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恋をしたら死ぬとか、つらたんです 作者:みかみ てれん

第四章 ピッカピカ☆新たな一日は恋の冥土♡

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50限目 おいでませブルーメ

   
「やだー、かわいいー……!」

 ヒナの足下にちょこんと立つ白猫のぬいぐるみ。
 彼女の名前は「ブルーメ」というらしい。

 アメリカンショートヘアーだろうか、ソマリだろうか。
 あまりにもデフォルメされているので元の種類がわからないけれど、でもとっても可愛らしい。

「ええー、なんですかー……?
 シュルツさん、いるじゃないですか、他の子ー……」

 黄色い悲鳴をあげるヒナ。
 ブルーメは若干得意げな顔を見せながら。

「ワタシはブルーメ。ご主人様をご案内するためのオペレーターなのです。
 このたびは『乙女は辛いデス』をご購入いただきやがって、ありがとうなのです」
「やだー! しゃべってるぅー!
 かーわーいーいー! きゃーきゃー!」
「これからご主人様を乙女ゲーの世界にご案内するのが、ブルーメのお役目なのです。
 よろしくお願いしやがります」
「きゃーきゃーきゃーきゃー!!」

 頬に手を当ててもだえるヒナ。その瞳はすでにハートマークだ。
 ブルーメは二本足で立ち、ちょっとだけ強気な顔で腰に手を当てながら語る。

「ご主人様はワルい魔法使いのせいで、この世界で恋をしやがると死んじゃうのです。
 でもご安心しやがりなさい。このブルーメがそばにいてあげます。
 ご主人様をこの世界で立派な乙女にしてあげやがり」
「やだーもー! なんでこんなにかわいいの!?
 しゃべる猫ちゃんってすっごい、もう、すっごいの!
 シュルツさんもかわいかったけど、ブルーメちゃんももー、すごいの!
 やばい! かわいいすぎー!」
「さあ一緒に乙女ゲーの世界に……って聞きやがれよォーーーー!!!!!」

 唐突にブルーメが絶叫した。
 ヒナは一瞬、きょとんとしたけれど。

「……え?」
「さあ、一緒に乙女ゲーの世界に旅立ちま」
「やだー! すごーい! 大声もかわいい!
 ブルーメちゃんかわいい! かわいい! かわいい!」
「ウオオオアアアアアアアーーー!!!」

 次の瞬間、ジャキンッとブルーメは両手に爪を生やす。まるでウルヴァリンのようだ。

「猫の話はちゃんと聞きやがるのです!
 今、世界観の説明をしているのです! お座りやがりください!」
「は、はい」

 さすがにそこまで言われて、ヒナはその場に正座した。
 ブルーメは爪を引っ込めると、やはり猫撫で声。

「なので~、ご主人様はワルい魔法使いにかけられた呪いを解くため、真実の愛を見つけだしやがるのです!
 そのために、ワタシも精一杯お手伝いさせてもらうのです~」
「う、うん」

 なにかをごまかすようにしっぽを振るブルーメ。
 彼女はごろんと横になると、口を開いて。

「さ、ブルーメにご主人様のことを教えやがるのです」
「えーっと」

 そのふさふさなぬいぐるみを前に両手をわきわきさせていると、「フシャー!」と警戒された。

「わたしは藤井ヒナ。高校二年生の女の子です。
 ごくごく普通の、平凡な女の子です」
『ダウト』

 どこからかシュルツの声が聞こえてきたような気がする。
 ヒナは「えへへ」と笑いながら頬をかく。

「ちょっぴり、普通よりも気が多いかもしれませんねー」
『2ダウト』

 さらにシュルツの冷たいツッコミ。微妙にやりづらい。
 ブルーメはうんうんとうなずく。

「なるほど~。ご主人様は『普通の平凡な女の子』なのです。インプット完了です~!」
「それでえっと」

 白猫の頭を撫でようとすると、ジャッキンィィィンと爪を伸ばされてしまう。
 ヒナはそれでも指をうねうねさせながら問う。

「ブルーメちゃん? は、どういう子?
 ここには確か、シュルツさんしかいなかったはずだけど……」
「ワタシはヒナご主人様をサポートするためのAIなのです!」
「あ、そういうことかぁ」

