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恋をしたら死ぬとか、つらたんです 作者:みかみ てれん

第五章 ウッキウキ☆初めてのデートは死の香り♡

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51限目 ブルーメちゃんと生きていきます

「え、えと、じゃあ改めてよろしくね、ブルーメちゃん」

 伸ばした手を所在なさげに引き寄せ、曖昧に微笑むヒナ。
 ブルーメはそんな彼女を鼻で笑い。

「お仕事はきっちりしてあげるのです。
 でも、ご主人様ってば……」
「うん?」

 上から下まで眺めて、さらにもう一度ヒナの顔を見て。
 ブルーメはやはり感じの悪い笑みを浮かべる。

「ぷっ」
「?」
「ご主人様、わかってやがるんですか?
 これ、乙女ゲームなんですよぉ?」
「う、うん」
「それなのにそんな、髪は伸ばしっぱなし、化粧も薄い。
 一張羅は制服。ま、女子力のかけらもありやがりませんね!」
「えっ、そ、そうかな?」

 前髪を摘んで引っ張るヒナ。
 ブルーメは嘲るような笑みを崩さない。

「まったく、これだからコムスメはだめなんですから……。
 仕方ないです。ビジネスの上でなら、このワタシが『女子のなんたるか』、
 キュートでカワイイモテカワオーラを発憤するための、
 その極意を厳しく叩き込んでやがるのです」
「え、ホントに?
 ありがとー、ブルーメちゃん!」
「おさわりは厳禁なのです」

 手を伸ばすヒナを油断なく睨むブルーメ。

「まったく、これだからモテない干物女の世話は辛いのです。
 ワタシみたいなスーパーOLが近くにいたから、良かったものを。
 普段からどんなクソ生活をしてやがったものだか、わかったものじゃありませんのです」

 ブルーメは澄ました顔でそんなことを言ってのける。
 夢を売る乙女ゲーという商売で、彼女はバリバリリアルのことを持ち出してくる。なかなかの問題児だ。

「イケメンBOYをGETするために、
 このワタシがビシバシとシゴいて、女子力の権化にしてやるのです!」

 しかしヒナはそんなブルーメを憧れるような眼差しで見つめていて。

「頼りになるなあ、ブルーメちゃん……」

 目をハートマークにしつつ、そんなことをつぶやくのだった。

 
 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇


 というわけで再開、である。
 二日目の終わりの自由行動からだ。

 ステータスを自由に伸ばせる時間の他、
 家族の団らんや、外出系の行動、
 あるいはメールのチェックなども行なうことができる。

「さって、それじゃあなにをしよっかな」

 とりあえずヒナは自由行動の時間は取っておいて、メールから先に片づけることにした。
 なにやら一挙一動に目を光らせるように机の上に座っているブルーメの視線を感じつつ、携帯電話を操作する。

 スースーポンポンと指を動かし、受信ボックスをチェック。
 新着メールは四件である。意外とあった。

「……すー、はー」

 ヒナは深呼吸して差出人を確認。
 優斗、凛子、一ツ橋先生、そして父親からだ。

 ひととおりメールの題名を眺めて。


①優斗:いつ暇ー?
②凛子:(題名なし)
③先生:きょうはどうでしたか?
④父親:dear ヒナへ...


 ヒナヤギさんは父親からのメールを見ずに削除した後、
 まずは教師からのメールを開く。


『こんばんは、藤井さん。
 きょうの調子はどうかな?
 具合が悪かったら無理しないでね』


 そこにあった文は昨日とあまり代わり映えのないものだった。

「……軽いジャブといった程度ですね、わかります」

 唇を噛み締めながらうなずく。
 相変わらず、一ツ橋樹は優しい。底なし沼のようだ。

 ヒナが文章を既読に変えたところで、ブルーメが口を挟んできた。

「返信はしやがらないんですか?」
「え……返信……?」
「なにそんな初めて聞いたみたいな顔をしやがっているんですか。
 未開人? 実家に電気とか通ってなかった部族の生まれなのです?
 人からのメールに返信しないなんて、どういう教育を受けてきたのです?」
「いえ、まあその……」

 そういえば昨日は全員からのメールに無視した形になってしまったのだろうか。

 しかし返信となると恐ろしい。
 手紙は昔から恋を伝えるために使い回されてきた手段だ。
 それだけに、一歩誤れば即死の沼に飛び込んでしまう結果になるだろう。

 一瞬の間に300近くの返信パターンを考えたヒナは、可もなく不可もない文面を打ち込む。

『ありがとうございます、先生。
 もしなにかあったときは、そのときはよろしくお願いしますm(__)m』

 それから白猫のブルーメに画面を見せて。

「こ、こんな感じでどうかな? ブルーメちゃん」
「ま、なにも考えてない感じのメールですこと。
 つまんないけど、いいんじゃないですか。
 女子力低いドブ子にはお似合いで、素朴なのが逆にウケやがるかもなのです」
「ありがとうございます」

