あくまでフィクションであり、実在の人物・団体・国家などとは全く関係ありません。
戦争讃美、ナチス讃美でもありません。
ご都合主義なところや勉強不足なところがあると思いますが、できる限り調べて書くのでよろしくお願いします。
プロローグ 全ての始まり
世界とは一個の巨大なプログラムと見做すことができる。
ここでの世界とは宇宙もひっくるめた、この次元とでも言っても過言ではないものを指す。
この巨大なプログラムの全体像を我々が解析することはおそらくできないだろう。
さて、ここでの問題はこの世界というプログラムが全て正しく動くかどうかなのだ。
どんなに完璧に見えるプログラムであっても、必ず何処かに間違いがある。
そう、プログラムには必ずあるバグというものが。
この物語は転生という天文学的な確率での世界のバグを引き当てた、幸運なのか、不運なのか、判断しにくい人間の物語である。
1900年、6月22日生まれのアシュスレーベンの地主貴族、ルントシュテット家の次男坊。
彼の名はヴィルヘルム・フォン・ルントシュテット。
そんな彼は……転生者だった。
彼が生まれて1ヶ月ほど経ったある日のこと。ようやく、彼は夢ではないことを認識した。
「……だだ」
さて、と彼は呟いても言葉は出ない。
その現実に嘆息しつつもヴィルヘルム・フォン・ルントシュテットは室内を見回す。
豪華なベッド……とは言わないまでも、それなりに贅沢な作りのベビー・ベッドに寝かされていて、部屋には絵画や壷、ソファといった調度品があり、窓からは爽やかな青空を見ることができる。
ココは何処だ、と彼はキョロキョロと部屋を見回す。
そこで壁にカレンダーを見つけた。
そこに書かれていた年月を見て、彼は叫んだ。
「だ、だだだだぁ!?」
なんだってぇ、という言葉を彼は発したつもりだったが、赤ん坊の駄々をこねる声にしか聞こえなかった。
そのカレンダーには西暦1900と書かれていた。
10分程すると彼は落ち着いてきた。
彼は発想の転換を行うことで精神的な安寧を保つ事に見事成功したのだ。
1900年といえばイギリスが世界帝国として振舞うことができた時期である。
そして、ヨーロッパ大陸ではプロイセンを中心に統一を果たしたドイツがヴィルヘルム2世の「陽のあたる場所へ」という標語の下、海外植民地獲得に動き始めようとした時期だ。
さて、彼の行った発想の転換はより悪い時代を考えることだった。
中世暗黒時代や石器時代と比べれば遥かにマシであり、成り上がるチャンスに満ち溢れている、と。
そう考えた彼は自分が赤ん坊だというのにも関わらず、ニヤニヤという擬音がピッタリな笑みを顔に浮かべる。
これからの未来知識による薔薇色の人生。
それはすなわち、莫大な富の入手に他ならない。
この時代であれば金があれば基本的に何でもできる、と言っても過言ではない。
将来的に超一等地となるような場所の土地を買占め、そこで豪邸を建てて、悠々自適な生活を送ることもできるし、或いはハワード・ヒューズのように地球上の富の半分を独占することも可能だ。
未来の知識がある、というのはそれほどまでに反則的だ。
そんな風にニヤニヤと笑っている彼は周りから見ればさぞかし不気味な赤ん坊と思われるだろうが、この部屋には幸か不幸か彼しかいないので心配無かった。
そこまで考えて彼は気づいた。
ここは何処の国だ、と。
彼の知る言語とは前世で大学にて習った拙いドイツ語と英語くらいだ。
彼にとって不運なことは、今まで夢の中の出来事だと思っていたために、周りが何か喋っていても、きっぱりと無視していた。
母国語以外の言語では注意深く聞かねば聞き取れないのは当然だ。
無論、それがネイティブの方々と遜色無く話し、聞き、読み、書くことができるのならば話は別になるが、残念なことに彼はそこまで熟達してはいなかった。
もしも三国同盟の、いわゆるオーストリア・ハンガリー、ドイツ、イタリアのどれかの国だった場合、第一次世界大戦により非常に大変な被害を被る可能性があった。
彼は世界史マニアとまではいかないまでも、転生前は自分のウェブサイトでリアル志向な架空戦記を執筆していたことがあり、20世紀初頭から半ばまでの歴史・軍事・経済などは色々と調べていた。
もっとも余りに調べすぎて訳が分からなくなり結局、頓挫してしまったので、本末転倒だ。
彼が同盟側の国であったらどうしよう、という不安に襲われていると、コツコツという規則正しい足音が近づいてくるのを聞いた。
やがて足音は部屋の前で止まり、ゆっくりと扉が開いた。
「ヴィルヘルム様、起きていらしたのですか」
入ってきたのはロングスカートにカチューシャをつけたメイド。
