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恋をしたら死ぬとか、つらたんです 作者:みかみ てれん

第四章 ピッカピカ☆新たな一日は恋の冥土♡

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33限目 友達がいないと死んでしまいます

 前回のあらすじ:握手。
 
 さて。
 授業が終わり、ヒナはにっこりと微笑む。

「三時間目もリンコとともに行動したので、無事に過ごせましたね」

 彼女の前の席でひたすら黒猫のぬいぐるみに話しかけるヒナ。
 その様子に怯えながらノートを一心不乱に読み続けるのが凛子。

「へー、この時代では、
 ムリヤリ拘束することを『ともに行動する』って言うんだ?」

 と、シュルツ。
 そんな皮肉はまあ、この際置いといて。

「さ、お昼休みです。昨日と同じように過ごしますからね。
 ねえねえ、リンコー」

 ヒナには心強い味方がいるのだ。
 彼女のそばにいれば、決して死ぬことなどない。

 シュルツは自分と凛子の固い絆を侮っている。
 まだ会って一日だけれど、乙女ゲーのヒロインと親友キャラには、決して壊れない友情があるのだ。

 確かに彼女は名刺(ノート)を読み終えるまで、自分とはまだ友達ではない“という建前”だが。
 ヒナの中には、もうとても固い絆が結ばれているのだから。

 と、振り向けば。

 ――いない。

「リンコどこ!?」

 驚愕し、机に手をつきながら立ち上がるヒナ。
 彼女の机の上には、手渡したノートがそのままに残っていた。

 まさか、そんな。
 信じていたのに、うそでしょう。

 ……逃げられた?

「なんて、こと……
 リンコ、わたしを裏切るの、リンコ……ッ!?」

 小さな拳を握り、机を叩く。
 ショックだった。こんなに大好きなのに。

 シュルツが「そら逃げるわ」とかなんとか言っていたが。
 ヒナは胸を抑えながら、うめく。

「……そんな、だめだよ、このままじゃ……!
 こんなんじゃ、わたし、わたし……!」

 そう、顔をあげたヒナの前、
 こちらに笑顔で手を振る優斗の姿が、スローモーションで映る。

 あまりの集中状態によって、辺りの時間が遅れて流れて見えているのだ。
 ヒナの危機感が頂点に達したときにのみ発動する能力だ。

 やはり。
 このままでは。

 ――優斗に、お昼に、誘われてしまう!

 それはすなわち、彼に殺されるということだ。
 ふたりきりで間が持つわけがない。
 間に椋がいたって、きっと同じことだ。
 お昼ごはんの代わりに、ぺろりといただかれてしまう。

 桃色の妄想の挟まる余地もない。
 だってそうしたら、シュルツとの勝負に負けてしまうんだから!

「ふぁぁ……これは、勝負あったかな、って――」

 ヒナは身を翻し、シュルツ人形の頭を掴んで廊下に出る。
 ずざざっと上履きで滑り込むように人の中に紛れて。

「リンコ! 逃さないからね!」

 自分への、ご褒美のために!
 ナデナデの、その先に――向かうのだ。

 シュルツから、シュルツから……
 あんなことや、こんなことを……

「うぇっへっへ……」

 思わず笑みを漏らしてしまって。
 なにやら胸の中でシュルツがニヤリと笑ったような気がして、ヒナはハッと気づく。

 ブレスレットを見やる。
 この数字が100万になれば死んでしまういつものアレだ。

 数値は83万。やばい。
 ちょっと妄想しただけでドキドキが止まらなかった。

 ゲーム中でどんなにシュルツのことを想っても平気だけど、
 その結果自分がドキドキしてしまっては意味がない。死んでしまう。

「……最後まで捨てません。
 あきらめたら、そこで試合終了です!」

 瞳に炎を燃やし、凛子を探しに向かうのだ。
 ヒナの安住の地は――そこにしかないのだから!

  

 そのためにも、まずは凛子の行方を探らなければならない。
 ヒナは軽く屈んで、目を細めた。

 凛子の身長、体重は目測で把握している。
 彼女の体重移動の様子も、何度か見た。

 リノリウムの上の、
 目に見えないほどに細かな足跡を判別するのは難しくはない。

 問題はそこからだ。
 何千何万という同じ上履きが乱れる中、ただひとつ、きょうの凛子の足跡だけを見つけ出さなければならない。

 追跡術(トラッキング)は目で覚えるものではない。

 知識、観察力、洞察力、五感をフルに活用する技だ。
 凛子の内面と同調することにより、その足跡を浮かび上がらせるのだ。

 しばらく――といっても数秒程度だが――感覚を研ぎ澄ますことにより、見えてきた。
 人の波が途切れることなく続く廊下に、光の道が。

「……見つけました、凛子ちゃん……
 今、会いに行きます」
「キミ、三ツ星ハンターかなにか?」

 シュルツのつぶやきは、
 ヒナの堂々たる歩きぶりにかき消されるようにして、風に散ってゆくのだった。

 