 チェックしてもらい、ヒナは頭を下げた。
 それから、ふふっと笑う。

「なんだかブルーメちゃん、わたしの先生みたいだね」
「ま、あんまりワタシに懐きやがらないでくださいね。
 あくまでもこれは仕事上のつきあいなのですから」

 ツンと澄ました顔のブルーメに、ヒナは「はーい」と微笑みながら返事をしたのであった。

 
 さらに二通目(というか三通目)。
 凛子からのメールは、以下の通りであった。


『なんだかしなくちゃいけないような気がしたから……。
 現在のみんなの、藤井さんへの好感度を送りますね。
 あなたの素敵な学園生活をお祈りいたします』


 他人行儀ここに極まれり。

「……あの子、こんなお祈りメールを、
 送りやがるようなキャラだったですにゃ……?」

 ブルーメですら首をひねる中。
 ヒナはケータイを掲げながら顔を机に伏せ、ぴくぴくと震えていた。

「なに!? 急になんなのです!?」
「う、うれしくて……」
「えっ!?」
「だって凛子ちゃん、わたしのことをお祈りしてくれているって……」
「そんなものを文面通りに受け取る子、初めて見やりがりました!
 えっ、チョロっ、このご主人様チョロっ!」
「はぁ、はぁ……」

 心臓に手を当てながら起きあがるヒナ。
 スクロールさせてその文面を辿ってゆく。

 そこには、今まで会った人たちの可愛らしいデフォルメイラストとともに、好感度が列挙されていた。
 凛子がどうやってこんな調査をしたのかは謎だが……まあ、きっとゲームだから正確極まりないのだろう。

 ★が1ポイントで、十段階評価である。


 優斗__★★★★☆☆☆☆☆☆
 椋___★☆☆☆☆☆☆☆☆☆
 樹___★★☆☆☆☆☆☆☆☆
 虎次郎_★☆☆☆☆☆☆☆☆☆
 光___★★☆☆☆☆☆☆☆☆

 凛子__☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


 表を見ると、やはり優斗からの好感度がずば抜けている。
 椋や虎次郎の評価は納得の位置。
 樹先生はともかく、光の評価が少し伸びているのは、彼が女好きだからなのだろう。

 そして……。

「……あれ? なんでだろう、凛子ちゃん低いなあ」

 低いというよりも、ゼロだ。無感情である。
 ヒナは微妙に首を傾げた。
 まあ、友達にすらなれていないのだから、仕方ないことなのか。

「え、あの子、自動的に仲良くなって、
 最低でも評価は★3だったなのです……?」
「……最低より低いってことは、つまりわたしはトクベツってことですね!」
「そのポジティブさは間違っていやがります。
 ドブ川に映る太陽みたいなコムスメなのです」
「えへへ」
「まるで褒めてやがりませんよ!?」

 後頭部に手を当てるヒナは、凛子に返信をする。
 ブルーメからダメ出しを食らったので、今度はちょっと遊び心を加えてみた。


『――凛子ちゃんわたしのことを好きじゃないんだね。』


「えっ、ちょっ、それもらって相手はどう返事すればいいのです!?
 どういう返しを求めていやがるんですか!? 酷! 酷!」
「ええっ、だめですか?」
「だめっていうか、ありえないのです! なんなの!?
 どうして!? 人付き合いがわかってないのです!?」
「ぶー」

 ブルーメにそんなに怒られるとは思わなかった。
 ヒナは唇を尖らせながら訂正する。

 結局、


『ありがとう、凛子ちゃん。これからもよろしくね』

 
 辺りに落ち着いてしまった。
 ウケるかウケないかギリギリのところを狙いたかったのだが……。

「エッジが効きすぎなのです、ご主人様。
 乙女ゲーのなんたるかをまるでわかっていないのです。
 人の心の痛みがわかるようになってきてから、出直しやがってください」
「ええっ」

 ブルーメにそんなことを言われてしまった。



 そして問題の――優斗からのメール。
 それこそが、地獄のゴールデンウィークの幕開けなのであった……。
 
 
 ブルーメより一言:ご主人様はちょっと頭がオカシイかもしれないのです。
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