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透明な階段
作:葉崎あすか



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 キリアは、さきほどから機嫌が悪かった。
 ロゼは、前にキリアが言っていた「一を知ったら十まで知りたい」という言葉は本当だったんだと、思っていた。
 そして、前に読んだ本で、クウクの住人は学問への好奇心がほかの区域に比べて、はるかに高いということを思い出していた。
 その証拠に、キリアの家のたくさんの本たちが物語っていた。
 「教えろ、ライ」
 言葉使いもどんどん悪くなってきている気がする。早く、なんとかしなければと、ロゼはハラハラしていた。
 それにかまわず、ライは、無言でロゼとキリアの前を歩いていた。
 「…………ライさん?」ロゼは、少し早歩きして、ライの顔をのぞきこんだ。
 「……なに」ロゼは、ライの表情を見て、「いいえ、なんでもありません……」と、引き下がった。
 しばし、三人は無言で歩いた。
 ロゼは、まわりの景色を見た。
 細い一本道だった。
 まわりには、木が生い茂っていて、まるで、トンネルのようになっていた。
 葉と葉の間から、太陽の光がこぼれている。
 地面には、ロゼの知らない薬草がいっぱい生えていて、木の根も顔を出していた。
 油断すると、足を取られそうになる。
 この道が、海へとつながる、ただひとつの道だった。
 とても涼しく、気持ちのいい朝だった。
 昨日は暗くなったので、キリアの家に泊まり、朝早くから出発した。ライは、泊まることを渋った。早く、海に行きたいようだった。
 海に──カリトに何があるのだろう。ロゼは、とても楽しみだった。
 カーニャに薬草をもらってから、今まで、一度も悪夢を見なかった。やはり、大魔法使いがくれたものは効果絶大だったのだ。
 だが、いくらカーニャの薬草とはいえ、心に残るモヤモヤまでもなくすことはできなかった。
 それを、ライが知っている。
 カリトに行けば、分かるのだろうか。
 この得体の知れない恐怖を、ぬぐいさることが出来るのだろうか。
 「さあ、着いた」ライの言葉で、ロゼは顔を上げた。
 今までの狭いトンネルから一変。どこまでも続く、海。そして砂浜が広がっていた。
 「ここで、カリトが息絶えたんだ……」
 キリアが、しみじみと海を眺めていた。
 「ええ……そうですね」ロゼも、海を見た。
 「これから、海に入る。カリトは海に住んでいたのだから、住居跡は残っているはず。それを探す」突然のライの言葉に、ロゼとキリアは、とんでもないと首を振った。
 「わたし、泳げません」
 「あたしも……羽がぬれたら大変!」
 「キリアさんは、ここで待っていてください。…………ロゼは、魔法をかければいいじゃないか」
 「ああ、そうか……」
 ロゼは納得すると、自分に魔法をかけ始めた。
 体全体が、ぬれないように。それと、海の中で息が出来るように、なるべく疲れないように。
 「待て。あたしも行く。──一を知ったら百まで知れ──これがあたしのポリシィ!あたしにも、魔法をかけて」十から百に増えたような気がするが、ロゼは黙っていた。
 今なにか余計なことを言うと、キリアにかみ付かれそうな気がしたからだ。
 「でも、キリアさん、さっきロゼに魔法をかけたとき、木の陰に隠れていたじゃないですか。怖いのではなかったのですか?」
 キリアは、ライの言葉を無視して「早く早く」とせきたてていた。
 「しょうがないな」ライは、軽くため息をつくと、自分とキリアに魔法をかけ始めた。












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