それも20世紀後半、日本で見かけるようになったコスプレメイドではなく、本物だった。
歳は10代前半から後半といったところだろうか。
彼女はヴィルヘルムの傍にやってきて、彼を抱き上げる。
この彼女は子守専門のナースメイドであり、ヴィルヘルムのお世話係である。
当然、彼はそんなことを知らない為、本物のメイドをマジマジと見つめる。
彼の内心は単純な、極々普通の男子の抱く感情だった。
すなわち、メイド可愛い、と。
彼女はそんな視線に気づいたのか、ヴィルヘルムににこりと笑ってみせる。
その笑顔に彼は決意する。
すなわち、自分による自分の為の自分だけのハーレムを築く事を。
悲惨な第一次大戦を止める為に、とか世界平和の為に、という目的ではなく、およそ男であるならば誰もが一度は夢見て諦めたことを目的にするところが、何とも情けなかった。
「それではお散歩に行きましょうか?」
彼女は妙に様子がおかしいヴィルヘルムに首を傾げながらも、職務を遂行すべくそう言った。
ヴィルヘルムと彼女、ネリーは屋敷を出て、街にやってきていた。
彼は自動車の代わりに馬車が走る道路とレンガ造りの街並みを物珍しげに眺めている。
「この街はヴィルヘルム様の家系であるルントシュテット家と代々繋がりが深いんですよ」
どうにか彼はルントシュテットという単語を聞き取る。
その単語は知っている、と頭の中で考えながら、真剣にヴィルヘルムはネリーを見つめている。
そんな彼にネリーは微笑みながら、言葉を続けた。
「ルントシュテット家は代々軍人の家系で、今年25歳になられるヴィルヘルム様の兄上にあたるカール様も現在、陸軍大学に入る為に勉強なさっています」
ネリーの話の中に出てきたカールという単語と陸軍という単語を聞いてヴィルヘルムはピン、ときた。
陸軍でルントシュテットという家名を持っている人物、そして名前がカール。
思い当たる人物は1人しかいなかった。
カール・ルドルフ・ゲルト・フォン・ルントシュテット。
第二次大戦時には陸軍の長老として、国防軍嫌いのヒトラーに煙たがられながらも敬意を払われ、そのヒトラーに直言できる存在であった。
これでヴィルヘルムは自分が何処の国に生まれたか理解した。
カイザー率いるドイツ、第一次大戦とその敗戦により多大な損害を被り、最終的には第二次大戦の中心となるナチス・ドイツへ変貌していく国家だった。
さて、前世では極々普通の大学生だった彼は当然、軍事教練に参加したことなんぞない。
故にそっち方面の才能があるかどうかは未知数だ。
また、確実な未来として、このままではヴィルヘルムが西部戦線で毒ガスや塹壕への突撃、或いは狙撃などで死ぬ可能性が跳ね上がったことを悟った。
彼が将来どうするか思考に埋没していると、何時の間にか公園に到着していた。
ベンチに座ったところでネリーは彼の異変に気づいた。
ヴィルヘルムは現在、赤ん坊である。
その赤ん坊が「うー」と唸りながら、眉間に皺を寄せて何かを考えている。
ネリーはふと思った。
まさかこちらの言っていることが理解できるのだろうか、と。
自分が今まで話したことの中に何か気になることがあったのだろうか、と。
「ヴィルヘルム様、何か、気になることがありましたか?」
ヴィルヘルムは伝わらないだろうと思ったが、一応、頷いた。
「えっと……ヴィルヘルム様、よろしければ読み書きをお教えしましょうか?」
普通なら不気味に思うか、それとも敬虔なキリスト教徒ならば悪魔憑きとでも思うかもしれないが、幸いにもネリーは良くも悪くも好奇心旺盛な10代の少女であった。
彼女の言葉にヴィルヘルムは渡りに船とばかりに頷いた。
それから2人は屋敷に戻り、ネリーはヴィルヘルムとカールの父親、ゲルトのところへと赴き、ヴィルヘルムのことを話した。
それを聞いたゲルトは半信半疑ながら、ヴィルヘルムの部屋を訪れ、彼に『はい』か『いいえ』で答える問いかけをして、彼が首を縦に振ったことで証明された。
なお、このときの質問はヴィルヘルムが言葉に対して反応できても、意味が分かるかどうかまでは定かではなかったので、『はい』と『いいえ』のどちらを答えても不正解の無い質問となった。
その質問は『父を愛しているか』だ。
ゲルトは歓喜し、早速家庭教師を雇おうとしたが、ヴィルヘルムがネリーを指差したので、ゲルトはネリーをヴィルヘルムお付きのメイドとし、新たに家庭教師も雇うということを行った。
ネットでも商業でも日本が頑張るヤツはあっても、ドイツが頑張るヤツがないから自分で書いてみた。
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