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酒をあおる男〜小さな星の上で〜
作:水音灯


ひたすら酒を呑んでいた
味を忘れて酔いに任せ
ひたすら酒を呑んでいた

傾ける瓶はすぐに空になる
酔いつぶれるまでは遠く
曖昧な脳裏は霞んだまま

それでも酒を呑んでいた
旨くもない酩酊感に笑う
赤ら顔の自分は

何気無く上げた視線の先
宇宙に浮いた少年の形の白に
壊れゆく自己を想う


“何をしてるの?”


やわらかな声が耳に痛い
幻聴ならば何故こんな声が
誤魔化すように酒をあおる


“呑んでるんだ”


会話の方法など知らないまま
この幻を消したい一心で
ぶっきらぼうに言葉を紡いだ


“どうして、呑んでるの?”


どうして?
言葉が頭をめぐる
うかぶ答えに体が震えた


“恥ずかしぃからだ”


あぁそうか、と頭が言った
ろれつの回らない自分にさえ
顔が燃えてしまいそうだった


“どうして、恥ずかしいの?”


顔を上げて 白を見る
澄みきった瞳の深さに
眩暈すら覚えて酒をあおる


“呑んでるからだ”


ぶっきらぼうに呟いて
それきり 顔を上げずにいた
上げることなど出来なかった



目を覚ませば 夜明けが見えた
誰もいない星の上
ころがる自分と酒の空き瓶

ため息の合間に 酒をあおる
それでも消せない記憶に
吐気を堪えて笑う

誰もいない虚空に 白の面影を視
息をついて酒をあおる
消えない記憶がただ 忌々しい


“どうして、呑んでるの?”
“恥ずかしいからだ”
蘇る言葉すら 忌々しい

遠く始まる朝の光が
空き瓶の山を照らして白く
それでも吐気は止まらずに

赤ら顔を隠せるように下を向く
醜さにこみあげる吐気を
酒の酔いで誤魔化しながら

ひたすら酒を呑んでいた
味を忘れて酔いに任せ
ひたすら酒を呑んでいた


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