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日だまり
作:春野天使


 青い空に、ゆっくりと白い雲が流れる。鳶の鳴き声が、空の上から聞こえてくる。柔らかな春の日差しが降りそそぐ、今日も穏やかに晴れた良い天気。
 縁側の日だまりでは、おばあちゃんと子犬が、仲良く並んで眠っている。おばあちゃんは、さっきまで編み物をしていたけれど、かぎ針を持ったまま、いつの間にかこくりこくりと居眠りを始めていた。膝の上からころころと毛糸玉が転がって、子犬の顔の前で止まった。この春産まれた、丸々と太った小さな子犬。日差しを浴びて、気持ち良さそうに眠っている。
 晴れた春の昼下がり。いつもより時計の針がゆっくりと進んでいるかのように、のどかに時は流れる。温かな光は、みんなを心地よい眠りの世界へと誘う。

 ふと、優しい微風にのってタンポポの種が飛んできた。ふわふわした綿毛が、ゆっくりと縁側に舞い降りてくる。そして、ふわっとおばあちゃんの膝の上に降り立った。タンポポの種も、おばあちゃんの寝息にあわせて小さく揺れる。まるで、一緒にお昼寝しているみたい。しばらく膝にとどまっていたタンポポの種は、新しい風が吹いてくると、もう一度ふわりと空へ舞い上がって行った。

 タンポポの種が去った後、入れ替わるように、また新しい訪問者が縁側を訪れた。今度は小さなモンシロチョウ。羽をヒラヒラさせて、花を探し庭を飛び回っている。忙しく飛んでいたモンシロチョウは、疲れたのか羽を休めるために、子犬の鼻の頭にちょこんととまった。子犬の濡れた鼻が気持ち良いらしく、じっととまって動かない。
 やがて、子犬は耳をぴくりとさせ、薄く目を開けた。なんだか鼻がくすぐったくて、もぞもぞするみたいだ。どうにか鼻のチョウチョをどかせたいけれど、またまだ眠くて自然と瞼がさがってくる。
 くすぐったくて、クシュン! と子犬が小さなくしゃみをすると、モンシロチョウは驚いて鼻の頭から離れた。またヒラヒラと庭を一巡りし、モンシロチョウはどこかへ飛んでいった。

 静かな春の昼下がり。
 私は、縁側を見下ろしている。私は、庭の桜の木。この家が建てられた時からずっと庭に立ち、縁側を見下ろしている。もうじき、年に一度の華やかな季節を迎える。
 私の蕾は、大きく膨らんで、今にも花を咲かせそうになっている。後数日すれば、蕾は一斉に動き出し、花を咲かせ始めるだろう。
 長い冬を越し、ようやく咲いた花達は、春の日差しが嬉しくて、あちこちでお喋りを始める。満開の花々はとても華やかで賑やかだ。
 もうすぐ、後少し。
 桜の花が満開になる頃、おばあちゃんのひ孫が生まれる。また一人、この家の家族が増える。おばあちゃんは、赤ちゃんが生まれるまでに、毛糸の帽子を編めるだろうか? 春の日だまりの中では、おばあちゃんの編み物はなかなか進まない。こっくりこっくりと船を漕いで、気持ち良さそうに眠っている。おばあちゃんも子犬も、春色の夢の中。まだまだ目覚めそうにない。
 温かな日の光が私の枝いっぱいに降りそそぐ。と、むくむくっと蕾の一つが動き出した。
 『こんにちは』気の早い蕾が、ついに花を開き挨拶をする。私の枝にほんの一輪、桜の花が咲いた。了






企画小説で投稿しようかと思ってましたが、ちょっと短すぎたので、企画は別の作品にしました。(^^)春ののどかな光景を書いてみました。













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