 ぽん、と手を打つヒナ。

 今回はテスターであるヒナのためにシュルツがついてきているけれど、
 これが製品版になってしまえば、もちろんひとりに社員ひとりがつく事態などありえない。

 だからこそ、ナビゲーターのAI機能が搭載されているのだ。
 ブルーメの口振りだと、もしかしたらシナリオにも関わってくるのかもしれない。

「というわけで、一緒にがんばりやがるのです!」

 ぎゅっと手のひらを握るブルーメ。
 先ほどの豹変はともかく、見た目は可愛らしい良い子そうだ。

「うん、よろしくね、ブルーメちゃん」

 微笑み、手を伸ばすヒナ。
 握手を求めるヒナの、その白くて細い手のひらに、ブルーメは……。

「あ、ワタシそういうのいいんで。
 ご主人様との関係はビジネスなんで、あんまり気安くしやがらないでくださいね」
「えっ」

 ――凍えるような冷たい眼差しを放ったのだった。


 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇


『乙女は辛いデス』のナビゲーターに実装されているAIは、実に1024種類に及ぶ。
 プレイヤーはプレイ中、自由にナビゲーターを変更することができるのだ。

 それぞれ、異なる四つの属性を持っていて、それによって検索することが可能であり。
 たとえば、フェアリータイプのとても可愛らしい少女フェルネルちゃんだと、
 その属性は『親身・愛嬌・思いやり・寂しがり屋』となっている。
 開発者の間でも大人気のナビゲーターだ。

 さあ、ここでAI、白猫のブルーメのステータスを見てみよう。
 それは『ビジネス・強気・毒舌・武闘派』である。

「くくくくく……」

 シュルツは含み笑いを漏らす。

「自称サバサバ系の姉御肌、メンタルには自信があります! と言い張ったお姉さんを、
 プレイ開始から20分で泣かせた伝説を持つ白い悪魔ブルーメちゃん……。
 くくく、唯一の味方だったこのボクに見放され、ナビゲーターまでも敵に回り、
 イケメンには殺され、誰にも頼れないこの四面楚歌の状況……。
 くくく、ヒナさん、いつまで持つかなあ……?」

 シュルツの目的は、ヒナの弱体化だ。
 いつかの精神の弱ったヒナは――多少うっとうしかったが――御しやすかった。

 あれ以上弱らせることができれば、もしかしたら彼女は普通の少女に戻るのではないか。
 そのことを証明するために、シュルツは虎の子のブルーメのカードを切ったのだ。

「くくくく、くはーっはっはっはっは!」

 たったひとりの部屋、シュルツの高笑いが響く。

「ボクは休める! ヒナさんはボクのありがたみを痛感する!
 サボっているのに日数は進む! 溜飲も下がる!
 なにこの完璧な計画! ボク天才! 新世界の神になれる!」

 ひとしきり笑い、シュルツはキーボードに拳を叩きつけた。

「さあ、ヒナさん! ボクの手のひらの上で、せいぜい素敵な小鳥のワルツを踊ってもらおうじゃあないかぁ!」

 その叫びの後、ヒナたちはゲームを始めたようだ。
 シュルツは高みの見物。これこそが現代の貴族の目線である。

 思いっきりサボってしまっているが、もう関係ない。
 吹っ切れたから。吹っ切れてやったから。

「生き残るのは、果たしてどちらかなぁ!?」


 ヒナvsブルーメ。
 そのふたりの女の戦いが、今ここに幕を開けるのであった――。



 第四章 ピッカピカ☆新たな一日は恋の冥土♡ end
 シュルツより一言:(ゲーム中)
 ブルーメより一言:泣いたり笑ったりできなくしてやるのです!
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