんだ、と思う。
どれだけの幸運と奇跡が、あたしにここで息をさせているんだろうか。
がちがち、と耳障りな音があたりにこだまして、あたしは歯の根が合わないほど震えている自分を知る。タチの悪い風邪をひいた時よりよっぽど酷い悪寒が血管の中を駆け巡っているような気持ち悪さに崩れ落ちたままの膝を抱えて、何とか壁に寄りかかる。
フローリングの床も、薄い壁紙が張られただけの壁も、硬くて冷たくて、どこまでも突き放されているような気がした。
いつまでそうしてたのか、よく分からなかった。
いつまでもそうしているわけにはいかないことは分かっていたから、軋む体をなんとか起こす。その足で、よろよろと部屋の中に戻ったあたしは、体に触れた布団の手触りにただただ息をついた。
「寝よ……か」
何も考えたくなくて、着替えもしないまま布団の中にもぐりこむ。
冷えきった肌に、毛布の柔らかさが心地よかった。
最近盗んできた、もふもふなぬいぐるみを抱えて、深く息をついてまどろみに落ちる。
その瞬間。
ガラスのない窓から、鉄琴を叩いた時のような音が断続的に響いた。
反射的に飛び上がりかけた体を、ぬいぐるみを抱く手に力を込めることでやりすごす。
飛び出しかけた悲鳴を必死で押し殺して、恐る恐る窓のほうを見つめた。
雨が、降り出していた。
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