 というわけで、凛子がいたのは校舎裏であった。
 彼女はひとりでお弁当箱を抱えて、ため息を付いている。

 どうしてこんなところに。
 ひとりでとっても寂しそうだ。

 なんだか胸が締めつけられるような思いがした。
 なにか悩んでいることがあるのなら、話してくれればいいのに。

 そんな凛子の弱った姿を遠くで見守って。
 ヒナは努めて明るく声をかけることにした。

「リーンコ」
「え゛っ」

 なにやらものすごい驚いたような顔でこちらを見やる凛子。
 心なしか、嬉しそうにしていないような気がする。

「どーしたの? こーんなところで」
「え、いや、これはその」
「えへへ、一緒に食べようよ、お昼」
「あ、はい……そうですね……」

 微笑みながら、ヒナは彼女の隣にゆく。
 良かった、これでなんとかお昼休みを越えられる……

 凛子もほら、笑みっぽいものを浮かべてくれているし。
 やはり持つべきものは友達だ。

 しかし、どうして校舎裏なのだろう……と思い。
 すると、奥まった場所から男の人がふたりやってきた。

 制服を着崩した、ちょっとヤンチャそうな大人びた人たちだけれど、
 なにやらあちこちに怪我をしているようだ。
 肩を押さえながら、校舎の方に歩いてゆく。
 どうしよう、手当をしてあげたほうがいいかな、とかなんとか思いつつ。

 すると凛子が眉をひそめた。

「……まさか、あいつ」
「あいつ?」
「あ、いや、えっと……」

 口ごもる凛子。
 その後ろからゆっくりと姿を現したのは……

「あン? なんだてめーら」

 一ツ橋樹の弟、不良キャラの虎次郎であった。

 

 彼を見るや否や、凛子が立ち上がった。

「ちょっと虎、またケンカ?」
「あいつらが突っかかってくンだよ。
 マジでうぜーよな」
「あんたが相手するからでしょうが」

 あ、これイベントだ、と気づくヒナ。
 そうか、昼休みに校舎裏に凛子と行くことによって、虎次郎イベントが進むんだ。

 まだ虎次郎と凛子は、ふたりで言い争いをしている。
 というよりも凛子が一方的に虎次郎を叱っているようだ。

 だが、虎次郎のイライラがどんどんと溜まってゆくのが見える。
 このままじゃ爆発しちゃうんじゃないかな、とか思いつつ。

 しかし、虎次郎と凛子、お似合いではあるのだけど、
 口うるさい姉と聞き分けのない弟のようだ。
 虎次郎ルートを攻略するためには、きっと凛子の協力が必要なんだろうな、とかなんとか。 

 ヒナは完全に見物客のつもりでいた。
 その瞬間までは、だ。

「あっ、ちょっとあんた怪我しているじゃない!」
「お、おいっ」

 凛子が虎次郎の頬に手を伸ばす。
 彼はそれを振り払っただけ、なのだが……

「きゃっ」

 勢い余って、凛子を突き飛ばしてしまった。
 ヒナが「あっ」と思うと同時、虎次郎もハッとしていた。

 校舎の壁に後頭部をぶつけた凛子は、
 しばらく「つぅぅ……」と悶えている。

 見たところ、傷にはなっていないようだけれど。
 涙目で虎次郎を睨む凛子。

「あ、あんたね~~~……!」
「……」

 虎次郎はなんだか傷ついたような顔をして、
 後悔するように、自らの手を見下ろしていたのだが。

 まるで振り切るように、怒鳴る。
 子供のようだ。

「う、うっぜーんだよ!
 てめーも、アニキもだ!
 いちいちオレに絡んでくんじゃねーよ!
 このブスが! もう二度とオレに近づくな!」
「――っ」

 凛子の顔が一瞬で真っ赤に染まる。
 怒りか恥辱か、かーっと。

「あ、あんた……」
「……チッ!」

 盛大に舌打ちし、虎次郎は歩いてゆこうとする。
 ヒナは「うーん」とうなった。

 凛子に。
 自分の友人に。

 なんて口を。
 そりゃあ虎次郎も、ツンツンしてて可愛いけれど。

 でも、凛子が悲しそうだから。
 大切な大切な、自分の友達が悲しんでいるから。

 それなのに、謝りもしないだなんて。
 この子、ちょっと見過ごせないな、なんて。

 そう思ったヒナは、
 彼の行く手を阻むように立ち上がった。

「……あんだよ、てめーは」

 顔を歪めてこちらを睨んでくる虎次郎に。
 ヒナは困ったように眉を寄せて。

 しかし苦笑いをしながら、
 軽く拳を握って、告げる。


「――ちょっと、頭、冷やしましょうか?」

 
 
 シュルツより一言:初のヒナさん以外の、死者が出るかもしれない……。
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